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ノン・フィクション3

 銃身が焼けつくように熱くなっていく。

 やや酷使したサブマシンガンの弾倉を取り外し、新しい物を叩き込む。

 大型物資搬送用エレベーターの柵を乗り越え、飛来する人影に向け脳髄から心臓に弾薬を叩き込むように乱射。

 カエルが潰れたような音を出して、人影が柵の向こう側に押し戻され多量に生えたちぎれかけの腕で柵にぶら下がる。

 一つの胴体から三つの首と、憤怒に嘲笑、絶望の顔が三つ生えたその異形は、なんとか這い上がろうと奇声をあげながらよじのぼって来た。

 美麗で穏やかな笑みの美女の顔に散弾銃の銃口を押し付けて射撃。美麗な顔と防腐処理された脳髄が吹き飛び異形の女が落ちていく。

 「蟻人、機人、魚人、地底の化け物に天乱雲の異形!世の中いろいろいるけど幾らなんでも、こんな常識外れな存在もいない筈ッスよ!」

 「なんならこれは人工物ってのは考えられないか?とにかく今は足と手を止めるな!制御パネルに近づけるな!」

 上から、下から押し寄せる異形。

 全身に顔面が浮かび上がる全裸の性別不明の二足歩行の人間のようななにかに足技を叩き込むレドリーも叫ぶ。

 古き邪神が戯れに作り出したのか、神話における人類製造の過程における失敗作か、それとも物語に出てくるような狂った科学者が生み出した産物か。

 あの蜘蛛女が人間の生首から作る自らの眷属のような頭のおかしい生物も存在するが、この生物達は狂気と狂喜に満ちた感情を感じることが出来た。

 「数が…多い!」

 さながらバイオハザード、もしくはデットライジングに出てくるような生存者に群がるゾンビの大群のように途切れることを知らない異形の敵。

 背後の敵の抱きつき攻撃を回避し、焼き付きつつあるサブマシンガンから一度手を離してナイフを抜き腹部に深々と突き刺し叩き込む。

 仕様している特注ナイフはかのバイオ4のイケメン主人公レオン・S・ケネディが愛用モデルであるが、ゾンビが相手でない限り過度な期待はしない方が得策だろう。

 引き抜いて蹴りを叩き込み、倒れながら散弾銃を向け射撃。

 肥大した腹部に多量の弾丸が叩き込まれ、中から肉片や内臓と共に自愛の笑みを浮かべた赤ん坊だったものがバラバラになり吐き出された。

 リスム地下迷宮でもないのに、なんて夢見の悪くなる光景だ。

 だがショックを受けている暇はない、サブマシンガンを広い地面を転がりながらその場から離れ、先程自分がいた場所に射撃し追撃してきた敵を射ち落とす。

 起き上がろうとした刹那、自分以外の何物かが発射した二発の射撃音。

 左肩をかすりもう一発はギリギリ頬をかすめていった。射撃音がした方向を見ると、軟体のようにグニャグニャしたなにかが、腕とギリギリ分かるような部位を使いこちらにハンドガンを向けているのが見えた。

 手瑠弾を取り出し投げ、球体の爆発物を対象の目の前で撃ちぬいて爆発させる。

 こんな乱戦は久々だ。後期牙狼の戦斧にいた頃は奇襲に離脱の戦法が好まれており、リスムの地下迷宮にいる時でさえ大抵は狭い通路と敵の生息域の予想から安全策をとる為実は多数相手の乱戦はあまり経験がない。

 そりゃまあ、ならず者みたいな人間や亜人にリスムで囲まれたこともあるし、あのいけ好かない女が持ち込んで来た機人と人の暗殺集団に襲われた時は多対少ではあったが、ランザ先輩の存在と実力差により乱戦にまでなることはなかった。

