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闘技の街の赤竜編~疑惑の犯人と大会参加決定~

 「「えっ?」」


 いきなりの事に俺とシーラは間の抜けた声を出してしまう。


 「おい、いいのか?まだ人拐いの話も解決しねぇじゃねぇか」


 確かにそうだ。

 何を書いてあったかは知らないが放って置いて言い話ではないはずだ。


 「いやいや、それに関係あるんだよ。これに書かれていたのは先生が調べていたある貴族の事でね。毎年ある時期になると幼い子供達が余所から連れられてその貴族の愛玩になっているらしいんだ」


 「それって……まさか!」


 シーラも俺と同じことを考えたのか声をあげる。

 恐らくその子供達というのがこの町で拐われた子供達なのだろう。


 「恐らく……だけどね。その貴族の名はローリス・フォン・コンディスター男爵……ここから離れた土地を治めている貴族だよ。元々貴族の社交界でも幼女趣味と噂になってたけど……まさか犯罪を犯してまで子供達を集めるなんて……」

 

 「よし!犯人がわかったらあとは捕まえるだけだな。そいつは自分の領地を出てこねぇのか?」


 「バルガナまだ決定的な証拠はないから男爵が犯人と決まった訳じゃないよ。ちなみに彼自身はこの町に来るよ。あの男爵は催し物も好きだからね。そのついでに商品の下見をするんだと思う」


 確かにまだ決定的な証拠はないので犯人と決まったわけでなく糾弾することはできない。

 だがそれでもこの男爵がこの事件を解決するための唯一の手がかりである。


 「それで俺とシーラが大会に参加するのは何でなんでしょう?見張ったりした方がいいんじゃないんですか?」


 「それはね。コンディスター男爵は金遣いの荒い人間でも有名で金を集めるために犯罪すれすれな事もするらしいんだ。その集めるための手段の一つが今回の闘技大会なんだよ」


 「なるほど、狙いは大会上位者に出る賞金ですか?」


 現地でお金を手に入れれば、違法奴隷商から購入できる人数を増やしたり、質を上げることが出来る。

 貴族である男爵が参加するなど恐らくはない。

 そうなると私兵を参加させるのだろうか……


 「話が早くて助かるよ。大会では上位三名までは賞金が出るんだ。そして彼の使いである男はここ何年か連続で優勝している」


 「決まりで仕方ないとはいえ資金を提供してしまっているってことですね。もしかして俺達はそいつが優勝しないように妨害を?」


 「いや、単に参加するだけで構わない。先生が評価している程の人物だし、期待はしているんだ……欲を言えば上位入賞してもらえると助かるかな……領主としてよろしくない発言だがね」


 あははと小さく苦笑いする領主様。

 確かに領主という立場で今回の大会を運営する以上選手に贔屓を作るわけにはいけない。

 わかってるがそれでも事件解決には必要だと判断したのだろうな。


 「シーラ……大丈夫か?」


 隣にいるシーラに声を掛ける。

 元々参加したいと言っていたシーラだったがこの騒動と同時になってしまうなんて事、俺も思ってもみなかっただから心の中ではきっとテンパっているだろう。

 と思っていたのだが……


 「……う、うん!元々参加したいと思ってたし、それが皆のためになるなら頑張る!」


 少し悩んでいたが返事は早かった。

 シーラがこう言う以上俺はもう止める必要はないので俺はいくつか聞きたいことを聞かせてもらうことにした。


 「シーラもこう言ってますし、それなら俺も参加させてもらいます。もしよければ二つほど聞きたいことがあるのですがいいでしょうか?」


 「なんだい?ある程度のことなら便宜を図るよ」


 「ありがとうございます。まず1つ目は俺とシーラの命に関わる事態になった場合依頼の放棄の許可を。2つ目はバルガナさんにスラムで行われている賭けのことを教えてもらいと思います」


 少しわがままだがこれは確認しておかないといけないところだ。

 今までの流れからして多分依頼放棄に関しては通るとは思うがどうなるかはわからないので聞いておく必要性がある。


 「それについては構わないよ。通常のギルド依頼でも同じことは行われるはずだし、君達には断る権利があるからね。二つ目については……バルガナ」


 そういって領主様はバルガナさんに視線を送る。


 「あぁ、別に言っても構わない。うちのスラムで行われてる賭けは簡単に言えば誰が優勝するかを当てるだけの勝負だ。優勝する奴へのオッズが低ければ低いほど当たったときの金額は大きくなるって奴だな」


