一騒動
お久しぶりです! 約三か月ぶりの更新となります。 待っていただいてくれた方がいらっしゃいましたら申し訳ありません……
今回は少しだけ話が進みます(場所が変わるだけ)
「あの言い方から考えられることは二つ。一、 オレが昨日宿に入った時から女だった。 二、宿屋の主人が男好き オレは二だと思う」
「二番目の理由はともかくとして一番目はまず無いだろうな……昨日までは確かにお前は男だったはずだ。 ……店主がお前を女だと勘違いしてた可能性は?」
「それはないだろ。 昨日までの俺はどうみても男だったはずだ、こんなローブも着てなかったし」
二人で頭を捻りつつ街を歩く。
「とりあえずそれはあとで考えよう。 何か揃えておくものとかあるか? 」
「ん、あぁ、とりあえずちいさめの服が欲しい」
「となるとまずは服屋か この街に服屋なんてあったかな……」
カインが辺りを見回す。
「とりあえず中央の広場に行こう あそこならたぶん教えてくれる人もいるだろ」
「ああ、そうだな。 って危なーー」
ドンッ という衝撃
フードをかぶったことで視界が狭くなり、前方への注意が疎かになっていたようだ
「すいません!!」
急いで謝る。
「おいおい、なんてことしてくれんだよ」
頭をあげると、眼前にはなんともガラの悪そうな顔があった。
「てめぇどこ見て歩いてんだよ、ああ?」
「あ、ご、ごめんなさい……」
「あぁ? それが謝る態度か? 誠意を見せろよ誠意を。 フードも被りっぱな
しだしよぉ」
男が手を伸ばしてくる。 カインがオレと男の間に割り込もうとしてくるが、間に合わない。 乱暴にフードを外される。
その途端、多くの視線を受けたのが分かった。
「……ん? あぁ、お前ら宿で俺らの隣だった奴らか。 」
そう言われてようやく男が隣の部屋の斧戦士だったことに気づく。
「昨日は遠目で見ただけだったが随分と可愛い顔してんじゃねーか 」
男の下卑た笑みを見た途端、体がすくむ。
「ちょっと付き合えよ」
強引に腕を引かれる。 振り払おうとするが男と今のオレでは力が違いすぎた。 体のバランスを崩しそうになった時、不意に体を支えられる。
「あんた、調子に乗るなよ」
カインだった。
そうそう聞くことのない、カインの怒りに満ちた声。
男はその気迫に気圧されたようでオレから手を離す。
「その汚い手でコイツに触れるな」
「あ? てめ……」
男が言葉を止め後ずさる。 カインを見ると、腰に差した剣の柄に手をかけている。
「ダメだ!」
思わずカインの右腕をつかむ。
そして男の方を向き、頭を下げる。
「ごめんなさい、街の中ではもっと周囲に注意を払って歩くべきでした。」
男は目を丸くして
「お、おう 気をつけろよ」
と言うとそそくさと立ち去った。
「リオン……」
カインがこちらを見る。
「すまん! あと少しで抜くところだった」
「別にオレに謝る必要はないだろ」
「いや、止めて貰って助かった」
「あー、でもアレに絡まれたのはオレのせいだし…… とりあえず移動しようぜ」
フードを外されてただでさえ金色の髪が目立つ上に騒ぎまで起こしてしまった。 周囲の視線は全てオレとカインに注がれていた。
「あ、あぁ、そうだな」
カインは地面に置いていた荷物を持ち直し、再び歩き出す。ーーオレの手を握って。
「え、な、なんで、手……」
「またさっきみたいなことになったら困るだろ」
「い、いや、今度はちゃんと前見るから!」
半ば叫ぶように言うオレ。
しかし、カインは意にも介せず進み続ける。
「不安なんだよ。 お前に何かあるのは俺が嫌だ」
「――っ!!」
それからしばらく、何故か顔が熱かった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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