 次々と敵を倒しているように見えて、ジリジリと押されているような感覚に危機感を覚えないでもない。

 「レドリー!そろそろ死んだッスか!?」

 「残念ながら生きてる!泣き言でも言いたくなったか!?」

 戦場カメラマンであり、牙狼の戦斧とも関わりがあったと自負しているだけあるのか、腹が立つことにレドリーの横顔はアタシより余裕であるように見えた。

 細い柵の上に立ちナイフや拘束回避しながら移動。関節部や首筋に靴跡をつけつつ巧みに移動し本人が言うように制御パネルに近づかせないように立ち回りを続けていた。

 後期牙狼の戦斧は笑えないくらい劣勢ではあったが、最盛期の牙狼の戦斧でさえ寡兵であったのだ。更には少数精鋭で成り立つ戦斧の戦いに同行していたとあらば危険も少なくはなかったのだろう。

 少なくとも、アタシよりは集団戦を熟知しているように思えた。

 流石に、リスムに長く住む連中は粒揃いだ。

 だがしかし、アタシにもレドリーにも限界がある。

 体力に弾薬、どちらが先に尽きるだろうかはあまり考えたくはない。

 「一つぶっ飛んだ策があるッスけどどうッスか!?」

 「ああ!?策ってお前…この状況をどうなんとかするって言いだすつもりだ!?」

 「つっても(とはいっても)アンタの了承云々無しでアタシはやるッスけどね!このままじゃ何れ死ぬとは思うんで生きるか死ぬか賭けてみようじゃないッスか!」

 サブマシンガンをしまい散弾銃もホルダーに固定。

 背中の大物クルセイダーと取り出し、特性の鉄甲弾を装填。

 狙うのは敵?腹の立つレドリー?それともこの状況から抜け出したくて自殺する為に自分の頭?

 いや、その何れでもない。

 「おい…お前」

 レドリーがなにかを察したのか、一瞬硬直した。

 「馬鹿お前やめ…ぐおお!」

 その硬直を見逃さないとばかりにレドリーに敵が纏わりつく。当然アタシの周囲にもその手の敵がやってくるがこんなの相手になんかしていられない。

 「なにかに掴まっても無駄無駄無駄無駄ァだと思うッスから、お互い適当に運と気合で乗り切るッスよ!」

 巨大な銃口が唸り声をあげ弾丸を発射。

 射撃された弾丸は巻き上げ式の極太のワイヤーをこそぎ落とし、貫いて切断する。

 「うおおおおおお!」

 「ぐがががががきたきたきたぁ!」

 エレベーターが大きく揺れる。残る支えの巻き上げワイヤーは三本だ。

 「おいいいい!何時もこんな無茶苦茶な戦いしてるのかお前やランザは!」

 「文句が煩い!減らず口を叩く暇があるなら敵を倒すか早急に死んで自分を喜ばせてくださいッス!」

 鉄の床の上に排莢した巨大な空薬莢が落ちる。

 まともな威力ではないクルセイダーは、地下の異形に対しては効果的だが、これを反動や負担を気にせずに使うにはまだまだ身体の鍛え方が足りていない。

 その証拠として、瞬時に次のワイヤーを狙おうとするが、銃身が撃つ前より重く感じ狙いが定まらず、衝撃による腕の痺れもまだ引いてくれない。

 かと言って、普通の銃では数千トンを運ぶことを想定したエレベータを支えるワイヤーを力づくで破壊することは不可能だろう。

 狙いをつけるのを諦めクルセイダーを抱えたまま移動。

 一つ所に留まるのは愚を回避し、クルセイダーを尻尾で巻き付け反動が優しいハンドガンで近づく敵を牽制気味に射撃する。

 やや資材搬出エレベーターが傾いたとはいえ、揺れこそ大きかったものの足場自体は悪くは無く、薄気味悪い生身のような人形のような連中が這いつくばりながら口からドリルを出して襲いかかってきていた。

