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危険区域

リスムからゴンドラで揺られ三十分。ゴンドラを降りて武器ケースを肩に担ぎ直し、痛いほどの明かりを絶えず出し続ける照明の中を歩いていく。

 辿り着いたのは防壁都市リドバルド、リスム西側迷宮の入り口でありここから三方に迷宮道が続く探索の拠点だ。

 地形とコンクリートを利用して造られた防壁は、リスム側に来るエネミーの侵略を防御する役割をもっている。

 荷揚げ場は、これからリスムに運ばれる素材が次から次へと運ばれ、人間を乗せて来たゴンドラはそのまま素材を積み込まれ帰っていった。

 開きっぱなしの城門の上には、固定式連射砲が重々しい威圧を放ち敵対者を警戒している。

 探索者の拠点だけあり、すれ違う顔ぶれの殆どは傭兵崩れや犯罪者のようで人相が悪い。

 まあ、探索者という職業は犯罪者の隠れ蓑にされることも多いので、もしかしたら連続強盗強姦犯が紛れていてもおかしくはないのだ。

 最も今は、探索者は地図士組合やギルドの登録が必須なので、昔程酷くはないことだけは確かではあるが。

 だがいないとは言い切れず、警察組織からはあまり良い目で見られてはいない。

 だがまあ、こんな街でも少なくとも第七階層よりは治安は良い事は確かだ。

 ここには、城塞の防壁を担う防御隊が自警団としての役割も受け持っている。

 全員が迷宮探索者としての経験があり、なにより地獄を生存するだけの戦闘力と判断力を持ち合わせているのだ。

 田舎から出てきた自意識過剰の犯罪者が暴れでもしたら、瞬く間に制圧されリスムの警察組織まで連行されていくだろう。

 荷揚げばを超えれば、雑多な汗の臭いと死臭。

 見てみれば、研究用なのか地底種の地竜が巨大な動力運搬車に運ばれていた。人間や亜人の死体もよく団子のように纏めて運ばれることもあるのだ。

 迷宮で死んだ死骸を回収したり、焼却するのはよくある話だ。死骸の中身を性質の悪い昆虫型のエネミーが巣食い大量発生してしまう事例が過去に存在する。

 昆虫退治は、地図士や迷宮探索者以外にも警察組織やリスムの警備隊まで参加した一大事件であった。

 なので、迷宮で死体を一つ持ち帰り焼却すると街は報酬金を出している。

 昔やっていたが、段々労力や危険と報酬がつり合っていないような気がしてとうに手を引いていた。

 死体の質を高める必要があるが、死体を利用して稼ぐならもっと効率的な方法があるのだ。

 石畳の通路を歩き、目的の店の扉を開く。

 この街にずっといると、昼も夜も関係なくなっているのでここは何時でも千客万来だ。

 静かに雰囲気を楽しむ店とは対照的な、肉とアルコールを騒がしく楽しむ蛮族の酒場、ランドルフの酒場だ。

 「ここは何時でも煩いッスね~。先輩、昼食なら別な場所でとりませんか?」

 「阿呆、飯だけ食いに来た訳じゃない」

 カウンター席で泥酔している客二人を蹴り落とし、グシャグシャに丸まった布巾をとり適当に席を拭う。

 起きる気配のない客をチラリと見てから前を向き、対面の給士に目を向けた。

 「アクトのステーキとライス」

 「コオロギの姿揚げ!それに地底蟷螂の醤油炒めにライス!レモンはかけちゃって良いよ!」

 給士は伝票に注文した物を書き込むと、カウンター席に置いた。手を引かれる前に掴み、適当に紙幣を数枚握らせる。

 「頼むぞ?」

 無言ながら恭しく頭を下げると、奥に引っ込んでいった。料理が先か特別注文が先か、まあ気長に待つしかない。

 「先輩、コオロギ今日こそどうッスか?」

 「亜人というか、お前の好物を貶す気はないが、まともに飯を食える環境ならまともに飯を食いたい」

