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Relife

作者: 後期高齢者

どうも、後期高齢者と言います。

小説初作品です。ミステリーやホラー系が書きたくて、本日はこの場を借りて書かせて頂きました。


これと言って突出した語彙力や小説スキルは持ち合わせていません。ただの小説家の卵ーというより、まだ体の中です。


興味がありましたら、今後ともよろしくお願いします。


第1章 刺殺編


第1話 終わりと始まり



「……お、俺はここで殺される…のか?

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁああ!!」

…グサッ!グチュ……っぷ…


!!! 

「夢っ!!?」額と背中から猛烈な汗が滲み出ていることと、ここが夢から覚めた現実であることを確認した。

「一体、あの夢はなっだったんだ?」自分自身が夢の中で、あんなにリアルに殺されたのは初めての経験だった。得体の知れないナニカに圧倒的恐怖の中で…自分が殺される場面を経験したのは、初めてだった。始めてだった…。

 

「おーい、優人?朝だよー!何時だと思ってんの!遅刻するよ?」朝から大きな声を張り上げて俺を呼ぶのは母親だ。つい1ヶ月前、夫…つまり俺の父は交通事故で亡くなり、その関係で今は母方の実家でお世話になっている。

不意に時計を見ると7時30分を指していた。

「やっべ!!早く行かなきゃ!!」



 5月より俺は県立各原高校に転校し、今は友達も出来、充実した毎日を送っている。平凡な、ありふれた、ごくごく普通の一高校生で、背丈も顔も体格もこれといって突出したところのないという印象を持たれている。これが俺だ。

不意に、父との思い出などを思い出すと今でも悲しくなるが、そんな思いも友達といれば少しの間だけ落ち着いた。落ち着かせられることができた。

 

「おーっす、宮間!」

「珍しく遅いじゃん。」

友達の鳥谷新矢と丸山典秀が教室に入った俺に元気よく声を掛けてくれた。


「みんなおはよう。昨日人狼ゲームを調べてたら寝るのが遅くなって寝坊したわ。」そう言って、焦って走って来たおかげで切らした息を戻す。

 この学校では前から人狼ゲームというゲームが流行っている。何人かの村人中から紛れ込んだ狼を探し当てるゲームである。昼のターンと夜のターンがあり、昼のターンで狼に一番怪しい人を選び処刑。間違っていれば狼はまだ生きているので、夜のターンで人間1人を食い殺す。村人の全滅か狼の全滅で勝敗が決する。言葉や様々な情報が真実とは限らない騙し合い。これは、かなり人間不信になりやすいゲームであるだろう。

 いつもの恒例として俺は昼から友達と人狼ゲームをする約束をしていて、最近の楽しみでもある。


「えー、ここはxが1となるから代入すると…」などという数学教師の子守唄ならぬ子守授業を聞きながら休み時間を待った。放課後までの憂鬱で退屈な時間を、先生の声を子守唄代わりに時間を過ごした。


キーンコーンカーンコーン…

「よしみんな集まろうぜ!」

学校のチャイムが鳴ると同時に鳥谷が威勢良く俺を誘った。席が教室の最前列の1番右から、その列の1番後ろに座る俺の席まで身を走らせて来た。


「今日も人狼ゲームや!みんな誘ってやろうぜ、いつもの場所で。また宮間をカモってやるよ!」

「ちょっ…それは勘弁してよー。」鳥谷は俺をカモる気マンマンである。


「みんな誘って屋上行こう。」


そう言って俺と鳥谷は、人狼ゲームのいつものメンバーである丸山、岩木京介、村沢研吾、岡 祥平の4人を交えて屋上で人狼ゲームを、いつもと同じ場所でいつもと同じように屋上で遊ぼうとした。


 屋上に向かう階段で、先程まで足音以外何も聞こえなかった場所なのに、何故か気づくと外で水の音がする。

 鳥谷と丸山が真っ先に屋上のドアへ駆け寄り、ノブを捻る。


「あれ?さっきまで曇ってたけど、雨降ってきたよ…。」

「え?予定では今日は一日中曇りだったはずだったのだけれど。」

 

鳥谷が開けた屋上のドアの向こうには大粒の雨が垣間見えた。丸山は雨が降らないと踏んでいたが予報は外れ、顏を歪ます。

 

「屋上では出来ないな。どこかに別の場所は無いかなあ。」岩木が切り出す。


「あ!そう言えば今は使われていない空き教室無かった?3階の1番東の教室!」

「あそこなら多分誰にも邪魔されずにできるんじゃね?ウヒョォォ!」

村沢が記憶を探り、遊べる場所を提案した、

岡は飛び跳ねながら騒ぎ出す。


 ガラガラッ!!勢いよく岡が教室の戸を開ける。

 今使われていない教室には、やはり何もなく、本当に何もなく…。他の教室の生徒たちの笑い声や、体育館から部活の練習をしている気合の入った声が聞こえるだけで、本当に何も無かった。強いて言えば黒板があるくらいで机もイスも無かった。物置になっていると想像していたものが、その想像と全く逆であった。


「な、何だ?何もねぇじゃねぇか。物置にすらされてない教室?」と鳥谷が少し嘲笑したような、口調で切り出す。


「先生が前に、学校の生徒数の関係で空き教室が出たって聞いたことあるよ。」

「ま、まあとりあえず場所も出来たことやし、ここで遊ぼう。ウヒョォォ!」

丸山が先生の言っていた事を思い出した。そして岡は、いち早く教室に入って場所を確保した。


こうしてようやく、人狼ゲームが今日も始まった。


 俺は、どうもこのゲームが上手くなれない。このゲームに上手い下手があるのかは分からないけれど、とにかくバレる。場所が変わろうと、天候が変わろうと、何故か俺が狼になるとすぐバレる。


「宮間はホッント嘘が下手くそだよなあ!」

「そうそう!問い詰められるとすぐ目が泳ぐし詰まるよな!あはははは」

鳥谷と岩木が俺を煽る。


 俺は嘘が下手くそで、すぐ顔に表れてしまうタイプ。典型的なカモである。狼の役は、どうも自分には努めようとしても勤められそうにもなく、案の定務められず…結構場数は踏んできたが、この癖はどうも拭いきれない。


 最終戦、俺は村人役となり懸命に狼を探す。皆は嘘が上手い。経験しているということもあるだろうが、俺が人間不信になりかけるくらい嘘をつくのが上手い。


しかし、今回俺は大手柄を挙げた。

それは、鳥谷が狼であったことを俺が暴いたのだ。多分暴けたのは、片手で数えられる程度である。しかし今回で記録を伸ばした。


「やった!鳥谷が狼!!」

「クッソ!絶対バレない自身あったのに。」鳥谷は拳を地面に打ち付ける。


「最初全然分かんなかったなぁ。このゲームやると本当に人間不信になるよ。」と冗談交じりにニヤけ顏を隠しながら俺は話した。


「岩木が怪しいと思っていたのだけれど…無駄に村人を処刑してしまった。」と丸山が掛けているメガネの真ん中を右手の中指で押し上げる優等生ポーズを取っていた。丸山は分析力が強く、たぶん1番狼を当てている。


「いやー、何で俺が最初に処刑されたの!!??」と意気揚々、皆に問うているのは岩木。岩木は嘘をつくのがやたらとうまい。岩木が狼の時は、狼側が勝つことが多かった。


「もっとちゃんと詮索しろよ!」

「すまん、てっきり最初に岩木だと思い込んでたわ。クゥゥゥ!」村沢と岡が何やら、学校のテストが返されたときに、お互い文句を言っているような…そんな光景が見られた。2人とも経験豊富で俺では到底俺は敵わない。


そんなこんなで18時。最終下校時刻となってしまった。チャイムと同時に今日の遊びはお開きとなった。


「まさか、お前に当てられるとはなあ」

「鳥谷の癖は少し見えてきたかも!」

「は、どこ?癖なんかあるか?俺。」

「まぁ鳥谷の寝癖の他にも多々癖はあるよ。」

鳥谷が問い詰められた時に眉毛を動かす癖を発見した事は話さないようにはぐらかした。


鳥谷は相当悔しかったらしく、帰り道別れるまで何やらブツブツと言っていた。


ーそしてー


鳥谷とは途中で方向が違うので、手を振って別れを言った。別れを…言った。

 

 今日も楽しかった。

こんな毎日が続くと思っていた。思い込んでいた。続くと思っていたというより、何か異常で尋常のない事態が起きることは全く思っても見なかった。当たり前のことは当たり前のように過ぎていくと…思っていた。


次の日、当たり前は当たり前では無くなった。

 

鳥谷は学校に来なかった。


昼休み、先生より鳥谷が誰かに殺された事がクラスの皆に伝えられた。


俺の背筋は

凍るようで

痺れるようで

全神経がその情報に激しく反応した



ーこれより、2年3組の事態は動き出すー



第2話 生者と死者




 5月15日の夜、鳥谷は殺されたらしい。

担任の狭間(はざま) 明良(あきら)先生によると、学校の東側に位置する小さな山の麓の木に刃物で刺し付けられていたという。無数の刃物が、体が木に貼りつくように刺されていたらしい。


 昨日、俺は18時半頃に鳥谷と別れた事を覚えている。そこからは連絡を取ってないし、会ってもいない。


鳥谷が殺されてしまったと言う事実を受け入れた時、全く感じた事のない恐怖感に体が反射して縮こまる。死んでしまったことはもちろん悲しくて辛い気持ちだ。しかし、それを押しのけて正面で居座る恐怖感が尋常ではなかった。


 警察が朝から事件の解明に奔走しているが全く手がかりが見つかっていないと言う。

 俺は昨日最後に別れた友人として、警察から事情聴取を受けた。普段と何も変わらなかった鳥谷。この後殺される被害者の顏では無かったと話した。


 昨日、俺の祖父母はツアー旅行で信州の方に出向いてる。母は夜遅くまで仕事から帰っていなかった事もあり、ひとりでご飯を食べ、そして寝た。そんな事も警察に話しをした。


「鳥谷…お前の身に何が起きたんだよ…」

震えて掠れた声が口から漏れる。


5月17日


 俺は昨日、結局一睡もできず朝を迎えた。

学校へ行くと数台の警察車両が駐車されている事に気付いた。

 

 てっきり一昨日の鳥谷の事件で来ているのだろうと思いつつ教室に向かった。


「何か慌ただしいな。」


俺のクラス2年3組周辺に人が集っている。

すぐさま駆け出し、教室の前で立ち止まった。


すると数人の女の子が蹲って泣いている。

その1人は俺の左隣の席の綾瀬さんだ。


「綾瀬さん、どうしたの?何か…あった?」

恐る恐る聞いてみる。


「真由子が…真由子が…っっ」

明るい茶髪の髪を上げ、黒くて大きな瞳をこちらに向ける。瞳からは大粒の涙が溢れていた。

 いつもの綾瀬 唯は意地っ張りで高飛車な感じの可愛らしい女の子だが、今は細い体を丸めて泣いている。


「えっ?藤田さんが、どうしたの?」


……


「真由子を迎えに行ったら、居なくて…。鍵が開いてたから部屋に入ったら…血だらけの真由子が…刺されて…倒れていたのっ。」


!!!!

