第14話 休ませてもらえない
通達は、朝だった。
掲示板の前に人が集まっている。
ざわつきは、剣性暴走の報告が出た時のそれと似ていた。
「……またか」
「間隔が短すぎる」
嫌な予感がして、足が止まる。
視線の先に、自分の名前があった。
特例補助要員 カナタ・シグレ
それだけで、内容は察せた。
剣性暴走。
地点は、前回よりも内側。
「早いな」
背後から、ギンセイの声。
「準備しろ。昼には出る」
問いかける余地はなかった。
「……少し、時間を」
「ない」
即答だった。
「剣性は待たない。
住民も、感情もな」
正論だ。
反論できない。
装備を整える間も、頭は追いつかなかった。
昨日の会話。
眠れなかった夜。
まだ、何一つ整理できていない。
それでも、現場は来る。
集合地点で、レンとミオと目が合った。
誰も、昨日の話を持ち出さない。
それが、今の距離感だった。
「無理するな」
レンが、低く言う。
「無理かどうか、分からない」
それが本音だった。
ミオは、何か言いかけて、やめた。
代わりに、小さく頷く。
出動。
移動中の車内は、静かだった。
剣士たちは、いつも通りだ。
剣を信じ、任務を受け入れ、
結果を出す準備ができている。
自分だけが、置いていかれている気がした。
「なあ」
ふと、声が出た。
「……もし、また同じ状況になったら」
誰も、すぐには答えなかった。
「前と同じ判断をする」
レンが言う。
「それが、剣士だから」
ミオは、視線を伏せたまま。
「私は……止めたい」
小さな声。
答えは、揃わない。
現場が近づくにつれ、剣が震え始める。
嫌な予感が、はっきりと形を持つ。
カナタは、深く息を吸った。
納得はしていない。
覚悟もできていない。
それでも、ここにいる。
必要とされたから。
代わりがいないから。
車が止まる。
「行くぞ」
ギンセイの号令。
誰も、立ち止まらない。
世界は、待ってくれない。
休ませてもらえないまま、
カナタ・シグレは、また現場に立つ。
答えを持たないまま。