 「食わず嫌いはダメッスよ先輩。確かに人間のご飯は美味しいですけど故郷の味というか…とにかく美味いッスからコオロギ」

 「食わず嫌い万歳」

 話をこれ以上聞きたくないので、騒ぐセルシィを放っておいて懐を探る。

 戦闘用の防刃ジャケットは、内ポケットを多く作っておりここには戦闘で無くさないように様々な貴重品をいれておいている。

 目的の封筒を探り、カウンター席におく。

 マニィ…いや、ネイ=リリネウムが頼んだ依頼。行方不明となった犬の捜索…というか情報記録媒体の回収。

 もしなにかしらの情報回収不能状態であったら、その場の入念な調査と行方不明となった原因の追究。

 例の電話番号にかけてみたら、きっかり五分後に来た企業関係者のスーツ連中が詳しい依頼の説明をしにきた。

 企業の戦闘チームに任せれば良いと試しに言ったが、グレハリア大皇国系の企業は、極力臭いを消してオールラント連合国系企業に気取られないようにしたいらしい。

 いったい、新迷宮でなにがあったのか。臭い消しはネイの指示らしい。

 依頼も事務所に頼むとしたらまともな内容だし、金銭や必要経費の計算、前金の振込まで隙もない用意周到さだ。

 まあ今回に至っては金や名誉は二の字だ。ネイがちょいとばかり預かっている代物を、返してもらわなければいけない。

 「アクトのステーキとライス。それにコオロギの姿揚げと地底蟷螂の醤油炒めにライスお待ち」

 「店長ー!」

 セルシィが大声で喜びを表現し、周囲の視線を集める。軽く頭を殴り、目の前の大男を眺めた。

 二メートル近くの長身に、筋肉隆々の獅子と切れ味のある瞳に白い肌。

 店長兼料理長、アズ=デルトラが腕や肩にまで皿を置きながら器用にやってきた。

 両手に持つ皿から肩に乗せる皿まで流れるような動作で並べ、小さく息をつき快活に笑う。

 「セルシィちゃんは相変わらず元気で良いな。で、対照的に影の薄い男は何を聞きに来た?」

 「少し厄が事務所に来たもんでな、この店に厄を移しに来た」

 「存在が厄がよく言うぜ。いや、厄が厄と呼ぶならそいつは災厄ならぬ最厄だ、勘弁してほしいもんだねぇ」

 ステーキをナイフで切り込み、フォークで口に運ぶ。決して隣のように派手に食い散らかすような真似はしない。

 セルシィが料理に夢中なら、邪魔なく話すチャンスだ。

 アズはここの料理長であり、若い頃は探索王ランドルフの元で『棒弓のアズ』とか呼ばれていた生きた英雄だ。

 探索王ランドルフの英雄奇譚を嘘と笑う事が出来ない理由の一つである、生き証人である。

 百六十年前に没した英雄の仲間が何故生きているのかと言えば、彼は現存する亜人の中で最も長命である長耳の種族、森妖族の血を引いているからに他ならない。

 身体の線が細い一族である森妖族と似ても似つかないくらいガタイの良い理由は、彼は豚鬼の血も引いているからだ。

 そうなると、趣味の悪い貴族が好みそうなシチュエーション、豚顔の亜人が華奢なエルフを無理矢理強姦し孕ませたような下世話な想像が頭に浮かびそうだが現実はその真逆なので面白い。

 男性の少ない森妖族の一派が、豚鬼の集落を襲い種を奪ったという話は、アズに話を聞いても冗談半分にしか聞こえなかったが裏付けがとれてしまったのだ。

 閑話休題。

 とにかくアズは、そんな素性から街の顔役であり、新米からベテランまでこの酒場にゲン担ぎをしに来るくらい人気者である。

 普段なら握手や手合せの申し込みでアズの回りに人が集まるが、今集まらない理由は、地下素材ではない森妖族に伝わる特殊な植物を調合した薬と技術を使っており気配を薄め注目を集めないようにしているらしい。

