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ある管理職のトラウマ

作者: 倉本保志

ジェネーレーションギャップというものは、いつの時代でもかならず付きまとうもので、気にしてしまった方が負け・・・?なのだと思います。とはいえ、やはりその間にある、壁というか、隙間というか、

これは、お互いに知りえることのできない、一種の寂しさのようなものなのでしょうか・・・

しかし、そう感じている年配方も、若かりし頃は、同じ事を言われて、来たはずで、古代ギリシャだか、ローマだか、その時代からずっとそれは言われて続けて(続いて)いるのです。そうやって言われ続けて、若者はあたらしい時代を創っていくのだと思います。

ある管理職のトラウマ


おれは、只野ひろし、35歳 とある、会社の営業職・課長になって3年になる。

昨年までいた部下が、2人揃って、辞職やめてしまい、今年4月から、新卒二人が、おれの部下になった。

最初は、お互い様子を、伺う感じもあり、いい意味での緊張感があった。

そのため、なんとか、こうやって過ごしてこれたのだが、最近なんだか、すこぶる体調がすぐれない。

そう、新卒二人の仕事ぶり、というか、会社での行動、ふるまいに、必要以上にストレスを感じてしまい、心身ともに参っているのだ。

上司のおれが、なんとも情けないことだ・・・こう思われるのも、いた仕方ない。

とは言え、おれも、部下を持つのは、初めてではないし、うちの課も、これまで、至って、順風満帆だった・・・というわけではないにせよ、今年のような・・・こんな(ひどい)ことは、まず、なかったはずなのだ。

これは、おれにとって、ある意味、ノルマなど、仕事のストレス以上に深刻かも知れない・・・

・・・・・・・・・・・

勿論、おれ自身 ジェネレーションギャップを認めないわけではない。

ある程度の、それは、会社という組織において、仕方のないことだと割り切ってはいるつもりだ。事実、若いころは、おれもそうだったし、彼らも、おれに対して何らかの、違和感は持ち得て当然のことだろう・・

・・・・・・

しかし・・・

それでも、やはり、 ・・・・、なにか違うのだ。

これは、世代の格差とか、ジェネレーションギャップとか、そういう次元の問題ではないような気が、おれにはしてならない。

なに・・? 客観性を持ち得ていないって・・・?

まあ、第3者の目からみると確かにそう映るだろう・・

いや、百聞は一見に如かず・・

実際にその現場の様子をうかがってほしい。

もはや、やつら・・いや、彼らの存在が、すごい重圧になって、おれの日常の生活を、酷く脅かし始めている この事実が、はたして、おれの主観的なエゴから生じているに過ぎぬのかどうかを・・・・しっかりと確認してほしいと思う・・・

・・・・・・・・・・

「ねね、マーくん、なぞなぞ 出すから、答えて・・」

「なぞなぞ?おれ、クイズ、とかチョー得意分野だから、任せて、まゆちゃん」

始業すぐだというのに、さっそく始めやがった。

だいたい、今は、休憩時間じゃないんだぞ、

小学校だって、授業中に、勝手になぞなぞを始めたら、先生に怒られるだろ・・?

それをなんだ・・・会社で、堂々と、なぞなぞ、なんか・・・

それに、マサル・・・

おまえ、なぞなぞを得意分野って・・? 子供じゃないんだぞ。

頭の中で、どんな、カテゴリー分けしてんだよ。

・・・・・・・・・・・

「じゃ、いくよ、問題」

「リスとトラが、会社を辞めさせられたよ、なんでだ?」

「なんだ、簡単じゃん、そんなの」

「そう・・?」

「答えは、・・・・・ええと・・ほら」

「リスとトラはバカだったから」

「ね、正解・・?」

くっ・・・・頭がいたい

バカだった・・・って、そんな答えのなぞなぞがあるか、普通 ・・?

あったとしたら 確実に、解答者を馬鹿にしてるだろ、それ

「ブブー」

・・・・・

ほらほら、ブザー音出すのはいいが、机に唾、まき散らしてるよ、

バカアマ・・・

「あ~残念、マーくん」

「リスとトラは、・・確かにお年寄りだけど、まだ、ボケてはいませんから」

こらこら、バカと老人性のボケをいっしょくたにするんじゃない

(まあ、でも・・・ そこは大目にみてやるか・・・)

「うーん、じゃ、社長の嫌がらせ・・?」

だから・・・これってなぞなぞ・・・

つまりは、子供向け、なんだろ・・?

正解は、社長の嫌がらせ・・・って、どんな、なぞなぞだ。

答えを聞いた子供は一体どんな顔をすればいいんだ? ええっ?

