第六層へようこそ!
リスムは観光都市としての一面があるのは有名な話だが、基本的には第一層や第二層、第三層までの話である。
それより下は居住空間であったり、生活に必要な物の売り場であったり、職人や工場が製品を生産する工業地帯であったり別段面白いところはない。
だが第六層と第七層は少しだけ違ってくる。
第七層の肉欲の宴や真剣を扱う正真正銘の殺し合いが行われる闘技場。麻薬、異種売買、その他もろもろ。
金持ちの娯楽である第七層であるが、第六層の一部も似ていながら違う顔を持っている。
第六層の一角も第七層と比べるとソフトではあるが、そういった怪しい品やいかがわしい商売、そして臭わせる程度に地下迷宮という地獄をほんの少し脅す程度に語る事が出来る雰囲気の場所があり隠れ観光スポットして有名であるのだ。
観光業で観光案内に手を伸ばしているという話だが、現役の迷宮探索士に怖い物見たさでソフトに恐怖や興奮を体験できると最近ジワリジワリと副業としての売り上げが伸びてきている。
別段第六層には人を雇わなくてもいけるのだが、『最悪手首ごと腕時計を持っていかれるだから死にはしないよ。美人なら拉致られちゃうかも、男でも美男なら尚更ね』等々のうたい文句で客を護衛件案内人として仕事を手に入れている。
もう少し人気がでれば本業より副業の方が儲かるかもなんてことにもなりそうだが、この手の商売はすぐ真似されるであろうから大成は難しい。
何時もなら向こう見ずな若者や、怖い物見たさの世間知らずなんかが依頼を振り込んでくるのだが…改めて考えてもやや意外性が湧き上がるお相手だ。
「しかしまあ、森妖族さんが第六層の案内を頼むとはね。
こちらとしても、少し以外ですよ。正直言うとあなた方の感性から考えて
目を覆いたくなるような悪趣味ばかりですよ」
発情期というか、そういう時期の森妖族はバーサーカー並みに手が追えないが、それでもまあ普段は森の賢人というべきな童話ありきの存在である。
機械産業や排気産業以外の文明を取り入れ他の種族とも仲が良い黒族も、探究心が強く森を飛び出すか森の奥底に住みつき現代的な生活から遠ざかる白族も基本は既存イメージの森妖族と代わりはない。
だがまあ、黒にも白にも春には近づきたくはないものだが。
結婚生活をしていくうち、春が訪れる度に同僚からやつれてきているとよく指摘されたものだ。
まあそれはともかくとして、森妖族が人間の悪趣味になんの興味を抱いたのか非常に気になるところである。
このクルナ=ハルベートと名乗る森妖族が、いったいどんな変人なのか。
「御身がそんなに貴殿の街を知る事が疑問か?」
「一応、あの区域は危険もともないますからね。怖い思いして、不愉快な気分になって、後で金返せなんて言われましても此方が困りますし」
依頼にのっとり此方まで来た客は、事務所で前金の支払い手続きをしてもらい注意事項を聞いてもらっている。
事前と事務所に来るまえに契約書を見せ、ハンコを押してもらい前金を受け取り始めて契約が完了される仕組みになっているのだ。
契約内容は、規約違反の場合護衛義務から外れ当方は一切の責任を持ちませんという内容である。
羊を誘導するのは羊飼いの得意分野であるが、狼に喧嘩をわざわざ売りに行く羊まで守れるかというとそうではないからだ。現実の羊は狼に喧嘩を売らないが、人間は間違った正義感で怖い兄さんに喧嘩を売る場合もあるのだ。
彼女の場合はどうなのか?なにせ森妖族がここに来る事事態あまり考えていなかったのでイマイチ想像がつきにくい。
普段なら心配して止めるよう声をかけるふりして、男だったら怒らせない程度に引くに引けない挑発的言動も織り交ぜ、女だったら危険の先にある怪しい魅力の世界観を解くのだが今回ばかりは普通に止めるよう言葉を選んだ。
まあ観光案内云々の心配を抜きにしても、ディーネという爆弾をセルシィ任せにするのは少し以上に心配だ。
「不愉快な思いをする事は理解している。御身にはリスムに暮らす友がおり、面白い物はなく不愉快しかないと散々伝えられた。
それでも行くと言うと、不承不承此方を紹介されたのだ」
「友…メーテルですか?」
「うむ。遠い縁ではあるが我が集落と彼女には関係があるのだ。そのツテという奴だな」
