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漆黒の大樹 その2

だいたい月1更新です このペースをまもっていきたいです _(:3」∠)_

「【魔王の樹に触ってみよう】……ってなんだこれ」


人だかりの方へ行ってみるとそのような催し物が行われていた。かなりの行列ができていて並ぶとなったら結構な時間がかかりそうだ。


「へー、こんなのやってたのか。 どうするリオン、やっていくか?」

「いや、オレはいい。 こんなの並んでられるか面倒くさい」

「お前ならそう言うと思ったよ」

「行きたいなら行ってきていいぞ、そこらへんブラブラしてるから」

「いや、俺もパスだ。 あんな気が遠くなるような行列」

「じゃあ村に戻るか。 そこらの町より大きい村だし多分見るところもそこそこあるだろ」


そう言って行列の横を通り過ぎようとしたとき。


「ホラホラちゃんと並んで! 列を乱さないで!!」


件の催し物の列整理担当だと思われる男に腕を掴まれる。


「いや、俺たちは(ダッシュ)」


振りほどこうとしたが男の力は予想以上に強く列に並ばされてしまった。

列を抜けようと後ろを振り返ると今の僅かな間にかなりの人数が並んでいてご丁寧に柵で横を塞がれた列を抜けることは難しそうだった。


「これは……」

「並ぶしかない、か……」


カインと二人、終わりの見えない行列を見てため息をつく。



並び始めて1時間ほど経っただろうか、やっと行列の終着点が見え始めた。 大して興味のなかったものでも順番が近づいてくると微かに高揚を覚えるのはこの並んだ時間を無駄にしたくないという防衛本能だろうか。


「にしても、なんでこんなことやってんだ? ご丁寧に樹までの道を柵で作って並ばせて、金を取るでもないってのに」


オレのその疑問に、カインは少し考え込んで答える。


「多分……この樹を使って人を集めて、それから村の店や宿に金を落として行ってもらおう。 って話なんだろ。 どんなものであってもコレは間違いなくここにしか無いものだしな」


その説明はオレが納得するのに十分すぎるもので、だからこそオレには理解できない話でもある。


「平和ボケしてんな〜 魔王を商売に使おうなんて」


オレが物心着いた時にはすでに魔王は封印されていたし、それから今まで育った村から出ることもなかったから、魔王が世界に残した爪痕はほとんど見ることができていない。 そんなオレの中で魔王の印象が一人歩きしているだけなのだろうか。


それが故に、魔王という存在を利用している状況を理解できないのだろうか。


魔王の脅威に最も晒されていたはずの、この村の大人たち。 彼らとの感覚のズレは何に起因するのだろう。


「まぁな。でも魔王がいない今、生きるのに一番必要なのは金だ。 そう考えるとこの樹を利用するのは一番手っ取り早い方法だろ。 現に俺たちもこれを見るために村を出て最初にここに来た訳だし」


またもカインによる冷静な分析。 こいつはいつもこんな風に冷静で、頭もいい。 幼かった頃ならともかく、ここ最近こいつが焦っているところを見たのなんて1度だけ(ダッシュ)ここに来る途中に女にナンパされていた時ぐらいだ。 そうそう動揺しないこいつが女相手にアタフタしている姿はなかなか面白かった。 それはともかくとして


「オレたちも平和ボケ集団の中に居たんだな。 自分で皮肉言ったようなもんじゃねーか」

「そうなるな。 (ダッシュ)っと、俺たちの順番もあと少しみたいだな」

「やっとか……」


順番が近づいて行くにつれ、当然のことながら樹にも近づく。 何度前に立ってもその威圧感に変わるところはない。 前方に続く人の壁が少しずつ薄くなっていき、ようやく、オレ達の順番が回って来た。


「さっさと終わらせて宿で飯食おうぜ」

「もうそんな時間か……」

「本当にな」


まずはカインが木の幹に触れる。 その行為はあっさりしたもので、一刻もはやくこの状況から解放されたい

という意思が見てとれる。 オレも同じような心情ではあるのだが。


「ん、終わり」


そう言ってカインは木の幹の前を避ける。 いよいよオレの番だ。


「……?」


すぐに終わらせたいと思っていたし、その思いは今も変わっていないが、妙に緊張しているのか、なかなか足が動かない。 なんとか一歩踏み出すが、今度は黒い幹に目を奪われる。 表面には傷一つ無く、その黒さは全てを飲み込んでしまいそうなほどだ。


「リオン? どうした?」

「あ、いや、なんでもねーよ」


カインの声がなんとか意識を引き戻してくれた。 カインはまだ訝しげな表情をしていたが、おそらくそれを払拭するには早く木に触れてしまうのが一番だろうと思い、視線を木に戻す。 徐々に手を近づけていき、あと3センチ、2センチ、1センチ(ダッシュ)


「(ダッシュ)ッ!」


いきなり人差し指に痛みが走る。 見てみると、小さな傷とそこから流れ出す血。


「うわっ! リオン、それどうしたんだよ!」

「いや、なんか分からないけどいきなり……」


木に視線を移すと、先程触れたところに小さなささくれがあった。


「ホラホラ、木に触ったなら早く動いて!! 後ろ詰まってるんだから」


オレ達の事など気にする様子も無い列整理の男が移動を急かす。 ひとまずそれに従って、宿に向かいながら話す事にする。


「どうしよう……早く手当しないと……」

「別にいいだろ」

「でもここから菌が入ったりしたら(ダッシュ)」

「つば付けときゃ治る」


妙に心配性なカインのことは適当にあしらい、先程のことを思い返す。


(あんなところにささくれなんてあったか……? いや、それはただ単に見落としてただけだとしても……そもそもオレはあの木に触ったか? あの痛みが走ったのは、触る直前じゃ……)


思考はここで強制的に中断させられる。 カインがおもむろにオレの腕を取り、


「なんだよ?」


オレの右手の人差し指を口に含んだからだ。


「!? お前っ! 何してる!!」


思いきり腕を引き、指をカインの口から抜く。


「だってつば付けとけば治るっていうから……」

「自分のつばに決まってるだろ! 今日のお前、なんかおかしいぞ」

「リオンこそ今日はなんか変だぞ? 急に動かなくなったり、呼んでも反応しなかったり……」

「ふざけんな! お前の方がおかしいに決まってんだろ!!」

「絶対リオンの方がおかしい」

「はぁ!?」


最終的にはどちらがおかしいかの言い合いになって、それは宿に帰るまで続いた。 あいつに咥えられた指は、寝るまで妙な感覚が残っていた。

なんか2人にやらせたいことをやらせてるだけっていうかなんか無理矢理過ぎたなと反省しております

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