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浮遊

作者: 勿忘草

 俺は今どこにいるのだろう。ここは夢の中なのか、それとも現実なのか。

あぁ誰かが呼んでいる。行かないと。でもどこへ行けばいいのか。

声を追っていくと、女の子と出会った。とても綺麗な目をした女の子だ。

「あなたは、どこから来ましたか?」

女の子は俺に聞いてくる。

「どこからだったかな?覚えていないよ。」

「そう。なら私が案内してあげます。この世でもあの世でもなこの世界を・・・」

この世でもあの世でもない世界?ならなんで俺はここにいる、あぁわからない。

「なにもわかっていないようですね。なら教えてあげます。あなたは自殺をしようとしてこの世界に来た、私はあなたのような理不尽な運命によって狂わされ死んでしまった子どもが来世ではちゃんとした人生を歩めるように案内する者。」

「理不尽な運命によって狂わされた子どもたちって?」

「そうですね、あなたみたいにいじめを受けた子どもや虐待を受けた子ども、育児放棄によって死んでしまった子どもたちのことです。ここで私のような案内人によって生まれ変わることになっています。」

女の子の目は少し悲しそうに見えた。それを見てしまった俺はこの女の子を守ってあげたいと思った。

「どうしたのですか?私の顔をじっと見て」

「ううん、なんでもないよ。ただ君の顔が少し悲しそうだったから」

とても軽い人間に思われそうなことを言っている自覚はある。

「意外です。そういうことをしないイメージだったので」

女の子は驚きながら言ってきた。

「軟派な人間だと思っているみたいだけど、俺はそういう人間ではないよ。」

一応、自分は軟派な人間ではないことを伝えたが、果たして信じてもらえるのか。

「ふふふ、わかっていますよ。あなたがそんな人間ではないことはわかっています。すいません、少しからかってみたくなりました。」

女の子は、ひかえめに笑ってそう言った。

「君は悲しそうな顔よりも笑っている顔の方がいいよ。そっちの方が綺麗だよ。」

女の子は顔を赤くして、小さな声でありがとうございますと言った。

「少し歩きましょうか。あまり時間がないので・・・」

「時間?」

「はい、あなたがこの世界に存在できる時間は1時間だけです。長時間この世界にいると、転生の輪から消えてしまいます。残っている時間は10分だけです。」

俺はなぜ女の子が悲しそうは顔をしていた理由がわかった。この子はずっと見てきたんだ、俺みたいな理不尽な運命によって死んでいった子どもを。

「なんであなたが悲しそうな顔をするのですか。あなたはあと10分もすれば新しい人生が始まるのですよ。」

あぁこの子は俺なんかよりずっと強いんだ。

突然、頭に手を置かれた。女の子が俺の頭をなでている、なんと優しく暖かい手のだろうか。

「泣かないでください、私はあなたのような理不尽な運命によって死んでしまった子どもを案内することが仕事です。だから泣かないでください。」

もう目の前には転生の輪がある。これに触れれば、ちゃんとした人生を歩める。それなのに、なんでこんなにも俺の心は悲しいんだ。あぁそうか、俺はこの女の子に恋をしたんだ。

「きみの名前を教えて」

女の子を生まれ変わっても忘れたくなかった。たったそれだけの理由だった。

「名前はありません。私はこの世界の概念ですから」

「なら俺が名前をつける。そうだなぁ・・・。君の名前は愛。愛でいい?」

もしも、これで俺のことを忘れないのならそれでよかった。

「ありがとうございます、私に名前をくれて」

愛は泣きながら感謝を言った。

「じゃあ、俺はもう行くね・・・。」

俺は転生の輪に触れた。その瞬間に俺は自分のことを忘れていく。新しい人生に俺の記憶はいらないみたいだった。

「絶対に忘れないから!」

そういい残して、消えてしまった

愛はずっと見ていた、いろんな人が転生の輪によって、自分のことを忘れていく様を。

なのに、なんでこんなにも心が悲しいのだろう。

「山内愛兎くん、ありがとう、私に名前をくれて。ありがとう、忘れないと言ってくれて」

愛にはわかっていた。なぜ愛という名前をくれたのか。愛兎は自分のことを忘れられないように自分の名前を一部をあげたことを。

愛は前を向いて歩みだした、愛兎に会えたら、お礼を言おうと心に誓って。

 愛兎はぼんやりとした意識の中で、自分の知らない大人との会話を聞いていた。

「母子ともに健康です。」

そうか、生まれ変わったんだ。

それから何年か経ち、愛兎に妹ができた。

名前は山内愛。名付けたのは、愛兎だった。

「ねぇ愛?僕ちゃんと忘れなかったよ。」

もう会うことはないかもしれない。それでも想い続けよう。

いつか会えたら、そのときはちゃんと伝えよう、好きだと。


どうも、勿忘草です。前回の投稿から随分時間がたってしまいました。

儚い話を書きたかったですが、うまくいきませんでした。


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