「そこまで知っているなら、再度この契約書と注意事項によく目を通しておくように。
そして最後にハンが署名をお願いします」
書類とペンを差し出すと、彼女は首を振り脇においた鞄から丁寧に布に巻かれた羽ペンとインクを取り出した。
「時に、先程の狐人にはすまない事をしたな」
「ああ、あれ」
二昔くらいは前の恋愛ハプニングに遭遇したあいつは、顔を真っ赤にしながら後頭部を抑え挨拶もそこそこ逃げて行った。
なんとまあ手垢がついたというか、テンプレートな流れではあるが当人にしてはラッキーだったのではないのだろか。
使い古されたマント(それこそ手垢まみれである旅人の王道衣装だ)の下は、森妖族の黒族が好んで着込む動きやすい革製の戦闘異装だ。俗的にはボンテージに似ているが注視すれば腰には物騒な物の一つや二つ仕込んではいそうだ。
戦争が進化を続け、ただ弾幕をぶちこんだりミサイルをぶっぱなしたりすず戦いは対策に対策を重ねられ終わりを告げた。前衛による高機動、後衛による高火力、隊員単位におけるリアルタイム情報収集能力により飛躍的に戦いは変わっていったのだ。
森に引き籠る白族は未だに原始的な弓矢を扱うらしいが、外の世界との順応性の高い黒族は機械槍等を使わない代わりに身体能力強化や進化した武装に己の里の植物や技術を組み込み独自の進化を遂げている。
森妖族の細腕に見えてその実、大剣を振り回し短距離限定ながらバイクの速度で迫って来てもなんら不思議ではない。
「まああれは気にしないでください。役得というのがあってもバチは当たらないでしょうから」
「ランザ殿は、なにか信仰を?」
「いえ特には…失礼」
「気にしないでくれ。まあバチとか罰とか言うのに過敏に反応していしまうこちらも修行不足だ、許してくれ」
失言だ。宗教というものを森妖族は快く思っていないのは当然だ。
なにせ、聖教国の亜人狩りの目標の一つに当然森妖族も犠牲者として関わっているのだから。
「国により宗教が違うのは御身も理解しているが、神と存在を考えない我ら一族にとってどこの宗派も同じに感じてしまうのだ。
浅はかな考えであるが、ランザ殿が無宗派であると自分は今ホッとしているところだ」
「私もかの国の暴走には少し思うところがありましてね。
まあ、気持ちは分からなくもないですよ」
「自分はあらゆる国の事を学び、それを昇華させる為こうして旅をしている。
もし良ければ、ランザ殿が宗教についてどう考えているか教えてくださらぬか?思うところがあるのならば、なにかしら意見はおありであろう。
一つ、御身の考えを聞かせてはくれないか?」
「詰まらない一個人の意見です。時間のロスになりますがよろしいのですか?」
「意見の交換や聞くという行為は大切だと自分は考えている。是非お聞かせ願いたい」
難しい質問だ、宗教観と来たか。信仰深くない森妖族は特定の宗派というものを意識した事はない為、世間を知るいっかんとして意見を聞きたく考えているのだろう。
神を信仰していなくても、宗派に参加しているという場合もある。
セルシィはがまさにその例であり、特別な感慨も無くただ習慣として祈りを捧げている。
やめれば良いとも思うが、一応ゲン担ぎとしてやっていると言われればなにも言えない。普段からしている事を急にやめれば良くない事がおこると考えているのだろう。
これおも一種の信仰にあてはまるかどうかは謎だが、セルシィはそれを良しとしている。
信仰等、祈る祈らないは自由でそれを他人に押し付ける事はしてはならない。
一度誘い断られた相手に、しつこく勧誘する存在は他人の自由な権利を侵害し損害しているに他ならない。
両親が特定の宗派に入っているからと、子供にもその宗派を強要する事も侵害行為だと考えている。
ましてや宗派の違い、神を信じていないから戦争等という考えは正気の沙汰ではない。
難しい質問だ、言葉を選ぶ必要があるか。
「神がいるかどうかの結論は出ません。しかし、都合の良いストレスのはけ口としては丁度良いものと考えています」
「ふむ…興味深い。詳しく聞かせてくれないか?」
「信仰している信者の言い分は、『今が苦しいけど信仰さえしていればきっと幸せになれる』又は『天国に行けるよ』です。
その考えに従い信者は勧誘をかけてきますが、考え方の欺瞞という言葉が私には頭をよぎります。
