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闘技の街の赤竜編~グリシナという街~

「あの質問なんですけど大丈夫でしょうか?」


 シーラが遠慮しがちに声を出した。


 「構わないよ。言ってごらん?」


 領主様は特に気にするような事なく耳を傾ける。


 「思ったんですけど、連れ去られた見た皆さんってどこに連れてかれるんでしょう?いくら大きい町といっても資料にあるだけの人数を運び出すことになれば見つけれそうだと思いますし……維持するためのお金も馬鹿にならないかと……」


 「ふむ、確かにそうだね。恐らくは違法奴隷として何回かに分けて別の町に連れられて闇オークションにかけられると思う。一つの可能性としてだけどね」


 この世界における奴隷とは通常の借金返済のための債務奴隷、犯罪者達に行われる犯罪奴隷は国の管理の元で行われ、倫理的にも、金額、内容としても保証されているものである。

 しかし、違法奴隷は国に管理されてない(実質は奴隷商が個人で売り付ける)奴隷で、文字通り違法な方法で無理やり奴隷にされた人たちのことである。

 今回は正規の手順を踏んでいない奴隷商人が絡んでいるだろう。

 じゃなければシーラのいう通り今まで拐われた人達をため続けるのも限度があるからだ。


 「そうなるとどうやってこの町から連れ出したかだが……オーディス、心当たりはあるか?」


 バルガナさんは顎を撫でながら領主様を見る。

 その領主様は少し考えると口を開いた。


 「すまないけどわからないな。四方の門なら出入りの際に荷物の検品するから何かあれば見つかるはずだからね……あとあるとすれば地下水路くらいかな?」


 「地下水路ですか?」


 気になったので聞いてみる。

 そこが輸送路になるなら検問を張る必要があるからだ。


 「この町は元々廃墟に成りかけていたものを再利用した都市なんだ。当時の領主の記録によると地下水路があってそれを利用して移動や仕事をしていたらしい」


 俺の質問に領主様が嫌がるそぶりなく答えてくれる。


 「私の先祖もそれを使って生活してたんだが私の祖父の代である問題が起きたんだ。水路にいた魚とネズミが大量に魔物化して水路を使うものを襲い始めたんだ。それが原因で町全体が病気や食糧不足になってしまってね」


 以前ギルドマスターが教えてくれたのだが、それは魔物の発生には三種類あると言う話だ。

 一つ目は魔物自体が同族で繁殖行為を行い、数を増やす方法。

 これはゴブリンや集団で生活する魔物に多い。

 まぁ、ゴブリンは漫画で出てくるので様に人間など他種族を苗床にする場合もあるので一概にとは言えない。

 二つ目は自然発生する方法。

 これはエレメントスフィアという非生命魔物がおり、その名の通り属性を宿した球体の魔物である。

 何らかの要因で周囲の火や雷、水などが結晶化し宙に浮かぶオーブみたいなもので取り込んだ属性を用いて攻撃をするらしい。

 俺はまだ会ったことがないのでいつかみたいと思っている。

 三つ目は強力な魔力に当てられ、普通の生き物が魔物に変容してしまう方法。

 強力な魔力を浴び続けた生き物が体内の魔力と交わりそれに耐えられるように変容し魔物となってしまうのだ。

 今回はおそらく三つ目の可能性が高いだろう。


 「その事で私の祖父を頭を抱いて考えていたんだが、そんな時に助けてくれたのが先生だったんだ」


 「えっ?おじさんが?」


 「うん、そうだよ。あの人は氷の他にも光属性の結界魔法を使うことか出来るから出入口のポイントに結界を張ることで魔物達が地下から出てくることはなくなったんだ」


 領主様の言葉に俺とシーラは納得した。

 シーラの家の結界も元々はギルドマスターか作ったもので特殊なものだった。

 それほどのものを作れるあの人なら設置型の結界を作ることも可能だろう。


 「目的は違うけど私の家の結界と同じ?」


 隣のシーラが首をかしげながら俺に聞いてくるのでこくりと首を縦にふる。


 「結界の要の部分には魔道具を置いてあってね。結界の維持に必要な魔力は先生以外のを受け付けないらしくて一年に一度先生の魔力を補充するようにしているんだ。その道具も既にこっちに送ってくれてるしね」


 シーラの家にあるのも確かギルドマスターの魔力を注入するようなタイプだったな。

 特定の魔力しか受け付けないっていうのはあの人なにかあったら最悪結界が解けてしまう危険性があるのか……。

 改良とかできないのか?


 「先生も改良してくれるように色々試しているらしいよ。まぁ、そんな訳で結界を維持するための人が破壊されないために一応人は配備させとあるからその目を掻い潜って人を連れ出すなんて無理な話だよ」


 確かに魔物がうようよしている上に出入口に警備がおかれている以上人を連れて水路を行くなんて無理な話だ。

 となると別方法があるはずだが考えても何も思いつかない。


 「ちっ、八方塞がりだな」


 「まぁ、急いで考えてもいい案は浮かんでこないよ。そうだ、レンリ君達は先生からなにか預かってないかい?」


 考え込んでいる俺に領主様が話しかけてきた。

 言われた言葉に俺は慌てて鞄のなかから預かった封筒を取り出して渡した。


 「遅れてしまいすいません。本当は昨日渡すはずだったんですが忘れてしまっていて……」


 「いやいや、そんな気にしなくてもいいよ。ほんと重要なものならあの人は自分で届けに来るからね。さて、中身は……手紙のようだね。ふむふむ……」


 領主様は懐からペーパーナイフを取り出し慣れた手つきで開封して中身を読み出した。


 「オーディス、先生はなんだって?」


 「うん。それなんだけど。レンリ君、シーラ君……二人とも今度この町で行われる闘技大会出てみないかい?」

 

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