第21話 選別は、すでに始まっている
第二課題は、まだ終わっていなかった。
指定区域を突破した受験者たちは、石造りの回廊へと誘導される。
天井の低い通路。壁に刻まれた古い剣痕。
ここが試験会場であることを、忘れさせない造りだった。
「ここからが、本番か」
低く呟いたのは、受験者の一人――シド・ヴァルカ。
長身で、実戦慣れした雰囲気を纏う剣士だ。
「さっきのは、ふるい落としだろ」
その言葉に、隣を歩く少女が小さく眉をひそめた。
ミオ・アヤセだった。
「……人を置いていくことが?」
シドは肩をすくめる。
「選別だ。剣士は、全員を救う仕事じゃない」
ミオはそれ以上、言葉を返さなかった。
だが、胸の奥で何かが引っかかっている。
――それでいいのか。
前方では、レン・クガが歩を緩めることなく進んでいる。
正宗は封じられたまま。それでも、彼の存在感は群を抜いていた。
その背を、カナタ・シグレは静かに見つめていた。
助けた受験者は、すでに医療班に引き渡されている。
合格は――おそらく、危うい。
それでも。
(……あれを置いていく選択は、できなかった)
後悔はない。
だが、迷いがないわけでもない。
回廊の先で、足が止まった。
待っていたのは、教官ギンセイだった。
「第二課題、後半に移行する」
淡々とした声。
「ここから先は、個人行動だ。合流は自由。ただし――」
一拍置き、視線が全体をなぞる。
「他者の脱落は、評価に影響する」
ざわめきが走った。
「助けても、見捨ててもいい。だが、その選択は記録される」
ギンセイは、カナタとレンの双方を一瞬だけ見た。
「剣士とは、剣を振るう者ではない」
その言葉が、重く落ちる。
「選び続ける者だ」
扉が開かれる。
分岐する複数の通路。
どこへ進むかは、自由。
同時に――責任も、自由。
レンは迷わず、最短と思われる通路へ向かった。
シドも、それに続く。
ミオは、立ち止まる。
カナタを見る。
「……カナタ」
「うん」
短い返事で、十分だった。
二人は、別の通路を選ぶ。
そこが、正解かどうかはわからない。
だが。
剣士認定試験は、もう技量を測る場ではない。
何を切り捨て、何を背負うか。
その答えを、剣は見ている。
――選別は、すでに始まっていた。




