異世界進行系・共通① 帰れないなら私死にます
―――ああ、なんだかとても眠い。
「ここ、どこだろう?」
私は自分の部屋のベッドでうとうとしていたのに、目が覚めたら私がいたのはベッドじゃなかった。
起き上がってあたりを見回しても、部屋は真っ暗。
とりあえずはカーペットの柔らかな感触がある。
「デスロックハート王国の城へようこそ!!」
いきなり明かりがパッと着いて、私は無数のスポットライトに照らされた。
「え!?」
ここはどこかの国のお城!?
「あの……ここどこなんですか?」
「だから、デスロックハート王国の城」
「なんで私ここに?」
「喚んだから」
どういうわけか、私は見知らぬ不思議な世界によばれてしまったらしい。
これは夢だきっと…はやく覚めて…。
「この国は今、深刻なまでに死にたがる者でいっぱいなんだ。そして君は、それを食い止めるべく、現れた奇跡の女神なんだ」
王冠をつけた青い目の青年が食い下がる。
「帰りたい!!帰してくれないなら私死にます!」
「どえええ!?困るよそれ!」
とにかく帰りたい自分以外の人間嫌い外嫌い。
いっそ殺して――――。
「はやまっちゃだめだ!命を粗末にするなー!」
「近づかないで!!ぎゃあああ」
◆◆◆◆
「なんだ夢か」
気がつけば私は普通に部屋にいた。
さっきの人、冠つけてたから多分王子だよね。
ずいぶんリアルな夢だったけど、王子様なんて夢の中で夢見すぎ。
今何時かと思っていたらコンコン、と軽くドアがノックされた。
「苹果<ひょうか>、飯できたってさ……」
「わかった今いくね苹義<ひょうぎ>お兄ちゃん」
兄が呼びにきたのでさっそく部屋を出た。
「今日の夕飯は煮込みハンバーグよ」
「わーやった~」
煮込みハンバーグは普通のハンバーグより二倍美味しそうな気がする。
「……お前、肉ばっか食わないでジャガイモも食べろ」
「えーパサパサしてて嫌いなんだよねー」
ニンジンやピーマンが嫌いな人は多いが、ジャガイモ嫌いは珍しいとよく言われる。
まあ嫌いといってもポテチは好きだし、こういう太めの皮つきポテトが―――
◆◆◆
「ああよく食べたなあ」
だるいなあと思いながらソファでうとうとする。
「やあ、一時はどうなることかと思ったよ」
「……貴方は王子様ですか?」
「そうだよ」
夢の続きを見るなんて珍しい事もあるんだなあ。
「君があちらにいる間、こちらの人間は1000死んだ」
「なんでそんなことに……」
「あるとき違う国の悪い神様がこの国の女神様に恋をしたんだ。でもフラれて腹いせに毎日この国の人間が自殺する呪いをかけて、それからもう200年になるよ」
「超しつこいですね」
私は戦えないが、そんな酷い話をきいて見捨てるわけにはいかないと思った。
だってこれは夢なんだから、見捨てようが見捨てまいが変わらない筈だ。