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森の白狼編~それから2週間~

 ケナシーの件から2週間経ち、俺とシーラさんは剣と拳で組手をしている。

 俺の腕には黒光りする鎧蟻アーマーアントの籠手を装着しており、シーラさんは刃引きしている片手剣を持っていた。

 何故俺がこの籠手を持っているかと言うとケナシーの件が起因している。

 あの日の翌日、俺達は街に向い昨日の門番に話しかけると冒険者ギルドに案内され、ギルドマスターに会うことになった。

 どうやら俺達が帰った後すぐにギルドマスターにケナシーを視てもらい盗賊であることが確定した為、俺にケナシーの処分をどうするか確認する為だそうだ。

 この世界では盗賊等の犯罪者は即刻犯罪奴隷に落とされる。

 その時に捕まえた人が奴隷商人に引き渡し、その人物の価値に合った報酬を貰えるということだ。

 奴隷商人からはケナシー自身はこれから炭鉱送りに使える若めの男なので報酬に少し色がついて銀貨2枚、ケナシーが持っていた装備も売り払って銅貨3枚、最後に実はケナシーが所属していた盗賊団は結構な規模の為、ナシーが盗賊であることを自白してアジト掴めたことにより冒険者ギルドからさらに銀貨1枚の合計銀貨3枚と銅貨3枚、30300ダヴの儲けが出たのだった。

 さっそくシーラさんに借りて多分の銀貨1枚と銅貨3枚を返し、そのままドルメードさんのところに行き籠手を買いに行き、余った残りの銀貨1枚で採取用のナイフとウルフ種の皮を鞣した胸当てを買った。

 ドルメードさんも昨日の今日で買いに来るとは思っておらずとても驚いていた。

 ちなみに盗賊団に関しては後日ギルドマスター自身が選別したCランクの冒険者の団体で討伐に当たるそうだ。

 なのでそれ以下のランクである俺とシーラさんは除外だ。

 それから今日までは自分を強化する為に、色々な所に行ってスキル獲得やギルドランクを上げる為にひたすら採取や雑用の依頼を受けまくった。

 その結果、ギルドランクがFランクになった。

 スキルについてだが俺をこの世界に送り込んだ『女神セフィラ』を主神としたセフィラ教がこの街で治療院を経営していたので、わざと怪我をして半銀貨3枚を払い、治癒魔法のヒールと解毒魔法のアンチドートを手に入れることが出来た。

 他にはギルドマスターに魔法の使い方を教えて貰うために冒険者ギルドに行ったら、訓練所で指導をしている指導員がいたのでギルドマスターの計らいのもと手合わせすることになった。

 ちなみに装備は俺が鎧蟻アーマーアントの籠手で教官は刃引きしている片手剣だった。

 元Cランクの冒険者だったらしくケナシーとは違い、何度か拳と剣打ち合いながらも、鋭く重い一撃を食らいそうになったがなんとか懐に入り、鳩尾みぞおちにきつい一撃を入れてなんとか勝つことが出来た。

 シーラさんやギルドマスターも驚いていたが、俺は元々あちらの世界でもじいちゃんに見切りを鍛えられたから避けるの得意だし、こちらの世界に来てからは身体能力が強化されているからなんとか勝つことが出来たのだ。

 その後、ギルドマスターによる魔法の使い方を何日かかけて教えて貰った。

 俺は模倣眼イミテーションアイでギルドマスターの氷魔法を複製しているが複製しているだけで使いこなせる訳ではない。

 単純に氷魔法を発動しようとするがなかなか発動させることが出来なかった。

 これをギルドマスターに聞いた所、魔法を発動するに幾つかの工程を踏まなければならないことがわかった。

 まずは自分の中にある魔力を感じとり、その魔力を体内で循環させ、明確なイメージを持って発動させるという工程を踏まなければならない。

 どれか1つでも欠ければ発動しないもしくは威力が大幅に減衰してしまう。

 とりあえず自分の中にある魔力を感じとる作業だが試してみると自分の心臓の位置に魔力の塊の様なものを感じる。

 これが俺の魔力の源であるらしい。

 次にこの魔力を循環させるのだが俺はこれを血管をイメージして循環させる。

 どう通せばわからない魔力の道筋よりも心臓の位置にあるなら魔力を血液に例え、道筋を血管に例える方がイメージし易いのだ。

 このイメージは別に問題ないらしく、魔力が全身に行き渡るような感じがする。

 ここで発動のイメージをするのだが一体どんなイメージをすればいいのだろうか。

 せっかくなので空中に鋭く尖らせた氷柱つららをイメージし何本か出してみる。

 上手くいった。

 直径15㎝、長さ2mの氷柱が20本精製され、目の前にあった的を貫く。

 すると身体の力が抜けていく。

 どうやら魔力を使うと気力のようなものが奪われるようだ。

 体が重い。

 1度で大量に精製したせいで魔力が尽きたようだ。

 俺の意識は暗転した。

 しばらくして目を覚ますと頭に柔らかな感触と目の前にシーラの顔があり、そして遠くでギルドマスターがギリギリと歯ぎしりしている。

 どうやらシーラさんに膝枕をされていたようだ。

 そう思うと気恥ずかしくなって身体をお越し、介抱してくれたお礼を言う。

 そう言うとシーラさんは優しく微笑んでくれる。

 そう言うとギルドマスターが横から入ってきてまたシーラさんと口論を始まった。

 まぁ、そんなこともありつつもギルドマスターから風魔法、水魔法を習得した。

 今まで習得した風、水、氷魔法等の元素魔法は魔力のみで発動できるが、治療魔法、解毒魔法等は信仰心が大事らしい…が試した所、別に信仰心は必ずしも関係ないらしい。

 信仰心の代わりに余分に魔力を喰ってしまうのだ。

 これだと少し回復が必要な時に厳しくなるな。

 まぁ、それでも使えないよりかはマシか。

 結果、俺の中にある魔力総量は通常より多いらしい上まだまだ成長中らしく、使う魔法も実戦向きで接近戦もこなせるので、ギルドマスター曰く俺の強さはCランク上位の位だと教えてもらえた。

