ユア視点5 過去5(2022/12/2)
それから道中たくさんの人に見られながら私は、引きずられていたがみんな一様に視線を逸らしていた。助けてほしいとは思ったけど、彼等が武器を持っていたから見てみぬ振りをされたのだろう。とそんなことを思いながら私はされるがままだった。
そうして彼等の動きが止まった場所は、とある建物だった。そのまま中に連れられて入るとたくさんの人がこちらを見ていた。その人達がみんな武器を持っていたことから冒険者が集まる所に連れて行かれたと言うことが分かった。けどどうして私がそんな所に連れて行かれたのかがわからない。
そんなことを思っているとカウンターの前に無理やり立たされてようやく腕拘束を解いてもらえた。引っ張られて腕が痛かったがカウンターの方を見るとそこには、10代半ばぐらいで茶色のセミロングヘアの女性が座っていた。
「えっと、今日は、どうなされたのですか?」
と私がカウンターの前に立たされているのと私を連れて来た人を見て困惑しながらそんなことを聞いて来た。
「こいつを冒険者登録しろ」
「え!?」
強引に連れられて冒険者にさせられようとしていることに私は、驚いたがそもそも私は、魔物を倒したことも無いしどう戦ってもいいかわからないのに冒険者にさせられたら大変なことになると思った。
受付の人は、オノマ達の様子と私の反応を見て少し戸惑いながらもこう言った。
「こちらの方は、驚いていますが本人の意志ですか?」
「ち、違います!」
と私は、受付の人が言ったように私の意志では、無いという事を伝えた。すると後ろから凄く不機嫌な気配を感じとり背筋に冷や汗を感じた。
「この子は、そう言っていますが?」
そうオノマ達に問いかけるとオノマ達は「ッチ」と舌打ちをして私の腕を強く握り締めて引っ張ってきた。
「きゃあ!?」
するとそのまま引き摺られていくと。
「あなた達何をしているの!」
と先ほどの受付の人がそう言ったが彼等はそれを無視して建物を出たのだった。
それからどこかの道の行き止まりまで連れて来られると腕を解放された。強く握られ過ぎたためか掴まれていた場所から指先まで全く感覚が無くてやや紫色に変色していた。引き摺られたところにも所々血が滲み出ていて痛い。
「お前、冒険者になれ!」
「む、無理です」
「いいからなれ! じゃなければ」
と言って剣を抜いて私に向けて来た。
「ヒィッ!」
「いう事を聞かないとこうするぞ?」
と言ってそのまま軽く頬を撫でられた。撫でられたところからは温かいものが流れているのを感じてハンカチで拭って恐る恐る確認すると手が真っ赤になっていた。それが分かると恐怖で手や足が小刻みに震えて止まらない。
「断ったらどうなるか分かったか?」
私は、何度も首を縦に振った。
「じゃあ、とにかく冒険者として登録しろ。いいなぁ?」
その言葉に何度か頷くと剣をしまってくれた。その事に少し安心しているとメンデスという女の人が何かを取り出した。
「『燃え上がれ、炎よ、集え』」
そう言うと20センチほどの火の球が私の目の前に現れた。どうして急に火の玉が現れたのか分からなくて後ずさりをするとメンデスがニヤニヤしながらこう言った。
「少しでも変な事したら魔法で焼くからね? こんな感じで」
と言ってまた何かを言った。
「『敵を焼き払え』ファイヤーボール」
そう言うとその火の球が私の顔に向かって飛んできたので咄嗟に腕で顔を守った。
「熱い!熱い!熱い!」
咄嗟に顔を守ったのは良かったが腕がとても熱くて痛かった。目を開けると自分の左手が燃えていた。とにかく火を消さないと! そう思い手を激しく振りながら右手に持っていたハンカチを燃えている左手を叩きながら必死に火を消そうと頑張っていると何とか日を消すことができたが腕は、焼け爛れて、手の平も赤くなっていた。右手も赤くなっていたが左腕がジンジンと痛みあまりの痛みに涙が止まらなかった。
「お、おい、メンデス少しやり過ぎだ」
「そんなの加減できるわけがないじゃない」
「はぁ~、それなら今のタイミングで使うな。こんなやつでも使えるから動きに支障がないくらいにしろよ。分かったか?」
「分かったわよ」
と彼等は、何かを話していたが腕の痛みで何を話しているかまでは、分からなかった。
「いくぞ!」
そう言ってオノマは、私の右手首を掴んだ。その瞬間腕に激しい痛みが走った。
「痛い! 痛い! 痛い!」
そう言うと頭を殴られ地面に倒れた。その衝撃で焼き爛れた腕が地面に触れてものすごい激痛が走った。どうしてこんなことに……。と思っていたらまた腕を掴まれて激痛が走った。
「耳元で叫ぶな! うるさい! そんなに痛いならさっさと歩きやがれ!」
そう言って今度は、背中を蹴られたが焼けた左腕の方が痛かった。するとまた腕を掴まれて無理やり立たされた。
「とっとと歩け!」
そう言って後ろから蹴られて転びそうになりながら歩き出した。すると他のメンバーが私を囲むようにして先ほど来た道を戻り始めたのだった。
道中腕が焼けて痛かったが服の袖を捲っていたため服は、燃えることなく済んだ。もし袖を下していたら腕だけでは済まなかったかも……。と思いゾッとした。
そんなことを思っているとオノマが「袖を下ろせ」と言ってきたので下したら腕に触れて痛かったが我慢しながら歩いた。