声にならなかった。

またこのクラスで、しかも2夜連続で死人が出た。

ありえない。

どう考えても、このクラスを狙った殺人。

明らかに常軌を逸していた。



「ちょっと皆んな!!聞いてくれるか??」

ざわついた周囲を一瞬で静寂にしたのはクラス委員の柴原達也だった。


「混乱している状況である事は分かっている!でも、そんな時こそ落ち着いて席に着いて聞いてくれ!!」


少々ざわつきながらも皆席につく。


「このクラスで2夜連続で、殺人事件の被害者が出てしまった。原因も理由も証拠も全く分からないが、このクラスを狙った殺人では無いかと僕は思う!! もしかしたら皆も狙われるかもしれない。もし何か、少しでも何かあれば、僕や狭間先生に相談してくれ。クラス委員として、皆をサポートしたい。」

 

「やだよ…やだよ…こんなの。何で急に…?」

今にも消えて無くなりそうな声を絞り出したのは榊原 真由子の幼馴染だった赤沢 舞だ。


言うまでもない。いきなり、何の前暮れもなく2人のクラスメイトが殺害され、この後も誰かが殺されるのではないかと言う不安と恐怖感に苛まれてしまうなんて。


「皆、ちょっといいか?」

ここで切り出してきたのは教室の左端の1番後ろの席に座る田辺 公也だった。髪は長めで、アイロンをかけたストレートの前髪。制服はだらしなく着こなされた男だ。ちなみに俺とはあまり釣り合わないタイプである。


「俺、聞いたことあるんだけどさ。俺のオヤジは元ここの高校に通ってたらしいんだ。何年前かは知らねぇけど、その時事件があったらしいんだ。」


「じ…事件ってどんな事件だったんだ?」と柴原が問う。


「一昨日と昨日遭った事件だよ。殺人事件。俺のオヤジは鳥谷が死んじまった事を俺が伝えたら、真っ先にこの過去を話したんだ。クラスの皆が1人ずつ殺されていった事。俺はもちろん9割くらい関係無ぇ話だとは思ったが、榊原が殺された事で俺の中で信憑性が増したんだ。」


「ってことは、今回の連続殺人と何か重なる部分があるってこと…だよね?」柴原は再度問う。


「あぁ。不定期だが、これからも殺される…と思う。このクラスの誰かが…1人ずつ…な。」


!!!!!!


クラス全体がどよめく。

奇声をあげて泣き出す女子も居た。


「み、皆静かに聞いてくれ!!貴重な情報なんだ!!今後のこのクラスの明暗を左右するんだ。」必死に柴原は沈めようとする。



「っでだ!!!!俺はこの情報を頼りに仮説というか、予想を立ててみた。」

いきなり大声を挙げた田辺にびっくりして教室は再び静寂と化す。


「俺のオヤジの年でも人狼ゲームが流行っていたらしい。そして、クラスで被害者が出始めた。なぜかは分からない。多分現象なのかもしれない。俺は今回の事件と状況がほぼ同じだと思ったんだよ。だから、今後このクラスで被害者は増えていく。そんな仮説だ。」


ぐっと唾を飲み込む。

教室の空気が凍る。

俺は心臓が握りつぶされるような感覚に襲われた。


「そ、そんな事が…。お、オヤジさん達の代では具体的に何があったか聞いたのか?」柴原は躊躇しながらも三度質問する。


「その時は、犯人が分からないままどんどんクラスの皆が殺されていったらしい。警察も証拠が掴めない。完全にお手上げだったという。そんな時、クラスメイトが言ったらしいんだ。」


「な、何って?」


「これはリアルの人狼ゲームなんじゃないかって。最初は信じなかった。信じたくなかったらしい。でも明らかにクラスの一人ひとりが確実に減らされていったんだ。人狼ゲームを毎日のようにやってたオヤジ達は、その考えに辿り着いたらしい。」


「他の原因は考えなかったのか?」


「それしか考えられなかったらしい。そしてある日、クラス会議が行われた。クラスに紛れ込む人狼を見つけ出そうとした。もちろんゲームマスターや、占い師などそんな者は居ない。クラスの人間か人狼しかいない。そして会議では、話し合いが行われ、後に投票が行われた。投票で1番多かった人を処刑。票が割れたらその割れた者と再投票。これで人狼を見つけたって聞いた。オヤジの話し方じゃあ、何回か人狼を探し当てられなかったようだった。謂わゆる無駄にクラスの何人かを犠牲にしたってことだ。」


教室の空気が更に冷たくなる。


「ということは、今回僕たちが直面している事件をリアル人狼ゲームとして、人狼を見つけ処刑すれば被害は食い止められるってことになるよな。」


「そうなのかもしれねえ。だから早急に手を打たねえと、このクラス全員居なくなっちまうんだよ!!」田辺は焦って話す。


「縁起でもないことをいわないでくれ!」

「やだよ、もう嫌だ、殺されたくないぃぃぃ」

柴原の怒声と女の子の叫声が重なる。


もし田辺の言う『リアル人狼ゲーム』がこのクラスで始まったとすれば、人狼はこのクラスの誰かを今後殺し続けることになる。


人間の皮を被った狼は…誰なんだ…



放課後、柴原はクラス会議を行うことにした。これ以上死人を増やさない為にも。


そして人狼を探すリアルゲームが始まった。





第3話

疑心と不信



「では、これよりクラス会議を始めます。司会を務めさせて頂きますのは私、柴原達也です。よろしくお願いします。」


 6月17日、放課後クラス会議が遂に行われた。クラス委員の柴原と、この会議の立案者田辺公也を筆頭に、人狼探しが始まった。


「皆さんご存知の通り、6月15日の夜に鳥谷新矢くん、そして6月16日の夜に榊原真由子さんが何者かによって殺害されました。死因は2人とも刃物に刺されたことによる出血死だったそうです。担任の狭間先生より教えていただきました。」柴原がそう言って、張り詰めた空気をより一層強張らせた。


「俺がさっき言った通り、そしてオヤジ達の代と同じ現象だった場合このクラスに人狼が紛れ込んでいる!!! 」田辺の怒声が教室中に響き渡ると共に一斉にクラスがどよめく。


「人狼か何か分かんないけど、犯人なら出て来なさいよぉ!!!」


「本当にこのクラスに人を殺す人なんているのか?」


「殺されるのは嫌ぁぁぁぁぁあ!!」


「2人を殺した奴が居るなら出て来てくれ!」




皆、混乱し騒ぎ出す。


このクラスに人狼はいるのか。


次は誰が殺されるのか。


そんな考えが、俺たちの心を蝕む。

そしてそれは、人間不審へと変わっていく。


「み、皆!!!落ち着いてくれ! 会議が進まないんだ!! 今日このクラス会議が行われる本来の目的は人狼探しなんだ!!皆のアリバイを聞きたい。」


「昨日、一昨日とアリバイがあれば、多分そいつは人狼じゃねえ。ここで人狼を見つけるには怪しい奴を洗い出すしかねえんだ!!」


柴原と田辺は必死でクラスの混乱を立て直した。


「皆! 昨日と一昨日の夜は何をしていた?そしてそれを知っている人は居るか?この2つの質問に、答えてもらう。嘘はダメだ、このクラスの犠牲者を増やすだけになる。」

柴原は深刻な面持ちで話す。


田辺は直ぐに始めた。


「じゃあ、1人ずつ言ってって貰おうか。赤沢、お前から頼む。」


「えっ!!私から?」


「あぁ。席が右側の1番前だからな。」


(鳥谷の後ろの席だったが、今は鳥谷の死亡により赤沢 舞が1番前だった。)


「私は一昨日15日の夜は親と外食に行っていたの。回転寿司。家の近くだったし、両親と20時くらいまで居たかな。その後は家に帰って、唯と電話して23時くらいには寝ました。昨日は中学の友達と放課後待ち合わせをしていて、近くのショッピングモールで服を買って、フードコートでご飯を食べて帰宅しました。22時頃までドラマを見て、その後寝ました。私は以上です。」


「なるほど、赤沢さんは榊原さんと親友だったと聞いてるけれど、異変とかは無かったんだよね?」柴原がメモを取りながら聞く。


「うん、真由子とは幼馴染で、ずっと一緒だった。お互いよく知っているし、昨日も何も異変は無かった…。絶対…殺されるような人じゃないの!!!」

必死に抑えていた悲しみが露わになる。


「そうか。榊原さんと最後に話したのはいつ?」


「私は、さっきの予定があったらか、帰りのホームルームが終わって、バイバイって挨拶したのが…最後…。」


「ありがとう。では、次の人話して下さい。」


…………………


柴原と田辺そして、一人ひとりアリバイを話していく。


本当にこの中に人狼は居るの?


そんな一抹の不安が残ったまま、俺が話す順番となった。



「では次は宮間くん、お願いします。」


「はい。俺は一昨日18時くらいまで、空き教室で人狼ゲームをしていたんだ。鳥谷とは帰る方向が途中まで一緒だったから18時半くらいに、別れたと思う。 家に帰って…!??」


 ちょっと待ってくれ。俺が昨日帰った時、祖父母はツアー旅行、母はいつ帰ってきたか分からないくらい遅い時間に仕事から帰宅した。つまり俺が家に居たというアリバイが立証されない。しかし、俺は外には一昨日出ていない。昨日もだ。鳥谷の事件で心に余裕がなく、帰って直ぐにベットに横になった。


…無理だ。誰にも会っていない。俺が家に帰って来ていたという事実を話せる人が…居ない…


どうする、どうする、考えろ……


「おい、どうした。家に帰ってから、お前はどうしたんだ?」田辺が問い詰める。


「お、俺は一昨日19時前に帰って寝た。昨日は鳥谷の事件があって、ベットでずっと横になっていた。」


「それを立証できるのは誰か居るか?」


「一昨日は祖父母がツアー旅行に行ってて、母は俺が知らないうちに家に帰って来ていた。祖父母は3泊4日だから帰って来ていないし、母も仕事だった。立証が…できない…」


どよめき始める。…疑いのどよめきが。


「おい、立証出来なかったら、その話が嘘にしか聞こえないんだけど? 誰も昨日と一昨日の放課後から次の日学校に来るまで、お前の消息は分からないんだよ。」


「違う!!俺は本当に家に居たんだ!!鳥谷を殺す訳…無い。」


「ちょっと待ってくれ! あまりにも酷くないか?宮間の親は出かけていたんだ、家に居たという証拠が無くて当然だろ!!言い過ぎだ!」


反論してくれたのは岩木だった。


嬉しかった。


しかしー


「証拠が無いから、疑うんだろうが。人の心なんて他人には分からねえし、分かり合えることなんてほぼゼロだ。証拠が無いなら人の目を掻い潜って殺してるかもしれねえっていう疑いは絶対晴れねえ。」


的を的確に射ていた。

反論ができなかった。

疑われる一方だった。


皆の視線が痛く心に刺さるのを覚えた。


そしてまた1人、俺のことで話始める。


「そう言えば宮間は転校して来たよなあ。5月くらいだっけ。これまで人狼ゲームしてて何も無かったのに、お前が来てからこんな悲劇が次々と出てきてんだけど、そこのところはどーなんだよぉ!!」


