(3) 学園に行く
入学当日、私が家を出る直前に主が私に抱きついてきた。
「忘れ物ない?お金は足りる?いじめとかあったらすぐ帰ってくるのよ?それで帰ってきたら最後まで養ってあげるから、無理しないでね。」
「ちょ、先輩、愛が重いです。アルダさん真顔ですよ」
「元々そういう創りになってるの!アルダ、行かないでぇ!」
「先輩、アルダさんの服が濡れるので泣かないでください。迷惑です」
おまけに主は今、泣いているらしい。
「5年後に帰ってくるから大丈夫」
かつて主がそうしてくれたように私は主の頭をポンポン、とする。
「うえぇぇぁぁぁん、やだやだやだぁぁ行っちゃやだ、一緒にいてアルダァァ!」
逆効果だったようだ。
「先輩、いい加減にしてください!早くしないとアルダさんが遅れます!」
そう言って主の後輩のカルマシャが主を私から引き剥がす。
「カルマシャ、ありがとう。」
「大丈夫です。それより早く行ってください、これ以上この暴れ馬を抑えるのはきついので」
「分かった。主、カルマシャ、行ってくる。今までありがとう」
「こちらこそありがとうございました」
「......いってらっしゃい」
「うん。」
出発予定時刻は10分程過ぎたが、まだ余裕がある時間。のんびり行こう。
そして私は電車を乗り継ぎ、学校に着いた。
その学校はコロッセオみたいな形をしていた。
いや、形だけじゃない。色や大きさもそれそっくりだった。
その美しいフォルムに思わず見とれてしまう。
「......いけない、ここにいると確実に遅れる。」
私は四角い端末でできている生徒手帳というものを事前に主から受け取っていた。それの個人ページを見て教室を確認する。教室は6-10。それぞれの数字は6は階層、10は入学した月と表されるらしい。
校内マップを開き、6-10に向かう
ちなみに最終学年は2。1は職員室で卒業出来なかった人がプラスで3年も勉強する......らしい。
これは主が教えてくれたのだが主は時々嘘をつくからあくまでも「らしい」だ。
6-10に到着して自動ドアが開く。
「こんにちは、アルダさんね。席は窓側、後ろの方よ」
校内マップを見ていて俯き加減だった私は、声のした方向へ顔を向ける。
「私はセスレイ、あなたの担任よ。よろしく」
そこにいたのは窓に軽く寄り掛かってる真面目そうなお姉さんだった。