 肩と背中に弾丸が命中するが、威力が足らず、四つん這いの敵が飛び上がり首をめがけてドリルの鋭い先端を突き刺し抉りとろうとする。

 左手に握りなおしたレオン愛用モデルのナイフで首筋にナイフを突き立て、ブチブチと嫌な音を立てながら突き刺して勢いを殺す。

 ハンドガンをホルスターに戻し、西欧人形のように美しく金色の髪の毛を掴んで引きながら、ナイフをギチギチと深く挿入し首をもぎとり地面に叩きつける。

 「冗談じゃないッスよ」

 尻尾を地面に突き刺し、身体を固定して地面に衝撃を逃がす方法をとりながら撃つクルセイダー。

 なにも対策もなしでぶっぱなすリスクは知っていたが、頼りになる前衛が不在している今そんな悠長なことをしている余裕はない。

 「このエレベーターごと落として助かる算段はあるのか!?」

 「無限湧き相手に体力勝負を挑むよりはましかとは思うッスけど!」

 「おう分かった!クソ喰らえ!」

 レドリーが片足を前に出す。

 力強く踏み込んだ足を軸に前進、背中から手手を八本生やした異形の手刀の雨嵐を交差した手で受け止め防ぐ。

 服が避けて血が飛ぶが、骨が折れる程の一撃を多量に受けた筈のレドリーはむしろ不敵にほほ笑んでいた。

 「カメラマンは武器を持てん。何時シャッターチャンスが訪れるか分からんからな。

 だがしかし戦場を丸腰でいる訳にもいかん、最低限必要な備えをしておかなければ安全地帯だろうが非武装地域だろうが殺されてしまうだろう」

 レドリーの腕の筋繊維が隆起し、服が一瞬にして膨らんだと思うと切れ込みが入ったスーツとワイシャツの腕部が弾け飛ぶ。

 「しつこいんだよ生ガキが!」

 手刀を純粋な筋肉で跳ね飛ばし、がら空きの頭に拳を叩き込もうと身体を捻る。

 反応した異形が全ての手刀を頭部のガードに回すが、それの護りを枯れ木を折るように貫きがら空きとなった頭部に凄まじい勢いで拳骨が炸裂する。

 トマトが割れたように、脳髄と血液がはじけ飛び胴体が活動を停止した。

 「収縮し拡散、爆砕一点、貫けるものなし」

 更に一歩足を踏み出し力を込め、異形が昇りくるエレベーターの端まで前進。

 足が生える部位から腕が生えた異形を見て眉をひそめ、身体の半身を前に出した独特の構えを見せた。

 「ランザ・ランテの秘蔵っ子だろ。止めておくからさくっとすませちまえ!運任せじゃなくて絶対切り抜けられるんだろうな!」

 「指図すんなッスよ!それに男ならあーだこーだ言うなッス!」

 壁となる前衛がいるのなら、尻尾を鉄板に突き刺し身体を固定しての射撃が可能となる。

 完全に無防備になるのだが、そこはレドリーのやり方を信頼するしかない。

 正直信頼できないししたくもないが、牙狼の戦斧にくっついて戦場にいたという経歴を多少は信じることにしても良いかもしれない。

 なにより今は、何時終わるかも分からないこの状況で体力勝負なんぞに持ち込みたくはない。

 地下迷宮であっても、大量に敵が湧く場合は状況にもよるが逃げの一手が重要になる。

 深々と鉄板に尻尾を突きたて、銃口を斜め上に向ける。

 「撃つッスよ!」

 銃口が咆哮を上げ二つ目のワイヤーを撃ちぬく。

 最初に撃ちぬいたワイヤーとは対角のものを撃ちぬいたので、大きく傾くことこそはないが大きく左右に揺さぶられ、何人かの異形が落下していった。

 だがまだエレベーターは落ちず、足場がより不安定になったのみであった。

 「嬢ちゃん!左見ろ!」

 レドリーの声に、左の方向を見る前に身体を伏せる。

 質量のあるなにかが背中をかすめるのを感じ、反射的にとり回しの悪いクルセイダーからサブマシンガンに持ち帰る。

 這いながら銃口を左に向けたが、既にそこには誰もいなかった。

 「上!」

 上空を見上げると、どこかで見覚えのある造形の異形が薄笑いを浮かべながらこちらを見ているのが分かった。

 そいつは右は碧眼左は黄眼、右はロングで左はショート、右は優しげで左は活発

 まったく別の人間を二つに割って一つにした、中央に合成した二つの色の眼球を持つ三つ目の異形が浮かんでいた。

 「…え?」

 思考が一度停止、この異形を自分はどこかで見たことがあった。

 何処だったか、何時だったか、なにをしていた時に見たのか。

 このインパクトのある造形を、頭の片隅に残していたが肝心の記憶が出てこない。

 だがしかし、ここでごちゃごちゃと考える訳にはいかない。

 元々考えるのは苦手な性質ではあるし、どこかで見ていたとしても思い出せないならそれまでだ。

 立ち上がり足でクルセイダーの銃身を踏みつける。

 勢い良く跳ね上がるクルセイダーを尻尾で掴み、サブマシンガンを二丁両手に構え異形に向けた。

 放たれた弾丸が獣になり異形に殺到.