そう言ったのは、いつも田辺の側に居る花木 誠という男だ。丸坊主だが、制服は学ランの下にTシャツ、ズボンの裾は地面に着きボロボロ、ピアスの跡もある。


「これって明らかにおかしくねえか?宮間、本当にオメェは家に大人しく帰ったのかよ。」と花木が続ける。


「俺はちゃんと家に帰ったんだよ。本当に…家に帰って飯作って風呂入って寝たんだよ。絶対に…信じてくれ!!」


「信じられっかよ、証拠も無いくせに。このまま全員聞いていって、お前以上に疑わしい奴が居なかったら、人狼は…お前だよな?」


「ち、ちがう!!!本当なんだ!!頼むよ…信じてくれよ…」


俺はもう耐えきれそうに無かった。

本当のことを言って信じてもらえない苦痛がこれほどとは思わなかった。

そしてなにより、この後の投票で俺が全員から票を貰うに間違いないという絶望感に苛まれた。


「も、もういい加減にしてよ!!」


そう言いだしたのは俺の左の席に座る綾瀬さんだ。


「宮間くんは、本当のことを言ってるかもしれないんだよ?それに、他の人だって後から確認しないと分からない情報ばっかりじゃない!!宮間くんばっかり疑うのは、良くないと思うんだけど!!」


涙が出そうだった。

ここまで言ってくれる人が居るとは思わなかった。

すごく…嬉しかった。



そして、俺の後も一人ひとり話していった。

俺以外スムーズに進んでいった。

俺、以外。




「はい、皆さんありがとうございます。これより紙を1人ずつ配るので、その紙に人狼だと思う人を書いてください。自分の名前でも良いですけど、投票者の名前も一緒に書くのはやめてね。あと無記名は無効とします。」


俺は、どうしたら良いか分からなかった。

綾瀬さんと岩木は庇ってくれたけど、あの後俺が疑われていることは多分変わっていない。


酷く心臓が鼓動している。

呼吸も少し荒い。

頭が真っ白になり何も考えられない。



そして、全員の投票が終了し集計となった。

時刻は既に19時を回っている。

もうとっくに最終下校時刻も過ぎていたが、狭間先生の意向により、特別に許されたらしい。


ガラガラっ

集計の為、柴原と田辺が別の部屋で集計を行い戻ってきた。


「集計結果を発表します。40名中無記名が3票。それ以外は有効投票となりました。そして、得票数が1番多かったのはー…宮間優人君となりました。」


俺に投票数が集まってしまった…

心臓が残りの命を惜しむように脈を打つ。

全身の鳥肌が全神経が麻痺する。


「待って…くれよ。確かに立証はできないけれどあんまりじゃ無いか?俺が本当に2人を殺すと思う?俺は死んでも人は殺さない…。

たのむよ…信じてくれよ…」


掠れた声が訴える。

この票が覆らない限り俺はこの後処刑される。

教室の空気は冷たい。

先ほど庇ってくれた綾瀬さんも岩木も何も言えないようだ。

また、皆からの視線が刺さる。


信じてくれよ…

信じてくれよ…

信じてくれよ…



「残念だけど、得票数の結果で宮間くんになってしまったんだ。この境地を乗り越えるには必要な事なんだ。」柴原はそう告げる。


全身の力が抜けていく。

目の前の死を受け入れられない。

いっそここから逃げ出したい。

逃げれば殺されないかもしれない。



しかし、そんな事は思いつかなかった。




「じゃあ、他の人は至急帰宅して下さい。」


少しざわつきながらも荷物を纏めて帰っていく。教室には柴原と田辺と花木と俺だけになった。


場所を3階の1番東の空き教室ーつまり俺たちが人狼ゲームをした最後の場所に移動した。


「お前が人を殺すなんてな、人は見かけによらないってのはこの事だ。」花木が煽る。


「やめろ誠、これから人狼の処刑だ。覚悟しろ。」


俺は何も聞こえなかった。

耳からの情報を脳は処理していなかった。



「僕も宮間くんを疑わざるを得ない。人狼ゲームに則り、これより処刑を開始します。」


手足を地面に拘束された。

大の字の形で身動きが取れない。

空き教室に運ばれたであろう6つの机、その上に俺が仰向けにさせられ、手足は机にヒモでくくりつけ身動きは取れなくなった。

柴原と花木は俺を押さえつけている。


「おい人狼、最後に何か言う事は?」

田辺が感情がこもってない棒読みで問う。

右手には家庭科室から拝借してきたであろう包丁が握られている。


田辺の左手が俺の首元を地面に抑えつけ、右手が振り下ろす構えをする。


俺は暴れた。

もがいた。

抗った。


俺はここで…殺されるのか?


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ


刹那


田辺の右手から振り下ろされた包丁は俺の心臓めがけて突き刺さった。


何度も何度も何度も。


俺は今日、クラスメイトにあらぬ疑いを掛けられ殺された



          刺殺編 完





撲殺編


第1話

再開と再会


「お、お前ら本当に俺を殺すのか?なぁ、やめてくれよ。」俺は震えながら声を絞り出す。


「お前が人狼なんだろ?精々死に際は本当のことを言ったらどうだ?それともお前は人狼だけに、オオカミ少年か?」


 俺の視界からは顔が陰で隠れて見えない。誰かが右手で包丁を目の前に突きつけている。

 そして両手両足は固定されていて身動きが取れない。


「やめて!嫌だ、殺さないでくれ!!本当だ俺は人狼なんかじゃない!信じてくれよぉぉ」


「あばよ、オオカミ少年。」






「うわぁぁぁぁ!!!」

 飛び起きて我に還ると俺の視界には知っている天井と、右窓から差し込む朝日が目を眩ます。


「夢?…」

額からは汗がダラダラと滴っている。

この夢を見るのは2回目だろうか。

そう思いながら俺は左側の枕元にある時計を確認する。


「6月15日の7時…か。」


全く酷い夢を見たものだ。



そう思いながら、学校に行くために支度を始めた。


「優人おはよう!朝ごはん出来てるわよ!」

母がいつものように明るく朝ごはんを用意してくれていた。早速食べる。


「お母さん今日は、お仕事で大分帰るの遅くなるから自分で夕飯作ってね!それとも晩御飯のお金渡しておこうか?」


「いいよ、自分で作るから。じゃあもう学校行くね。」


「あら、早いわね。いってらっしゃーい。」


今日は帰ったら何しよっかなー。

そんなことを考えながら登校した。


「おっす宮間!」

誰かが後ろから呼んだ。

学校の校門前で岩木と出会う。



何か違う。



「おはよ、岩木。今日も寝癖酷いなー。あはは。」


「は?この髪型は寝癖じゃねえよ!!バカにすんな!」


岩木は変な髪型をしている。どういうセットをしているかわからないが、短髪なので寝癖が後頭部に鶏のトサカのようにツンツンになっている。弄るのが俺の日課だ。


「そうや!今日女子も集めてみんなで人狼ゲームやらねえか?」


「あ、それいいね!放課後にでも誘ってやる?」


いつもは女子と男子は別々で遊んでいるのだが、今日は珍しく…というか初めてそんな案を出された。



何か違う。 今日は何か違う。

既に頭の記憶に薄っすらと残っている断片的記憶。

前にもこんな光景があったような…でも何か違うような…。


解らない。

分からない。

もどかしい気分だけが残っていた。



 そんな気分をよそに、今日もみんなで人狼ゲームを放課後にすることにした。しかも今日は男女合同で。

合わせると10人だろうか。男6、女4だ。


お調子者の鳥谷と岡を筆頭に始まった。




あれ?何か違う。やっぱりだ。何かおかしい。鳥谷…が生きている?


むしろ何で俺は『鳥谷が生きている』なんて思ったんだ?


生きているのが当たり前なのに。





 「投票の結果、今回処刑されたのは鳥谷くんです。鳥谷くんは人狼だったので、これで晴れて人狼は居なくなりました。村には平和が戻りました。村人たちの勝利です。」

ゲームマスターの綾瀬さんがゲーム終了の言葉を告げる。



「まじかー、バレちまったじゃあねえか。丸山ハメたなー?」


「新矢には癖があるので、見破らせて頂きやした。」

丸山が過去のデータから分析した優等生のように鳥谷を煽った。


「なあ、何で俺が1番最初に処刑されたんだよ!!」岩木が不満そうに話す。


「アンタが疑われるような言動を1番最初に発するからよ!」

 たぶん榊原さんが岩木を1番最初に処刑するように仕向けたのだろう。


「まぁまぁ、キリも付いたし、今日はここでお開きにしましょ!また明日もあるし!」

綾瀬さんがまとめ直す。


やっぱりしっかりしていて俺のタイプすぎる。が、口には出さない。


「よし!じゃあ、ずらかるかぁ」

「じゃあなー、また明日!!」

「おいーっす!!」

「鳥谷泣くなよ!」


別れた。

今日は人数が多くて、より楽しかった。

18時頃の夕焼けを背に、俺と鳥谷は帰った。


「結局お前は何の役職だったんだ?」


「俺?あー、最後は占い師だよ。全然的外れな人ばかり指名してゲームマスターの綾瀬さんからは村人のジェスチャーしか貰えなかった、あはは。」


そういって、一緒に歩いて一緒に帰った。

2人して笑いながら。


「俺、じゃあここでバイバイやな!じゃあな宮間!明日もやろうぜ!!」


「うん!また明日ね!!」


そう言って違う方向へ歩いていく鳥谷の背を見えなくなるまで眺めていた。

なぜか、理由は分からないけれどどうしてか、悲しい気持ちが込み上げてきた。

今、バイバイした事が切なくて悲しくなった訳ではなくて、鳥谷の先の事で込み上げてきたと自負した。




翌日

鳥谷が休んだ。



不安に思って携帯に連絡した。



繋がらなかった。



帰りのホームルームでは、先生から鳥谷の事について話された。



死んだ…と。



俺は、前にも同じ気分になった事がある事を思い出した。



俺は全身が痺れるような、背筋が凍るような気分を感じた。






第2話

現実と真実


鳥谷が昨日何者かに殺された。

俺はどこかでそれを知っていたように感じた。頭の隅っこに、その記憶は存在していてはっきりとは分からない。


それでも断片的記憶はモヤモヤと黒い靄が掛かったように。しかし一部だけははっきりとしている。


これが夢なのか、現実なのか、はたまた予知能力なのか…


そんな事を考えながら学校での1日を過ごした。あっという間だった。今日は流石に遊ぶ気にもなれなかった。


6時間目の数学が終了すると、岩木を誘って晩飯を食べに行った。


「なあ、鳥谷が殺されると思うか?」


「…そうだね。殺されるはず無いよ、あいつは人当たりいいし、恨まれるような性格じゃない。本当に何があったんだよ。」

 

 岩木と暗い話を近くのファミレスで語る。


「あいつは昨日お前と帰ったんだろ?その後は知らねぇの?異変があったとか、違和感があったとか。」


「いやいや、全く無かったよ!いつも通りだった。一緒に歩いて帰って、途中で別れてそれからは会ってないし、連絡も取ってない。」


「先生曰く、昨日の夜、近くの山の麓で誰かに鈍器で殴られて倒れていたらしいんだ。」


何か違う。俺の記憶と。


「そうだったの?殺されるほどの事をしたって事なのかな。俺は転校してきて2ヶ月足らずだから鳥谷の過去とか、そう言う因縁染みた事があったは分からないのだけれど。」


「たぶん、そう言うのは無いよ。俺はあいつと中学から一緒だった。本当に誰からも好かれる奴で、羨ましかったくらいだからな!」


少し笑いながら岩木が話した。


先ほど感じた違和感が、気に触る。


昨日からだ。

記憶と似通っているけれど、少し違う所。

なんとも言えない、何処にぶつけていいか分からないモヤモヤだけが頭に残り気持ちが悪い。


20時くらいになった。

夜も暮れてきたし、岩木とはファミレスで別れて1人で帰った。



帰宅し、お風呂に入り、そして寝た。


寝つきが悪く、結局2.3時間しか寝てないだろう。


6月17日

俺はいつものように、学校へ登校した。

校門へ入った先には警察車両が何台か止まっている。


さらに、学校の中が騒がしい。

すぐさまその元凶を知ろうと教室へ向かう。


「いやよ!なんで?なんで殺されないといけないの??」

綾瀬さんの悲痛な泣き声が教室前で聞こえる。


「綾瀬さん…ど、どうしたの?何かあったの?」俺が問う。


「ま、真由子が…真由子が誰かに殺されちゃったのぉぉお!!」


!!!