「ブブー」

・・・いいってそれは・・、汚いから・・

「正解は・・・ジャン」

判ってるよ、リストラ。さっさと答えて・・・・ 仕事しろ・・ボケッ

「えっ・・なに・・答え ・・?」

「えー、判んないの、マジやばいよ、マーくん」

・・・確かに、そこはおれも、同感だ・・

「えっ、だって、違うんでしょ、嫌がらせ・・?」

「違う、違う・・」

「えっじゃ、なに・・?」

「正解は・・・」

「・・・・・・・・・」

「トラウマ だから、でした。・・・イヒヒヒ」

・・・・・・

イヒヒヒ・・・じゃないよ、このバカ、まゆ○・・

違うだろ・・・

違うだろ、違うだろおおおおお~ 

・・・・・・・・・・

(イスを後ろから、おもいきり蹴飛ばしてやりたい・・・)

・・・・・・・・・   

「あ、なんだ・・・、そうか~」

「なるほどね~ トラウマかあ」

・・・・・・マサル

ふざけてんのか、きさま・・・

う~ん、めまいがしてきた。もうダメだ。

「あ、どうしたんすか?課長・・・?」

「いや、ちょっと」

「体調がすぐれんので、早退するわ・・・」

「えっマジで・・? 課長さん、始業早々・・」

お前が言うな・・・このっ

全部、お前らのせいなんだよ、バカたれどもが・・・

「すまん・・・・あと頼むわ」

 そう言っておれは、即座に会社を後にした。

・・・・・・・・・・・

3日後、おれは会社に戻った。

そこには、普段滅多に姿を見せない社長と、例のあの2人が、おれを待ち構えるようにそこに居た。おれは、二人には目もくれず、社長に頭を下げた。

「・・・・社長」

「どうも、ご迷惑おかけしてすみません・・・」

「すっかり良くなったので、また今日から」

「あ、課長、もういいすから、」

(はあ、なんだマサル・・?)

「トラウマっす」

「・・・・・・はい・・?」

「だから、トラウマっす、課長」

「・・・・・・・・・」

「クビだよ 君は・・・只野君」

そう言って、社長が、静かにおれの肩を、ポンとたたいた。

「君が、こんなに無責任だったとは、知らなかったよ」

「酷いもんだ、まったく、仕事ほったらかして新卒二人にまる投げなんて・・」

「えっ・・いやその・・・」

(それは・・・・つまりは、こいつらが・・・)

「・・・・・・」

おれは、返す言葉が見つからなかった。

確かに、何の支持も出さずに、3日も会社 すっぽかしたのは、大人げない。

今思えば冷静さに欠けていた。大いに反省している。

だけど、

だけど、クビを宣告されるのは、課長の、このおれじゃなくって・・

こいつらのはずだ。

このふたりのはずなんだ。

「社長、お言葉を返すようで申し訳ありませんが、今まで頑張ってきたこのおれ・・いや、わたくしが、クビだなんて」

「それに・・・これから、どうやって、この課をやっていくんですか?」

「ああ、そのことなら、問題ない」

・・・・・・

「えっ・・・?」

「この、勝野くんに引き継いでもらうから」

・・・・・・・

「マサルが・・・うそでしょ・・?」

おれは、耳を疑った。マサルがこの課を引き継ぐって・・?  ばかな・・

「社長・・・ご冗談を・・」

「冗談なもんかね、彼は、君のいない間に、新規の大口契約を、3件も取ってきたんだから」

「えっ・・・?」

(うそ・・・・)

「ほんとっす 課長・・いや、元カチョ」

(元カノみたいに言うんじゃない、このバカっ・・・)

「というわけだ。只野くん、じゃ、そういうことで・・・」

そう言って社長は、そそくさと部屋を、出て行ってしまった。

・・・・・・・・・・・・

残された3人の間には、なんとも、言えないおかしな空気が漂っている。

・・・・・・・・・・

信じられない、リストラと、トラウマの区別もつかないこの男が、おれの代りを・・? この営業課の課長をだと・・・?

おれは、茫然と立ち尽くしていた。

一区切りついた後、二人は、机に、向かった。そう、まるでおれを無視したかたちで・・・

・・・・・・・・・・・

オレは、全身が目になったような気持ちで、彼らを見入っていた。

そう、まるでその眼は、もののけに取りつかれたように血走っていて、必死の思いで何かを探しているようでもあった。

頼む、なにか、少しでもいい、おれがいた時と、あのときとは、違う・・・そんな、そんな二人であってくれ・・

そして、実は、そっちの方が、この二人のあばかれた本性なのだと・・・

なにか、おれが、この悲惨な、状況・現実を、自ら納得できる、ほんのわずかな、心の礎を、これから、生きていく、心の支えを、ほんの少しでいいから、今、このおれの目前で、垣間見せてくれ・・・

・・・・・・・・・・

「じゃ、マーくん、じゃなかった、課長・・クイズ出すね」

「おお、任せとけ、クイズはおれの得意ジャンルなんだ」

・・・・・・・・・・・

これからの人生、クイズがトラウマになることは、避けようのない事実だと、このときおれは、はっきりと確信いていた。


             おわり






昔の時代の、悪しき伝承などはやく捨て去ってしまいましょう。古き伝統などと美化されているものなかには、荒唐無稽なものがあったり、そのことで利を得ているものにっとての絶好の口実になっている場合も、ひょっとしたらあるのかもしれません。忖度はいけません。するほうもされるほうも、だいたい、国のトップがあんな調子なのですから、当然それを真似たり、正しいことと、見当違いをしているスポーツ界の重鎮、魑魅魍魎のたぐいがいるのは、これは、致し方のないことなのかもしれません。そういった狐狸どもは、素直に自分の偽を認めて、正しき道に軌道修正するべきです。開き直ってはいけません、それを許してもいけません・・・と倉本はそう思います。

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