北の森、そこは宝庫
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「これってナミハンミョウですかね。」
北の大地の森、発見報告のあった場所で俺が最初の見つけた生物は虫であった、幸先いいね。地面を歩いているのはハンミョウと呼ばれる肉食昆虫に酷似した生き物で、サイズは20cm程でモデル元の約10倍程大きい。
因みにハンミョウという虫はオサムシ科に分類される甲虫で、幼虫も成虫も他の虫を襲って食べる結構積極的な虫だ。幼虫の時は地中に穴を掘って出待ちし、近くを通りかかった蟻などを襲って食べる恐ろしい奴だ。
別名はミチシルベ、人が通ると前に飛んでいく性質からそう言われている。
「そう、カラビットって名前。多分学名が元ネタなんだろうけど。」
「なるほど、でもそれってオサムシじゃ。」
ナミハンミョウの学名はCicindela chinensis japonicaで恐らくカラビットの元ネタはオサムシ科を指すcarabinaeだろう。
「私に聞かれても」
「まあそうですけども。」
運営のミスだろう、ここで一々考察している暇なんてないしな。少し休ませた馬にもう一度跨る。ほらセレスト、あれだけ走りたがってたんだからもっと頑張ってくれよな。
テントウムシの捜索だが、この森の広さから二人一組のツーマンセルで動いて調査することが決定された。人員の応援は日を跨いで送るそうで、他から嗅ぎつかれることを嫌っての判断らしい。まあいきなり大量の人員を送ったら何かあるって疑われるもんな。
俺はレベルが低いということもあって、高レベル帯であるコナラさんと行動することになったが、さっきから虫は確かに見るのだがテントウムシ自体を見ていない。コナラさん曰く普通のテントウムシだったらそれなりの数がいるらしいのだが。
「あ、今飛んで行ったのって。」
赤く丸めのシルエットが木々の隙間を縫って、ゆったりと飛行している姿がその目にばっちりと映る。ナニホシだろうか、良く見えないけども黒点があまりないことから結構グレードが高いんじゃないだろうか。
「追いましょう。」
そういってセレストに鞭を入れる。この鞭だが馬へのダメージは薄いらしく、この打たれる感覚でスパートするという意識づけの為にやってるらしい。詳しいことは知らんけども。
ひらりゆらりと舞っているかのように飛んでいく。馬より遅い、なんなら走って追いつけるだろう。さて、その姿見させてもらおうか。
「……んん?」
なんだろう、なんか違う。あれはテントウムシじゃない気がする。ぱっと見ただけだと確かにテントウムシなのだが、こうじっくりと観察すると全く違く見える。こう丸みではなくて楕円形のような形をしているというか、縦に少し細長いというか、まず顔つきが違うというか。てかこうあげてたら全然違うじゃないか。
「コナラさん、あれってもしかして。」
「そう、テントウムシダマシ。」
やっぱりか。テントウムシダマシとはテントウムシに似た姿をしている甲虫で、主にキノコなどを食べている全くもって別の昆虫なのだ。あとこれネットとかで調べても多分オオニジュウヤボシテントウとかしか出ないと思うけど、そいつらの別称もまたテントウムシダマシなんだよね。ややこしいんじゃ全く。さらに追加の情報だが、テントウムシは普通アブラムシを食べるから益虫だと言われているけども、オオニジュウヤボシテントウやニジュウヤボシテントウの類はジャガイモの葉などの食害を引き起こすため農業害虫に認定されている。おそらくこういった経緯がテントウムシダマシと呼ばれるようになった所以なのではないかと推測できる。
まあこれのせいで検索しても出てこなくなったんだけども。調べたかったらルリテントウムシダマシとか名称でやらないと出てこないからね。
「なるほど、思ったより捜査難航しそうですね。」
「……低階級がここまで見つからないのは想定外。」
「そうなんですか?」
結構いるらしいのにこの出現の無さは異常なようだ。ここまで低レベルが存在しないということは誰かが間引いているのだろうか、本命である一等星を探すために。
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