森の白狼編~ギルド登録は完了です~
短いですがこれでギルド登録については終わりです。
「まぁ、私としても妹みたいなシーラちゃんが危ない目に遭うのは反対ね。」
落ち込んでいるギルドマスターの回復を待ってるとメリアさんが話しかけてきた。
「だ、大丈夫ですよ。レンリさんはそんな事しませんから!それだったらとっくにや、やられてますから!」
シーラさんが顔を真っ赤にして反論する。
「ふーん、ならいいけど。レンリ君、もしシーラちゃんを傷付けるようなら冒険者ギルド受付嬢の立場を利用して仕事出来なくするからね?」
メリアさんは笑顔でいうが目が笑っていないので正直怖いんですが。
「だ、大丈夫ですよ。そんなことするつもりならとっくにしてますよ」
「…ならいいけど、気を付けてね」
少し疑うような顔をしているがなんとかメリアさんに許可を貰うことが出来た。
「マスター、これなら大丈夫ですよね。私から見てこの子がシーラちゃんを襲う勇気なさそうですし、いいんじゃないんですか?」
「うぅ、なんなら私が宿代渡せば…」
「ギルドマスターが1人の冒険者にそんな事すれば問題になりますよ?いい加減に認めてあげてください。じゃないと本当に口すら聞いて貰えなくなりますよ?」
「そ、それは…うぅ、分かりました。一応…一応一緒に住むのは許可します。ですがシーラ君に何かしたら許しませんからね」
ギルドマスターは心底悔しそうな顔をして俺を睨み言い放つ。
「まぁ、話が纏まった所でさっき言えなかった冒険者ギルドについての続きの説明をするわね」
メリアさんが話を割って入り、ギルドの説明を始める。
「ギルドの説明はシーラちゃんからどこまで聞いてるの? 」
「ランクの話とどんな仕事があるか、後はEランクの討伐は魔核を提出することで依頼完了ってぐらいですね」
「うーん、間違っては無いんだけど、依頼によっては魔物の素材もいる場合もあるから依頼を受ける時には気を付けてね。後は素材があれば冒険者ギルドで買い取るから出来る限り素材も持ってきてくれると助かるわ。あと、受けられる依頼は自分のランクより1つ上までだからね」
メリアさんは前回シーラさんから聞けなかった情報を説明してくれる。
シーラさんを見ると気まずそうな顔をして俺から目をそらしている。
言い忘れたことを思い出したのだろう。
「で、次はランクの昇格についてなんだけど。G~Cランクまではある程度の実績があれば、依頼完了後の貢献度を参考にして昇格をギルドで判断し昇格させるわ」
「貢献度は依頼完了後にギルドがギルドカードに入力するポイントです。基本は依頼完了後ですが、ポーション等が不足している時に大量に寄付してくれたり等、ギルドの為に貢献活動をすると加算されます」
メリアさんの説明にギルドマスターが補足を入れる。
「けど、それだと貴族が大量の寄付金をした時に実績無視でランクが上がってしまうんじゃないんですか?」
「いえ、それはありません。冒険者ギルドはあくまで国に属さない自由組合です。ギルドが緊急事態にならない限り、そのような行為は禁止されています」
「まぁ、たまにいるんですけどね。貴族の三男坊が財力を使って手っ取り早く高ランクになろうとしたりするし」
メリアさんは頬に手を当て、ため息を吐く。
「こればかりは受付嬢達に頑張って貰うしかありませんね。あまりにも悪質な場合は私が出て注意してもいいのですが、私がいつでもいるとは限りませんので」
「分かってます。私達もそんな事でマスターの手を煩わせる訳にもいけませんので」
「もし何かあれば力を貸すので言って下さい。出来る限りなんとかしてみます」
「ありがとうございます。さて、説明の続きね。残りのBランクからは貢献活動もそうだけどギルドマスターから与えられる試験を受けなくてはいけないの。例えば、高ランクの魔物討伐や貴族、王族に対する礼儀作法とかをギルドマスターから認めて貰わないと昇格は出来ないの」
礼儀作法か。
日本での礼儀作法がこちらの世界で通用するのだろうか。
もしそこまでランクが上がったのなら1度ギルドの職員に聞いてみるのもいいかもしれないな。
「まぁ、説明はこんな感じよ。また分からないことがあったら聞いてちょうだい。それじゃ、この紙に必要事項の記入とこっちのギルドカードに血を垂らして貰える?」
メリアさんはこちらに来るときに受付から持ってきた契約書と無記入のギルドカードを俺に渡す。
俺は言われるまま契約書に記入し、シーラさんが持っている剥ぎ取り用のナイフを借りて指を切りカードに血を垂らす。
すると血がついたカードが発光し、俺の名前が表示された。
「これで登録は以上よ。契約書はこちらで預かって、なにかあった際にげ再発行には銀貨1枚掛かるから無くさないように気を付けてね。で、登録代はシーラちゃんが払うのかしら?」
「あ、はい。依頼で稼いでシーラさんに返すつもりです」
「ふーん、ならいいけど。ちゃんと返すのよ?」
メリアさんから念を押される。
そこまで信用なさそうなのだろうか。
「大丈夫ですよ。レンリさんはそんな人じゃありませんから」
シーラさんが信じてくれるのは有り難いが、ここまで無条件に信じてくれるとなると悪い人に騙されないか心配になるな。
登録を終えたので、会議室を出て1階に戻ると左右からざわめきが聞こえる。
なんだか碌でもなさそうな感じがしたので放置しておくことにしよう。
「メリアさん、今日は他に行くところがあるので帰りますね」
シーラさんがメリアさんに一言を声掛け、出口に向かう。
「わかったわ。帰り道気を付けてね」
メリアさんは俺達に手を振り、俺達も手を振り返しながら冒険者ギルドを後にすることにした。
「シーラさん、ずっと黙っててすいませんでした」
冒険者ギルドの建屋を出たところで俺はシーラさんに頭を下げた。
事情が事情とはいえ、命の恩人を騙したことには変わりないのだから。
「あ、頭を上げてください!あんな内容ですもの仕方が無いですよ。私は気にしてませんからどうか頭を上げてください!」
シーラさんは慌てて俺のフォローして頭を上げるように言ってくれた。
本当にいい子だなぁ。
「ありがとうございます。シーラさんは優しいですね」
そう言うとシーラさんの顔がまた真っ赤になった。
「そそそ、そんな事ないですよ。もー、女の子をからかわないでください!そんなことばかりしてると今日の夕御飯を無しにしますからね!」
「うぇ、そ、それは勘弁してください」
まだ日は高いがこの世界では日暮れぐらいになると早めに家に入り、寝ることが多い。
なのでもし食いっぱぐれると一晩空腹にうなされて過ごすことになるので本当に勘弁していただきたい。
「じゃあ、絶対に女の子をからかっちゃだめですからね。わかりました?」
「は、はい。わかりました」
シーラさんの迫力に負け俺は頷く。
俺としては別にからかったつもりは一切ないのだが。
「ならいいです。それじゃ、今から武具屋に行くので着いてきてください」
シーラさんはゆっくりと歩き出す。
俺は慌ててシーラさんの後に着いていくことにした。