 原理が気になるが、門外不出らしいので詳しくは知らない。

 アズに出会った理由は、裏付けをとる為である。彼は酒場に訪れる全ての探索者を愛している。

 そうであるのなら、調査員約二名を除いた残りの探索者が本当にいるのか彼は覚えている筈だ。

 となれば、この探索者の連中は本当に探索者であり、ネイが騙しに来たかどうか調査が出来る。

 俺はネルに過剰反応しているだけなのかもしれないが、調べておいて『罠なんて無くて、取り越し苦労だな』と後で笑えるならそちらの方がよっぽど良いのだ。

 「この写真の連中、見覚えは?」

 封筒から写真を取り出し、並べる。

 写真を一瞥し、アズはため息をついた。なにやら、初めて聞かれたといった様子でもないように見える。

 「こいつ等もか」

 「こいつ等も?」

 「行方不明なんだろ?」

 その一言に、眉を顰める。この言い方から察するに、既に相当数の人間が消失しているというのだろうか。

 「この件、首を突っ込むのはやめておけ。いかにお前さんが、元『牙狼の戦斧』の部隊員だとしてもな。

 冒険は、趣味じゃないんじゃなかったのか?らしくないぞランザ」

 「趣味じゃなくても、断頭台に首突き入れる理由が出来ちまったんだ。

 黙って知ってるこどだけ教えてくれ、じゃなきゃお前さんはタダの図体がデカイおっさんだ」

 「まるでただ図体がデカイだけのおっさん!略してマダ…」

 セルシィの後頭部を掴みカウンター席に額を叩きつける。どうしてこいつは、真面目な話をする時に空気の読めない発言をする。

 その様子を苦々しい顔で眺めつつ、アズは小さくため息をついた。

 「ロクデナシの小僧共め、俺はお前等に死んでほしくないぞ」

 「知るか。死んだら死んだでそれまでだ。今更必死に人生にしがみつく理由もなくてな」

 「何時まで過去を引きずるつもりだ?小僧。お前はもう少し、過去を美化する事を覚えたらどうだ?とにかく俺は、お前等に教える事は…」

 アズの目つきが変わる。それもそうだろう、俺はこの酒場を軽くダメにするだけ暴れられる自信くらいはある。

 例え最後は自警団に捕まり、絞首台におくられる末路であったとしてもだ。教えないなら、互いに損をするという事を確認させる。

 傍らのセルシィも、カウンターに突っ伏しながらもその両手は何時でもサブマシンガンを掴もうと小刻みに震わせている。

 馬鹿な俺と、大馬鹿なセルシィ。別にここまで付き合ってもらう必要はないのだが、どうやら付き合う気満々のようだ。

 「何故そこまで?」

 聞き分けない子供をあやすような口調で、アズは緩い笑顔を浮かべ尋ねた。俺たちがが暴れたら、瞬時に叩きのめす自信があるとでも言いたげだ。

 「そうだな…過去を美化する為だ」

 「なに?」

 「大切な物はもう無いつもりだったが、どうやらそうでもないらしい」

 後は語る必要もない、アズがどう判断してどう選択するのかを待つだけだ。

 いざとなったら、自暴自棄と大馬鹿のコンビが強いか、引退した元迷宮王のチームの一員が強いのか試してみることになる。

 こういうのは趣味ではないが、今回ばかりは例の地下迷宮からどうあっても生きて戻る必要がある。依頼を終えネイから預かりものを返してもらったら、絞首台にでもなんでも送られてやろう。

 アズにこの場で負ける可能性もあるが、そうなったらそうなった単に生き延びる器ではないという話だ。仮に地下迷宮に逃げ込めても、生きて帰れないだろう。

 「俺は、小僧と嬢ちゃんを気に入っているんだがな。そうまでして、無気力な小僧が死地に赴きたいと言うのなら…仕方あるまいよ」

 疲れたように、諦めるように、アズがため息を吐いた。店の治安と安寧を人質にした交渉は、どうやらこちらに軍配があがったらしい。

 「だがな小僧よ、武力や威圧に任せた交渉は軋轢を産む。

 それを分かっての脅しなのだろうが、今回のような結果には早々ならん、覚えておくんだな」

 「今回だけだよ。悪いなアズ」

 雰囲気を弛緩させると、セルシィも何事もなかったこのように食事に戻る。先程のようなどこにでもあるような、昼食の風景に戻っていった。

 「第一層にて発見された新しい迷宮は、タウロスと呼ばれるようになった。世界初の迷宮と呼ばれた、クレスタ島の人食い怪物ミーノタウロスを捕えていたという迷宮がモデルの名前だな」

 「牛頭の悪鬼か。それで、どういう事態になってるんだ?」

 「遺体が無いんだ」

 遺体が無いと聞いて、一瞬首を傾げたくなった。別段、地下迷宮内で遺体が消えていたとしてもそれは不思議ではない。

 食い散らかすタイプのエネミーならともかく、丸吞みして胃袋の中で遺体を溶かすタイプのエネミーがいるなら遺体が消失していてもなんら不思議ではない。

 その場合は、持ち主のいない武器や服装の切れ端のみが周りに散乱しているので、警戒や対策も容易だ。

 別段、アズがその程度のことになにを気にかけているのかよく分からない。

 だが、次の一言を聞いて流石に俺も首を傾げざるえない話を聞く事になる。

 「服、装備、小物、食糧、アクセサリー。全部残っているんだ、破損のない状態のまま。

 人間だけだ、人間のみが消失している、毛先一本残さずな」

 

 □ □ □


 ダレ…ダレ…ダレ?

