(8) 仲直りをした
「えー、でルーナさん、さっきの質問は何だったの?」
教卓に戻ったセスレイが場を改めてルーナに発言権を渡した。
「あ、そうでしたわ。校内マップなら端末に入っていますし、位置情報を有効にすれば自分の居場所も分かるので案内は要らないのではないでしょうか?」
ルーナはそう言いながら端末を操作し、校内マップをセスレイに見せる。
言われてみれば不思議な事だ。ハンバーグを作るのも食べるのも好きな人にハンバーグの材料を教える感じ。
「それは、学長の意志なの。その時間でクラスメイトが少しでも仲良くなるように、ってね。まぁ、入学初日から喧嘩した貴女たちには関係ないのかもしれないけれど」
「なんでッスか?自分らはもうどうしようもないぐらい仲悪いって言いたいッスか?」
トトがチラッと後ろを見たがその目には罪悪感が残っている気がした。
「いや、逆だろ。ほんとにお前は馬鹿だな」
「喧嘩する程仲がいい。昔のことわざ」
「私とトトさんのことを言いたいんですの?」
ルーナもトトをチラッとみてから視線を落としてしまった。
「お互い、さっきの事はもう怒ってない」
「......アルダって凄いッスね。確かに自分はもう怒ってないッス、価値観は人それぞれだと思うッス」
「私もその考えには賛成ですわ......トトさん、先程は言い過ぎましたわ。ごめんなさい」
「こっちこそ売り言葉に買い言葉で応戦してごめんッス」
仲直り。それは二人の仲がより一層深まったように見えた。私と主は喧嘩したことなかったから、当然仲直りもしたことはない。
でもいつか喧嘩できるほど仲良くなってちゃんと仲直りもしてみたい。
「なんか雑談が長くなったようだけど、そろそろ本題に移っていいかしら?」
さっきから主導権を奪われっ放しのセスレイが興味なさそうな顔でそう言った。
「今から本当に説明しに行くから端末だけ持って、あとは置いていっていいわよ」
「トト、特にお前は絶対端末忘れんなよ?それと無くすなよ?」
「フィラン、それはフラグって言う」
「端末を持ってないとセキュリティが働き、中に入れなくなりますものね」
ルーナが言った通り、この学校には高度なセキュリティシステムが搭載されていて6-10の生徒なら6-10専用の端末を持ってないとこの自動ドアは開かない、つまり中に入れない仕組みになっている。
ちなみに学校指定の端末を持っていない場合、生徒でも学長に許可を貰わないと敷地内にすら入れない
「大丈夫ッス!自分を信じろッス!」
何で更にフラグを建てたんだろう?