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闘技の街の赤竜編~竜の姐さんと手合わせ~

 ディアに呼ばれ俺とシーラは孤児院の中にある食堂に案内された。

 中に入るとレシアさんと年長らしきハルヴェと呼ばれた男の子や先程外で話しかけてきたターナ、ラノ、デノンと呼ばれた子達を含む十五人が座って待っていた。


 「レンリさん、シーラさんお待たせしてすいません。こちらの方へどうぞ」


 「レシアお姉ちゃん、この人達だーれ?」


 レシアの隣に座っている女の子が首をかしげながら聞いてくる。


 「この人達は少しの間ここに泊まるお客様よ。みんな挨拶しなさい」


 「「「「「「「「「「「「「「こんにちはー!」」」」」」」」」」」」」」


 年長から年少までの子供達が息を合わせた大きな声で挨拶をしてくる。

 屋内なので音も反響し、少し耳がキーンってなりそうなぐらいだった。

 隣のシーラを見てみると頭の上にある押さえている。

 人族より五感が良い獣人であるシーラは俺より耳に衝撃がいったみたいだ。


 「だ、大丈夫ですか?」


 レシアさんがシーラを心配し声をかける。


 「だ、大丈夫です。少し声が大きくてびっくりして」


 「す、すいません」


 「いえ、お気になさらず。それよりも早く食べましょう」


 「あ、はい。それじゃみんないただくわよ」


 そういうと皆が両手のひらで祈り捧げるようなポーズをとる。

 暫くし神を讃える祝詞を唱えたあと、みんな一斉に食べ始めた。

 今日の献立は、少し固めの黒パンと何種類かの野菜を入れたようなスープ、ベーコンが数枚だった。

 少し少なめだったが借金返済やこの人数を賄っていくなら仕方ないと割りきる。

 そして、夕食を食べた後、子供達が俺たちの保に来て質問をしてきた。

 どこから来たのか、耳や尻尾をさわったりとか、なんでこの街に来たのかを聞いてくる。

 質問が終わると次は年少組が遊んでほしいとせがんで来て、その結果シーラは女の子達とままごと、俺は男の子達とチャンバラ的なものの相手をすることになった。

 そうしているうちに夜も遅くなり、ディアとレシアさんは子供達を寝かせにいき、俺とシーラは用意された部屋にもどり、寝ることにした。

 翌日、俺とシーラは朝早くに起きて、旅をはじめてからの日課である組手を孤児院の庭を借りて行う。

 一応、レシアさん、ディアに許可は既にとってある。

 元々シーラが武器を無くした時や使えない状況になったときに戦う手段が欲しいということから始まったのだか、俺の流派を教えるにもまずはそれなりの基礎を身に付けてもらわなくてはいけない。

 元々体力がある獣人族で『疾風ゲイル』のユニークスキルを持つシーラは戦闘を本能や直感で行う傾向がある。

 悪いことではないのだが、もし格上相手になればやられてしまうことがあるので、ここで防御法習得すればこれからの戦いにも役立つはずだ。

 