榊原さんが誰かに殺された。昨晩のうちに。

しかし、何故か不思議とそこまで驚かなかった。


いや、驚けなかったと言ったほうが近いだろうか。


「いつもの待ち合わせの時間に真由子が来なかったの。連絡しても繋がらなくて…心配して家まで行ったら部屋で真由子が殴られて殺されてたの……私、もう耐えられない!!」


綾瀬さんとともに経験したであろう赤沢さんが詳しく話をしてくれた。


教室内、そして話題が伝染して学校中が大騒ぎになっていた。


「ちょっとみんな!!落ち着いてくれ!大変な事になっている事は分かっている。でもこういう時こそ冷静になってくれないか?みんな席に着いて。」


騒動を一時的に沈静化させたのは俺と同じクラスのクラス委員の柴原だった。


「みんな、少し落ち着けたかな?鳥谷くんに続いて榊原さんまで…一体2人に何が起きたんだろう。みんな2人に関して何か心当たりは無かった?異変があったとか。」


「いつも通りだったよ…鳥谷は。」

「真由子も異変なんて感じなかった…」


俺と綾瀬さんが少し被りながら言葉を発した。


「な、なあ皆。ちょっといいか?」

そう切り出したのは田辺だ。

不安そうな面持ちで、震える感じ。

そして何より柴原に言うように言い出した。


「何か心当たりあるの?田辺くん。」

柴原が問う。


「心当たりっていうか、聞いた情報だ。俺のオヤジは何年か前に、ここの生徒として卒業したらしい。でもオヤジのクラスだけは10人程度だったそうだ。原因は…その…オヤジのクラスだけが狙われた一方的殺戮があったらしい。」


そして、田辺はこう続ける。


「オヤジの時代にも人狼ゲームがめちゃくちゃ流行っていたらしいんだ。ある日突然、1人殺されて、また誰かが何日か経って殺されて…それが続いたらしい。これ、このクラスの現象に似てないか?」


「そ、そんなオカルト染みた話…信じられ…」丸山が少し対抗する。


「まだ、続きがあるんだ。オヤジ達のクラスではこうやって急遽クラス会議が開かれたんだ。そこで、誰かがこう言ったんだ。これは『リアル人狼ゲーム』なんじゃないかって。誰も信じなかったらしい。でも一方的にクラスの奴らが殺されていくのを見て、打開策としてその案が通った。このクラスの怪しい奴を見つけて、殺した。そしてある日ダレカを殺したのを最後にその現象は止まったらしい…つまり、このクラスのダレカが2人を殺した…長ったらしいが、俺が言いたかったのはそれだけだ。今回鳥谷に続いて榊原。このクラスでリアル人狼ゲームは始まっているんだ!!」


………クラス中が凍りつく。

そんな中、口を開いたのは柴原だった。


「田辺くんの言う通り、もしかしたらリアル人狼ゲームなるものが既に始まっているかも知れない。田辺くんの親父さんが経験した現象と似通っている。僕は、早急に対応しなければ今後このクラスの皆は殺されていく一方になるかも知れないんだ!皆の意見を聞きたい。」


張り詰めた空気。

緊張感と恐怖感が入り混じった教室。

今にも逃げ出しそうな雰囲気の中、次に赤沢さんが話し始める。


「このクラスにそんな事する人なんて居ないわよ!第一リアル人狼ゲームなんて存在するなんて言われたって私は受け止めきれないよ。漫画みたいな展開じゃあるまいし、あるわけ…」


「それが、あるんだよ!!」

田辺が震える口調で赤沢さんの話を遮る。


「俺のオヤジ達は経験したんだよ、実際に。それで、このクラスの誰か怪しい奴を昼のターンで処刑した。夜のターンで人狼がクラスの人を殺した。その繰り返しだったらしいんだ!結果は最後も言ったが、人狼を処刑できたから現象は止まった。」


「そういう事があったのかも知れないけれど、それでも私達が今置かれている立場は…この2人の死も、そのリアル人狼ゲームで人狼に殺されたって一概には言えないじゃない!!」


「だからと言って、何も対処せず只々クラスの皆が人狼に殺されていくのを黙って見てろって言うのか?お前はただそうやって來る死を受け入れられるのか?」


「…」


激しい激論が行われる。

警察に任せるという手もあるだろうが、俺たちが率先して出来る事…それがこれなのかも知れない。


「はい!2人とも落ち着いて。この現象がリアル人狼ゲームかどうかは、僕たちには分からないけれど、

それでも足掻ける策として。

そして僕たちが出来る事として。

この現象の打開策として。

僕たちは、このクラスで怪しい1人をここで見つけ出したい。」


柴原が取り仕切る。

まだ朝のホームルームも始まっていない。

時刻は10時前くらいだ。

担任の先生は多分警察と掛け合っているのかも知れない。

他のクラスを見ても授業が始まっているように感じられない騒ぎようだ。


「よし、じゃあ皆さん急だけど、昨日一昨日の夜は何をしていたの?あとそれを裏付ける証拠或いは証人はいる?この2点を皆に聞きたい。じゃあ1番前の赤沢さんから。よろしくお願いします。」


「え!私?えーと、私は一昨日は両親と夜に食事に出かけて、20時ごろに帰ってきました。それからお風呂に入って23時ごろに唯と電話して寝ました。昨日は唯と食事に出かけて、帰宅して勉強して寝ました。以上です。」


「はい、ありがとうございます。不審な点はありませんね。失礼ですが、綾瀬さんとはどんな電話を?」


「一昨日の電話は、昨日食事をする場所を決めたくて電話していました。」


「なるほど、ありがとうございます。では次の方お願いします。」



着々と進んでいく。

一人一人。慎重に。丁重に。

そして俺の番になる。


「はい、ありがとうございました。では次に宮間くんお願いします。」


「はい。私は一昨日学校で夕方まで人狼ゲームして、鳥谷と帰りました。帰る方向は同じだったので、途中まで帰って別れて。鳥谷との会話はそれが最後でした。一昨日、昨日と母は仕事で深夜まで帰っておらず、祖父母も信州へツアーに行っているので明日まで帰ってきません。しかし、ちゃんと家に帰って風呂に入って寝ました。昨日は岩木とファミレスで食事をして、20時くらいに帰宅して家には誰も居ないので、直ぐに寝ました。鳥谷の一件で全く寝れませんでした。以上です。」


「宮間くんの行動は、全く誰にも証人が居ないんですけれども…証拠がないと、信憑性に欠けるんですけど。」


柴原が困惑したように俺に言う。


「さすがに、家には俺1人しか居ないから証人なんている訳ないじゃん。」

俺は反論する。


すると、俺と柴原のやり取りに横から田辺が割り込んでくる。


「なぁ、宮間。こういう事態だからこそ皆安心したいんだよ。そんな中お前の行動は信憑性が無さすぎるだろ。それに、お前が転校してくる前だって人狼ゲームは流行っていた。それなのにお前が転校してきて、事態が変わった。人狼はお前なんじゃねえの?」


「ちょっと!それは言い過ぎなんじゃないの?」


田辺の物言いに、綾瀬さんが反論してくれた。


「今皆のアリバイみたいなの聞いたけど、帰って寝た。とか何かして寝たとか、そういうのばっかりじゃない。それこそ深夜に抜け出そうと思えばできるんじゃないの?」


疑われている俺を庇うように言ってくれた。

すごく嬉しかった。


「でも皆には親が家に居たんだ。寝るまではアリバイがある。それに、家に誰も居なかったなんて、なんでもやりたい放題だろ。」


「宮間くんは、嘘を言ってないと思うよ。だって、家に誰も居なかった。なんてそんな不利になるような情報、言えないじゃん。それに今までの皆のアリバイだって、親とかに聞いてみないと分からないものばかりじゃない。」


「だからって、宮間の信憑性がない以上、断定はできないし、皆人を疑う目で見るんだ。不安視したって当たり前だろ。」


「い、いいよ綾瀬さん。俺の家には誰も居なかったし、疑われるのは間違いない。それに、そんなに庇ってくれるのは、凄く嬉しいけど、綾瀬さんまで疑われちゃったら元も子もないから、もう大丈夫だよ。ありがと。」


「べ、別に庇ったつもりじゃ…ないんだから…」


「はい、まあ宮間くんの事は置いといて、どんどん次お願いします。」


そうやってどんどん、次々と皆のアリバイを聞いていった。

俺以外、怪しまれるような人は居なかった。


一通り皆のアリバイを聞いた後、俺はまた少し思い出した。都合良くとは言わないが、予知能力かも分からないが。


俺はこの後殺される。


そんな只ならぬ記憶、或いは妄想、それとも予知、が頭の片隅から湧いてきた。


「はい、じゃあ皆さんに一枚ずつ紙を配ります。この紙に1番怪しいと思う人を描いてください。あだ名、白紙は無効とします。あと投票者の名前は書かないでください。書いたら折って僕に渡してください。」


皆紙に怪しい人を書き出す。

俺に票が集まると思うと

辛かった。

悲しかった。


人から疑われるってこんなに辛いものだとは思わなかった。


綾瀬さんには申し訳ないけれど、庇ってくれて凄く嬉しかったけれど。


そんな感情はもう俺には無かった。


「はい、これで皆さん投票完了しましたね?放課後に1番票が高かった人、その人を個人的に誘います。公平を期すために、このリアル人狼ゲームに関する情報を知らない担任の狭間先生にやってもらいます。これでよろしいですか?」


柴原の問いに皆が頷く。

たぶん、柴原に票が集まることはないと思うが、イカサマが心配なのも配慮してくれた。



「では、異論は無いようなので、以上とします。」


2時間近くに及ぶクラス会議。

神経が八切れそうな雰囲気だった。

そして俺は、自分に票が集まっていることを帰りのホームルーム前、トイレに居た時に知らされた。


自然と涙が溢れた。

薄々気づいてはいたが、ここまで悲しくなったのは人生で一度も無い。


家族のこと、綾瀬さんのことが頭にフィードバックして蘇ってくる。


走馬灯みたいなものだろうか。

これを死ぬ間際に見るのだろうか。


悲しくて

悔しくて

苦しくて

吐きそうで


耐えられそうに無かった。

でも何とか隠してホームルームを過ごした。


そして


俺は放課後3階の空き教室に向かった。

柴原以外に誰にも悟られないように。


空き教室のドアを開けると3人が居た。


「おい人狼さん、ようこそ処刑台へ。」

田辺が剽軽な面持ちで話し出す。


「結局、お前が1番怪しいっていう結論やったんやわ。残念やったな。」

田辺の側近である花木が話す。


俺は何も言わなかった。

俺は何も言えなかった。


田辺と花木そして、柴原が俺を何個も並べた机の上に括り付ける。身動きが取れなくなった。


「おい人狼さんよ、何か言うことはあるか?」田辺が言う。


「俺は…人狼なんかじゃ無い。」


「あはは!この後に及んで嘘をつくのか!まるでオオカミ少年だよなぁ!!」



迫り来る死に対して


俺は


息が苦しくなるほど


息をしていた。


心臓の鼓動が段々耳元で大きくなる。


俺は目を瞑った。目が押し潰れるほど。


しかし、何故か一向に殺されない。

俺は硬く閉じた瞼を恐る恐る開ける。


すると、田辺が柴原とやりとりしている。

田辺が人殺しをすることを躊躇っている?