 ニゲテキタ…コワイ…カラダナイ…イタイ

 アナタ…ダレ?オソワレル…イタクナイ…デモオナカヘル…イブツカン…イタダキマス

 イカナキャ…イカナキャ…ニゲナキャ…タスケテ


 □ □ □


 ランドルフの酒場を跡にし、リドバルドの裏路地を進む。

 だがまあ、裏路地といっても両脇には異種の死骸を加工したり盗品を販売する露店があったりと、静けさとはほど遠い雰囲気を醸し出していた。

 そして、路地に転がる目が虚ろな子供や大人。

 数少ない蓄えを薬に使い、現実逃避どころか、現実から逃避してしまった者たちのなれの果てだ。

 ストリートで暮らす者達は、ちょっとしたことがすぐ死に繋がる過酷な環境で生活している。

 例えば、カスリ傷が化膿したり、食あたりやちょっとした風邪でも慢性的栄養失調や不衛生な環境にいる彼等彼女等は命に関わるのだ。

 こういった破滅を呼ぶ行いをしても、どのみち来る破滅をただただ先延ばしにするか積極的に迎えるかのどちらかしかないのかもしれない。

 目当ての店の前についた、アルコールと柿の腐ったような悪臭を常に振り撒くローネ=カーマインの死生人製造所だ。

 「アタシ嫌いなんスよねー…あの変態」

 「一応取引先の一つだ、あまり暴れるなよ?なんなら外で待ってるか?」

 「冗談じゃないッスよ。なんか知らないけど、先輩がやるって決めてるならお手伝いしますよ。例えどんなに嫌でも、情報は集めておかないといけないじゃないッスか」

 セルシィがノックも無しに扉を開ける。中からはアンモニアの臭いまで溢れ出すが、強力な換気扇が臭いを吸い込み排出していた。

 小さなカウンター付きのロビーの奥には、今も新鮮な死体を加工しているのだろう。

 「もしもーし!変態いるッスか!?」

 呼び鈴をチンチンチンチンと連打しながら、セルシィが声を張り上げる。 数十秒後くらい経ったか、奥の方から緑色のビニールのようなエプロンをつけたガスマスクを被る女性が出てきた。

 「あらあら、ランザ君にセルシィちゃん、いらっしゃい。

 また珍しい死体でも卸に来てくれたのかしら?」

 ガスマスクをとり、束ねた髪をかきあげる。

 マスクの中身は、柔和な笑みを浮かべた、聖母像を思わせるおっとりした美人の女性だ。

 イメージで言えば、個人経営のカフェで優しく呑気に生活している母性本能溢れていそうなお姉さんといったところだろうか。

 あらあらうふふ、とか素で言いそうな雰囲気がある。

 「残念ながら卸せる死体は今は無い」

 「あら、じゃあ遊びに来てくれたのかしら?特にセルシィちゃんが来てくれるのは嬉しいわねぇ。

 美味しいお茶とお菓子があるのだけれでも、如何かしら?」

 この女のセルシィを見つめる瞳は、どこか粘着質で舐めまわすかのような雰囲気がある。

 普段は馬鹿が元気を全力で発揮しているようなセルシィも、縮こまりながら俺の後ろに隠れてきた。

 「え…遠慮するッス」

 「まあそう言わずに、美味しいわよ?」

 セルシィが軽く服を引っ張る。少し頭を下げてやると、彼女は慌てたように小声で耳打ちした。

 『やばいッス、相変わらずやばいッスよこの人。身の危険をさっきからヒシヒシと感じるッスよ。

 聞く事聞いて早いこと退散しちまいましょーよ』

 自らに向けられる異質な視線を感じてか、身の危険を本能的に分かっているのか。

 ローネ=カーマインという女はレズビアンであり、連続少女誘拐殺人犯と墓所荒らしに死体損壊、序に屍強姦の前歴がある札付きの変態だ。

 彼女は元は球体人形を作る造形師であった。リアリティーをなによりも尊重し、尊重し過ぎた結果により禁忌に手を出してしまった異能の芸術家だ。

 拉致した、自らのアトリエに招待した少女を麻酔で昏倒させた後毒ガスで殺し、綺麗な死体のままエンバーミング処置をして保存しありあらゆる角度から観察するコレクションにしていたらしい。

 エンバーミング処置とは、融解酸素や体内の微生物、クロバエやニクバエの幼虫により腐敗する死体を防腐処置をする技術である。

 まずは、死体の消毒と洗浄、そして表情や身体の表情や状態を整える。

 動脈より防腐剤を注入しながら血液を排出し、腹部に小さな穴を開け腐敗しやすい消化物を取り出し、その代わりに防腐剤を注入。

 葬儀等で死体を保存するなら、この程度の処置で終わるが、更に手をかけメンテナンスを施せば半永久的に死体をもたせる事が可能だ。

 死体で人形造りのリアルさを研究するだけでもアウトだが、更にアウトだったのは彼女はレズビアンであり、ネクロフィリアであったことだろう。

 更にはストライクゾーンも広ければ、種族の壁も関係ないらしくぶっちぎりでイカれた女だ。

 セルシィはそのことを知らないが、かたくなに全てを拒否する態度は命と貞操の危機を感じたからだろうか。

 据え置きゲームで貞操を捧げる覚悟をするアホさ加減から、セルシィに貞操の危機といった概念が本当にあるのかどうかは分からんが。

 とにかく、そんな事を続けていれば地上では生きていけない。やがて、犯行が地道な捜査のせいで明るみになり、地上では活動出来なくなって偽名を使い地下に逃亡することとなった。

何故ここまで詳しいのかといえば、生前の妻が彼女が造る球体関節人形のファンだったからだ。興味もないのに幾度も話を聞かされ、まだローネが表面上のみまともな時代に一度観光で彼女の公開展示会場まで足を運んだ事もある。

