第12話 誰も悪くない
夜になっても、眠れなかった。
灯りを落とした部屋で、カナタ・シグレは剣の前に座っていた。
壁に立てかけただけの剣は、昼間と何も変わらないはずなのに、なぜか目を逸らせなかった。
助けられなかった。
その事実だけが、何度も頭の中を巡る。
判断は間違っていなかった。
行動も、遅くなかった。
剣も、確かに止めた。
それでも――救えなかった。
「……もし」
声に出すと、胸が痛んだ。
もし、最初から剣士に任せていたら。
もし、剣を信じていたら。
もし、自分がいなければ。
考えるほど、答えは悪い方に転がっていく。
誰かのせいにしたいわけじゃない。
教官も、レンも、ミオも、
みんな正しい判断をしていた。
だから余計に、逃げ場がない。
「俺が……」
言いかけて、止めた。
自分のせいだ、と言い切るには、
世界はあまりにも複雑だった。
でも、自分がいなければ、
あの場面は存在しなかったかもしれない。
剣に手を伸ばし、触れる。
沈黙。
何も返ってこない。
この剣は、あの時も同じだった。
選ばず、応えず、ただ沈黙していた。
それが正しかったのか、
今でも分からない。
剣を信じなかった。
だから剣に選ばれなかった。
その結果が、これだ。
「……誰も、悪くないのに」
呟きは、闇に吸い込まれた。
責める相手がいない。
怒りを向ける先もない。
残るのは、自分だけだ。
もし次も、同じことが起きたら。
もしまた、間に合わなかったら。
その時、自分は剣を止めるのか。
それとも、剣に任せるのか。
答えは出ない。
ただ一つ、はっきりしていることがある。
あの選択を、
「正解だった」と言い切れる日は、
きっと来ない。
カナタは、剣から手を離した。
剣は、相変わらず沈黙している。
まるで、
「それでも選べ」と言われているみたいだった。
眠れない夜は、まだ終わらない。




