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森の白狼編~現れた狼少女~

 魔方陣の光が収まると目の前には青空が広がっており、横見ると近くに大きな山脈があり近くには町も見えた。

 そして魔方陣が消え俺は空から落下していった。


「うわぁぁぁぁ!!??あの馬鹿女神の奴なんて所に召喚してんだ!!」


 このまま地面に叩きつけられたら確実に死ぬ。

 あのバカ女神、転送先の確認ぐらいしておけよ!

 そうしている間にも俺は落ち続け、下を確認してみると森が広がっていた。

 いちかばちか俺は木をクッションにして地面に落ちた時の衝撃を抑える事にし、内臓を強打しないように体を丸め腹を守る。


 バキッ!

 バキバキバキバキバキッ


 たくさんの枝を折りながら落ちていく。

 枝葉で顔や体が擦り切れボロボロになり、もう意識を保つのもつらい。

 そして地面につく直前一際太い枝が右足にぶつかる。

 痛いッッッッッッッッッ!!!

 あまりの激痛に声もでない。

 そして、そのまま地面に激突する。

 痛い思いをしてなんとか命は助かったようだ……けど激突した痛みに意識が遠くなる。


 ガサガサッ。


 意識が消える間際、1人の女の子が藪を掻き分けて出てくる。 

 その子は腰まで伸びた雪のように白く輝いたプラチナブロンドの髪にルビーのような赤く綺麗な眼をしている。

 女の子は俺に声をかけていたが俺は気を失った。


ーーーーーーーーーーーーー


 次に目が覚め周りを見回すと木で出来た家のベッドで寝ていた。 


「さっきの子が助けてくれたのか……」

 

 上半身を起こすと、全身に刺すような痛みが走る。

 あの高さから落ちて、よく五体満足で生きてたもんだ。

 もしかしたらあの女神が痛みに強い体に作り直してくれたかもしれない。


「目が覚めたみたいですね」


 声をする方を見ると気を失う前に見た女の子がお盆のような板に木の器に入れたスープらしき物を乗せて立っていた。

 よく見ると頭には2つの犬耳が付いていて、お尻の辺りには尻尾らしきものも見える。

 あの時はちゃんと見てなかったからわからなかったけどこの子凄く可愛いな。

 美人と言うより可愛い系であり、地球の並みのアイドルなんかより可愛い子だった。


「あなたが助けて……くれたんですか?」


「はい。と言っても倒れていた貴方をベッドに寝かせていただけですよ」


 女の子はベッドの近くのテーブルにスープを置き、椅子をベッドの側に持ってきて座る。


「ありがとうございます。俺はどれぐらい寝ていましたか?あなたは一体……」


「3日ほど寝ていました。私はシーラ。この森に住んでる白狼族の獣人です。あなたのお名前は?あなたこそあそこで一体何をしてたんですか?」


 優しそうな顔をしているが俺を怪しむような目で見ている。

 まぁ普通に知らない男が生活範囲内で倒れてたら誰だって怪しむだろう。


「……レンリ・キリュウ……名前ならなんとかわかるんですけど、他のことは分からないんです。気が付いたらここにいて、昔の記憶が無いみたいです……」


 こういう時にライトノベルで得た知識は役に立つな。

 確かライトノベルならこういう時になると主人公が記憶がないふりをする。

 本当のことを言っても信じてもらうのは難しそうだし、俺はそうして誤魔化すことにした


「そうですか……それにしても凄い治癒力ですね。ここに連れて来た時は全身ボロボロでいつ死んでもおかしくなかったのに、今じゃ足の怪我以外傷も無くなってますし……人族にして異常なくらいです」


 確かに俺からしてもこの治癒力、耐久性は異常なぐらいだ。

 あとから女神にもらったメモを見ておくべきか……


「全身に痛みはありますけどね……わからないけど、たぶん体質だと思います。記憶が無いからなんともいえませんけどね」


「…………わかりました。ともかく足の怪我が治るまでここにいてください。ここの魔物たちも弱くはないですし、その怪我じゃ町に着くまで襲われて殺されてしまいますから」


 少し怪訝そうな顔していたシーラさんはテーブルに置いていたスープを手に持ち、俺に渡す。


 「丁度、お昼ご飯を作っていたのっていたので持ってきました。シアの実と一角ラビットの肉を煮込んだスープです。お口に合えばいいんですけど……」


 手渡されたスープはシチューに似ている。

 シアの実がどんなものかはわからないがパッ見た感じニンジンみたいなオレンジ色をしている。

 おそるおそる食べてみると、まるで完熟トマトのような味が口のなかに広がる。

  