何故だ。先ほどまで人をコケにするような言動ばかり話していたのに。


「お、お前人を殺すのが…怖いのか?」

俺は声を絞り出す。


「…」

田辺に反応が無い。


すると



「僕はいつでも君を殺せるんだよ?さあ、早く言うこと聞きなよ。そうすれば君たちは最後まで生きながらえさせてやるから。先に殺されたくなければ契約通り君が殺せ。逆に僕の事を人狼だと言いふらしても、皆はその人狼たる証拠が無いから君の言い分は信用されない。逆に君が人狼だと疑われる事になるよ。そうなれば俺も庇えない。だから早く。」


柴原が唆している?


「でも…」


田辺が躊躇っている。


「早くやれぇぇぇぇぇえ!!」


柴原の、聞いたことも無い怒号が響き渡る。



刹那



それが引き金となって

それが人殺しの躊躇いを振り払うように

田辺が持っていたハンマーは俺の額を目掛けて振り下ろされた。




撲殺編 完




死別編


第1話

望外と妨害



俺は今日6月15日の朝、酷い夢を見た。


これで3度目だ。


しかし、今回ばかりは全く違っていた。


それは…



記憶があることだ。



つまり、夢を見たのではなく…

紛れもない記憶として認識した。


これまでの記憶…

すべての記憶…

何もかもが思い出されたような感覚で脳裏に焼き付いている。


何度も死を経験し

友人を失い

クラスメイトを失い

他人から疑われ

クラスメイトに殺され


辛い経験が体験が全てフラッシュバックのように俺の脳を駆け巡る。


(俺は今日から3日間を死に物狂いで生き延びなければならない、そして柴原を殺し、これから始まるリアル人狼ゲームを始まる前に終わらせる!!)

俺は少し脳裏に蘇る記憶に戸惑いつつも、鳥谷や榊原さんを守るため堅く決意した。


1日目の朝が幕を明ける。


「おっはよー宮間!」

「あ、岩木おはよう。鳥谷知らない?」

「あー、あいつならまたギリギリに登校してくるんじゃね?あはは。鳥谷に何か用でもあるの?」


俺は岩木に記憶の事を話そうと思った。

信じてもらえるか分からないけど、言った方が楽になると思った。

(岩木を巻き込む訳にはいかない…)

「い、いやあ何でもないよ!それより、今日は俺人狼ゲーム出来ないんだ。用事があって早く帰らないといけない…ごめん!」


「お、そうか!じゃあ今日は人数的にも無しかな!」


岩木たちには申し訳ないが、隠し事をして申し訳ないが、今日は鳥谷を守ることが先決だ。


きっと今日の夜、鳥谷は柴原達に殺される。

山で殺されるはず。何故山なのかは今は不明だが、とにかく今日は鳥谷を俺の目の届くところにいて貰うしかない。


「おっすー!みんな」

陽気な声が教室に響く。鳥谷がやっと学校に来た。何の異変も見当たらない、いつも通りの鳥谷だ。


俺はすぐに駆け寄った。


「よ!鳥谷。なぁ、来て早々急だけど、ちょっと話が在るんだ。来てくれない?」

そう言って、鳥谷の左袖を掴んで廊下へ引っ張り込む。


「ど、どうしたんだよお、朝から愛の告白か?」

「そんな冗談に構ってられるヒマは無いんだ。」そう言って廊下に連れ出す。


「唐突なんだけど…今日は鳥谷は帰って何をするんだ?」


すごい唐突だった。

鳥谷も少し驚き気味だったが話し出す。


「お、俺は今日は家に帰って飯食って、トレーニングして寝る予定…だけど?」


(それだ!鳥谷はトレーニングの最中、山に立ち寄って…そこで殺された可能性が高い。)


「予定はなさそうやね。だったら今日、俺の家に来ない?今日は家には俺しか居ないし!」


「なんかすごい必死だな、お前。でも良いよ、行きたい!他に誰か誘う?」

少し不安視していたように見えたが、快く了承してくれた。


「いや、今日は鳥谷に相談したい事があるから、他はまた今度にしてくれない?」


「お、そうか。わかったよ!」


そうやって何とか今日、俺の家に鳥谷を泊める事に成功した。


この記憶の事を…話しても良いのだろうか。

信じてもらえるのだろうか。

疑われないだろうか。



そんな負の感情だけが心を蝕む。



でも今回は何としてでも食い止めたい!


この記憶が戻った理由

今まで記憶が引き継がれなかった理由

そしてなにより今回失敗したら次が無いかもしれない。記憶が戻った理由がそれを示唆しているのかもしれない。


今まで、少しだけ記憶があった事を覚えている。認識、理解はしていない。


ただ漠然と、頭に残る夢物語と、現実に起こっている現象が似過ぎていること。そして少しだけ違うところ。


今までとは打って変わって、記憶が全て在る。もしかしたら本当に今回が最後かも知れない。


俺はそう思った。

そしてこれ以上殺されたくなかった。



放課後



「鳥谷、帰ろー」

俺は帰りのホームルームの終了と同時に鳥谷を誘った。

「おっけー!」


俺は今日ずっと柴原の事、田辺のことを観察した。本当に注意して見てないと分からなかった事が見つかった。


これまで柴原と田辺が一緒になって昼休みの時間にどこかへ行く。なんて事は無かった。


しかし、今回改めて見るとそれに気づいた。

そして俺は2人を追った。気づかれないように。


2人は例のあの空き教室に入っていくところを見た。俺もすかさず教室の前に行き、耳をドアに押し当てるように話しを盗み聞きしようとした。


しかし、ボソボソ話しているため聞こえなかった。


その時


2人が口論になって言い合っているのが聴こえた。たぶん柴原が田辺を唆しているのだろう。明らかに言葉が異様だった。


殺す

見つからない

人狼ゲーム


そんな聞き慣れた言葉が2人の言い合いから飛び交う。


コイツらが今日、鳥谷を襲う…


(絶対に殺させはしない!)そう決意した。



鳥谷と帰っている途中、俺は周りを気にした。柴原や田辺が追跡しているかも知れない。


もし、俺が鳥谷を今日家に泊めた事を知られた場合以下の事が考えられる。


①鳥谷を殺す為俺の家に上がり込み、俺もろとも殺す

②鳥谷を殺す事は諦め、前倒しして榊原さんを襲う

③榊原さんを襲うのではなく、他のクラスメイトに変更する。


そして、今日俺が鳥谷を泊めた事を知らない場合は


①鳥谷を殺すのは諦めて、今日は誰も殺さない。

②諦めて他のクラスメイトを襲う。

③榊原さんに変更して襲いに行く。


それぞれ考えられる事はこれだけ。

今は追跡されてないと思うが、もし追跡されていた場合、前者の①②③のルートになる。


俺達は、足早に学校を後にした。



30分ほどで、俺の家に帰宅した。

これまで尾行はされていないと思う。



「鳥谷…お前に話したい事があるんだ。」

俺は、自分の部屋のベッドに座りながら鳥谷を見つめて真剣に語りだす。


「改まってどうしたんだ?」


「俺の事、信用してる?信じられない事言っても、信じてくれる?」


「??? 言ってる事が理解できねーけど、まあお前の事は信用してしてるよ。」


「そっか。ありがとう。これから話す事は全て俺が体験してきた事で、そしてこれから起きる事なんだ。正直に包み隠さず話す。真剣に聞いて欲しい。話の途中で分からなくなっても最後まで聞いてからにしてくれ。」


「分かった。」


「俺はこれまで2回殺された。2回死んだ。それはなぜか…それはクラスでリアル人狼ゲームが始まったからだったんだ。1回目の死を経験する前、鳥谷が今日の夜、山で刺されて殺された。次の日に榊原さん。明後日の17日に田辺がリアル人狼ゲームが始まったんだとクラスに吹っかけた。それからだ、俺は人狼だと疑われ殺された。

 そして、1回目の死後、2度目の今日を迎えた。また同じく鳥谷と榊原さんが殺され、また俺が疑われ殺された。これが2回目だ。

 そして今回、おれは3度目の今日を迎えた。今まで引き継がれなかったおれの記憶は、今回なぜか引き継がれたんだ。それで、犯人はすべて分かったんだ。クラス委員の柴原。あいつが今回の主犯であり人狼。2度目殺される前に見た記憶、田辺と柴原のやり取りで確信した。

 だから俺は今回、鳥谷と榊原さんを救う為に居るんだ。唐突だし、信用できないかも知れないけれど、本当なんだ…信じてくれ…」


「……………。俺は今の情報をどう受け止めればいいかわからない。信用しろって言われても、受け止めきれないから難しい。でも、お前がそこまでしていってくれる事なんだ。だから俺はお前の言った事を信じるよ。何でだろうな…普通考えて、死に戻る事を話したところで信じられないのにさ。言葉ではうまく表せられねぇけど、緊急事態ってのは分かってる。しかも自分の身が危ない事が。でも、ただ漠然と信じられねぇからもう帰るな、って言って帰って、それが本当だとしたら俺は後悔する。それだったら試しに信じてみたいって思ったよ。」


初めてだろうか

信用される事

信頼される事


これが俺にとってどれほど嬉しかっただろう。自然と俺の目元から大粒の涙が溢れていた。


「な、泣くなよー。さぁ、クヨクヨしてる場合なんかねえぞ!」


(そうだ!クヨクヨしてるヒマはない!俺は今回ですべてを終わらせる決意はもうしている!)