 球体関節人形に興味のなかった俺でさえ、生きているような生々しい造形の人形で出来た美少女達に息を呑んだものだ。

 妻の為に一つだけでも買って帰りたいところだったが、値段が異次元すぎて購入は出来なかった。

 偶然…多分偶然だとは思うが、その時一回俺は妻と共にローネに会っている。

 まだ心身共にまともなころの俺と、純粋に芸術を追いかけ高みを目指すローネは、話はかみ合わないものの当り障りのない純粋な会話が出来たものだ。

 しかし、ローネはその日から一月後くらいに最初の殺人を犯し、その一年半後には俺自身人間性を捨てることとなる。

 偶然にも再開した俺達の会話は、やれ新しい死体がどうだやれ珍しいエネミーの死体がとれただの救いようのない内容になっていた…成り果てていた。

 球体関節人形は、今でも資金稼ぎに偶に居眠りしながら造るらしい。

 人形より人間、亜人の美女や美少女達に熱をあげるその姿は、まるで悪魔でも憑りついたかのようだ。

 まあ、向こうから俺を見たら、人の事を言えないだろうと返されるだろうが。

 「おしゃべりでなし、セルシィちゃんを貸してくれるでなし。何をしに来たのかしら?」

 「死体愛好家のお前に聞きたくてな。服装や装備をそのままで、身体を溶かしつくすエネミーの噂を聞いてはいないか?」

 アズの話では、そのような種は現役時代に遭遇したこともなければ、噂も耳に挟んでいないらしい。

 アズは、遺体を溶かして証拠を隠した殺人鬼ジョン=へイグの再来だと唸っていたが、死体の加工を生業とする彼女はこの一連の流れをどう判断しているのか。

 「ランザ君は、その件でお話を聞きに来たのね。

 そうねぇ…私はあまり知らないけど、一連の噂くらいなら聞いているわね。

 ジョン=へイグなんて無粋な殺人鬼の再来なんて騒がれてるけど、私としては死体隠しのやり方は彼よりよほど高度なやり方のエネミーだと思っているわ」 

 「高度?」

 「殺人鬼であり吸血飲血趣味のあったジョン=へイグは、いったいどんな風に死体を遺棄したと思ってる?」

 有名な話だ。彼は、死体が見つからなければ罪は問われないと考えていた。

 そこで彼がとった行動は死体をドラム缶に入れた硫酸の中に漬け、死体の溶解具合を見て継ぎ足しながら死体を隠そうとした異常殺人者だ。

 警察に対して、死体を見つからないことで罪を問われないと信じる彼は、当時の取り調べ室でその時の様子を詳しく話したと言われている。

 「硫酸に漬けたんだったな、確か」

 「正解。でもジョンは、死体が完全に消えたと思い込んでいたけど誤算があった。

 溶解に使った硫酸を、自分の家の庭にぶちまけた事まで自信タップリに警察に漏らしてしまったのよ。完全犯罪を達成した犯人が、それを誰かに自慢したいと考えるのと同じかしらねぇ。

 困った子だわ。死体の扱いをよく知らずに皮残用だけで自信満々になってしまうのだから」

 まるで、悪戯をした我が子をどう叱ろうか考えている女性のようだ。

 どちらも世間から騒がれた殺人鬼同士だが、間抜けと一緒にされたくはないと考えているのかもしれない。

 まあ、ジョンと同一視されてるのはタウロスのエネミーであるのだが。

 「最後には、ドラム缶を引きずった跡や、消化し残った骨や酸に溶けにくい脂質に覆われた胆石が見つかってしまったのよねぇ。

 関節炎を患った肥満体の女性、そこまで分かれば、硫酸如きには消化しきれないくらい分かりそうなものなのに。死体に対する敬意もなければ、知識もない。所詮は二流の犯罪者ね。アクリル製の義歯まで残っていたなんて話を聞いて、笑い転げちゃった。

 そもそも、溶かすというのがナンセンス。目の前に死体があるなら、それをどう自分にとってプラスになるのか考えないと…殺人鬼であり食人鬼の方が、まだマシよねぇ」

 死体でドールを作る女が何を言うかと思ったが、彼女は警察や国境の兵士を欺いてここまで来ただけまだ頭が回るのだろう。

 そうじゃなきゃ、ジョンと同じ処刑台行きだ。

 「話が異次元すぎるッス…」

 死体を完全に破壊する事に楽しみを見出すセルシィも、あまり人の事を言えないだろうが、ここで口を挟むと話が進まないので黙っておこう。

 「まあとにかく、かのエネミーは無粋なジョンとは一枚も二枚も上手な殺人鬼のようねぇ。死体だけでなく、服や装備も隠せれば百点満点なのに」

 「生きながら溶かされるのか、殺されてから死ぬのか。死に方によっちゃお手上げしたくなるおっかねぇ話だな」

 「溶解についての原理だけど、銀以外の全て金属を溶かす王水が最初に思い浮かんだけど多分違う。現存する薬品で、数日くらいで人間を完全に溶かす薬品は無い筈よ」

 だとしたら、どこかの人食い巨大生物の胃酸でもぶっかけたのだというのか。だが、鬼人種の腹から三日過ごして生還した人間だっているんだし有り得ない話だ。

 まだまだ両手でで数える程しか人類の侵入を許したことがない第五層迷宮か、ランドルフとその仲間のみ足を踏み入れた第六層にいるであろう未確認生物なら可能な種がいるのかもしれないが。

