森の白狼編~狼さんの涙~
~シーラ目線~
翌日、私はレンリさんを引き連れてアラクトに向かう。
本来なら森の外に街道があり、そちらの方が安全なのだが時間が掛かりすぎてしまうので私の家から直接直線上に進んでいる。
途中ゴブリンと遭遇したが速攻に首を刈り取って終わりだった。
それからしばらく歩き続けると目的のアラクトに着く。
隣のレンリさんを見てみると外壁の大きさに驚き口を開けていた。
すると門番に話しかけられたので私はギルドカードを見せ、レンリさんの分は私が立て替えることにした。
アラクトの中に入るとレンリさんが周りをキョロキョロとしながら歩いているので放っておくと迷子になりそうなので、積極的に街の説明を言って離れないようにする。
流石に手を繋ぐのは恥ずかしいからだ。
その後、冒険者ギルドにつくと今日は忙しい時間を過ぎたためか割と空いていた
レンリさんの登録の事もあるので受付にいくと最近忙しくてあまり話す時間がなかったメリアさんが声をかけてくれた。
メリアさんは私が冒険者になる時におじさんを説得してくれてたり、悩みがあると聞いてくれたりしてくれるお姉ちゃんのような人だ。
そんなメリアさんは冒険者ギルド一番人気の受付嬢で整った顔立ちや親しみやすい性格で男女問わずたくさんの人から好かれている。
そしてとりわけメリアさんが男性から人気の理由の一つは自己主張の強い胸である。
どんな生活してればそのくびれを残したままそのサイズを維持で出来るのか今でも気になる。
メリアさんはレンリさんを見ると私が彼氏を連れてきたと勘違いしてきた。
か、彼氏なんて、わ、わたしとレンリさんはそんな関係じゃないんですから!
メリアさんにその事を伝えるけどのらりくらりと避けられ流され、からかわれる。
一通り私をからかったあとメリアさんはレンリさんの登録を始めるため説明し、契約内容を大まかに伝えて他に聞くことがないか確認しようとしたその時、後ろの酒場スペースから野次が聞こえる。
どうやら酔っ払った冒険者が私達に向かい、子供がお遊びで来るところじゃないと罵ってくる。
私達は決してお遊びでギルド登録しているわけではない、なにも知らない酔っ払いにどうこう言われる筋合いはない。
最初は無視しておこう思ったが、酔っ払った冒険者のケナシーがレンリさんに向かい蔑むような言葉を言っているのが頭にきて私はケナシーの前に出て怒る。
するとケナシーは私の胸ぐらを掴んでくるが間に入ってきたレンリさんに無理矢理ほどかれた。
何が頭にきたのかケナシーはレンリさんに殴り掛かろうとするが簡単に避けて、足を引っ掛けて転倒させる。
その姿を見た他の人達はクスクス笑っている。
恥ずかしさのあまり取り乱したケナシーは腰の長剣を抜剣し、斬りかかろうとするがその瞬間ケナシーの武器ごと腕が凍り付いた。
後ろを見ると、おじさんが立っていた。
その後、ケナシーが色々と騒いでいたがおじさんが正論で返し、なにも言えなくなったケナシーは腕か凍ったまま逃げていった。
おじさんとメリアさんは手慣れた感じに後処理を行い、私達に話しかけてくる。
レンリさんの事を紹介するとおじさんは私との関係を聞こうとしたが後ろからメリアさんが口を塞ぐ。
おじさんより背が低いメリアさんが後ろから塞ぐので自己主張の強い胸がおじさんの背中に当たりひしゃげている。
隣を見てみるとレンリさんがそんな光景を見て鼻の下を伸ばしている。
私が一声掛けるとすぐに普段通りのレンリさんに戻ったが、なんだかすごくもやもやする。
というかやっぱり男の人は大きい胸が好きなのか。
私だって成長してメリアさんに敵わないけどそれなりにあるはずだ……多分。
その後、私とレンリさんはおじさん達に連れられて2階の会議室に入り、備え付けのソファーに座る。
全員着席したの確認しておじさんが改めてレンリさんと私の関係を聞いてくるので、私はレンリさんを拾った経緯を話し、それ以上はなにもない事を説明をする。
少しどもってしまったので下手したら私がそれ以上を求めているように聞こえるかもしれない。
そう思って隣に座っているレンリさんをチラッと見ると目が合う。
あまりに真っ直ぐな目でこっちを見てくるので、そんな邪な事を考えている自分が恥ずかしくなって顔が熱くなる。
私の説明や自分の作った結界用魔具の反応を確認して一応納得してれたのか、おじさんはレンリさんを信用してくれそうだ。