自分自身に洗脳をかけ、苦しかったり失敗すれば神の試練や善行足らず、幸運が訪れたり成功すれば神様のおかげやらご加護やら、といった具合に自らに語りかけているのです。
そりゃまあ、どんなに苦しくても試練だと考え頑張れるのは素晴らしいし、成功を感謝するのは間違いじゃないかもしれません。
神は胡坐をかきなにもしていないにも関わらず、そう考え信者がストレスを良い方向に流していくのは素晴らしいシステムだと感じます。
死の恐怖さえ、来世の安寧や天国行きチケットを握っていると考えるならとストレスを受け流せますしね」
「ならばなぜ、それを自分だけの事と満足しないのだ。他人によくしようと信仰を勧めるのは分かるが、押し付けたり強引だったりと結果他人を不愉快にさせ巻き込む事態にしてしまっている」
「それこそが宗教の問題です。良かれと思っての価値観の押し付け。
全てとは言いませんが、彼等はそれを善行とだと感じているのが間違いです。
中世期や今の聖教国のように、価値観が違う相手は悪魔だと決めつけ暴走する宗教が山のように存在します。
殺したい、制圧したい、暴れたい、犯したい、このような禁忌の考えも相手が宗派の外=悪魔の使いと考えてしまう連中は『この世に不幸をまき散らす悪魔だったらなにをしても良い』と自らの晴れない欲求をぶつけようとするのです。
なにせ向こうは、神とその神が作り出した世界の為に命をかけて戦っていいるという免罪符を掲げているのだから『そのくらいの役得』は…と考えているのではないでしょうか?」
相手が真に聖人ならば、世をただそうとする正の軍団なのなら、俺の妻は犯され殺されていないし、セルシィも収容所で地獄を見てはいないだろう。
聖教国と戦った経験から、彼らが真に恐れているのは宗教というルールを破ってしまうことだけだ。
禁忌の血を塗りたくる刃物を恐れた彼らは、それを喰らえば自分の行いを正当する免罪符を奪われ地獄とやらに落ちてしまう為恐れている。
「私は宗教はしていませんし、悪魔の証明のようにすべての宗派考えを知っている訳ではありませんので極端な一つの意見として受け取ってください。
もしかしたら、どこかには彼らが言う神がいて祈りの恩恵とやらがひょっとしたらあるのかもしれないのですから」
この手の話題は最後を濁しておくのも忘れてはならない。聖教国のように、それぞれの神を信じて疑わない人たちはごまんといるのだから。
レトリーの言うように、少し昔の力を持つ宗教組織なら宗教裁判どころかカノッサの屈辱のような歴史的な大事件を引き起こすような連中もいるのなから。
理解できなくても、敬して遠ざける。
その事がこの問題の一番の解決法なのかもしれない。だが、それをしていたところで強制的に戦争までしていくる相手にはどうすれば一番良いのやら。
まあしかし、今はそんな事関係ない。なんせ仕事中なのだ。
「詰まらない話をお聞かせしましたね」
「いや、自分の役目はそういう話を含め世界のあらゆる事柄を知る事であるからな。
興味深い話を聞かせてもらった」
マントの裏に手を伸ばし、銀色の円盤を指先で弾く。
飛来する円盤、銀貨を手の内で受け止め軽く頭を下げる。
面白い話に対し小銭を報酬として投げるのは、昔からよくある伝統のようなものだ。現在はチップと形を変え受け継がれている。
酒場の吟遊詩人なんかが話し終えたあと、自らの帽子またはトランクに料金を入れてもらっていたのが始まりなんだとか。
「少し長話してしまいましたね、それではそろそろ向かいましょうか。
どうしても盗まれたくない貴重品等があったら、此方に預けていく事も可能ですがいかがします?」
「いや、疑う訳ではないのだが、そのような物こそ持ち歩かなければならないだろう。では噂に聞くリスムの下層都市の様子を、存分に見学させてもらおう」
あくあまで観光であり観光案内である為、ハルベルトは丸くて柔らかい専用の覆いに囲い肩に担ぐ。突発的な事態に備えては、腰の後ろに装着した短刀とコートの中の拳銃で対処することになる。
護身用はあるが、それでも外出に長柄武器を持ち出さないと落ち着かないのは職業病のようなものだろう。
「それでは、ようこそリスム第六階層へ」
□ □ □
恐いもの見たさという言葉がある。
