闘技の街の赤竜編~竜の姐さんは交渉上手~
声の聞き、レシアさんが外に向かう。
「すまないが二人も来てもらえるか?私も出るつもりだが君達が居ることで紹介に簡単にてを出させにくくなるからな」
「あぁ、わかった。シーラもそれでいいか?」
「うん。大丈夫だよ」
「助かる。それならこっちに来てくれ」
ディアに連れられ俺とシーラはレシアさんが向かう外にいる商会を迎えに行った。
「貴方達がうちの者が世話になった人達ですね。私はレノード商会の会頭させてもらってるラノセス・レノードと申します。こちらは秘書のマリーナです」
孤児院の正門に行くと俺より少し高い初老の男が立っており、後ろには腹心らしき女性と先程の二人が立っていた。
「レシア・カノラフィスです。こちらは居候のクローディアと旅人のレンリさんとシーラさんです」
「ほぅ、エニシの民に白い狼の獣人、竜人族とはまた珍しい組み合わせですなぁ」
「えぇ、みなさんいい人でありがたい事です。立ち話もなんですが、こちらへどうぞ」
少し固い笑みを見せ、レシアさんがラノセスさんの言葉に返答する。
「ありがとうございます。貴方達もついてきなさい」
そして俺達は全員レシアさんに案内され少し大きめの応接室に案内された。
レシアさんとディアの対面にラノセスさんと秘書の人が座る。
俺とシーラ、先程の二人は互いの後ろに立つ。
「さて、それではお話とは一体なんでしょうか?」
「その件に関しては私が話そう。わかっていると思うがそちらに所属しているそこの二人がレシアとこの孤児院の子供に契約外の金額を納めるよう要求し、あまつさえ暴力を振るおうしてきたのだがそれは商会の指示で行われたものなのか?」
ディアが割って入り、後ろの二人を睨みながらいう。
「ふむ、その二人から話には聞いていましたがそんなことが…。はっきり言いますがこの件に関しては私達商会は一切指示しておりません。返済が滞っている人ならば多少なり催促などは行いますが、それでも暴力を振るう事はございません。なので原因はこの二人が欲を掻いて着服することが目的だったのでしょう」
ラノセスさんはディアの見る二人を一瞥するとすぐに視線をディアに戻す。
「なるほど。となるとそちらはどうするつもりだ?普通に返済してのにこんな沙汰を起こしておいてなにもないと言うのか?」
ディアが追い討ちをかけるかのように言葉を返す。
たぶん目的は借金の帳消し、もしくは減額なのだろう。
今回は商会が悪いので、借金減額の交渉も取りやすいはずだ。
「いえ、そんなことはございません。こちらから問題を起こしたのです。なにかしらの便宜は図りましょう。そうですね……借金の減額などはどうでしょうか?残額は確か金貨5枚と銀貨8枚でしたし、銀貨8枚の減額はいかがでしょう?」
「ふっ、この街最大の商会が問題を揉み消すためにお金を渋るか……。流石に全額とは言わんが半額の金貨3枚は出していただきたい」
「ふふふ、随分と吹っ掛けてきますな。流石にそこまで減額すると我が商会としても痛手になります。ですがこちらも譲歩して半金貨5枚で」
ディアとラノセスさんが交渉を白熱させていく。
2人の交渉はしばらく続き、結果減額された金額は金貨2枚となった。
「全く、凄いお人だ。うちの商会で働いてもらいたいものですよ」
少し悔しそうにラノセスさんがディアを見る。
「竜人族は長命だからな。長いこと生きているとそれなりに交渉も上手くなるさ」
余裕そうな顔でディアはラノセスさんを見る。
「なるほど。もし冒険者を辞めることなればうちの商会で雇いましょう。その時をお待ちしておりますよ」
「それはありがたいが、そこの二人はどうするんだ?まさかなんの処分を下さないのか?」
ディアが後ろにいる二人を指差す。
「その二人は私が責任をもって何とかしましょう。それでは今後ともよろしくお願いします」
そういいラノセスさんは他の三人を引き連れ部屋を出ていき去っていった。
「うぅ、やっと終わった~」
窓から四人が帰ったのを確認したレシアさんは緊張が解けて、机の上に突っ伏した。
メインはディアが喋っていたが渦中の人であるレシアさんには苦痛だったようだ。
「お疲れ様です」
「あはは、ありがとうございます。ディアもありがとう。あそこまで借金を減らせれるとは思わなかったわ」
「気にするな。あちらから手を出したんだ。これくらい当然の金額だ」
そういうとディアは獰猛な笑みを見せる。
してやったり感が存分に出ていた。
するとくぅーと音が鳴る。
「あぅ、ご、ごめんなさい」
音のする方を見るとシーラがお腹を押さえていた。
侯爵家であんだけ食べたのにまたお腹が空いたのか。
シーラって意外と食いしん坊なんだよな。
男の俺と同じ量もペロリと平らげるし、特に肉や甘いものには目がない。
空腹になる早さは身体能力に特化した獣人だと燃費が悪いのだろうか?
「うふふ、そろそろ夕方ですしお腹がすいてもしかたないですよね。それじゃあ準備してきますのでゆっくりしててくださいね。ディアも付いて来て」
「わかった。それでは2人ともまた後でな」
そういうとディアとレシアさんは部屋から出ていった。
「うぅ、またやっちゃった……」
2人が出たのを確認するとシーラはその場に座り込む。
多分2度目の腹の虫の音が恥ずかしいのだろう。
「まぁ、お腹が減るのは仕方ないさ。あんまり気にするな」
そう言い軽く頭をぽんぽんとする。
昔、俺の両親が生きていた時良くこうしてもらっていたのを良く覚えている。
「あ、あぅ……わ、私先に部屋に戻って荷物の整理してくるね!」
その効果があったのか顔は真っ赤になっていたがすぐ立ちあがり、部屋を出ていってしまった。
荷物と言っても大半の荷物は俺が持っている鞄に入ってるから整理する必要もないんだけどな。
続くように俺も部屋に向かい歩き始める。
「レンリ。少しは用があるんだが構わないか?」
部屋に行こうとすると、廊下でディアに呼び止められた。
「あれ?夕飯の準備をしてたんじゃなかったっけ?」
「子供達が手伝って私にそれ以上手伝うことが無かったので抜け出してきたのさ」
「なるほど。それで何の用なんだ?」
「それなんだがな、立ち話じゃなんだし私の部屋にこい。そこで話そう」
そう言うとディアは自分の部屋に向かい歩いていき、俺も付いていくことにした。