そう思ってた瞬間、おじさんとレンリさんが同時に驚いた表情になっていた。
何があったかおじさんに聞いてみると、レンリさんにとんでもないことを言ってきた。
レンリさんがこの世界の住人じゃない。
突然の事で私やメリアさんはどういう事か理解できなかったが、レンリさんはそれを肯定した。
レンリさんの話を聞いてみると、レンリさんは元々自分がいた世界で死んだ所を女神様に誘われこちらの世界に転生し、森の上空に召喚されたらしい。
他にも記憶喪失ではなく、この世界の情報を円滑に得るために記憶がないフリをしていて、強さに関しても今はそこまでないらしいが、成長すれば勇者に並ぶ力を持っているらしい。
凄そうな人とは思っていたが予想より斜め上をいく結果だった。
それよりもショックなのはずっと隠し事をされていたことだった。
事情が事情なので仕方ないと思うが私としては信頼されていないと言う気持ちが大きく、ショックには変わりはなかった。
いつの間にか目には涙が溜まっており、つい感情的にレンリさんに言い寄ってしまった。
その様子を見てかおじさんは咳払いをしてこれからどうするかレンリさんに聞いてくる。
レンリさんはしばらくこの街で旅費を稼いでから世界を見て回りたいといっていたので、私はレンリさんにそれまでうちにいないかと提案してみる。
するとそれに対しておじさんが猛反発して、何故そこまでするかを聞いてくる。
理由としてはそんなたいしたものではなく、レンリさんと一緒に過ごすのが楽しいからだった。
まだ足の回復を待っている時にも色々話し相手になってもらったり、帰ってきた時に『おかえりなさい』の言葉を言ってもらうはレンリさんが来てからの数少ない楽しみだった。
反対するおじさんとの話が平行線を辿る一方なので、逆に何故一緒に住んではいけないか聞いてみると、男は獣でそんな相手といればすぐにお、犯されるなどの言葉を連発してくるのでこれ以上言う前に私とメリアさんはおじさんの頭を叩いて止めた。
もしレンリさんがそんな人なら私はとっくにヤられてるのでそんなことは絶対ない。
私とメリアさんに叱られたおじさんは小さく縮こまり、項垂れていた。
メリアさんも最初は反対していたけど何度かレンリさんに質問し、納得しようで一緒におじさんを説得してくれてた。
おじさんはすごく悔しそうな顔でレンリさんを睨んでいる。
そこまで嫌なのか。
話がついたところで、メリアさんがレンリさんにギルドの説明をしてそれについておじさんが補足をする。
説明後、ギルドカードを発行し、レンリさんに代わり登録料金を払う。
メリアさんがレンリさんに釘を差すが、レンリさんはそんな人じゃなさそうなので大丈夫だと思う。
登録を終えて一階にいくと周りがざわざわしている。
耳をすませてみると、どうやら私やレンリさんがおじさんとどんな関係かという噂をしているようで、どうやら商人もきているようで私達を足掛かりにおじさんに近づこうと考えているようだ。
その事をメリアさんにそっとその事を耳打ちして、おじさんに伝えてもらうことにした。
ギルドを出るとレンリさんは私に向かい、今まで黙っていたことを頭を下げ謝ってくる。
さっきはあんな態度をとってしまったが、事情が事情なので仕方ないと思ったので私は慌てて頭を上げさせる。
私の言葉に安堵したのかレンリさんは顔をあげ、微笑みながら私を感謝の言葉と共に褒めてくる。
うっ。
本当になんでこの人はこんな歯の浮くようなことを恥ずかしげもなく言えるんだろう。
もしかしてからかわれてるんじゃないんだろうか。
笑顔でそんなこと言われるなんて私はつい照れてしまい、誤魔化すよう夕飯抜きというと、レンリさんはそれは嫌だったのかすぐに謝ってくる。
もちろんそんなことするつもりはないが、これを機に反省してもらえると助かる。
その後、私達は北区にあるドルメードさんの店に向かう。
店の中に入ると武器が所狭しと置いてあり、金属同士がぶつかる音が響きわたる。
大声を出して、ドルメードさんを呼ぶと金槌を肩に担ぎながらやってきた。
ドルメードさんにレンリさんの防具を見立てをお願いすると、私とレンリさんを見てにやけながら右手の小指を立ててくる。
なんでみんな私達を見て、そんなことばっかり言うんだろう。
レンリさんは気にしていないようだけど私は顔が真っ赤になるぐらい恥ずかしくてたまらなかった。
そんな私を放ってドルメードさんはレンリさんの身体をチェックし、採寸を行う。