 断続的な金属音が響き、彼女達の前で火花が散り足元に空薬莢が転がった。

 フルオートの銃は即弾丸を吐き出すが、目の前の異形に目立つ傷が見受けられない。

 セルシィと異形の少女の間に、四本の硬質な光を放つ剣。

 片方の肩から二本ずつ、合計四本の手が生えた異形の持つ剣により弾丸はこの近距離関わらず全て叩き落されていた。

 「退け!」

 脇から迫る槍のような蹴りを、更に浮遊しながら回避。

 首をグルグルと回しレドリーに狙いをつけ急降下し、四つの剣を突き立てようと接近する。

 後ろに跳び上空からの攻撃を退避するも、着地を必要としない浮遊したままの挙動で異形が追撃。

 脇から散弾銃で狙い撃ち、腕の一本を弾き飛ばすも三本の腕と剣はそのままレドリーに向け猛攻を仕掛ける。

 「二人の女の子に迫られてるのに、嬉しくない光景だねぇ」

 レドリーが苦笑いで呟き、振られる剣の平を叩いて軌道を反らすも一本の剣が脇を削り鮮血をまき散らす。

 「レドリー!」

 「しょっぺえんだよ生ガキが!」

 傷を抑えることもなく、腕を引き絞るように後ろに引き顔面に撃ちこむ。

 異形はキリモミしながら後方に吹き飛び、フェンスに激突した。

 追撃として散弾銃を射撃、右腕の一本と異形の脇腹を抉りとり二つの顔がついた顔面の左半分を吹き飛ばす。

 弾倉が空になった散弾銃をホルダーに戻し警戒。

 レドリーは傷を負ったが、わざわざ近寄り傷の具合を見合う仲でもない。

 「殴った時に手応えは感じたが…やったか?」

 「手応えありとかやったか?言わんでもらって良いッスか?そういう台詞を言った後はだいたい敵は立ち上がるもんッスから」

 期待(?)に応えるよう、脳髄や顔半分が吹き飛んだ異形はスルリと立ち上がった。

 「マジモンのゾンビッスかね。ゾンビといえば、何時からゾンビは走ったり跳んだりするような演出が増えたんスかねぇ」

 「ハムナプトラ2辺りからじゃねえの?イムホテップが召喚したアレよ」

 「ま、どうても良いッスけどね。

 あ、ついでに傷は?」

 「ついで扱いか。正直今すぐ治療したいくらいには辛いが多少の無理はきくくらいだ」

 「そッスか。なら生き残る為に働いてくださいッス」

 クスセイダーを持ち異形に向ける。

 接近してくる敵に対してレドリーが前進し、剣が当たらない間合いを意識しながら立ち回る。

 前衛が足止めしている間、隙を狙い後衛が援護して致命傷を敵に与える。

 前衛後衛がコンビを組んだ時の基本形であり、これを極めればいかな状況にも対応していける。

 「これから先は酷いことになるだろう…ッス。だが自分は謝らない」

 どこかで誰かが言ったような台詞を呟き、銃口を異形から残るワイヤーの方向に向ける。

 レドリーの援護ではなく、現状の策を優先し狙いを定めて引き金を引く。

 竜狩りの銃から放たれた弾丸が、三本めのワイヤーを切断。

 エレベーターが大きく傾き、ほぼ水平にまで傾く。

 「手応えありか?おい!」

 「ちょま…!」

 尻尾を鉄板に突き刺し、手すりに足をかけ衝撃による落下を防いだ。

 「これで残り、あと一ほ…」

 肩に衝撃、クルセイダーが手から離れ下の手すりの上に落下。

 「だからその…手応えアリとか……やったか?なんて台詞は嫌いなんスよ!アニメ見て学べこの腐れマスゴミ!」

 肩に深々と刺さる剣と、その真上に見える異形の少女。

