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混沌チートゲーム  作者: 灰狐
2/12

天は人を人として作らず。

「は、はっせん・・・。」

少年、高橋駿は自分の財布を見て、絶望感を噛みしめる。さっき彼は自分の仲間とすき焼きパーティーをしたのだが・・・。

「食いすぎだ!!」

焦燥感が殺意に変わる。

「煩い、消そうか?」仲間の女が物騒な事を言う。

「今月の金食いつぶしやがってえええええええええええ!!」

「ここは街中だ、しかも夜中。」

少女に言われ、口をつぐむ。

「だ、だけどこれは・・・。」

「煩い。用は八千手に入れればいいだろ?」

「え」

「やってやるよ。」

そう言い、彼女は道行く会社員に目を付ける。

「ねえ、オジサン。」

「?」

サラリーマンが振り向くと、彼女は一言、言い放った。

「“お金、頂戴”」

ただ一言だけ。それだけなのだが。

「はい。」その会社員は何の疑いも無く財布を渡す。

それをそのまま高橋に渡す。

「はい。」

「」

「どうした?」

「こんな事に『才能』使うな!この独裁者野郎!」

「ほう、それがリョナ好きサイコパス殺人鬼の言うことか。」

「お前よりマシじゃい!」

「一人殺せば犯罪者だが、100万人殺せば英雄。」

「それ皮肉だよ!」

内容を除いて、傍から見れば痴話喧嘩中のカップルって所か、と少年はふと思った。

生憎彼女いない歴=年齢だが。

だが、彼らを囲む街並みは決して夜の都会の様な華々しいものではなかった。

彼らは物乞いの横を通りすぎ、壊れたネオンとシャッターが埋め尽くす裏路地に入っていく。

とても文明国の街並みではなかった。

何故、こんな風にになりながらも、自分達が生きながらえているのか。彼はそれを噂でしか聞いた事がなかった。学校もいけない彼らにはそれしかなかった。まるでおとぎ話、彼は今までの歴史を思い出す。


彼らが生まれる少し前、世界各国で才能開花者と呼ばれる異能を持つ者の犯罪が増加し、もはや都市伝説で隠せるレベルを超えてしまった。当たり前の様に世論は批判する。政府は対策を練る。アパルトヘイトの再発が起こる。

そんな中、一人の日本人才能開花者がクーデターを起こす。彼は自分の才能を『奇跡』を操る物と言い、才能開花者の人権を求める。そして彼がリーダー的存在となり、世界中でクーデターが起こる。当然の様に日本は責任能力を問われる。結果、当たり前の様に各国の制裁が開始される。


最初は某国の兵士の婦女暴行から始まり、国際連合の印象悪化、更に悪化し、関税の強制撤廃、挙句には輸出入の禁止。

結果、日本は強制的に『鎖国』させられた。

元々資源が限られていた日本は当然大混乱になる。ライフラインは止まり、オイルショックが日本のみで起きた。そんな中、例の『奇跡』を使う才能開花者が再び現れる。彼はこうなったのは自分の責任と言い、

遂にその能力を使った。街の大型テレビに映る彼の右手が画面の方を指さし、突然輝いた。次の瞬間、彼はもういなかった。市民は困惑したが、その力が本物と嫌でも知ることになった。

翌日、動く筈の無い発電所が動き、二日目には空のコンテナに食糧、資材が溢れた。三日目には日本海に駐屯していた各国の船が消えた。四日目には暴動などで壊れた全ての施設が復活した。五日目には海外に滞在していた才能開花者が全て日本に集められた。六日目にはその大量の才能開花者を賄えるレベルに日本が拡大した。

そして最後の一日。遂に一連の騒動のせいで死んだ全ての人が甦り、日本にまだ駐屯していた全ての兵士が死んだ。そうして、今の日本は形を変えて救われた。しかし、結局いくら奇跡が起きても、今までの生活をするにはいささかこと足りず、結果貧富の差が広がってしまった。

そんな時代に自分達は生まれた。親はとっくに消えた。今は絶賛独りだ。だが、彼は満足していた。

何故なら彼らは偉大な、奇跡の産物である『才能』を受け取ったからである。


「なあ、何で俺たちまだ生きてるんだろうな?」

裏路地を抜け、川沿いを歩きながら言う。もうすぐで彼の家だ。

「さあ、何でだろうね。」少女は興味がなさそうに答える。

ただ、と少女は付け加えて言った。

「生きてるからには意味がある。意味があるならそれで十分でしょ。」そう言った。

「意味・・・。」少年は自分の手の中にある物を見て呟く。

赤黒く、鈍く輝く短刀。それが彼の『才能』だった。

「そうだよな。」彼はそれをポケットにしまい、再び前を向いて歩き出す。

明日は何があるか、少年はこの無法な時間をとても楽しんでいた。

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