何ヵ所か身体を触り確認し、ドルメードさんはレンリさんの筋肉の付き方に気付いたらしく、感心したように褒めている。
その後、元々武器が得意ではないレンリさんの希望でドルメードさんに籠手を出してもらうことになった。
鉄と魔物素材の籠手らしく、レンリさんに装備してもらって動いてもらう。
鉄の籠手は重量があるせいか動きが鈍くなり、動きづらそうだったが、次に装備した魔物素材の籠手は重そうな外見をしていたが、思いの軽いらしくレンリさんも気に入ったようだった。
最初は私が立て替えようかと思ったがレンリさんに断られ仕方なく諦めドルメードに取り置きしてもらうことにした。
ドルメードさんの店から出て、日が暮れる前に雑貨や食料を買ってから街の門を出て森の中に入ろうとすると再びケナシーが現れた。
私が前に出て戦おうとするがレンリさんに下がるように言われて、少し不服だったが従うことにした。
ケナシーは襲い掛かってくるも、レンリさんは冷静に対処しケナシーを取り押さえると、私に衛兵を呼ぶように言ってきたので一瞬考えたがその声に従い疾風を使って走る。
衛兵を連れて戻ってくると、ケナシーは顔を青くしひどく怯えていた。
何があったか聞いて見るとレンリさんがおじさんから複製した分析で盗賊だとバレて今後の事に不安に思い青ざめていたようだ。
おじさんからの要請もあったこともあり、ケナシーはきっと奴隷落ちになるだろう。
そうなれば冒険者ギルドの登録は抹消になり、鉱山送りになるのだろう。
同情する気はない。
盗賊になるということはそうなることも覚悟して行動しなければいけないという事だ。
私達はケナシーを衛兵に任せ、森の中に入り家に帰ることにした。
それから2週間後、私はレンリさんと一緒ににいて驚きの連続だった。
まずケナシーが逮捕され、奴隷落ち、装備品を売り払ったことで借金返済ができた上、レンリさんは念願だった籠手を購入することができた。
他にも神官や一部の魔法使いたちしか使えない治癒系統の魔法を修得したり、冒険者ギルドではCランク相当の教官相手に徒手空拳で勝利を納め、果てには無詠唱で大量の氷柱を発生させ、的を貫いたのだ。
私とおじさんは目の前で起きた物事に驚いたが隠せなかった。
いくら強いと言ってもギルド登録し始めた駆け出しが元Cランクの教官を倒してしまうなど聞いたことなどなかったし、魔法にしてもいくらおじさんからコツを教えてもらったといえど、初めての魔法を無詠唱で、あれほどの量の氷柱を出すなど普通の人ではできない。
これが異世界人の力なのか……
するとレンリさんはその場で倒れてしまった。
慌てて駆け寄り、レンリさんの様子を確認するとどうやら1度に大量の魔力を使ったせいで気絶してしまったようだ。
無理に動かすわけにもいかないのでレンリさんの頭を膝の上にのせてみる。
改めてレンリさんの顔を見てみると割りと幼い顔立ちをしており、下手したら私より年下に見えかねない。
そうしているとレンリさんは目を覚まし、こちらと目が合う。
一瞬で状況を把握したのか、レンリさん少し顔を赤くしながら身体を起こした。
するとおじさんが横から口を出してきてまた口論になってしまった。
一通りの確認作業を終え、レンリさんの強さがどれぐらいかと聞いてみると実質Cランク上位の力があるそうだ。
それからは毎日レンリさんに組手を頼んで、鍛えてもらっている。
今回は以前と違い、剣ではなく籠手を使って戦ってもらうので、レンリさんは前回より強い。
油断すると一瞬で組伏せられてしまうので、疾風を使うが、それでやっとまともに戦えるぐらいだった。
組手を中断して休憩していると、レンリさんが木陰で休んでいたので、水を持っていくといつも通りの笑顔でありがとうと言ってくる。
私はレンリさんの隣に腰かけ、うぬぼれていた事をぼやいているとレンリさんは私の動きもすぐに直すことが出来て凄いって褒めてくれた。
本当に優しい人だ。
旅の中でも悪い人に騙されないか心配になる。
褒めてくれた時にレンリさんのお爺さんの話が出たのでそれを話題に話すと嬉しそうに話してくれた。
その姿を見ると本当にお爺さん達のことが大好きなのがまる分かりだった。
珍しくレンリさんの頬が緩んでいたので頬が指でつつくと顔を真っ赤にさせ、そっぽを向いてしまった。
こう楽しい日々が続くといつか来る終わりの日が恐ろしくなる。
