波乱万丈Ⅶ
一応は合っている。
事実は氷華やシャーリーは亮人自身に憑りついているもとい、ご執心なのだがそれが仇となって二人を怒らせるわけにはいかない。
シャーリーの場合はもっとも危ないかもしれないから。
そんな俺の忠告を聞いた礼火はキョロキョロと周りを見渡して、頭を縦へとコクコクと頷かせた。
これで礼火は安全に一歩近づいたかな?
そんな思いで口を塞いでいた手を退けて、礼火を見ると、
『お兄ちゃん……今のはどういう事なのかなぁ……シャーリーに説明して貰わないとダメだと思うんだよね……』
『亮人……私も流石にさっきは途中で中断されたからムカついてるんだよね……その女の子を私に渡して? そうすれば、さっきの続きが出来るから……』
「――――ひっ!」
「いきなりどうしたの、亮人? そんな怯えた顔して」
礼火が座っているソファの後ろ、そこには人より少し長い牙を礼火に向けているシャーリーと手を氷の鉤爪にして振りかぶっている氷華がいた。
だから亮人は驚いて恐怖を抱いた。
礼火が家にいると、礼火自身が危ない目に遭う……どうにかしないと……。
「なんでもないっ、なんでもないっ。もう晩ご飯は食べてきたの? 食べてきたならお風呂沸かしてあげるから、先に入って来てくれるかな?」
「うん、もう晩ご飯は食べてきたからお風呂に入らせて貰うね」
『『ジ―――』』
うん、怖いね……あんなに怖い二人は初めて見たよ。怖すぎて泣きたくなってきた……。
上から見下ろすように睨んでいる氷華とシャーリーは、尋常じゃない殺気を礼火へと向けながら二階へと戻って行く。
二人が二階に上がって行ったのをチラリと確認すれば、安息の溜息をついてソファに体重をドッと預ける。
「礼火……本当に大変なときに来ちゃったね……頑張って生きて欲しい……」
「ねぇ……そんな不安になるようなこと言われると凄く怖いんだけど……」
亮人は氷華が入った水のお風呂を沸かして、すぐにでも礼火が入れるようにする。礼火にもっとも安全と言えるのは、お風呂とトイレだけかもしれない。
だから亮人は急いでお風呂を沸かして礼火を風呂場へと連れていき、バスタオルを渡して出て行った。
「もう……死にそうだよ、俺……」
溜息と一緒に出てきて言葉は亮人の本心。このままの状態が続くようであれば、亮人はおそらく倒れる。何もないところで足を躓いて倒れて意識を失うかもしれない。
なんとなく自分でもそう思えてならない亮人はお風呂場の前から歩き出し、キッチンで作りかけの料理を急いで作って氷華たちに食べてもらう。
『『………………………』』
食事中は非常に静かだった。
普段の氷華なら亮人に料理の感想を言ったり、今日の学校で何があったのかなどを聞いて来るのに、今日はそういったことがない。非常に静かすぎる食事にお風呂場から聞こえてくるシャワーの音。それが妙に耳障りに感じてしまう亮人。