 とそんな感じでそれから2週間が経ち、今に至る。

 ギルドマスターから聞いたのだが実際の所、シーラさんはDランクに匹敵する強さであるらしい。

 確かにそれならケナシーよりもいい動きをするわけだ。

 因みに魔法こともあったのでスキルのことも色々調べてみると、分かったことがあった。

 発動が自動であるかないかだ。

 模倣眼や異世界言語自動翻訳などは自分の意思で発動をON、OFFさせることは出来ないが、疾風、分析などのスキルは自分の意思で発動させる必要があることが分かった。

 疾風はともかく分析が切り替え出来るのは助かる。

 四六時中色んな情報が頭の中に入ってきたらに、その内頭がパンクしてしまうからな。

 疾風に関しても切り替えが出来れば緩急のついた攻撃が出来るから攻撃も当てやすくなるし、3分を無理に全部使用してしまうことを避けることが出来るのだ。

 その事をシーラさんに教えて、ひたすら組手を続ける。

 自分で疾風を使ってみると世界が少し遅く感じ、自分の動きはそのままに動ける…が使い慣れてないせいか1分も使えばまるで船酔いしたような感覚に教われる。

 きっと三半規管に強烈な刺激を受けて平衡感覚が狂ってしまったのだろう。

 そういえばシーラさんは結構な時間使っても何ともなかったがきっとずっと使ってきたことによって三半規管が鍛えられたんだな。

 途中休憩をとっているとシーラさんが水を持ってこっちに来た。

 

 「レンリさん、本当に強いんですね。魔法も接近戦もこなせちゃうし、それなり自分のことを強いって思ってた自分が恥ずかしいですよ…」


 「そんなことないですよ。魔法はともかく体術に関してはじいちゃんの方が俺の何倍も強いんですから。それにシーラさんも俺が指摘した点すぐ直してからいい動きになりましたよ」


 「レ、レンリさんより強いんですか?とんでもないですね…」


 確かにそう思う。

 孫の俺から見てもじいちゃんの強さは異常だと思う。

 確かに少し前に知り合いが暴力団の被害にあったので事務所に乗り込み、武装した組員達を相手に制圧したのをばあちゃんに聞いたな。


 「俺だってそう思いますよ。じいちゃんは厳しかったけどこの歳になるまで俺を育ててくれて感謝しきれないぐらいです」


 「本当にお祖父さん達のことが好きなんですね。レンリさん、顔が緩みっぱなしですよ?」


 シーラさんはイタズラっぽく笑うと俺の頬を突っついてきた。

 それ地味に将来恋人ができたらして欲しいやつなんですけど…まさかシーラさんみたいな美少女にやって貰えるとは思わなかった。

 そう思うと嬉しくて顔が暑くなってくるのを感じる。

 するとシーラさんはいきなり静かになり。


 「あの…レンリさんは1人で旅に出るんですか?」


 シーラさんの目がさっきまでのものから真剣なものに変わる。


 「そうですね。出来れば途中で誰かと一緒に行ければいいと思っています。別に急ぐ旅じゃないから色々見て回りたいですし」

 

 「そう…ですか。いい人見つかるといいですね」


 シーラさんの声が少しずつ小さくなっていく。

 表情もさっきまでのような明るいものから暗いものに変わっていった。


 「……よし!空が暗くなってきましたし、今日はここまでにしてそろそろ晩御飯の準備をしましょうか。今日も腕によりをかけて作りますから期待してくださいね!」


 そう言うとシーラさんはそそくさと家の中に入ってしまった。

 俺には彼女が寂しいのを誤魔化すようにしか見えて仕方がなかった。

 この世界に来て、シーラさんに出逢って暮らして3週間と少しだがここでの暮らしに満足している自分がいることに気付いた。

 元の世界にも未練はあるが将来どうすればいいか考えてなかった俺はこの世界で自由気ままに生きるの性に合っているかもしれない。

 けど現状に甘えるのは駄目だ。

 過ごしやすいかもしれないが法に守られてたあちらの世界と違って、こちらの世界はいつ死ぬかわからないし理不尽に巻き込まれるかもしれない。

 生き抜く為にはこの世界での知識や力が必要だ。

 その為にも、旅をして自分の見聞を広めるのはいい方法だと思った。

 色々な人と出会うことで知識を蓄えて、旅をしながら冒険者として活動することによって自身の力をつける事で理不尽に対抗出来るようにしたい。

 だからと言って今すぐ出ていくわけにはいかない。

 シーラさんをこのままにして放っておけないのだ。

 ナラ村とシーラさんとの関係が悪い以上、いつかどちらかの不満が爆発して流血沙汰になりかねない。

 それだけは絶対に阻止しなければならない……その為にもまたナラ村に行く必要がありそうだ。

 理由を説明をして明日ナラ村に行く事にしよう。

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