 「何時になく必死ね」

 「そうか?」

 「そうよ。まあ、貴方が今更必死になる理由なんて、容易に想像がつくけどね」

 俺は今、苦虫でも噛み潰しているかのような表情になっているのだろうか。

 顔を見上げるセルシィも、目の前にいるローネも、なにやら何時もとは違う視線を俺に向けているように思えた。

 「ランザ君、二人で話をする時間はあるかしら?」

 「……セルシィ、ここで待っててもらって良いか?

 いや、やっぱり迷宮探索前にお前の銃機と俺のハルベルトの調子を確認してもらった方が良いだろう。スミスの工房に行っていてくれ」

 武器ケースを、セルシィの方に差し出す。別に今ハルベルトが無くなっても、丸腰という訳ではない。

 ベルトの後ろには、小振りな猟刀を装備しているし懐には拳銃がある。多少不足の事態に巻き込まれても、なんとかなる筈だ。

 「頼む」

 なにか言いかけたセルシィの、口を塞ぐようにケースを押し付ける。

 よろけはしないものの、なにか言いたげに口をすぼめ彼女は苦い表情を見せた。

 「アタシには、話してくれないッスか?」

 「聞いてて面白い話じゃない。行け」

 「……了解ッス」

 武器ケースを尻尾に巻きつけ、セルシィが部屋を後にする。

 頭を軽くかきむしり、無性に煙草が恋しくなったが誤魔化すように唇を少し舐めローネを見た。

 「話は奥で、私の展覧室で如何かしら?」


 □ □ □


 タスケテ…ミンナクリカエス

 タスケテ…イミ…キュウエン…ヨウキュウ

 タスケテ…ハツゲン…コウカ…テキタイ…ショクジ…マンゾク

 カタチヘンカン…タスケテ…コウカ、コンワク…テキタイ…ショクジシテマンゾク

 シキソヘンカン、タスケテ、コンワク、ホゴ、ヘンカンカイジョ、テキタイ、ショクジ、エルフ、オイシイ、マンゾク

 色素、人に近く 声、人に近く 付属物、人に近く 一部体組織、余分につき一時分離、敵対生物排除へ 声帯発声、助けて助けて助けて、男、性臭、発情、危険、捕食、満足


 □ □ □


 ローネのアトリエはビルの一階と地下にあるが、気に入った物を飾り付ける展覧室や生活スペースは二階と三階に存在する。

 三階の主に屍生人形が飾ってあり、主にこの地下で戦死した女性の戦士達を加工して、生前のような生々しさを維持しながら佇んでいる。

 三階を見れば、そのうちの数体の遺体は見覚えのある顔ぶれをしているだろう。

 俺が地下から持ち帰り、もしくは地下で殺害した女達の顔が並んでいるのだから当然だ。

 別に彼女等は、なにか過去に汚点や前科があった訳ではない。ただ、死体の状態が良かったから。ただ、その容姿をローネが見かけ酷く気に入ってしまったから俺に依頼が回されただけだ。

 質を選ぶが、金回りの良い死体の扱い方。慈善事業のような事をしていた事務所の先代を事故に見せかけ始末してから、一番最初に始めた仕事だ。

 まだ生きているうちに拉致して、ローネの前に連れ出し脅えや怒りといった感情を、インスピレーションがほしいという彼女の要望に応え生きたまま拷問をした事もある。

 女性に対し欲情するという感情が鈍磨し、死体を扱う非人道的な行為に躊躇がない俺に、ローネはよく依頼するようになっていた。

 珍しいエネミーの死体の方を中心にローネに卸すようになったのは、事務所にセルシィが入社した頃からだ。

 葬儀用に死体の保存や、悪趣味な貴族や研究者がエネミーの標本を欲しがる時にローネに依頼してくる時くらいにしか、ローネの店に商品を卸さなくなっていた。

 まあ、綺麗な美人の死体を見つけた時くらいは持ち帰り卸してやったりはしているが、一時期に比べ随分と落ち着いたものだ。

 とにかく、セルシィが入社する前の俺は、ローネと最高で最低のビジネスパートナーだったと言っても良いだろう。

 言い訳するつもりもないし、この過去はアズが言うところの『美化』とやらは到底無理であろう話だ。

 面白かったのは、『何故人を殺してはいけないの?』とぬかしていた女を殺してローネに売り払った時だ。

 俺自身が社会的害悪なのに、同じ社会的害悪を殺害し気分が良くなる自分自身が面白くておかしかった。久々に気分がやや高揚したといっても言い。自分の事を棚に上げて『良い事をした』気分になった自分がチャンチャラおかしかった。

