ユア視点7 過去7(2022/12/2)
それからしばらく経った頃他の人がやって来た。
「あなた達何をしているの?」
そう言って現れたのは、背が高くスタイルのいい女の人だ。
「ギルマス!」
そこには、驚いているセリルと動揺していないエレナの姿があった。
ギルドマスターは彼女達を見るとセリルさんだけ少し気まずそうにしていた。
「それで何に揉めていたの?」
そう言うとエレナさんが先ほどのことをそのまま説明してくれたのだった。
「なるほど。分かったわ。それであなたは、どうしたいの?」
と言って私に聞いてきた。
「私は、その、武器の扱い方を学んでからがいいです」
「? それって……」
と言ってギルドマスターはエレナさんの方を確認していた。
「模擬戦のところから見ていたのでその前については……」
とエレナさんが言うとギルドマスターは少し考えた素振りを見せたが頷いてこういった。
「分かったわ。とりあえず今回の昇格試験については、不合格ということで。それとセリル、あなたは今から私の部屋に来なさい」
「は、はい……」
「エレナもね?」
「分かりました」
「その前にエレナは、その女の子の事を頼むわね」
「はい」
エレナさんが返事をするとギルドマスターはセリルを連れてその場を去ったのだった
「それじゃあ、あなた達」
そう言うと今まで見ていただけのオノマ達が少し緊張した様子でエレナさんを見ていた。
「彼女は、実力が足りないので討伐系の依頼は、受けることは、できません。その事は、しっかりと理解してくださいね?」
「は、はい」
「はい」
「…分かったわ」
「それじゃあちょっとこの子借りるから今日は、帰りなさい」
そう言うとオノマ達は、そそくさとその場を去って行った。その様子を見送ったエレナさんは溜息をついてから私に向き直った。
「さて、ここじゃあ何だし、ちょっとついて来てね?」
そう言われたので私は頷くとエレナさんが歩き出したので後を着いて行った。
そうしてエレナさんに案内された場所は、ギルドの2階の個室だった。その中に入るとエレナさんは、鍵を閉める。何をされるのだろうそんなことを思いながらエレナさんに促されて椅子に座った。
「まずは、自己紹介からしようか? 私は、エレナあなたは?」
「ユアです」
「ユアさんですね? ユアさんは、初め私の所に来ていた子だよね?『こいつを冒険者登録しろ』と言われて驚いていた」
「そうです」
「あれから何があって冒険者になろうと思ったの?」
「それは……」
どうしよう……。あったことを話しても大丈夫なのかな? でも、登録した時のセリルという人よりは、信用できそうだけどセリルさんに知れ渡ったら絶対オノマ達も知ることになると思うし……。と考えているとエレナさが尋ねてきた。
「言えない理由でもあるの?」
そう聞かれたので私は、頷いた。
「もしかしてユアを連れて来た彼等に知られるとまずいとかそんな所かな?」
そうエレナさんに言われたのですごく驚いたけど、何とか返事をした。
「……はい」
「それなら、気にしなくてもいいよ。この件は、私とギルドマスターにしか知らせない予定だから」
そう言ったエレナさんに私は驚いた。ここで話をしたらギルド内部に知れ渡ると思っていたから……。
「本当ですか?」
「そうだよ。だから何があったのか私に教えてくれないかな?」
私は、その話を信じることにして何があったのかエレナさんに説明することにした。
そうしてエレナさんに無理やり連れてこられたことやその後冒険者になるように脅されたことを話した。
「なるほど。そんなことがあったの……」
とエレナさんは、暗い顔をしていた。どうしてエレナさんは、そんな顔をしているのかな? と私は少し不思議に思っていた。
「それでユアさんは、冒険者になってよかったの?」
「それは……」
と言っていろいろ考えたけど、オノマ達がいる以上私が冒険者にならないという選択肢はないと思った。どんなに嫌がっても先ほどと同じことをされる可能性が高いから……。でも、魔物との戦闘は怖い。そう考えるとよく分からなかった。
「……分かりません。ただ、魔物と戦うのは怖いので、エレナさんが止めてくれて本当に助かりました。ありがとうございます」
そう言って頭を下げてお礼を言うとエレナさんが手を振りながらこう言ってきた。
「それは、当たり前のことだから気にしないで、セリルの勝手な判断がいけなかっただけだから」
エレナさんは、当たり前だとそう言ったがセリルの勝手な判断と聞いてどういうことなのか気になった。
「セリルさんの勝手な判断とは何ですか?」
「ああ、それはね。ギルドの規則で昇格基準というのが決まっているの。それに達していないときは、何があっても合格にしては、いけない」
なるほど。確かにあの時は、初めて武器を持ってから剣を振り回していただけだった。そんな状態で魔物とかの戦闘を考えたら勝てるとは思えなかった。
「その基準を私が満たしていなかったからエレナさんが止めたという事なの?」
「そうなるわね。ユアが最初に来たときは、無理やり連れてこられていたからセリル達があなたを連れて訓練場に行ったときは、何かあるかもしれない。そう思ってそっと後をついて行ったからね?」
それは、エレナさんが気付いてくれて本当によかった……。と心の底からそう思った。
「それで、登録したという事だけど、これからどうするつもりなの? あの子達は、あなたを外で戦わせるようなことを言っていたから釘を刺して置いたけど、勝手に連れて行かれることも考えられるわ」
エレナさんにそう言われて私は、その事を考えていなかったことに気付いた。確かにそれは、大切な事だ。でも、どう対策をしたらいいのか分からない……。
「……エレナさん。何かいい方法ありませんか?」
そう聞くとエレナさんが苦笑いしていた。
「あなたがまだ幼い事を忘れていたわね。彼等よりもちゃんと受け応えするから普通に話していたね」
「そうですか?」
彼等よりちゃんと受け応えって……。とそんなことを思ったけど、彼等の会話をあまり聞いたことが無いないから分からなかった。まぁ、自分の事じゃないから気にしなくてもいいかな?
「そうだよ。まぁ、そんなことは、置いておいてあなたにできそうだと思うことを教えるわね?」
そう言われたので、私は、背筋を伸ばしてエレナさんの話に耳を傾けた。
「1つ目は、彼等と会わないように気を付けて生活すること。まぁ、これができていたらこんなことになっていなかったかもしれないから難しいと思う。
2つ目は、冒険者として活動することで彼等とは、会いにくくなると思うわ。今のあなたに出来る依頼もあるから探してみるといいかもしれないね。
3つ目は、ギルド側が行っている戦闘訓練に参加すること。これは、もし彼等に連れて行かれても自分の身ぐらい守ることができれば少しは、安全になるかもしれないわ。
その3つがあなたにできそうなことだと思うわ」
とエレナさんに言われたのだった。




