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闘技の街の赤竜編~竜の姐さんからの提案と狼さんとの報告会~

 ディアの部屋は俺とシーラとは反対側にあり、中に入ると私物が殆どない殺風景な光景が広がっており、ベッドの側には先程見た大剣が立て掛けられていた。


 「まぁ、ベッドにでも座ってくれ」


 言われるがままベッドに腰掛けると、ディアもベッドに腰掛けた。


 「それで用って言うのは?」


 「それなんだが、レンリやシーラは闘技大会に出場するつもりはないか?」


 「闘技大会にか?」


 いきなりの質問に俺は首を傾げる。

 正直言って俺は出場する気はない。

 現在侯爵家より直接依頼を受けている身として、大会に出ている暇はないのだ。


 「あぁ、もとより闘技大会には上位三位には賞金を与えられるし、たくさんの貴族が参加するので働き口にも困らなくなる。冒険者としてはいいことずくめだと思うのだが、参加しないか?」


 本来ならメリットになるが俺とシーラにとってはむしろデメリットだな。


 「……確かにそれは俺達にメリットが大きいけど、それはそっちにどんなメリットがあるんだ?理由もなくそんなこと教えてくれるわけないだろ?」


 思っていた事は言わずに、ディアの思惑を探ってみる。

 うまい話は裏があるはずだからな。


 「……実はな、この孤児院の借金を返すのに非公式の賭けをするつもりなんだ。君は動きを見る限り実力者のようだし、私も参加するが君にも賭ければ借金返済の足しになりそうだったのでお願いできないか言っているわけだ」


 「非公式?それは犯罪にならないのか?」


 「いや、後からもう一度確認するつもりだが非公式ではあるが領主から黙認されているって言う噂だ」


 領主が絡んでいるとなると明日確認する必要があるな。


 「悪いけど、少し考える時間をくれないか?大会のエントリーの締め切りまでには返事するよ」


 「あぁ、締切は明後日の正午までだからそれまでに返事をくれてると助かる。強要する気はないから最悪断ってもらっても構わないぞ」


 「わかった。シーラとも相談して期日内に連絡する」


 「あぁ、時間をとってすまなかったな。料理ができたらまた声をかける。それまでゆっくり休んでくれ」


 そういうとディアは出ていく、俺もこの部屋に長居する必要がなかったのでシーラの様子を見に

行くことにした。

 部屋の中に入るとシーラがベッドのシーツを被り丸まっている。


 「シーラ、さっきはごめん。その……デリカシーがなかったな。頼むからシーツから出てきてくれないか?」


 そういうとシーラはシーツから顔を出し、こちらを見る。

 恥ずかしさによるものだろうかシーラの顔は真っ赤になっていた。


 「レ、レンリは悪くないよ。私こそ急に出てってごめんね」


 「気にしてないよ。食事まで時間があるし、今のうちに調査結果を纏めようと思うんだけど大丈夫か?」


 「う、うん。じゃあ、私がギルドで書き写した奴があるから出すね。拐われた人の名簿と依頼者である家族や友人名簿だよ」


 シーラが持っていた鞄から束になった紙を取り出し俺に渡す。

 見るとギルドに依頼されている行方不明者の数は侯爵に渡してもらった量よりも多い。

 多分現在進行形で行方不明者の数が増えているからだろう。

 

 「かなり多いな。こんなにたくさん書くなんて大変だったろう?」


 「大丈夫だよ。少し手が疲れちゃったけどそんなに体力は使わなかったから」


 「そうか。それでもありがとうな。助かった」


 真面目だからシーラは無理し過ぎになりそうなところがある。

 少しとはいえ、俺の方が年上だしちゃんと見ないといけないな。


 「レンリの方はどうだったの?酒場に行ったんだよね?」


 「あぁ、酒場のマスターからほんの少しだけど聞くことが出来てな。どうやらこの事件に関してこの街の裏の組織の奴等は関わっていないらしい。となる犯人はそれ以外の存在がいるかもしれないな」


 「そうなると私達だけじゃ対応できないよ。どうするの?」


 シーラが不安そうに俺の顔を見る。


 「まぁ、もしなにかあればそこは領主様に投げよう。侯爵家の力があればある程度はなんとかなるしな」


 「そ、そうだよね!」


 俺がそういうとシーラの安心したかのように顔を綻ばせる。


 「実は俺からも報告があるんだ。一つは酒場のマスター……この街の裏組織のボスから聞いたことで裏組織自体はスラムの管理することを条件に領主様が暗黙の了解で活動していること。もう一つはさっきディアから聞いたところなんだがどうやら今回の大会では非公認の賭けが行われるようなんだ」


 「どちらも領主様関係なんだね」


 「そう。だからその聞くために明日領主様のところに行くつもりなんだけどいいか?」


 「私はいいよ。レンリがいきたいなら私はついていくよ」


 「そっか。ありがとう。……あ、そういえばディアから言われたんだけどシーラは大会に出たいか?」


 そう言うとシーラは腕を組み少し考える。


 「もし出来るなら参加したいかも。自分の力がどこまで通じるか試してみたいな。まぁ、依頼を受けている立場としては無理なのはわかってるけどね」


 苦笑しながら答えるシーラ。

 確かに立場を考えると無理なのだが、この街に来る前に大会のことを楽しみにしていたのを考えると少し気の毒だった。

 ディアにも言ったが依頼のことで正直参加暇などない。

 だがこのままにしておくのもシーラが可哀想だ。


 「なぁ、一度ダメ元で領主様に出ていいか聞いてみようか?」


 確かに依頼であるが今回のに関しては強制ではない。

 あの優しそうな領主様ならもしかしたら許してくれるかもしれないしな。

 それに勧誘も何とかしてもらえるかもしれない。

 

 「え、でも依頼はどうするの?」


 「今回の依頼は強制じゃないし、大会に参加することでわかることもあるんじゃないと思ってな。シーラは嫌か?」


 「ううん、嫌じゃないよ。レンリはいいの?」


 シーラがこちらを見て聞いてくる。


 「あぁ、シーラが前からこの闘技大会を楽しみにしてたのは知ってからな。喜んでくれればそれでいいよ」


 「ありがとう!」


 シーラの尻尾が千切れるかと思うほど振られている。

 よほど嬉しいのだろう。


 「まぁ、とりあえず領主様に聞いてからだけどな」


 「うん!……あれ?そういえばなにか忘れてるような?」


 元気よく返事したシーラがなにかを思い出すように首をかしげる。。


 「そうだったっけ?……あ!!前にギルドマスターに渡された手紙を渡すの忘れてた!」


 色々なことがありすぎて渡すのを忘れてた。

 明日あった時に渡さなきゃいけないな。

 そんなことをしているとドアからコンコンッとノックを叩く音が聞こえる。


 「レンリ、シーラ。食事の準備が出来たから食堂にきてもらえるか?」


 ディアが扉越しに話しかけて来る。

 俺とシーラが話しているのを察してくれたのだろう。

 

 「あぁ、わかった」


 「今行きます!」


 資料を片付け、俺はシーラと共に部屋を出て、ディアについて行くことにした。

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