 アズは何故、こんな俺を気にしているのか。腹の中を見せていないから彼は、なにも言わずに話しかけているだけなのだろう。

 三階で話すと思っていたが、ローネは二階の部屋の扉を開けた。

 雰囲気のあるバーのように、最低限まで絞った照明が不気味に美しい人形達を浮かび上がらせる。

 赤いドレスを着た人形がガラスケースの中に並び、大きな貴婦人の服を着た人形が通路を囲むように立ち尽くす。

 可憐な子供の人形が戯れた姿のまま固まっており、角の方のテーブルではティーカップを持つ人形が談笑するように数体鎮座していた。

 よく見ると、天井から吊るされた紐が人形を固定しているようであり、まるで異世界の生物が時が止まったままその場に立ち尽くしているような気さえしてくる。

 中央に丸テーブル。そしていったい何時準備したのか不明な湯気をたてる紅茶とスコーン。

 「あらあら、誰かがお茶を楽しんでいたのかしらね?」

 ローネはおかしそうにそう言うと、椅子を引いて座るように促した。

 大人しく座ると、彼女は対面に腰を降ろし細い指先を組んで、そのうえに顎を乗せる。

 「改めて、いらっしゃいランザ君。私がまだ人形士でいられた頃の部屋へようこそ」

 「多少資金稼ぎに人形を造っていたという話は聞いた事があるが、多少ではすまない程度の数は造っていたんだな」

 「ここは、過去の私に今の私を見てもらう為の部屋。

 ここにいるとね、まだ必死に球体人形に血道を上げていた私が今の私を見ているように感じるの。

 初めて自分が嬉しくなるような球体人形を作れた時の私、初めて人形が売れた時べッドの上で感動のあまり泣いた私、初めて世界球体人形コンクールで優勝した時の私、スランプでどうしようもなくなり目につく作品を全て壊し尽くした私。