 目を異様にギョロギョロと動かしながら、肩に刺さる剣をグリグリと動かした。

 身体の半分近くを再起不能な程破壊された状態で、この傾いた足場をもろともせずにこちらを攻撃してくるとは計算外だ。

 武器は取り落としたし、肩を殺られたせいで別の銃を取り出すことが出来ない。落ちないようにしがみついているだけで精一杯だ。

 「万事休すッスか…」

 「そうでもない」

 下からの声に目を向けると、柵に背を預けたレドリーが仰向けに転がりクルセイダーをこちらに向けていた。

 身体じゅうに青痣をつくりながら、不敵極まる笑みを浮かべ異形に向けて銃口を合わせていた。

 「あーーーー!馬鹿それ自分のお宝!触るなッス!」

 「堅いこと言うなよ、一度撃ってみたかったんだこれ」

 激しい砲撃音が響き、異形の少女の残る片面のみの頭部に着弾。

 西瓜割の西瓜のように、高エネルギー弾が残る脳髄を吹き飛ばし更にその向こう側にあるワイヤーを半分程引きちぎる。

 「おお…なかなか腕と腰に来る」

 「無茶苦茶な体制で撃つからッス馬鹿!捕まれるッスよ!……それとその銃は死んでも離すな!離したら三万回は殺すッス!」

 尻尾を引き抜き、異形を引きはがして柵に捕まっていた手を離す。

 落下しながらレドリーの手を掴み、尻尾で鉄板を叩き反動と足の力でその場から跳躍。

 背後でワイヤーが完全に斬れたエレベーターが落ちる音を聞きながら、肩を抉られた痛みを無視して手瑠弾をなんとか引き抜く。

 「赤い線が見えたら!赤い線が見えたら!赤い線が見えたら!赤い線が見えたら!」

 「おい!なにを叫んでる!?本当に大丈夫なのかこれ!」

 「うっさい!集中させろッス!」

 落下中眼下に見える赤い線。

 その線の上には、白い文字でなにやら書いてあるがそれがなにかまでは見ている余裕が無い。

 手瑠弾のピンを引き抜き、放り投げる。

 安全ピンを抜いてから五秒て爆発するタイプのこの手瑠弾からは、火薬は入ってはいるが鉄欠は全て取り除いている。

 「うおああああ南無三!」

 放り投げた手瑠弾が爆発。爆風により、反対側に身体が飛ばされレドリーと自分はキリモリしながら壁に向け吹き飛んだ。

 「うぐお!」

 「うあ!」

 背中や肩に衝撃。身体を回しながら壁にぶつかり落下がとまる。

 作業用の古い足場にアタシとレドリーは落ち、金網の上に全身を預けていた。

 ここで一息つきたいが、アタシは全力でレドリーを蹴りつけ資材廃棄用の横穴に押し込み自分もそこに飛び込む。

 痛がりたいが、更なる気配をまだ感じたあそこにはいれない。

 ダストシュートに似た穴は、斜め下に向けレドリーとアタシを運び、穴の終点で放り出す。

 「うおああああああ!…が!」

 生ごみが詰まっていたであろう、異臭のする袋の上にレドリーが落下。更にそのに自分が落ちる。

 強烈な臭いに包まれながら、全身の激痛が今更のように襲い掛かり正直泣きそうだ。

 「……おい、無茶苦茶だ……あと降りろ」

 「生きてるだけ…感謝するッスよ。そもそもアンタがついてくるなんて言うから…あとクルセイダー返せッス」

 生ごみの上で動けず、近くで誰かが叫ぶ声。

 ああもう…疲れた。

 意識を投げ出したいが、壁に手をかける。

 先輩と合流しなければいけない。

 二本の足は、その目的の為だけを糧になんとか動いていた。

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