「俺たちはこれから、柴原の家に向かう!!!」


そう言って2人は

宮間家を後にした…




第2話

回避と回帰




俺と鳥谷は、まず柴原家へと向かった。

柴原の家はクラス名簿から拝借してきた。


俺は、柴原との万が一の為に2人とも折りたたみ式のナイフをポケットに入れておいた。


「なぁ、宮間」

「何?鳥谷」

「さっき言ってたお前の『ループ』?見たいなやつ、つまり死んでもう一度その時間をやり直す能力、何で記憶が無かったんだ?」


鳥谷は先ほどの俺の信じられそうにない言葉を、信じてくれたが疑問に思っている事は多い。というより、自分自身が既に自分の状況が把握できていないだからかもしれない。


「俺は、それについては分からない。でも1番最初、死ぬ前の出来事と死んだ後…つまり1度目のループでは全く気づかなかった。というより、夢を見ていたようだった。夢ってすぐ忘れちゃったり、よく分からなかったりするだろ?そんな感覚。」


「へー、じゃあ2度目のループはどうだったの?」


「2度目は、少し違った。『夢』を見た時の記憶と、現実で起こっている出来事が少しだけ違っていた。あと、潜在的に既に組み込まれていたような記憶…その記憶と現実が少し違う感覚がしたんだ。」


「それはつまり、具体的に言うとどんな違いなんだ?」

推理するように鳥谷が問う。


「んー、何て言えばいいのかな。俺の記憶には既に6月15日の記憶が少しだけあった。俺はそれを夢と勘違いしていたんだ。その記憶では、朝学校に行くと鳥谷が既に教室に居たりするんだけど、現実では岩木が校門前で出会って、鳥谷はまた後だった。そんな違いだよ。」


「なるほどー。そうなるとよく分からないよな。でも少しずつ記憶が明瞭になってたんだろ?」


「あぁ、夢が夢じゃなくて、既に体験していた事として認識できたのは今回が初めてだけれど、その夢自体がだんだん明瞭化してきていたのは事実だと思う。」

俺は自身の記憶にある確かな確信を探って答えた。


「じゃあ、つまり過去…というかこの状況はこの先の結果自体が変わりつつあるって事じゃねえの?」


俺はすこし理解がしにくかった。


「えっと。じゃあ、俺がこれまで体験してきた『2回の死』と『死の回数に応じて明瞭化する記憶』は今後の結果の改変度に関わるって事?」


「あぁ、正確にはこんな得体の知れない能力見たいな…オカルトみたいな…そんな事は未だに信じがたいし、このケースも一概にこの説が正しいとは限らない。でも俺の考えとしては、つまりそういう事なんだと思うんだ。」


「なるほど…実際結果を見てみると、鳥谷や俺が死んだのは殺され方が違った。最初は刺殺…2回目は撲殺…ただ、生き残れるというルートには至っていないんだ。すべてのルートが俺たちの死に繋がっている。今回も…そうなのかもしれない…」


「おい!この状況をどうにかしたいって言ったのはお前だろ?俺を助けようと必死に頑張ってくれてんのはお前だろ?お前から引き退るような事するなよ!俺だって死にたくねぇし、お前にも死なれちゃ困る!!そのためにも今ここに俺たちは…未来を変えるために来てんだろ?」


「あ、あぁ。そうだったね。ごめん、無責任な事言って。」


「いいよ。ただ、一つ気がかりな事があるんだ。」

心配な面持ちに変わり、鳥谷は続ける。


「記憶が今回完全に引き継がれた。1回目、2回目とだんだん記憶を明瞭化された…って事は、今回がチャンス。でもこの意味って…これが最後のチャンスとも読み取れないか?」


「!!!」

迂闊だった。ついつい自分の記憶が完全に復活した事。その理由を…その意味を考えていなかった。


つまり今回失敗して殺されるような事があれば、俺は本当の意味で死ぬという事になる。


まだ一概には言えない。

見た事も聞いた事もない現象に俺は直面している。本にもインターネットにも専門書にも多分載っていない。まるでアニメに出てくるような話だ。


そんな現象を断定して、コレだという確証の持てる今回のケースを理由付けする事は出来ない。


でも、それでも…その考えが正しいのではないかと思った。


「俺は…今回、失敗すれば本当に死ぬかもしれない。そうなれば、鳥谷や榊原さんを助ける事は…できない。」


「あぁ。この仮説が正しかったらの場合だ。でもそういう気持ちでやらなければ結果は変えられない…未来は変えられない…なぁ、気ぃ引き締めてやってやろうぜ!!」


鳥谷は俺を励ましてくれた。

   俺を勇気付けてくれた。

   俺を鼓舞してくれた。


やるしかない。

未来を変えるには行動するしか…ない!!


「わかった!全力で挑もう!!もうすぐ柴原の家だ。」


そうして俺たちはすっかり暗くなってしまった夜道を早足で歩いた。


そして、俺たちは夜の8時ごろ、柴原の家に到着した。


電気が付いている。家の誰かが居る。しかし柴原が居るかは分からない。


俺たちは向かい側の公園に身を潜め、昭和のドラマに出てくる刑事の張り込み捜査のように身を潜めて監視した。


何時間経っただろうか…公園に立っている時計の針を確認すると時刻は夜の10時を回っていた。


すると、遠くから誰かの話し声が聞こえる。

聞いた事のある声だ。


耳を澄ませる。


声の主がだんだん近づいてくる。


夜の暗闇を照らす一つの街頭が声の主を照らす。


(田辺と花木だ!!!!)

2人して驚く。


(しかしなぜこんな時間に?)

そう疑問に思っていた矢先…


田辺と花木は柴原家の中入っていく様子が伺えた。


「あいつらが柴原見てぇな優等生とつるんでいるとはな。意外やな。」


「たぶん、今日の会議だと思うよ。3人がどう出るか分からないけれど、たぶん鳥谷の家にこの後行くんだと思うんだ。」


「それは、記憶と照らし合わせてるからか?」

鳥谷が神妙な面持ちで問う。


「あぁ、実際にこんな現場は知らない。でもあいつらが犯人なら、今日の夜に鳥谷を山で殺すはずなんだ。今回は山かどうか分からないけれど、今までの記憶上鳥谷は山で死んでいた。だからきっと鳥谷の家に行くはずだ。」


「そういうことか。じゃあ先回りするか?」


「いや、まだ鳥谷の家に行くと確定したわけじゃないし、この後鳥谷の家に行くとしても、先回りしていたらたぶん2人とも殺られるかも。」


俺はそう思ってここで待機した。


そして

夜11時

柴原家に動きが見えた。


家から3人が出てくる。柴原、田辺、岩木…あの3人が出てきた。


「来たぞ!」

鳥谷は俊敏に反応して伝えてくれた。


「ここから、あいつらはどこへ行くかだね。」


「あぁ…頼むぜ、何も起きない事を…」

鳥谷が神に祈るように言う。


すると、3人の影は東の方へと進んでいく。



あの方角はー鳥谷の家の方だ!!



まだ確定したわけではないけれど、柴原の家の前は公園だから…道は西か東のどちらかの方面に向かうから確率的に2分の1なのだけれど、嫌な予感がした。ただ漠然と不安が波となって押し寄せてきた。


「俺たちも追うぞ!!見つからねえようにここからは私語厳禁な。手の合図で知らせよう!」


「オッケー!じゃあ慎重に行こう。」


俺たちは3人の通った道をコソコソと歩く。

見つからないように、忍び足で。


3人は、今何かを話している。

内容までは聞き取れない。

しかし、着実と鳥谷の家へ向かっていた。


俺と鳥谷は100メートル弱の距離を保ち、曲がり角に差し掛かると差を締め、そうして尾行した。


20分くらい尾行した。


そして


俺と鳥谷は確信した。



3人が鳥谷の家の前で話している。



俺は唾液を飲み込む。

そんな音さえ殺して電信柱の陰から目だけを覗かせる。



汗が滴る。

反対に背筋が凍る。

鳥肌が立つ。

武者震いがする。

足が震える。



この後、鳥谷のをここに誘わなければ殺されていたかもしれない。



俺たちは

あの3人は鳥谷を殺しに来たと…確信した。



そして3人は鳥谷の家の門を静かにくぐり抜けていった。





第3話

フラグとブラフ



鳥谷と俺は3人が鳥谷の家の門を静かに侵入していく姿を凝視していた。


「鳥谷…お前に渡しておきたい物があるんだ。俺がもし、死んだらこのメモを読んでくれ。もしこの事態が収束したら読まずに返して欲しい、恥ずかしいから。」


「な、なんだよコレ?今じゃダメなの?」


「あぁ、ダメだ。俺がもし死んだらの話だ。」


「なんだよそれ、めちゃくちゃ気になるじゃねえか。それより死んだらとか言うなよ。」


「そりゃ、悪かった。ただ、もしかしたらの話だから大丈夫、俺の気が向いたら後々教えてあげるから。ね?」


「わかったよ、見ないでおく。」

そうやって鳥谷はズボンの右ポケットにしまった。


そして、もう一度3人の行方を確認する。

鳥谷が殺されるまでの…実際今回は鳥谷は左隣で息を呑見ながら監視している訳だが、こうして連れ出され、殺されたんだと思いつつ。思い込みつつ…。


俺たちは少しずつ門まで歩み寄る。

鳥谷の家は、確か母子家庭で、母はいまの時間帯アルバイトに出ていると先程聞いた為、家には誰もいないことは判明していた。


(ここで取り押さえられれば、勝機はある)


俺はそう思って門の内側をそっと覗き込んだ。


しかし


「誰も…居ない?」

俺は唖然とした。

3人も中に入れば人の気配がしてもおかしく無いだろうし、物音があってもいいだろう。


しかし、そこには閑散とした木造二階建てのこじんまりした家が建っているだけだった。


ーそしてー


「宮間!後ろだ!!!」

鳥谷の大声に反射して後ろを振り返る。

すると目の前には全力疾走してくる2人の影があった。


「うぁぁぁぁぁぁああ」

「逃げろぉぉ!!!!」

俺たちは直様反応して逃げた。


水を入れて沸騰させたヤカンに手を当てた時、反射して手を引っ込めるように


膝の皿の下部を刺激させると足が勝手に上がるように


俺たちは、後ろの2人が追いかけてくることを察知した瞬間、敗走した。


「何故だ!!!何故3人が俺たちの後ろに!?」

明らかに今の状況はおかしい。

どうしても俺たちが追いかけられている理由が見つからない。


(もしかして…尾行がバレていた!?しかし、バレていたならどこからだ?どの辺りから察知された…寧ろ俺は感づかれないように周囲に最大級の警戒をしていたのに…)


全力で走っている間に、俺は走馬灯のように思考回路が目まぐるしく回転していた。


「ぐはっ!」

俺と鳥谷は追いかけてくる田辺と花木に押し倒され、捕まった。


「クッソ…なんで…なんでなんだよぉ!!!」

俺は悔しさが抑えきれない。


「お前…俺たちの計画の邪魔しやがって。」

田辺が虫を見下ろすかのように上から視線を俺に浴びせる。


「いつ…俺たちの…ことに気づいた?…」

俺は田辺に抑え込まれながら、息を切らしつつ声を絞り出す。


後ろから1人、ゆっくり此方へ向かってくる者がいた。


柴原だ。


「僕たちは、既に今回の事は知っていたよ宮間くん。君が今日の朝一番に鳥谷に焦って誘ったこと。僕たちは、鳥谷くんを今日の夜殺す計画をしていたんだけれど…」柴原が陽気な声で話す。