 「はぁ!てい!せい!」


 シーラが右ボディーブロー、そのまま体を回転させながら顔面に左肘の攻撃、右回し蹴りと鋭い攻撃を仕掛けてくる。

 だが、無手での戦いが慣れてないのか、少しぎこちない。

 俺はボディーブローと肘を両手で打ち払い、蹴りを捕らえる。


 「わ、わ、ちょっと……」


 蹴りを捕まれ混乱しているシーラに隙ができたので軸足である左足を足払いし、転倒させる。


 「いたた、また負けちゃった」


 「狙いはいいが捕らえられることも考えて、動かないと今みたいに倒されるぞ。そうなると追撃の対応がなかなかとれないから次はそこを意識してするようにな」


 「うぅ、手厳しい」


 シーラの耳がペタンと倒れる。

 よほど悔しかったのだろう。


 「ほう、精がでるな」


 後ろから声をかけられ振り向くと昨日と同じ服装のディアがこちらに向かい歩いていた。


 「「ディア/ディアさん」」


 「おはよう。二人とも動きがいいな。シーラは少しぎこちない感じだったが普段は武器を使ってるのか?」


 「おはようございます。はい、普段はショートソードを使って、今は武器が使えなくなったときの対処としてレンリに格闘技を習っています」


 「なるほど。ならレンリ、私とも手合わせしてもらえないか?」


 「え?」


 「君達の姿をみて、私も素手で手合わせしたくなっただが……ダメか?」


 ディアが困ったように眉間にシワを寄せる。

 別に断る理由もないのでいいのだが、それ以上に今までみてきたクールな表情とは違う一面に少しドキドキする。


 「いや、別に大丈夫だけど。その服装なんとかならないか?正直目のやり場に困るんだが」


 今のディアが来ている服装を簡単にいえば、昨日着ていたローブを前面の留め具を外して、上半身がチューブトップ(?)と呼ばれる服を着ている。

 ちゃんとローブを着た状態であれなのだ。

 正直、俺にとっては色々と目に毒だ。


 「ん?あぁ、これか。私は別に気にしてないから見ても問題はないが。それに私の故郷ではこれが当たり前だったしな」


 「だからいってもね……女の人の胸をじろじろ見るのは失礼だとおもうよ?」


 シーラが俺の袖を掴み、微笑みながらいう。

 だがその目は全然笑ってない。

 むしろ怒気を感じるほどだ。


 「いや、じろじろなんて見てな「本当に?」


 怖い怖い怖い!!

 シーラの目から完全に光が消えているぞ!?

 確かに見てたけど、もしこれで見てないって言ってバレた時が怖いな。

 こういうときは素直に謝るのが一番だな。


 「ご、ごめん」


 「やっぱり見てたんだね。まぁ、仕方ないよね。レンリも男の人だし、アラクトでもメリアさんの胸見てたし」


 「かはっ」


 シーラの鋭い言葉が俺を心に突き刺さる。

 これが漫画なら血を吐く演出をしてるところだ。

 ていうかメリアさんの時のやつ、やっぱりバレてたのか。


 「まぁまぁ、男というのはそういうものだ。それに若い男が女性に対して興味あるのはまだ健全だと思うぞ?世の中には男にはしる男もいるらしいしな」


 「うーん、確かにそうですけど」


 ディアの言葉にシーラは不満そうながら納得してくれたようだ。


 「レンリ、私の服装に関してだがすまないがこれで我慢してほしい。竜人の特性上、ローブ以外であまり肌を隠すのは動きを阻害されるから、この手合わせはこのままで戦いたい」