「お、美味しい!」


「それは良かったです。シアの実の表皮はそのままだと苦みが強いのですが、煮込むとその苦みが旨味に変化して美味しくなるんですよ。それに栄養価も高いので、体にも良いんですよ。一角ラビットの肉も是非食べてみてください」


 そう言われブツ切りに切られた肉を食べてみると、煮込まれて柔らかくなった肉に完熟トマトの風味が染み込んでいて美味しい。


「ほんとに美味しーーーゴホッゴホッ」


 一気にがっつきすぎてむせてしまった。

 

 「ふふふ、そんなに焦らなくてもスープは逃げませんよ。おかわりもありますからゆっくり食べてくださいね」

 

 シーラさんはクスクスと笑い、水を渡してくれた。


 「あ、ありがとうございます」


 「いえいえ、それじゃ私は少し外に出てくるのでゆっくりしていってくださいね」


 そういうとシーラさんは上着を手に取り、部屋から出ていき、俺は部屋で一人になった。


 「ふぅ、どうやら警戒を解いてくれたようだな」


 安堵の息を吐き、俺はポケットから女神から貰ったメモを取り出した。


 『霧生さんへ。このメモを見ている時私はもう生きてはいないでしょう……………………って冗談は置いときまして、女神のセフィラです。このメモには貴方を送り出したときに付け足しておいた特典外のオマケについて説明します』


 ふざけた書き出しだったが、内容はいたって真面目な内容だった。

 書かれていたことは身体についての変化のことだった。

 大まかに変化した点は4個あった。


・身体能力の強化

・自然治癒能力の強化

・異世界言語の読み書きの自動変換

・自身のスキル確認能力


 身体能力と自然治癒能力の向上は文字通り、身体能力と自然治癒能力を強化したものであり、この2つのお陰でなんとかあの落下から助かることができたものだ。

 まぁ、人間離れしているが。

 次の異世界言語の読み書きの自動変換は俺がこちらの言葉を話したり、文字を書いたりする時にこちらの言語に自動変換してくれる便利なスキルだ。

 そのお陰でさっきのシーラさんと問題なく会話することができた。

 最後の魔法、スキル確認能力は魔法やスキルを修得した際に発動する能力で、俺が修得した能力の詳細確認などができるようになるスキルだ。

 名前だけじゃ分かりにくい魔法、スキルもある為非常に助かる。

 一通り確認した後、俺はメモを再びポケットの中にいれ、窓から外を見る。

 森の中で分かりにくいがどうやらもうすぐ日が暮れるようだ。

 するとドアの開閉する音がした。シーラさんが帰ってきたようだ。


 「ただいま戻りました」


 シーラさんが部屋の中に入ってきた。


 「シーラさん、お帰りなさい。どこに行ってたんですか?」


 「夜になると魔物が出てくるので魔物避けの結界を張ってきました」


 シーラさんは上着を脱ぎ、近くの椅子に座りながら言った。


 「結界が張れるんですか?すごいですね」


 そういわれるとシーラさんは少し顔を赤くし嬉しそうに尻尾が動く。


 「結界と言っても簡易なものですし、道具と少しの魔力があれば誰にもでもできますよ。キリュウさん、身体の調子はどうですか?」


 「ゆっくり休ませて貰ったお陰で元気ですよ。足はもう少し治癒を待たないといけませんが…」


 俺は苦笑しながらシーラさんに伝える。


 「そうですか。もしキリュウさんが良ければ怪我が治ってからもうちにいてもらっても構いませんからね」


 「あの、なんでシーラさんは俺を信じられるんですか?記憶がないって言っても、シーラさんから見れば俺は十分怪しい人間です。助けるメリットなんてないはずです」


 「……そうですね。あなたをここに入れたのはあなたが私に対して敵意、悪意を持ってなかったからです」


 「敵意や…悪意ですか?」


 「さっき張ってきた結界ですが魔物以外にも敵意、悪意を持つものを感知するようになっているので、反応しなかった怪我をした貴方を家に入れることにしました」


 ずいぶんと高機能な結界だな。


 「反応しなかったのは俺が気絶してたからじゃないですか?」


 「それはありません。それならあなたが起きてから既に結界が悪意を関知しているはずです。それに……………だったから」


 するとシーラさんは下を向き、小さな声で言う。


 「すいません。この事はまた今度言います。今日はもう失礼しますね。おやすみなさい」


 そう言うとシーラさんはいきなり部屋から出ていった。

 

 「どうやら事情があるみたいだな……」


 俺は浅くため息をつく。

 まだ治癒途中のせいかまた睡魔が襲ってきたようだ。

 とりあえず体力回復の為にも再び寝ることにした。

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