ホラームービーやお化け屋敷、または心霊スポットに猟奇映画と、自分からわざわざ怖い思いをしに行きたがるあれだ。
単純、単調な日々の生活に飽きが来てしまい、普段なら自らに縁がないものに触れ非日常を楽しむという行為の一種である。
そんな好奇心を漬け込んだ旅行産業に最近自治体でも目をつけたのかは知らないが、なんだかここ最近恐怖というか上辺のみの威嚇のようなものが目立って来ているような気がする。
具体的に言えば、地下の異種のはく製を看板の上から吊るしていたりやら、仰々しく武器(精々一般人が護身用に使う程度の量産品である。プロや探索士は手を付けないだろう安物だ)を仰々しく防弾ガラスケースに並べていたり等だ。
なんというか、少し前と比べるとアミューズメントパークのような見世物街みたいな雰囲気になり個人的には肩透かしのようにも感じる。
まあ普段暴力慣れしていない民間人にはおどろおどろしく見えるのだろうが、少し意識しすぎているような変調をきたしているような気がするものだ。
「ここの崖から見える向こう側の明かりが、防壁都市リドバルドです。街の向こう側に大きな壁が見えるでしょう?万が一に為の異種の進行に備え自治州軍、警察から独立した専用の防衛隊が警戒しています。
都市の中心にあるランドルフの酒場は、迷宮探索士達の憩いの場になっていますが、特別な認可か迷宮探索のギルド等に探索士として登録していないとゴンドラに乗れず向かえません。
本業が探索士ゆえ、案内してやりたいのが山々ですがご勘弁を」
「自治州軍に警察、警備隊、警務隊、防衛隊。何故このように組織を細分化しているのだ?
リドバルド防衛隊等、自治州軍と合同で考えても良いような気がするのだが」
「成り立ちとしては、まだリスムが階層都市とさえ呼ばれていなかった頃にさかのぼりますね。
当時の自治州軍は、対人間との訓練ばかり重ねられたエリートではあったのですが、突如地下から湧き出し街を襲う異種に歯が立たなかったという前例があります。
当時の迷宮探索士の祖の一部は、そんな自治州軍に見切りをつけ自ら組織した防衛隊を結成し前衛拠点を築きあげました。
しかし、自治州軍はそれを面白い話とは思わず、ならず者の組織として気を許さず、なにかにつけて防衛隊と衝突していました。
一番酷かったものは、ローマスの変と呼ばれる、防衛隊がテロリストをかくまったと主張する自治州軍と事実無根だと叫ぶ防衛隊の抗争ですね。
最終的に血を見る結果となり、自治州軍の誤りだと認められたのですが死者42名、重軽傷78名の酷い争いであったと記録されています」
組織細分化にいたっては、両隣二国の思惑も重なっているのだろう。
武力を持つ組織が細分化していれば団結し辛く、独立や反乱等の予防に繋がるからだ。
まことしやかには、防衛隊と自治州軍の対立は二国の工作の仕業ではないかと伝えられているくらいだ。
「しかしなんだ、噂に聞くリスムの下層と聞いていたのだが…質の悪い武器に子供騙しな置物ばかりだな。
ランザ殿、リスム第六階層のこの区域はとは実は恐怖心を刺激するつくりを演出した街ではないのだろうか?」
「違う…とおっしゃいたいですがここ最近はそのような兆しも見えているのは確かではあるかもしれませんね。
本当に質の良い物は、もっと隠れ目立たないような所にあるものですがね」
「うむ、ランザ殿の事務所に飾られた長槍は見事なものであった。スコーピオンといわれる武器であったかな?なかなか質の良いものだとこの不肖の目でも分かるものであったぞ」
戦場であろうと、地下であろうと、自分の技量や経験だけでは生き残れない場合もある。そんな時役立つ物は、質の良い信頼できる武装や装備に他ならない。
地下迷宮で仏になった遺体から、扱えそうな物のみ回収し保管してあるのだがそのうちの一本も彼女は偉く気に入っているみたいだ。
「ランザ殿の得物は、長柄の武器であるようだな。自分には扱えないが、戦場のリーチの長さは心強く味方にいれば士気が上がりそうだ」
「射程距離でいうなら流石に銃器には負けますがね。なんというか…向いているみたいなんですよ長柄武器は、こんな感じに便利ですしね」
背中から覆いを被るハルベルトを掴み、クルナの足元より先に差し出す。
