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翼を抱いた猫  作者: 嵐猫
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兄弟の再会

***前回までのお話***


突然謎の黒い車から現れた人物によって誘拐されてしまったマリア。

たどり着いた先は、ギャビーから話を聞いたジェルマン伯爵の屋敷だった。

ジェルマン伯爵がルシファーというギャビーの双子の弟だと知ってしまう。

天使のように優しいギャビーとは正反対の悪魔のような性格をしたルシファーにマリアは驚きと戸惑いを隠せないでいた。

双子でもここまで性格が違うものなのか・・・

それにしても金髪のギャビーも素敵だけど、黒髪のルシファーもなんだか近寄りがたいイメージはあるもののどこか危なげな雰囲気に少し惹かれるところがある。

あ~~いけないいけない!これじゃただの浮気者だよ~~

マリアはブンブンと頭を振って揺れる気持ちを振り切った。

突然、ルシファーが身構えて言った。


「来る!」


その言葉の直後に乱暴にドアを開け入ってくるギャビーの姿があった。

ギャビーはルシファーの姿を見て一瞬驚きの表情を見せたが、マリアの無事を確認すると冷静な面持ちで言った。


「まさかとは思ったが、おまえがここにいるとはね。ジェルマン伯爵はどこにいらっしゃるのだ?」

「兄さん。久しぶりだね。元気そうで何よりだよ。ジェルマン伯爵とは僕のことだ。さっきマリアにそのことを話していたばかりなんだけどね。」

「おまえがジェルマン伯爵?それはどういうことだ?」

「ジェルマン家に跡取りがいなくて僕が養子に入ったのさ。僕は3代目ということになるね。」


いつの間にかギャビーの周りを取り囲むように黒ずくめの服を着た男達がいた。

男達は終始無言でちらちらとルシファーの顔色を窺い指示を待っているようだ。

突如ルシファーが耳の横でパチンと指を鳴らすと黒ずくめの男達がマリアを押さえこみ無理矢理別室に連れて行った。


「交換条件だ。マリアを返してほしければミカエルをここに連れてこい。」

「待て!マリアを離せ!」

「明日の朝まで待ってやるよ。僕もマリアが気に入ったもんでね。このまま僕の妻にしてもいいくらいだ。」


ルシファーはそう言うと不敵な笑みを浮かべながらマリアのいる部屋に入っていった。

いったい何人いるのか知らないが、湧き出てくるように黒ずくめの男達がギャビーを取り押さえ身動きがとれない。

人間とは思えないくらいの力で腕を掴み締め付けてくる様子を見ると、洗脳した人間に魔の力を与えて怪力にしているのだろう。手の甲にあるヘビの紋章の入れ墨がそれを物語っている。


ルシファーは元々天使として生まれたのだが、天界の掟を破り魔界へ追放され堕天使となった悪魔なのだからそんなことも簡単にやってのけるはずだ。

ギャビーも天使なので力を使えば男達をはね除けることなど容易いことなのだが、人間に対し力を使うことは天界の掟において最も重いタブーなのである。


ルシファーはそのことを理解した上で、この男達を使っているに違いない。

手も足も出ないギャビーは途方にくれるフリをしながら必死に対策を考えていた。

愛を説く天使が人間に害を与えることはできないが、人間同士ならそれも可能だ。

それならクレアに頼めばなんとかなるかもしれないと思った。

彼女は魔女の家系に生まれてそれなりに力もある。魔術で男達にかかった力を取り除くこともできるだろう。


「わかった。今日のところは帰るとしよう。その代わりマリアには指一本触れるな!彼女に危害を加えたならその時は僕も容赦しないよ。」


睨みつけながらギャビーがそう言うと、男達が怯み、掴んでいた腕に力が抜け解放された。

ギャビーは急いでマリアが閉じ込められた部屋に向かったが、扉は固く閉ざされビクともしない。

中から鍵がかけられているだけではなく、天使除けの魔法陣も描かれていた。

為す術のなさに悲観的になっていると、扉の向こうから声が聞こえてきた。


「明日の日没までにミカエルを連れてこないとマリアは僕のものだよ。兄さん。ハハハハハ」


ギャビーは拳をギュッと握りしめて無言で屋敷の出口に向かった。

すると後ろから執事のジルベールが怪しげに光る赤いベルを手渡してきた。

そのベルは持ち手が印鑑のような形でズシっと重厚感があり、ヘビの紋章がついている。そしてなぜか振っても音が出ない。


「そのベルは、時の刻印というものでございます。日没までにミカエル様をお連れにならない場合、マリア様に時の刻印が烙印されジェルマン伯爵の奥方となられるのです。今はまだ音色がありませんが、時間になるとそのベルの音が鳴り響き始めます。その音が鳴り終わる時がタイムリミットでございます。それまでにぜひお越しくださいませ。」


ギャビーは時の刻印を受け取ると屋敷を後にし、クレアの家を目指した。

ずんずんと地を踏みならすように歩いていたため、草の擦り潰された匂いが辺りを充満している。

ギャビーの怒りが周囲の草木達に伝わり、バチバチと攻撃的な音を発し始めた。

いつも以上に葉を揺らしギャビーに同調するかのようだ。


クレアの家が見えてきた頃、ただならぬ森の雰囲気を察したクレアが家の前に出て様子を伺っていた。

ギャビーの姿を見ると、血相を変えてこちらに走ってきた。


「ギャビー!これはいったいどういうこと?森が殺気だっているわよ!それにとても強い邪悪な気配を感じるんだけど。今までの雑魚とは比べものにならないわ。」


「ルシファーが現れたんだ。まさかここまでやって来るとは思わなかった。それよりクレア!大変だよ!マリアが拉致された。ルシファーはジェルマン伯爵3世となってあの屋敷に住んでいるようだ。マリアはそこに拉致された。」


「だけどギャビー!そんなのあんたの力でどうにかなるんじゃないのかい?あんたも天使の端くれならそれくらいの力はあるだろうに。」


クレアがそう言うと、ギャビーは溜息をついて悲しそうに答えた。


「本来ならね。だけどドアの入り口に天使除けの魔法陣を描かれてしまっては手も足も出ないよ。あいつはかなり頭がいい。それに取り巻きの連中が悪魔的なパワーの持ち主ばかりなんだ。元は人間だから手出しができなくて困るよ。」


「その魔法陣ならなんとかなりそうだよ。それからその取り巻き達だが、もしかして腕に刺青があるんじゃないかい?そうだとしたらやっかいだな。」


悩む様子で考え込むクレアを見てギャビーが聞いた。


「クレアほどの魔女でも悩むことがあるんだね。何か必要なものがあるなら揃えるけど何がいる?」 


クレアは一瞬躊躇うようにしながら、申し訳なさそうに答えた。


「必要なのは・・・ミカエルの血とそれから・・・処女の血。邪悪な血と純粋な血が交じるとき魔を跳ね返す力が生じるんだよ。だけどマリアは捕まっているから血を手に入れるのは困難だよね。」


ギャビーはすかさずクレアに聞いた。


「もしかして布に染み込んだ血でも大丈夫?それなら以前ミカエルが吸血したときのを拭いたタオルがあるんだけど。」


「ビンゴ!OKOK!それよくとっておいたね。十分使えるよ。それなら今からあんたの家に行くよ!呪文完成させて作戦練らなきゃね。」


2人は慌ただしくギャビーの家へと向かった。


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