 全部の私がこの部屋にいて、今の私に話しかけてきてくれる部屋」

 「オカルトか?」

 そう言うと、ローネは何故か嬉しそうに顔を左右に振る。

 「過去の私は、今の私を見て非難の声をあげる。裏切り者、自首をしろ、死んだ方がマシだとね。

 まあ、スランプで行き場のない私だけは、過去と今どちらにつく事も出来ず悩んでいるようだけれどもね。

 そして現在の私は、その声を聞きながら鼻で笑ってやれる。今の生活を美化して感動し、過去の私より恵まれていると自覚できる。

 私が罪悪感を抱かない理由、厚顔無恥に生きられる理由といっても良いのかしらね」

 「アンタが電波なのは、元から知っているよ」

 「そうね」

 手元にある紅茶を口元に運び、唇を湿らすようにローネはゆっくりと飲んだ。

 今の話を信じるとしたら、彼女は今こうしている間にも過去の自分から非難と中傷の荒らしを浴びているのだろう。

 だがそんな事を気にせず、彼女は紅茶を飲み優雅に笑ってみせる。

 なんという精神力なのだろうと驚くべきなのか、それとももう壊れているんだなと思うべきなのか。

 おそらく、精神力のある怪物が壊れた姿のお成れの果てが今の彼女なのだろう。

 およそ球体人形士として、同門からは誰もが憧れる高みに上り詰めた彼女が最下層にまで落ちた姿。

 高いところから落として壊れた玩具が、まだ歪に動いているような歪んだ駆動。

 ローネという人間は、壊れながらも動き続けている自分を愛しているらしい。

 「話したかったのは、電波な妄想か?」

 「いいえ?私はこうして過去を肯定して生きているけど、貴方はどうなのかなと思ったのよ」

 「さあな。生憎俺には、過去の声は聞こえないな」

 「いえ」

 ローネが妖艶に微笑む。ネイとはまた違う、人を食い殺す微笑みに見えた。

 「貴方は聞こえないふりをしているだけよ。

 本当は聞こえているのだけれでも、自己防衛の為に、自分は聞く価値のない人間だと判断して、耳を閉ざしている。

 そうまでして貴方は生きてきた、それもそれで凄い事だと思うし私は尊敬している。

 でも貴方は、本当にこの先もそのままずっとその状態を維持していられるのかしら?」

 「……馴染みのよしみだ、話だけは聞いていやる」

 「ありがとう」

 紅茶をもう一杯、俺も不気味な紅茶を一杯飲んで会話の続きを待つ。

 過去を閉ざしていると言われても、こちらとしては自覚がない。

ただ昔言われた事があるが、どうやら俺は振り返るべき過去の上を重い蓋が閉ざしてそれを開ける気力がないだけだそうだ。

 過去の声というより、それは過去の腐臭に感じる。その臭いは精神を貪り腐らせる、腐った精神は既に腐りきっている心と重なり破滅を呼ぶ。

 だからその腐臭を誤魔化すように、新しい死体を重ねそれが腐ったら更に新しい死体を重ねる。

 現状がそれだと、まだ戦場にいた頃ネル…当時のマ二ィに言われた事があった。

 どいつもこいとも、人様の精神解説が好きなようだ。自分だけで満足してほしいものだ。

 「貴方が動く理由…奥さんに関係したことね?」

 「詮索好きか?長生きしないぜ」

 「まあね。ただ、気持ちは分からなくもないわね。

 貴方の奥さん、確かに美人だった。今の私が出会っていたらアトリエで加工して飾ってしまいたいくらいにはね。

 ふふ…貴方達夫婦に声をかけたのも、偶然目に入った奥さんを隙を見て寝取ってしまおうと考えたからなのよ…未遂で既に時効だから怒らないでね」

 世界的な人形士がわざわざ一介のファンに出会うなんて裏があるとは思ったが、やはりそうだったようだ。

 それもかなり邪な理由だ、怒らないでと言われたが一回くらい殴っても罰はあたらないのではないだろうか。

 「……まあ、否定はしない。妻とガキ絡みの話だ。

 依頼人がどうにも嫌な奴でな、とっくに焼けて灰になったと思っていた遺品を奴は握っているらしい。返してもらうのと、何故それを持っていたのかという事だけはハッキリさせておく必要がある」

 あの名刺の裏に書かれていたのは、電話番号とその事を示唆するメッセージだった。

 それを今の今まで隠していた理由は、確りと問いただし絞めておく必要がある。

 昔とは違う事を、奴に教えておいてやらなければいけない訳だ。

 「やめておきなさい」

 突如表情を引き締め、語った言葉は制止の一言だった。

 「理由を聞こうか?」

 あと六年くらい若ければ、怒鳴り散らしながら理由を尋ねただろう。感情の鈍磨は、年々勢いと覇気をも貪り尽くすのかもしれない。

 だがまあしかし、やめておけとはいったいどういう理由なのだろうか。

 「貴方は、どうやら自分で気づいていないようね。

 自分を許していない人間が、過去を手にしたとしても罪悪感で壊れるだけよ。

 私の過去は、今の私を見て罪悪感で壊れているから分かる。奥さんの事もあるし、私は貴方が壊れるのを推奨しないわよ」

 「電波同士なら分かり合えそうな理屈だ。

 話がそれくらいなら、もう俺は外でセルシィの後を追う事にするが?」

 椅子から立ち上がり、人形に囲まれた通路を歩く。

 ここにいる壊れた彼女の幻影が、もし本当にいるのだとしたら俺の事をいったいどう見ているのやら。

 そしてもし、俺自身の過去が今の俺を見たらどう罪悪感を感じて壊れていくのだろうか。

 少しだけ興味があるが、馬鹿馬鹿しい、所詮電波な妄想だ。人の事を言えないかもしれないが、猟奇趣味の変態の戯言は真剣に聞くだけ心を病む。

 「ランザ君。貴方は自分が壊れる過程をきっと自分では気づかないでしょうね。

 今の貴方がゆっくりと壊れるということは、リスムという悪所で形成された生きる形が壊れていくということ。

 そして破損が致命傷になった時、貴方はリスムという悪鬼に喰われる事になる」

 「それもそれで、人類の世界平和に向けた第一歩だろうよ。

 まあほんの僅かな誤差の範囲で、なにかが変わるとは微塵も思えないが」

 「今の一連の会話は警告。これ以上止めはしない。

 死んだら遺体は残してね、馴染みのよしみで加工して飾ってあげるから…セルシィちゃんと一緒にね」

 扉に手をかけたまま振り向く。やれさて、なかなか人を嫌な気分にさせてくれる女だ。

 「くたばっておけ」

 「考えておく」

 扉を静かに閉め、階段を降りながら物思い拭ける。

 俺が死んでも、セルシィの安全くらいは確保しておいてやるか。

 残念ながらそれくらいしか、俺の頭には浮かばなかった。


 □ □ □


 助けを求める 助けられる 助けを得る 助ける

 誰か誰か誰か、ここから連れ出してほしい

 食べれば満足、言葉も覚える、外も知りたい

 声帯はまだよく分からない、でも覚える

 アイツには会いたくない、アイツは嫌いだ、だから逃げたい、タスケテほしい

 動けは感づかれる、だから大きく動けない

 だから待つ、誰かを待つ、次はなるべく、食べないように、気をつけよう

 死体くらいは、食べるかもだけど

 待つ待つ待つ、助けて助けて助けて

 ここから救って

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