出発
「止まりたいときはこのブレーキを踏めばいい。アクセルとブレーキを踏み間違えるなよ?わしみたいにひどい目みるぞ。」
「あんたやっぱ飲酒運転だったじゃねえか。」
あれから俺はなぜかそりの扱い方のレッスンを受けている。そりの中はハンドルはないが、車にあるようなブレーキとアクセルが足元にある。運転席はふかふかそうな椅子でその後ろにはプレゼントが入ってるらしき袋がのせてある。
「俺未成年だし、車の免許も持ってませんよ。これ運転して大丈夫なんですか?」
「車の免許なんか必要ない。あるのはそりの免許だけだ。」
「そりの免許持ってません。」
「アクセルを踏むとこの毛むくじゃらが発進する。ブレーキを踏むと毛むくじゃらは止まるからな。方向は毛むくじゃらが勝手に決めてくから地図は必要ない。」
無視された。サンタクロースはたぶんトナカイであるだろう動物を指差して話を続けている。
「てか、毛むくじゃらとか言うのかわいそうですよ。そんな扱いしてるといずれ動物愛護団体に訴えられますよ。」
「うるさい。そんなことより、そりの操作を覚えろ。覚えたらさっさといっちまえ。」
こんなやつを幼き頃の俺はリスペクトしていたのか。
「はいはい、さっさと配ってきますよ。あとどのくらいあるんですか?」
「3つだ。」
「少なっ」
「おまえがわしを怪我させなければちゃっちゃと配って終わりにしたかったんじゃがな…。くそが。」
くやしそうな顔をするサンタクロース。しかし、さっきから腰を痛がっている様子は見られない。どくどくと流れていた頭からの液体も止まっているようだ。
まあ、怪我させたのはほんとだし、3つだけならすぐ終わるだろう。少しは誠意を見せてやろう。
「じゃ、行ってきますね。」
俺はそりに乗り込んだ。トナカイっぽい…もう長いからトナカイとしよう。トナカイに繋がれている綱をつかんでブレーキを踏むと本当にトナカイは動き出した。
「達者でな~。わしはそこらへん散歩してるから。不法侵入で捕まったりするなよー。」
サンタクロースは手を降って笑顔で怖いことを言った。サンタクロースの仕事は思ってる以上に大変かもしれない。
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