第6話 評価不能
評価会議の場で、カナタ・シグレの名前が呼ばれた。
それだけで、室内の視線が一斉に集まる。
期待ではない。確認だ。
「旧採掘区任務、補助要員カナタ・シグレ」
教官――ギンセイが淡々と読み上げる。
「剣未使用。剣性沈静化を確認。負傷者なし」
一拍置いて、続きが告げられた。
「――評価、不能」
紙をめくる音だけが響いた。
評価不能。
合格でも不合格でもない。
そこにいるのに、数に入らない。
ざわめきが遅れて広がる。
「不能って……どういうことだ?」
「前例がないんだろ」
「剣を使ってないからだ」
誰も間違ったことは言っていない。
だからこそ、反論できない。
レンは、腕を組んだまま黙っていた。
剣に選ばれた者の名は、すでに高評価欄に並んでいる。
ミオが、ちらりとこちらを見た。
何か言いたそうだったが、視線を逸らした。
「質問はあるか」
ギンセイの声。
カナタは、少しだけ迷ってから口を開いた。
「評価不能、というのは……今後の任務にも影響しますか」
「当然する」
即答だった。
「剣士は剣で評価される。剣を使わない剣士は、制度上“未定義”だ」
未定義。
それは保留ではなく、排除に近い。
「現時点では、単独任務は認めない。今後も補助要員として扱う」
会議は、それで終わった。
廊下に出ると、空気が軽くなる。
だが、胸の内は逆だった。
名前は呼ばれた。
記録にも残った。
それでも、剣士としては存在していない。
「気にするな」
レンが声をかけてきた。
「評価不能なら、失敗でもない」
「……成功でもない」
「剣に従えば、いずれ結果は出る」
その言葉は、励ましでも忠告でもあった。
ミオは何も言わなかった。
ただ、レンの隣に立っている。
訓練場では、今日も剣が振られている。
金属音が規則正しく重なり、秩序を作っていた。
カナタは、自分の剣を見下ろす。
選ばれない剣。
評価されない剣士。
だが、あの時――
剣が沈黙した瞬間だけは、確かに“結果”があった。
「評価できないなら……」
小さく呟く。
「評価されなくていい」
その言葉に、剣は反応しなかった。
沈黙したまま、そこに在る。
評価表には載らない。
制度にも当てはまらない。
それでも、剣が壊れなかった理由を、
カナタはまだ手放していなかった。
それが、
いつか誰かを救うのか、
あるいは壊すのか。
答えは、まだ剣の外にあった。