小さく小回りが聞きそうな女がそれに引っかかり、肩から石畳に倒れ手に持つ皮袋を放り出した。
「なっ!自分の財布!」
「財布類などは、なるべく後ろポケットのような場所に入れない方が良いですよ。
さてと」
なおも逃げ出そうとする女の背中を踏みつけ押さえつける。ジタバタと騒ぐが、逃がす訳にはいかない。
「へへへ、兄さん大物とりだねぇ」
上半身裸で、龍の入れ墨をした筋肉質な男が数人近づいて来た。警戒するクルナをよそに、俺は肩をすくめてやる。
「ああ、だが正義の執行人としての手柄はあなた方にくれてやっても良い」
「そうしてもらうと助かるよ。俺達にも良い稼ぎになる」
受け渡しの許可がとれたと判断すると、男の一人が暴れる女の首筋を打ち昏倒させる。
足を退けてやると、手際良く縛りあげ人混みの中に消えていった。
「これはほんのお礼だよ。それじゃあ、また正義の味方になった時はよろしくな」
札を数枚取り出し握らせる。謝礼兼口止め料という奴だ。
最後の男が人混みに消え、一連の流れるような事態を茫然と見ていたクルナが口を開いた。
「あの男たちは?」
「安く品を受け取り、高く捌く商人ですよ。ただし人間専門のね」
「そうか、どこも大変なのだな」
財布を改めてマントの中にしまいながら、淡泊に言い放つ様がやや以外であった。黒エルフは正義感の強い人物が多く大抵は仲間思いでもある。それは遠い親戚のような存在であるにもかかわらずメーテルを再起してくれる人がいたことからも分かる事だ。
このような裏取引紛いの行いは、なにかしら一言口を挟むか眉をひそめるくらいはしそうなものではあるが。
「しかし、自分がスられた事がまったく気づかなかった。助けてくれて感謝…どうした?不思議そうな顔して」
そんなに表情にした出したつもりはないが、どうやら顔に出ていたようだ。人の表情から細かに心を読み取る術でも会得しているのだろうか?
「いえ、失礼。少し以外だなと思いまして」
「そういうと?」
「中にはいるものなんですよ、あんな連中でなく司法にキチンと引き渡すべきだって言う人がね」
実際に司法にゆだねようとすると、手間暇どころか危険なめにあいかねないのがここ第六階層だ。
ぬるま湯と言っても、やはり治安は良いとは言えず自治権力は鼻つまみ物にされる扱いだ。
警察もあまり来たがらないし、呼べば此方が犯人のみならず周りの怨みを買ってしまう。
なんなら小遣いにしてしまった方が早いという訳だ。
「簡単な話だな。不条理という言葉は世界中どこにでもあるというだけの事だ。
彼女もここの住民で、しくじったらどうなるかよく分かっているのだろう?分からなくても、無知は罪という言葉で片づけられてしまうのが世界の常識といえよう。
しくじった瞬間に、人生が終わると分かり行っていたとすればこの程度は予想すら簡単な安易に回避出来る不条理にすぎない。
自分も、故郷を捨て移動せざるえない不条理にあった事はあるが、そんなものも些細な話だ。
北の森に住まう多くの同胞は逃げるまもなく駆逐されたと聞く。それこそ、そのようなものが世界中を覆っているのだからな」
「へえ…」
外見から年齢が分からない森妖族であるが、見た目通りの年齢だとしたら大したものの考え方である。
「おかしいか?この身は半人前であるがいえ間違いを語っているのかもしれぬが、大きな違いは無いと思うのだが」
「いえ、なんというか、大人びた考えをお持ちのようで感心していたところですよ」
「ふふ…ならば良かった。
さあ、そんなことより次を見せてくれないか?この階層にも、自分が回るべきところがまだあるだろうからな」
彼女がこんな街から何を学ぶつもりでいるのか、少し俺も気になってきた。この様子なら、コースから外れ少しんばかり危険な所、第六階層の暗部も多少は見せても良いのかもしれない。
様子を更に見ながら、おいおい判断していこう。
「それでは次は、探索王ランドルフが狩ったという迷宮第五層の異形の再現像を見に行こう。
伝承や彼と探索した仲間の証言から得られた情報からの再現だから、信頼性は更に高いですよ」
□ □ □
ふ~ふふふん ふ~ふふふん ふふふっふ ふふふっふ ふふふふーふふ~
そろそろ、計画開始かな~。
さあて、そろそろ劇の第二幕。
精々頑張ってね?ランザ君にセルシィちゃん