 そういわれると俺はなにも言えないので、頷く。

 そして、シーラに離れてもらい庭の中央で俺とディアは向かい合う。


 「シーラ、すまないが試合開始の合図出してくれないか?そうでないと私もレンリもフェアにならない」


 「俺からも頼む」


 「わかった。それでは……始め!!」


 シーラの掛け声と共にディアがこちらに突っ込んでくる。

 速さは疾風ゲイルを使ったシーラより少し遅いが、それでもかなりの速さだ。

 そう考えているとディア俺の懐に入り、顎を狙いアッパーを仕掛けてくる。

 反応できない速さでもないので、体をそらし回避する。

 回避して反撃に移ろうとするいつの間にか腹に向かって膝蹴りが迫っていた。

 あわてて両手で膝蹴りを受け止める。

 くっ、なんて重い蹴りなんだ。

 女性の蹴りとは思えない力だぞ。

 下手したら男よりも威力があるな。


 「ほぅ……私の蹴りは大抵の奴は受け止めても後ろに吹き飛ぶんだが、それを全く微動だにせず受け止めるとはたいした奴だ」


 そういいディアは後ろに下がり、俺との間合いをとる。


 「そういってもらえるのは光栄だけど、こんな蹴りをガードできずにまともに喰らったら骨が折れるんじゃないか?」


 「そこは君を信用してからな。雑魚と言えど商会の奴等を軽くあしらったんだ。このくらい反応できるとは思っていた……さ!」


 ディアがまた一歩踏み出し、顔に向けて右腕の掌底を打ってくる。

 おそらくを避けても続けて別の攻撃に繋がるだけだろう。

 ならそこを潰すだけだ。

 俺はあえてガードも回避もせず掌底にむかい頭突きをする。


 「!?」


 「痛ぇ……なぁ!!」


 物凄く痛い。

 下手したら意識飛ぶところだったな。

 この方法は俺にも結構なダメージがあるが、この世界に来て強化された体なら耐えられ、ディアの虚をつける筈だ。

 思った通りディアにとって予想外の行動だったのか、ディアの行動が一瞬止まる。

 その隙をついて俺は掌底をするため突き出した腕を俺の右腕で掴み、そのまま左腕でローブの奥襟部分を掴んで片足を脇に通すように飛び付く。

 また逆の足で首を刈るように引っかけ回転をかける。

 俺の全体重が掛かりディアは体勢を崩し、地面に倒れると俺はすかさず手首を掴み骨盤のあたりを支点にして相手の腕を反らせ腕を伸ばし、ディアの上部を両足で固定する。

 これは腕挫十字固めという間接技だ。

 アームロックの一種で、これは一度腕がまっすぐ伸びきると腕の力では外すことは出来ず、無理に外そうとしたり、俺が力をいれ続ければ肘の靭帯を痛めたり、断裂したりする。

 別に俺が使うのはうちの流派だけじゃない。

 前にプロレス好きな同級生に教えてもらった事があり、ハマった俺は暇な時にその同級生と一緒に投げや固めを練習してたりするので使えたりする。

 完全に固めが極り、ディアは慌てて外そうとするが、例え竜人族の腕力といえどこれを外れなかった。


 「くっ、参った。なんなんだこの技は……竜人族の力でも外れないなんて」

 

 ディアの降参を聴き、俺は固めを外して立ち上がる。

 この世界では間接技がないのだろうか?

 捕縛する方法に魔法や武器があるためその辺りはもしかしたら発展してないのかもしれないな。


 「昔、故郷の方で習った武術でな。不意打ちでかかってくれて良かったよ」


 俺が座っているディアに手を差し出すと彼女は俺の手を取り立ち上がる。


 「技もそうだが、まさか掌底を頭突きで返されるとは思いもしないだろう。全く、手がまだ痺れてるぞ」


 「あはは、ごめん」


 「いや、謝る必要はない。それを予想できなかった私も悪い。そのお陰で見たことのない技を見れたんだから感謝はすれど恨むなんて事はしないさ。もしよければその技を教えてほしいんだが」


 「えっ!?」


 強くなりたいからの要求だろうが、さすがに飛び腕挫十字固めをいきなり教えるのは危ないと思う。

 教えるならもっと簡単な所からするべきなんだが……。


 「ディアさんもレンリも凄いね!あんな一瞬であんなやり取りができるなんてレベルが高すぎて私には何があったかわからなかったよ」


 俺が悩んでいるとシーラが今の一戦での感想を言ってくる。

 それなりに強いつもりだが、改めて言われると恥ずかしいものだ。

 

 「シーラ……そういわれると恥ずかしいんだけど」


 「わ、私もだ」


 「え、ごめんなさい」


 少し気恥ずかしい雰囲気になって、みんな黙ってしまった。


 「そ、そうだ。そろそろ依頼人に会わなきゃいけないから、準備しなきゃいけないな!ディア、すまないけど技の話はまた今度で。シーラ、行くぞ!」


 「あ、あぁ」


 「あ、レンリ待って!」


 俺はシーラを連れ、慌ててその場から逃げ出す。

 そして準備した俺達は慌てながら領主様の館に向かった。

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