落ちこぼれ登場
春眠に暁を覚える
そんな言葉がよく似合いそうな陽気だったが希望に道溢れたような空で
、新しい生活が始まろうとしていた。
そして周りの教師もこれらか同級生になろう生徒もどこか、浮かれていた。
――――ある人物だけは、そんな明るいライトアップされた中からポツンと心が
真冬のように凍りついている青年がいた
その青年の足取りは、確実に重いまるでバーベルを持ち上げているかのように足
取りが重かった。
(ちっ……
どいつもこいつも……高校に入ったからってうぜえ
オーラ出しすぎ……やってられっか)
特に周りの同級生から喋りかけられることもなく、青年が向かった先は、野球部
のグラウンドであった。
いや――――
正確には野球部のグラウンドだった場所だった。
「あれ…
この学校って野球部なくなったのか」
埼玉県私立彩川高等学校
かつて、甲子園の土を毎年踏んでいた古豪であるがここ数年は万年地区予選第一
回戦敗退の弱小野球部になり、かれこれ2年前に背部になっていた。
「父ちゃんの嘘つき……」
校庭に機械音で放送が入り入学式が開始されていた。
「入学式か……知らね……
まあ軽く体を動かして行くか」
脳裏によぎったのは、あんだけ大勢いるんだ俺くらいいなくても入学式は成立す
る――
まさしくその通りではあるがいない生徒がいたら必然的に教師は探すもの…
しかし始まって数分が経過してもなかなか教師は現れる気配がないので、探すの
に戸惑っているのだろうと思った。
「さ……
ウォームアップもすんだし…」
(今日は阿修羅が中4日のマウンドに上がります)
頭の中ではプロ野球の実況を思い浮かべ
体重を地面にかけるようにし腕を高く上げ
振りかぶった
そしてバックネットに物凄い馬鹿でかい音を立てボールから勝手に自分の元へ戻
ってきてくれたように感じた。
「お前が阿修羅か……」
「あ?お前は先公か」
「そうだ。
今日からお前の担任になる葛城だ」
中年の痩せ細ったスーツを身にまとったいかにも教師らしい格好をした奴がそこ
にあったボックスへ向った
手には金属バット
「先生な、怒りに来たつもりだったんだ」
「つもり…だと……」
「だがなお前が
投げた球を見て気が変わった……
お前は野球の才能がある」
見た目からは想像できない中年の親父から威圧感が感じとられた。
(く……
こいつ俺が野球だけはやり続けてた事をいとも簡単に見抜きやがった)
「勝ったら
野球部だけには入ってくれ……」
「はっ?
野球部だ……
見たからに野球部跡地だぞ。おいおい」
大将はその場で馬鹿にし乾いた笑いを連発していた。
「野球部作りは俺が保証する」
「おもしれえ、やってやるよ。
ルールは一打席で良いんだな」
マウンドで仁王立ちをしている大将が上から目線で言葉を放った
「ああ、構わないぞ」
「おっさんに
現役の球が打てるかな」
初球は高めにボール球で外そうと思い緩めるに投げた
「しっかりと
外す当たりが経験者だな」
「ほれ、球だ」
「……」
大将は何故か俺、何かにおっさんが
ここまでこだわる意味が理解できなかった
2球目は外に逃げるスライダーだが
きっとミートをしてきた
「なっ!」
大将は打球こそファームになったが今の球を全力で投げなかったことに後悔を抱
いた。
校庭を遥か転がるボールを見つめていると
一人の制服を来たロングヘアーで瞳が健やかに透き通っている意気揚々とした女
性徒がボールを拾った
「先生まで
何やってるんですか、教頭先生カンカンですよ」
「えーと、ごめん名前は……」
「有田梨華です。
……私も早く終わるようにキャッチャーやりましょうか……」
梨華はどうやら二人の空間を察したようだ
何かにとりつかれているかのような殺気を
「はっ…
てめーなめてんのか、犯すぞ」
大将は女の子に俺の球を捕ると言われたことにより侮辱されたと思い切れた――
「何よっ。
この不良被れがっ」
「ふ……
不良被れだと上等だ」
怒りに任せて踏み込んだ渾身のボールはコースが真ん中付近に行ってしまった―
―――
しまったと思ったのもつかの間だった。
しかしながら
鮮やかにクリーンヒットを描いた打球の
ばずだった……
ボールは高々と太陽と被り
本来なら中堅手がいる定位置に落下をした
「ちっ…
これでもセンターフライかよ……」
葛城は本来あまり上品ではない性格で
隠していた本性が出てしまったようだ
葛城は何事もなかったかのように校舎へと向かう
「本性ばれちまったな……ったく、てめーらには世話になりそうだぜ」
そう言い残すとポツンと梨華と大将の二人だけの空間となった。
「わたし…
中学で野球部やってたのよ……」
「お前が…
エロそうな体して……」
「はっ!
何言ってるのよ。
馬鹿っ」
「……まあ
野球部作る協力はしなくともないのよ」
頬をまるでイチゴみたく赤くしながら
にょごにょごと口を押さえながら言った
「聞こえねえよ……。野球部作るかな……
早く教室いこうぜ」
鮮やかに方向を変え校舎へ走って向かった。その後ろ姿はまさしく不良だったが
根性だけは腐っていない風に感じた。
「元はと言えば、
入学式が終わりそうだったから私が呼びに来たのにっ。
もうっ」
そう
この3人の出会いが
全ての始まりだった……。