表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣に選ばれない俺だけが、剣の支配を断ち切れる ――落ちこぼれ剣士と“名剣”の世界――  作者: カクカクシカジカ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/22

第22話 選ばれなかった者たち

 分岐した通路は、思ったよりも長かった。


 湿った石壁。足音が反響し、距離感を狂わせる。


 カナタ・シグレは、ミオ・アヤセと並んで進みながら、背後を一度だけ振り返った。


 ――誰も、追ってきていない。


「……静かすぎるね」


 ミオが言う。


「うん。たぶん、待ってる」


 何を、とは言わなかった。


 通路が開ける。


 そこに、三人の受験者がいた。


 先頭に立っていたのは、月白色の外套を纏った青年――イサヤ・ツキシロ。


 その背後に、短剣を二本携えた少女、ヒナ・クロサワ。


 そして、壁にもたれかかるように立つ大柄な男――ガロウ・ザン。


「……来たか」


 イサヤが視線を向ける。


 鋭いが、敵意はない。


「そっちも、置いてきた組か?」


 カナタは一瞬、言葉を選び――頷いた。


「結果的には」


 ヒナが鼻で笑う。


「ふーん。優しいね。ここ、そういう人が集まる場所みたい」


「皮肉か?」


「半分は」


 ガロウが低く唸るように息を吐いた。


「俺は、置いていく判断ができなかった」


 それだけ言って、黙る。


 誰も責めなかった。


 この場にいる全員が、似た判断をしてきたと理解している。


 その瞬間。


 床が、沈んだ。


 鈍い音。


 次の瞬間、通路の奥から試験用の怪異が現れる。


 数は――多い。


「来るぞ」


 イサヤが前に出る。


 剣を抜く。


 名剣ではない。だが、剣気は澄んでいた。


「連携する。突破じゃない。耐える」


 判断は、速い。


 ヒナが影に紛れる。


 ガロウが盾のように前へ出る。


 カナタは、無銘の剣を構えた。


 剣は、相変わらず沈黙している。


 それでも。


(……ここに立て、と言われてる気はする)


 怪異が迫る。


 剣がぶつかり、火花が散る。


 誰かが傷つき、誰かが庇う。


 だが、崩れない。


「……なあ」


 ガロウが、息を荒げながら言った。


「俺たち、たぶん評価は低いぞ」


 ヒナが即答する。


「知ってる。でも、落ちるかどうかは別」


 イサヤは剣を振るいながら、淡々と言った。


「この試験、勝ったかどうかは見てない」


 一体、怪異を斬り伏せる。


 だが、次が来る。


 終わらない。


 それでも、誰も退かない。


 遠く。


 別の通路で、レン・クガは前進を続けていた。


 評価は高い。


 効率も最適。


 正宗は、確かに応えている。


 だが。


 彼の脳裏に、一瞬だけ浮かんだ。


 ――置いてきた背中。


 レンは、それを切り捨てる。


(迷いは、弱さだ)


 同じ試験。


 同じ時間。


 だが、剣が見ているものは――すでに違っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