「お前ら…ふざけてんのか!!??」

鳥谷が怒りを振りかざす。


「まぁまぁ…落ち着いて聞いてよ。鳥谷くんの周りに来る人たちを観るのは当たり前でしょ?宮間くんの行動は、すごく焦っているように僕からは受け取れたんだ。神経質になっていた僕たちは考えた。もしかしたら、なんらかの理由で僕たちの計画を知ってしまった。そして鳥谷くんを守る為に今夜、鳥谷くんの家には鳥谷くんを残さないことを僕たちは予想した。」


「で…でも追跡していること…知っていたのか?」俺は息苦しかったが聞き返す。


「宮間くん、君が鳥谷くんと一緒になって帰っていくところを確認したんだ。そして、花木には事前に宮間くんの家の近くの空き地から宮間くんたちの行動を報告しろって伝えたんだよ。」


「それで俺は近くの空き地からお前たちが帰宅し、そして家を出るところまで監視したのさ。」花木が話し出す。


「僕はね、花木くんからの連絡で君たちが僕の家まで来る姿を確認していたってわけさ。家を出て、僕の家の前の公園まで行く姿を花木に監視させていたのさ。それを報告してもらって、田辺くんが花木くんと合流し、僕の家に来て計画を立てよう!って話になったのさ!」

田辺が憎たらしく陽気に話す。


「俺たちは完全に…完敗していた…?しかも朝の時点で…」

俺は信じられなかった。

自分がとった行動が、全て水の泡に…


「僕たちはね、1つミスをしたんだ。何か分かるかい?」


「な…なんだ?」


「それはね、鳥谷くんの家の中に入ったって事だよ。」


俺は理解が出来なかった。

殺す為に…鳥谷が家の中にいない事を知っていながら家に入る事…演技でも違和感は無い。


「甘いなあ…甘すぎるよ宮間くん。それほど甘かったら、追跡だって朝の誘い方だってバレちゃうよねぇ。まぁ、いい機会だし教えてあげるよ。」

そう嘲笑しながら柴原は続ける。


「僕たちのミス…それは鳥谷くんの家に入った事。何故かというと…鳥谷くんは本来この時間ならランニングをしているはずなんだ。毎日、雨の場合を除いて。僕たちの当初の案は、トレーニング中の鳥谷くんに対して襲う事だったのだけれど、本来これは僕たちが家に入っていく事に矛盾が生じるわけさ。分かりやすく言うとね、


鳥谷くんは11時から12時の間トレーニング

それに乗じて僕たちは襲う予定だった。


しかし、今日鳥谷くんは宮間くんと居る。

つまり、トレーニングしてない訳だ。


宮間くんは鳥谷くんが本来今の時間がトレーニングの時間だったという事を知っていたはずなんだ。


という事は?僕たちがそれを知らないわけが無い。なのに…トレーニング中のはずで不在の鳥谷くんの家に入ってしまった事。


これが僕たちが起こした最大の矛盾であり、ミスだったんだ。


僕たちが正解なのは、わざと鳥谷くんがトレーニング中の所を探す行動を取らなければならないのだけれど…それだと君たちを拘束する事が出来ないと思ってねぇ。


これに気付いていたら、宮間くんたちは何らかの対処を事前にできた筈だぁ。


そうでしょ?」


「!!!!」

(俺は何というバカなんだ!!??鳥谷と話をしている時に、何気なく言っていたトレーニングの事。俺はうっすら気づいていたんだ。トレーニング中の鳥谷を殺した事。そのフラグを完全に忘れていた…)


何の反抗も反論も抵抗も出来なかった。


「な、なぁ宮間…俺たちはここまで来て…また同じ事を繰り返すのか?ここで終わっていいのか?」

鳥谷からこみ上げる悔しさのこもった言葉を受けとる。


ここで終わっていい筈が無い。

ここで立ち止まっていい筈が無い。

ここで留まっていい筈が無い。


もしかしたら、俺の死から回帰する能力はもう使えないかもしれない。

鳥谷を殺させたくない。

俺はもう殺されたくない。


俺は考えた。

この刹那の中で。

脳に血流を、電流を走らせ


(そうだ!ここで誰にも見つからず殺す…それを阻止するには誰かに気づいてもらう…つまりここでコイツらが殺そうとしたという「証拠」を残せばいい。)

俺はそう思った。


そして…


「誰か助けてくれぇぇぇぇぇええええ!!誰かぁぁあ!!頼む!殺されたくなぁぁぁぁあい!!」


俺はありったけの力を振り絞り町中に聞こえるように、むしろ世界中に聞こえるように…助けを求めた。俺たちを殺そうとするコイツらを殺人未遂で逮捕してもらう為に…俺は叫んだ。


「お、おい!黙れ!!うるせえぞ!」


「黙れつってんだよ、クソがぁぁ!」


花木と田辺が焦って黙らそうとした。



刹那…俺は目の前に足のつま先が高速で向かってくるのが見えた。


そして俺はその後の事を覚えていない。




第4話

最後と最期




俺は目を開くと薄暗い空間に居た。

どこなのか、何時なのか全く分からない。


わかっている事は、夜である事、そして俺の左隣で話している3人…

それだけだ。


鳥谷は見当たらない。

どこに行ってしまったのだろう。


そんな一抹の不安とともに、自分の置かれている立場を把握する事に努める。


(確か…俺と鳥谷は3人に捕まって…俺は誰かに顔面を蹴飛ばされ…そこから覚えがない。


ここに鳥谷が居らず、そして3人がいるという事は逃げ延びたか既に殺されたかの2択。


しかし、大声で叫んだ事からして、あの付近では殺せないはず。さらに、もし鳥谷も気絶…あるいは殺されたとして3人で2人の体を素早くあの場所から移すのは難しい。


そうなれば自然と鳥谷があの場所から回避できたという訳だと確信した。)


「お、やっと目が覚めたか?」

田辺の姿がその後ろの窓の月明かりが逆光となり、黒いシルエットのみが語る。


「と…鳥谷は?」

顔面が歪むほど痛い。

鼻が多分折れている。

声を出すのも辛い。


「あぁ、あのヒョットコね。あいつは逃げたよ。俺たちは、気絶したお前を人質にして、ナイフを振り回し始めた鳥谷を落ち着かせたのさ。」

嘲笑するように話す。


「宮間くん。君からの質問の受付は以上です。これからは僕たちの質問に正直に答えて頂くので、くれぐれも言葉には気をつけて下さい。」

冷徹で冷酷な言葉を発したのは柴原だ。右手には棒のような物を握っている。


「ちなみに、1つだけ教えといてあげる。鳥谷くんは、あのまま逃げられてしまっては僕たちも捕まってしまうのが早まるだけかと思ってね。持ってきていた縄で縛り上げて隣の教室に放置してあるよ。君たち2人を殺せばそれで今日はお終い。それだけだよ、それだけ伝えておくね。」


(!?隣の教室?って事はここは学校…そして何もない空間…となると3階の1番東の教室!鳥谷は縛られていて身動きが取れない…ど、どうする…!?)

俺はこの先、殺されるという抗えない未来…これにどう抵抗するか考えた。


しかし、その思考時間を妨げたのは柴原の拷問だった。


「では宮間くん。これから質問をします。正直に答えてくださいね。」

柴原がニンマリと笑顔を作る。

その笑顔は月明かりが影を作り出し不気味な笑顔になった。


「では質問1.宮間くんは僕たちが鳥谷くんを殺す…という計画を知っていましたか?」


「知らないよ。ただ今日は鳥谷と遊びたくて誘っただけだし。」


その瞬間左脇腹に激痛が走った。

脳がその痛みを感知する前に、反射神経は痙攣を起こした。


「さっき正直に…って言いましたよね?なぜ嘘を付くのですか?早く正直に答えないと、死んじゃいますよ?」


柴原はそう言って右肩に棒を担ぐ。


「お…俺は知っていた。お前らが怪しかったと…思った…。」

痛みと戦いながら懸命に言葉を絞る。


「なぜ怪しいと思った?」


「これまでお前らは…仲が良いと感じていなかった…だけど、昨日の昼休みとか…一緒に行動していた…だから。」


「なるほどね。でも殺人なんていう計画を1高校生がすると思うかい?ただクラス委員長とチャラい男子高校生2人がつるみ始めたことが、鳥谷くんの殺人には予想はつけられないだろう?」


「俺は…君たちがここの教室に入っていくところを見たんだ。気になって…教室のドアの外から話す声を聞いていた。そしたら、君たちの話から、異様な声が聞こえたから…だから…鳥谷に相談しようと思って。」


そう言った瞬間今度は右の脇腹に激痛が走った。思わず叫び声を張り上げてしまった。

感じたことのない衝撃を2度も味わい…もう耐えられそうに無かった。


「辻褄が合わないよ。確かに計画をしたのは昨日の昼休みだが、君は朝から既に慌てて鳥谷くんを誘っていた。昼休みに怪しいと感じ始めたなら、朝の時点で慌てるはずは無いだろ?」


「そ…それは…。」


俺は過去に2度経験した殺人の被害者。そして2度蘇ったこと。全て話せば楽になると思った。でも…コイツらが今信じると思えない。言えばまた…殴られる。そんな恐怖が口を閉ざした。


「本当のことを言わねぇと、マジで殺されるぞ?」

花木がドアにもたれかかり腕を組みながら話す。


「僕たちはね、人狼ゲームが始まってしまったことに非常に恐怖を感じた。君たちは知らないと思うし、もちろんこの2人もそんなこと知らない。でもね、僕だけは知っていたのさ。


なにせ《人狼》という役柄だったからね。でも1人ではクラスメイトを殺していくことなんて出来なかった。


だからね、仲間を増やしたのさ。花木くんと田辺くんを。ちょうど田辺くんは父親から聞いた過去の話を知っていてね。それで取引をしたのさ。


田辺くんたちを生かしておく代わりに、皆んなを殺す手伝いをして欲しい。もし僕自身が死ねば君たちは生き残れるし、人狼ゲームは終わる。


でも、君たちがクラスにそのことを言いふらして良いが、僕はクラス委員長。そしてみんなからも信頼が厚い。


そんな僕をクラス全員満場一致で人狼と見なすか。


と言った取引をね。

それでもって今に至るというわけなのだよ。

でもこのことについては君は知らないはず。


しかも昨日の昼休みまでは。」


俺は考えた。

朝必死で鳥谷を誘ったこと。

その理由について。



「朝は…俺もそんな事知らない…朝焦っていたのは、昨日の夜鳥谷から…電話があって、母親が事故に巻き込まれたって聞いたんだ。鳥谷の家庭は母子家庭で、母親は深夜もアルバイトをしている。


