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翼を抱いた猫  作者: 嵐猫
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呪い

***前回までのお話***


ヴァンパイア猫に連れて行かれた家で出会ったイケメンのガブリエルはなんと山羊だった!

戸惑うマリアに突然提案された契約を了承してしまうマリア。

その先、どうなる?!

窓に背を向けてミカエルを抱きかかえたガブリエルは背後の窓から太陽の光が当たり神々しく輝いている。

ブロンドの髪は一本一本がきらきらと輝き命を持っているようだった。

指を絡めるようにミカエルの頭を撫でながら微笑むガブリエルを見てマリアは正直羨ましく思った。

私も彼に優しく抱きかかえられてあんな風に撫でられたら・・・あまりにも美しいガブリエルを見てつい、そんなことを考えていた。


「どうしたの?そんなに見つめられたら穴が開きそうなんだけど?」


クスクスっと笑いながらガブリエルがマリアに言い放つと、マリアはハッと我に返り頬に手を当て赤くなった顔を見られまいと俯いた。

ガブリエルはマリアのそんな気持ちを知りながら気づかないふりをして駆け引きを楽しんだが、マリアに伝えるべきことを思いだし、口を開いた。


「ミカエルに関して注意事項がある。知っての通りミカエルはヴァンパイアの運命を持っている猫だよ。尻尾の先がハートになっているよね?今はこのハートが赤色だけど、これはお腹いっぱいになったことを表しているんだ。ところがお腹が空くとこの色が白に変わるんだよ。白色の時に血を吸われてるととても気分がよくなるだけなんだけど・・・」


マリアは森の中でミカエルを見つけた時のことを思い出した。

確かにあの時は白いハートだったし、血を吸われて気絶して目覚めた時には赤かったよね。

そう思うとあの時の謎が解けてずっともやもやしていた気持ちが氷が溶けたように全身から水になって流れ消えていくように感じた。


「最も重要で気をつけないといけないのはこれから話すことだよ。」


ガブリエルは話しながらその表情を少し曇らせ始め、発する言葉が重くなってきた。

そして彼が話した内容に驚愕し、恐怖を感じ背筋が凍った。

その内容はこうだ。


尻尾のハートが白い状態でさらに空腹になって飢餓状態になると尻尾の先が紫色に変わる。

この状態の時に血を吸われると伝染性の呪いの病気にかかってしまう。

精神が破壊され皮膚の色は紫色になり腐敗してはがれ落ち、血を飲むこと以外の欲求が遮断されてしまう。

いわゆるゾンビヴァンパイア状態に陥り、そうなればもう治療法はない。

もちろん噛まれた者は同じ病気にかかり完全に人間性が失われ豹変してしまう。


100年前にもこの病気が爆発的に蔓延し村二つ消え去ったのだという。

ガブリエルは見た目は20代にしか見えないのだが、実は150歳を超えているらしい。

そしてマリアの大家であるクレアは由緒ある魔女の家系なのだそうだ。

そんなわけでクレアとガブリエルは長年影ながらミカエルの世話をしてきた人達なのである。


ガブリエルはミカエルが暴走しないように森にいる動物を狩ってはその血を飲ませてきた。

もちろん死なない程度に血を分けてもらうのだ。

無駄な殺生はしない。これが彼らのモットーなのだ。


「一つ約束してほしい。ミカエルを決して家の外に出さないこと。そして尻尾が紫になる前に必ず給血すること。守ってくれるね?」


ガブリエルは優しい顔つきに戻り、微笑みながらマリアに言った。


「あ!忘れるところだった!これはクレアからもらった貧血を瞬時に治す薬だよ。特別な材料と特別な呪文を調合してる世界に一つだけのレシピ薬。吸血された後に一滴飲むだけでいいからね。」


マリアは返事をする暇もないままガブリエルから虹色に光る小さな小瓶を手渡された。

軽く振ると小瓶の中でゆらゆらと光のオーロラが揺れていた。

まるで手の中に小さな宇宙があり、自分がとても大きな存在になった気がした。


ガブリエルは抱き上げていたミカエルをマリアに抱かせると、年代物の椅子の側にあるアラベスク模様の小さなテーブルの横に立ち、インテリアに似合わない最新式携帯電話でスピーカーにすると、クレアに電話をかけ始めた。

呼び出し音はしばらく続く。なかか出ないところを見るともう出かけたのであろうか?

しばらくするとクレアの声が聞こえてきた。


「も・・もしもし・・・はぁはぁはぁ」

「あ。クレア?僕だけど。息切れしてるみたいだけどだいじょうぶ?」

「私ももう年かしら?昔はこれくらいで息切れなんてしなかったのにねぇ。ふふふ。」


「クレアはまだ若いよ。ところで今、家にマリアが来てるんだ。この子とても見込みがあるようだよ。やっぱり僕の目に狂いはなかったみたいだ。それで彼女と契約したよ。クレアに払う家賃の代わりに僕の食事の調達を頼んだところだよ。」


クレアは笑いながら了承して、マリアに言った。


「マリアちゃ~ん!家賃の件、OKよ。ガブリエルからたっぷりいただくから~。それと貧血の薬がなくなったら私かガブリエルにいつでも言ってね。すぐに作るから。それじゃ、もう出かけないといけないからまたね。」


ガチャン!!ツーツーツーツーツー


「クレアは相変わらずだな。自分が言いたいことを言ったら相手のことも考えずに切る」


ガブリエルはブツブツ言いながら携帯を切った。

「と、いうわけで。これからよろしくね。マリアちゃん。朝露取るのは明日からお願いね。」

「あ。はい。わかりました。」


マリアはガブリエルに返事をすると出口に向かった。

振り返るとガブリエルはウインクをして愛嬌を振りまいていた。

なんだか彼に振り回されているような気がしたが、その感覚もうれしいものであった。


ミカエルを抱きかかえながら森の中に戻っていくと不思議なことに行きは迷ってしまった道が手に取るようにわかったのである。

足元を見ると草花達がマリアの行くべき方向に道を作ってくれていたからだ。


ミカエルのフワフワの毛に頬ずりすると、ガブリエルの言っていたことは本当だったんだ。不思議な縁もあるもんだなと考えながら草花が示す道を辿り家を目指して歩いて行った。




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