意を決してレンリさんに旅に出ることを聞いてみると、誰かと一緒に旅に出てみたいと言ってくる。
その言葉に私は付いていきたいと思った。
元々依頼で外に行くことがあったので近隣の街には行ったことはあるが、王都や別の国には今まで行ったことはない。
ここからもっと離れた所にある街グリシナには、武闘会があるらしく行ってみたいとも思っていた。
けどそれはできない。
私にはお父さん達の敵をとるためにもここに残る必要があるのだから。
でもそれはレンリさんとの別れでもあった。
レンリさんと出会って3週間、短い間だったが色々驚かされることも多かったが毎日が充実していた。
だからこそ私はいつか来る別れに寂しく思うようになった。
あまり表情も暗くなるとレンリさんが心配してしまうので、明るく振る舞いその場を立ち去って誤魔化すことにした。
その後、晩御飯を食べ終わったところでレンリさんがナラ村に行きたいと言いだした。
何が目的なのかは知らないがきっと考えがあるのだろうと思い、渋々私は許可を出した。
翌日、レンリさんが村に行く間、私は薬草採取や魔物の討伐部位を集める為森の奥に入る。
長い間住んでいて薬草がどこに群生しているのかわかるのである程度集めた後、ゴブリン等の魔物を狩って討伐部位を集めた。
ある程度集まったのを確認した後、空を見上げると日が傾き始めてきたので、晩御飯を作る為に家に向かい歩くと脇道から見覚えのある黒いフードの着た男が出てきた。
私は剣を抜き、切っ先を向け距離をとる。
「貴方は何者ですか?」
「くくく、何者かとは酷いですねぇ。私は貴方のご両親を新たなる世界に連れていってあげた優しいおじさんですよぉ。置き土産の腕はおきに召しましたかぁ?」
黒いフードの男は可笑しそうに笑いながら、私を見据える。
「あ、貴方がお父さん達を……よくも!!」
私は男に向かい走り、胴を狙い横一閃に切り払い、切り裂いた。
すると切り裂いたはず男の身体はぼやけていき、幻のように消えていった。
「くくく、その程度ですかぁ?」
後ろを振り向くと、消えていったはずの男が立っていた。
私はすぐに男を切り払うが、切り払う度に幻のように消えて別のところから現れる。
そうするうちに私の体力は削られ、肩で呼吸するほど疲労が溜まってしまった。
「そろそろですかねぇ。これでもくらいなさい。“風は舞い、一陣の刃とならん”旋風刃」
男の詠唱が終わると同時に私の周囲を風の刃が囲い込み、私の全身を切り刻む。
「まだですよ。“火は集いて、火を宿す玉となる”炎玉」
男の手のひらに火が灯り、膨張し水晶玉ほどの大きさの球体になると私にむかって放たれた。
いつもなら避けられたが、体力をかなり消費した私は足がもつれてしまいお腹に直撃を喰らってしまった。
激痛で視界が霞む。
「そろそろ頃合いですかねぇ」
そういうと男は、またしても幻のように消えていき、そのまま姿を見せずにどこかに去ってしまった。
追いかけようにもすでに遠くに逃げられたらしく、匂いも辿れなかった。
治療の為、家にむかって歩くが、思った以上に血を流したらしく、視界が霞み、足元がおぼつかない状態だった。
なんとか家の近くまで来るも限界が来てしまい、その場で気絶してしまった。
目が覚めると、私は自分のベッドの上で寝ていた。
横を見るとレンリさんがいる事を考えると、多分道半ばで倒れていた私をここまで運んできてくれたのだろう。
レンリさんにその事を聞いてみると、思った通りで森の中で倒れていた所を見つけてここまで連れてきて治療したそうだ。
寝ているわけにもいけないので身体を起こそうとするとレンリさんに押さえられ、また寝かしつけられた。
レンリさんが言ってた通り、お腹の火傷を治っていたが、魔力が足りなく治癒しきれなかった手足を動かそうとすると切られた部分が痛む。
レンリさんに何があったか聞かれ、男と交戦したことを説明する。
説明しているうちに、男を追わなければいけないのを思いだし、もう一度ベッドから出ようと身体を起こそうとするとレンリさんにまた押さえられる。
レンリさんは無謀だ、無駄死にするだけだと言ってくる。
その言葉が私の癪に障り、私は暴言を吐いてレンリさんを突飛ばし、外に出た。
走り出そうとすると治癒しきれなかった傷が開いたのか、傷口に巻いてあった布に血が滲んでいる。
そして足がもつれて、転倒してしまった。
後ろから私の事を心配したのか、レンリさんが走って追いかけてきた。