そんな生活の要であって、大切な肉親が事故に巻き込まれたって聞いて、朝そのことについて早く聴きたくて…それで。」


必死に取り繕った。

バレるかもしれない恐怖を振りはらい

俺自身が朝焦りそうな事象を考えた。


「どこで事故があったのか…聞きました?」


「そこまでは聞いてないよ。ただ、鳥谷とその母親が心配だったから。」


必死でバレ無いように恐怖心を悲しみの心に足して答えた。



そして柴原が次に発した言葉は空気が一瞬で凍りつかせた。


「で、そんなガセネタが僕たちに通じると思っての言葉?昨日そんな事故が市内にあったなんて聞いていないし、むしろ母親が事故ったなんて言う事柄を友達にすぐに話すか?そんな時間があるなら他のことができるのでは?」


俺は…何も答えられなかった。

何も出来なかった。

何も抗えなかった。


街の遠くの方から警察のサイレンが鳴り響いている。今日も警察は街の平和を守るため奔走しているらしい。


ふと俺はここに来て欲しいと…願った。

そんな泡な期待を…願った。


「君と話していても、埒があかないよ。死んでくれるかな。」


俺は今回も前回も前々回も…全て結果的に死ぬことしか出来なかった。そう諦めた。

もしかしたら、今も拘束されている鳥谷も、この後殺されるかもしれない。


結局…今回も生き延びれなかった。


「1つだけ…聞きたい、死ぬ前に」

哀しみが露わになった言葉を発する。


「まぁ、死ぬ前だし許可します。」


「柴原は何故《人狼》だと認識したんだ?」

このリアル人狼ゲームが俺を苦しめたがその真相にたどり着けていない。


柴原は少し意外そうな顔をしてから返答した。

「これは【現象】って田辺くんの父から聞いたんだ。抗えない現実なんだって…言われたんだ。」


(そういえば、クラス会議で田辺がみんなに吹っかけた『リアル人狼ゲーム』あれは本当だったと俺は確信した。)


「僕はいつから《人狼》だったか分からない。認識した時には既にそんな役柄が植えつけられていた。クラスメイトを殺さなければ自分が死んでしまうと。


それでね、調べたんだ。この現象について。

そしたら田辺くんの父が実際の体験者だったという情報を得た。そして…田辺くんには僕が人狼だということがバレてしまった。


それで取引をしたって訳ですね。田辺くんの父親から色々聞かさせて頂いた。


この現象が起きるには条件があるらしい。

①クラスで人狼ゲームが流行っていること。

②クラスに《人狼》と《占い師》がいること。


これらが発動条件だと聞いた。

父親も当時の《人狼》から聞き出したらしい。


でも占い師は見つからなかった。

僕は今日の行動から、君が占い師だと予想したのさ。人狼にとって占い師は脅威。だから殺す。


これがリアル人狼ゲームの真相です。」


「!!!!!」

(占い師!?占い師とは普通の人狼ゲームなら占い師はゲームマスターから占い師が怪しいと思った人物が何者なのか知れる人物…


俺は死ぬ事で《人狼》を知れた…つまり俺は占い師…という役柄だったという訳なのか?)


俺は2回死んだ…

その事は自分でも思い出した。

しかし、気になる点が1つある。


それは、1番最初に見た夢だ。

俺が1回も死んでいない…つまり、初めてひどい夢を見た事を含めると…3回死んだ事になる。


整理すると

朝の殺される夢

一回目の死(刺殺)→殺される夢を見た後6月15日の再開

2回目の死(撲殺)→殺される夢を見たあと再開

今回


つまり、1番初めに朝の殺される夢…それ以前にも俺は1回死んでいるという事…こういう仮説ができてしまった。


これを合わせれば俺は4回目の死。


しかし、俺は今考えが思いついても…時既に遅しであった。


「俺は実は4回も死んでたって訳か。あはは」


「何をおかしな事を言っているんだい?君はもう生かしておけない。ここで死んでもらうよ。」


「あぁ、もう詰みだからね。最後に1つだけ…俺は多分占い師。君たちが犯人だった事朝から知っていたのは4回も君たちに殺されたからだ。これで俺が死ねば、5回目以降はあるか知らない。でも俺は君たちの事を一生呪い続ける。


鳥谷を殺した事も

榊原さんを殺した事も

俺を殺した事も


それも今回で4回もね。

もし、俺が殺されても、もしかしたら次にもう一度6月15日の朝からやり直せるかもしれない。


その時は覚悟しておいてね。」



俺は呪いをかけるように唱えた。



柴原たちは唖然とした表情を見せた。



そして、柴原は取り憑かれたように右手に握りしめた棒を俺の顔面へと振り下ろした。



何度も


何度も


何度も




俺は視界が真っ暗になって


痛みが遠のいて


そしてその後は知らない。








第5話

空白と告白





「もしもし?警察ですか?今すぐ各原高校の3階まで来てください!」

鳥谷は、小さな声で電話する。


「事件ですか?事故ですか?」


「んな事よりはやく!殺されそうなんだ!!助けてくれ!!」


「はい、分かりました。すぐに向かわせますので。詳しい事情話せますか?」


「いや、無理だ。俺は縛られている。護身用に持っていたナイフもどこかに無くしちまった。両手両足を前で縛られて、教室で寝かされている状態だ。それより、友達が隣の教室でさっきから叫んでいるんだ。早くしてくれ!俺も大声が出せない。気づかれちまう。」


「分かりました。状況は後ほど伺います。今隊員が向かっておりますので、もう少々辛抱下さい。」

警察官も、状況が異常である事を察知してくれたようで、冷静ながらも素早く対応してくれているように伺えた。


「分かりました。教室は3階の1番東の教室なので、お願いします。」

慌ててそう言って切った。



隣の教室から叫び声が聞こえる。

宮間の声だ。



縛られたまま、何もする事のできない鳥谷にとって、宮間の声を聞く事がどれ程悲痛だったのか…判らない。




どこか遠くの方から警察のサイレンが聞こえた。


多分先ほど通報した時の警察官たちが、一生懸命助けに来てくれようとしているのだろう。


しかし、縄を全身に縛られていても体自体は動く。


鳥谷は警察が来るまでの時間を稼ぐために必死に教室のドアまで、もがきながら匍匐前進のように動いた。


こんなハンデを背負って何ができるか分からない。



でも…親友を殺されるわけにはいかない。



その衝動だけが鳥谷を突き動かした。



ドアをどうにか開け、隣の教室に何とか辿り着く。汗はもうダラダラだ。



緊張感と

圧迫感と

恐怖感と…

いろんな感情が心を蝕む。



それでも、目の前の重いドアを

力一杯開けた。



そこには



壁に吊るされて血だらけの宮間が

力なく時を止めていた。



凍りつくような空気



激しい恐怖



行き場を無くした憤り



親友を亡くした悲しみ



助けられなかった悔しさ



助けてもらった罪悪感



もっと早く行動していればという後悔



宮間を殺した犯人への憎悪



無念だった。

何もかもが。



廊下からぞろぞろと足音がする。

誰か大勢の人たちが来たようだ。


もう…何も分からない。

もう…何も感じない。

もう…何も言えない。








あれから何日経ったのかな。


柴原たち3人はその後取り押さえられ捕まった。


そしてクラスではようやく登校許可が下りた。


これから学校だ。久しぶりの。




教室には4人を除いたみんなが既に集まっていた。


鳥谷は自分のカバンにしまっておいた手紙を取り出す。


「みんな、ちょっと集まってくれるか?」

鳥谷は少し寂しそうにクラスに話しかける。


ざわついていた教室は静寂と化し

みんな席に着く。


「宮間が残してくれた手紙があってだな、それを教室みんなに共有しようと思ったんだ。内容はまだ俺も知らない。」

鳥谷は静かに話す。


「それはいつ貰ったんだ?」

岩木が話し出す。


「これは殺される前に事前に貰ったものだ。宮間からは俺がもし死んだ時に見てくれって頼まれた。」


「お前もまだそれを見てないの?」


「あぁ、約束だったから。あと気持ちの整理が出来ていなかったのもあるし、恥ずかしい内容って言ってたから当時は見れなかった。」


「そっか。ごめんじゃあその手紙読んでくれないか?」


「分かった。」



そうして宮間が残した手紙を鳥谷は読んだ。


「この手紙を読んでいるってことは俺は殺されたってことかな。

 

 俺が5月に転校してきて、人見知りだった俺を誘ってくれたのは鳥谷だった。岩木とか丸山とかみんな俺を仲間にしてくれてすごく嬉しかった。

 

 でも俺は殺される運命からは逃れられなかったみたいだね。鳥谷と榊原さんが殺されて、綾瀬さんや赤沢さんたちが悲しんでる顔を見て、恐怖に慄くみんなの顔を見て、俺は何とかしなくちゃって思った。

 

 何を話しているかみんなにはさっぱりだと思うけれど、これは全て現実で真実で改変してきたことなんだ。柴原くんたちが犯人だったことは3回殺されてやっと分かった落ちこぼれだけど、みんなの事守れたかな。


鳥谷には一応俺が置かれた状況を一部始終話した。みんなのことを巻き込みたくなかったから黙っていたんだ…ごめん。詳しい事は鳥谷から聞いてほしい。


もし信じられなくても…信じてほしい。


 もう少しみんなと居たかったけれど、まあこれからは見えないところで見ていることにしようかな。


 クラスのみんな、こんな俺と居てくれてありがとう。この記憶は時間とともに薄れていっちゃうかも知れないけど、少しでも時々思い出してくれるといいな。


 みんなこれまで本当にありがとう。どうか幸せな人生が送れることを陰ながら願っています。」


 ……あいつは、この事件を未然に知っていて……俺たちをどうにかして…柴原たちから守ってくれたんだ。 感謝しても仕切れないけど、俺たちは宮間のことを…忘れない…」




教室は涙の湖と化していたという。


数分は誰もしゃべらず沈黙が続いていたという。



「あ、あともう1つ。綾瀬さん宛にだってさ。」


「……っ何?」


もう一枚めくると綾瀬さんへの手紙が残されていた。それを鳥谷が読み上げる。


「俺がみんなから疑われている時、庇ってくれてありがとう。2回も庇ってくれたよね。 


 たぶん綾瀬さんには、何言ってるのか皆目見当もつかないとは思うけれど、俺はあの時綾瀬さんの行動に救われたんだ。だから頑張れた。


 君は泣き顔よりも笑顔の方が素敵だと思う。だからこれからもたくさん笑っていてほしい。一応俺は君のことを『大好きだった』ということで。俺は綾瀬さんの返答は聞けないけれど、心の中で返事しておいてください。それがYesでもNoでも喜んだり憎んだりなんてしないよ。ただ『大好きだった』ってことを素直に伝えたかった。出来れば生きている時にね。


 だから…何というかこれからも素敵な綾瀬さんのままでいてほしいな。じゃあね。」


「…っ何よそれ…笑わせないでよ……バカ」

いつも高飛車な綾瀬さんは、今回は悲しそうに泣いていた。


宮間が経験した事は、綾瀬さんには理解できないかも知れない。


でも、それでも何故かみんなそれについて真実であると確信して、それでもって理解した。



今日も空は青くて。


今日も日差しは強くて。


教室には笑顔が溢れていて。





俺は


それを


外から見ていた。


ずっと。ずっと。




                 死別編 完







Re.Lifeは以上となります。

読んでくださり本当にありがとうございました。
























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