第22話 選ばれなかった者たち
分岐した通路は、思ったよりも長かった。
湿った石壁。足音が反響し、距離感を狂わせる。
カナタ・シグレは、ミオ・アヤセと並んで進みながら、背後を一度だけ振り返った。
――誰も、追ってきていない。
「……静かすぎるね」
ミオが言う。
「うん。たぶん、待ってる」
何を、とは言わなかった。
通路が開ける。
そこに、三人の受験者がいた。
先頭に立っていたのは、月白色の外套を纏った青年――イサヤ・ツキシロ。
その背後に、短剣を二本携えた少女、ヒナ・クロサワ。
そして、壁にもたれかかるように立つ大柄な男――ガロウ・ザン。
「……来たか」
イサヤが視線を向ける。
鋭いが、敵意はない。
「そっちも、置いてきた組か?」
カナタは一瞬、言葉を選び――頷いた。
「結果的には」
ヒナが鼻で笑う。
「ふーん。優しいね。ここ、そういう人が集まる場所みたい」
「皮肉か?」
「半分は」
ガロウが低く唸るように息を吐いた。
「俺は、置いていく判断ができなかった」
それだけ言って、黙る。
誰も責めなかった。
この場にいる全員が、似た判断をしてきたと理解している。
その瞬間。
床が、沈んだ。
鈍い音。
次の瞬間、通路の奥から試験用の怪異が現れる。
数は――多い。
「来るぞ」
イサヤが前に出る。
剣を抜く。
名剣ではない。だが、剣気は澄んでいた。
「連携する。突破じゃない。耐える」
判断は、速い。
ヒナが影に紛れる。
ガロウが盾のように前へ出る。
カナタは、無銘の剣を構えた。
剣は、相変わらず沈黙している。
それでも。
(……ここに立て、と言われてる気はする)
怪異が迫る。
剣がぶつかり、火花が散る。
誰かが傷つき、誰かが庇う。
だが、崩れない。
「……なあ」
ガロウが、息を荒げながら言った。
「俺たち、たぶん評価は低いぞ」
ヒナが即答する。
「知ってる。でも、落ちるかどうかは別」
イサヤは剣を振るいながら、淡々と言った。
「この試験、勝ったかどうかは見てない」
一体、怪異を斬り伏せる。
だが、次が来る。
終わらない。
それでも、誰も退かない。
遠く。
別の通路で、レン・クガは前進を続けていた。
評価は高い。
効率も最適。
正宗は、確かに応えている。
だが。
彼の脳裏に、一瞬だけ浮かんだ。
――置いてきた背中。
レンは、それを切り捨てる。
(迷いは、弱さだ)
同じ試験。
同じ時間。
だが、剣が見ているものは――すでに違っていた。