 「なるほど……参加資格とかはあるんですか?」


 「一応うちのものを使って探ってるんだが貴族やその家の使用人は門前払いにさせてもらってる。他の貴族との繋がりなんて作ったら部下が暴走してなにするかわからねぇからな。まぁ、それ以外は参加する分には問題はないぞ」


 「ほぇ~、そんなのがあるんだ。けどそれだと領主としては問題はないんですか?」


 耳をピコピコ動かしてシーラが聞く。

 最初の一声もあり、愛らしいその姿と合わさって緊張感があった空気が少し和らいだような気がした。


 「なんつーか、この嬢ちゃんには毒気抜かれるな」


 「ははは、確かにね。シーラ君、それに関しては僕の権限でバルガナにその仕事を委託してて一応公認ではあるんだよ。ただ、あまり多く宣伝していないからこの町以外の人はあまり知らないけどね」


 シーラの言動に肩の力を抜けた二人が質問に答える。


 「公表すれば多くの資金を集めることができると思うんですけど、しないのは今回の誘拐騒動が原因ですか?」


 続けてシーラは領主様に聞く。

 その質問は俺も気になったところだ。


 「そうだね。バルガナにも言ってあるんだけど、この件が解決したら正式にこの町の催し物として公表するつもりなんだ。料金の限度額に関してはもう少し見直すつもりだけどね」


 「収入源が減るのは辛いが別に稼ぐ方法なんていくらでもあるからな。冒険者もある意味その一つだしな」


 「法を犯さなければ、領主の立場としても無理やり手を出せないからね。それにバルガナのところがそんな馬鹿なことをするとは思えないから現状バルガナに委託しているんだよ」


 「「なるほど」」


 俺とシーラはその言葉に納得し頷く。

 あのギルドマスターの教育を受けた二人はそのまま友人関係を続けてきた友人のようにも見える。

 その姿に俺は少し羨ましくなった。

 中学生の一件以来俺の周りには誰も寄り付かなくなった。

 自業自得だが、それだけのことを俺はしてきたのだから仕方がないだろう。

 高校生から噂が薄まったのか人は来てくれるようになったが二人のような関係になるほどの人は居なかった。

 だから俺はこの二人が羨ましく思えた。


 「レンリ?」


 昔のことを考えている俺にシーラが声を掛ける。


 「あ……大丈夫だ。気にしないでくれ。えーと、とりあえず俺が確認したかったのは以上です。大会への参加の件ですが受けさせてもらいます」


 「そうかい。それは良かった。また何かあったら連絡してもらえると助かるよ。あ、そうそう。大会のことだけ僕の権限シード枠から出来るけどそうするかい?」


 その言葉にさっき会った男の子とを思い出した。

 シードだと多分権力使って逃げやがった卑怯だとか言ってきそうだしやめておいた方がいいだろう。


 「すいません。実は……」


 俺は今朝起きたことを話す。

 それは聞いたバルガナさんは大口開けて大笑いし、領主様もクスクスと笑いだした。


 「なるほどなるほど、その理由でシード枠は辞退するんだね。いいよ。君達に強要するつもりはないからね。フフッ、男の子なのだから大切な女の子は守らないとね……フフフッ」


 「だな!直接は見てねぇがお前は十分強そうだし問題ないだろう。可愛い彼女は守ってやれよ!ガハハハ!」


 この二人……他人事だと思って言いたい放題だな。

 俺がそう思っていると隣でシーラが顔を真っ赤にして両手で頬を押さえていた。


 「かかか……か、彼女!?レンリの……はぅ……」


 ぶつぶつ小声でなんて言っているか分からないがなんか使い物にならない感じになっていた。

 まぁ、とりあえずこれで今回確認することは終わったし話を切り上げた方がいいだろう。


 「あはは……負けないように頑張りますよ。とりあえず俺達は大会まで調整をしたいと思うので下がっても大丈夫ですか?」


「うん。構わないよ。時間をとらせて悪かったね。大会のルールは後から紙に書いて使者を出して君達の宿泊している孤児院に送っておくよ。もしよければ今の管理している子にすまなかった。損した分の補填は必ず行うと言っておいてくれると助かるよ」


本当に申し訳なさそうにしている領主様の姿は本当に心苦しそうに見えた。


「はい。伝えておきます。また何かあればこちらからまた連絡します」


「まぁ、なんだ。頑張れよ小僧、嬢ちゃん」


「ありがとうございます。バルガナさんも何かあればよろしくお願いしますね」


「あ、ありがとうございます!」


「おうよ!」


二人の返事を聞き俺とシーラは席を立ち、侯爵家の屋敷をあとにした。

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