私は駆け寄ってきたレンリさんの襟を掴みあげ、感情のまま今まで心の奥に沈めてきたものを吐き出す。
ただお父さん達の仇を討つために、あの日からずっとそれだけを支えに生きてきた。
遂に奴を見つけたんだ。
部外者なんかにとやかく言われる必要なんてないし、邪魔されたくなんかない。
最悪の場合、刺し違えても奴を殺すと言おうとした時、私は叩かれた。
私はあまりの事で頭の中が真っ白になり、呆然としてまい、襟を掴んでいた手を離した。
レンリさんは今にも泣きそうな顔で、私の目を見て私の言った言葉の意味を言ってきた。
確かに私の言った言葉は今まで助けてくれた人達を蔑ろにする発言だ。
おじさんやドルメードさん達がいなければ、今の私はおらず復讐どころか生き残る事さえできなかった。
私は仇を見つけたことで復讐心に捕らわれ、残された人の事なんて微塵も考えていなかった。
そう考えているとレンリさんは付け足すように自分も私の事を思っていると言ってきた。
急な不意討ちに私はつい驚き、顔を真っ赤になってしまう。
まぁ、その後の言葉を聞いてレンリさんがそういう意味で言ったわけではなかったのが分かったので無駄に期待してしまったことが恥ずかしくなった。
続けるようにレンリさんは言葉を続ける。
もっと人を頼れ。
自分も力になるから。
優しく、諭すような言い方をしたその言葉に目頭が熱くなる。
今まで復讐の事を言うと誰も協力してくれなかった。
おじさん達はむしろその事を忘れさせようとしてとりあってくれなかった。
その中でも手を貸すと言ってくれたのはレンリさんが初めてだった。
多分レンリさんも復讐止めさせたいのだろう。
けど言葉だけでも、掛けられた言葉に私は嬉しかった。
溜まった涙がどうにももう我慢できそうにない。
私は泣き顔を見られないように、レンリさんの胸を借りて泣いた。
おじさんに保護されて、冒険者になったあの日から私は1度も泣いたことはない。
それは他者に弱みを晒す様なもので、女冒険者である私にとっては絶対と言ってもいいほど見せてはいけないものであった。
そんな見せてしまえば、舐められてしまうからだ。
一部の冒険者を除き、今でも冒険者ギルド内でも男尊女卑の風潮が強いため、女冒険者の肩身は狭い。
1度でも舐められてしまえば、立場が弱い女は言いように使われてしまうのだ。
そうならない為にも、私は弱みを晒さないよう気を付けて生きてきた。
でもこの人なら見せても良いと思った。
優しくて、強いレンリさんなら信用できるから。
私は今まで我慢してきた分を取り戻すかのように泣き、安心感からなのかいつの間にか泣き疲れて寝てしまった。
目が覚めると私はベッドの上で寝ていた。
きっとレンリさんが運んでくれたのだろう。
外を見ると明るくなっているので、おそらくそのまま朝まで寝てしまったようだ。
隣を見るとレンリさんが椅子に座りながら寝ている。
開いた傷口を塞ぐために治癒魔法を使って、魔力の限界が来てしまったようだ。
寝顔を見ると気持ち良さそうにすやすや寝ている。
起こすと悪いので私はこっそり部屋を抜け出し、朝御飯の用意をする。
と言ってもまだ身体が痛むので、手軽なものしかできないが。
作り置きしてあったスープを暖め、パンとチーズを用意して机の上に置いていると、目を覚ましたレンリさんが眠たそうに目をこすりながらやって来た。
御飯の準備が出来たので私たちは椅子に座り、食べることにした。
すると食べていると急にレンリさんが昨日私の頬を叩いてしまったことを謝ってきた。
私は特に気にしてないので、すぐに許して話を切り上げた。
その後、今日の予定を言い合うことになり、私は家で療養、レンリさんは私がとってきた討伐部位を売りに行き、ポーション等を買ってきてもらうことになった。
レンリさんが出かけて、しばらくボーッとしていると家の前に何か投げ込まれる。
何かと思い私は外に出て確認しに行くと、投げ込まれたの紙に包んだ石だった。
石から紙を剥がして紙の方を見てみるととんでもないことが書いてあった。
『今日の日が一番高く昇るとき、ナラ村に来い。さもなくば村人全員を殺す』
脅迫状だった。
私が行かなければナラ村の人達が皆殺しにされてしまうという内容だ。
日の高さを見ると既に結構な高さまで上がっている。
今から急いでギリギリ間に合うか位だった。
私は家の扉に書き置きを残し、武器を持ち出してナラ村に向かった。




