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虫の名は

前々前世から探していない虫

 「えー、本当にすいませんでした。」

 瓢箪の主を黙らせてから謝る。こいつコミュ障すぎてマシンガントークが止まらないんですよ。え、話せてるからコミュ障じゃないって?いやいや、ただ喋るだけならそこら辺の気難しい子だってできますよ。コミュニケーションってのは双方の意思が通じ合って初めてできていると言えるんだからこういったのもまたある種のコミュ障なんです。

 こういうケースの改善点はまあ普通の会話に慣れてテンポを掴むって所にありますね。

 「まぁあ面白かったからいいぜ俺はよ。」

 フソウ君は良い奴だな、その誰とでも仲良くしていく精神は大切にしておきな、社会に出ても役立つからさ。

 「静かになったから説明する。」

 コナラさんがようやく開くことのできるようになった口で説明を始める。マジですみません。

 「今回追っているのはレディフライ・シリウス、一等星を背負ったテントウムシ。」

 テントウムシ、それは漢字で天道虫と書き幸運を呼び込むとされている虫だ。食性は肉食で幼虫も成虫もアブラムシ(ゴキブリに非ず)を捕食する。また危険を感じるとアルカロイドを含む苦みのある体液を放出して捕食から免れようとする昆虫だ。

 「それってナナホシテントウみたいな感じですか。」

 「そう、だけどレア度は数が少なくなるほど高くなる。」

 なんでも一等星と呼ばれるヒトツボシは全部で二十一体、現実で観測されている一等星と同じ数しか存在しないそうで、星の少ないこのムシを捕獲することで莫大な恩恵があるそうだ。

 「なるほど、だから他言無用と。」

 見つけた情報はフィールドワーク内でのみ共有されているから他のクランが発見報告でもしていない限り、現状我々の独占状態だ。

 だがもし誰かがこれを漏らしでもしたら他領地を欲している奴らが一気になだれ込んで戦争もこれほどかと言わんばかりの惨状になるのは目に見えている。良かった、身近に同じ進行速度の人いなくて。もしかしたらポロっと漏らしてたかもしれないからね。

 「因みにそのテントウムシってどれぐらいのデカさなんです?」

 そうこのゲーム、サイズがよくバグっている。カグヤの進化前であるキャタピラーの全長は約30cm程、対してダンゾーは10cm程で、こうもサイズ感が違ってくる。テントウムシのサイズはどっちなのだろうか、大きくされているのか微妙なのか。

 「およそ50㎝、結構デカい。」

 でっか、もしかして蛤と同じぐらい大きいんじゃないか。お前何cmぐらいだったっけ。

 『私の全長はおよそ55cm、まあ大差ないですが私の方が上ですね。』

 性能はお前よりはるか上を行きそうだけどな。お前は何か幸運を呼び込める機能でもあるんか。

 そうやって談笑しながら一行は進む。馬もまだまだ行けるようで余裕の表情を浮かべている。

 「あ、そういえば向かっている先ってあとどれくらいかかりますかね。」

 「飛ばせばあと数分で着く、けどその後が大変だから時間をかけて向かう。」

 なるほど、ほら聞いたかクイーンセレスト、全力疾走は我慢しような。いや振りじゃないからな、マジで走るなよ。

 

 

 「なあなあ、さっきここらでフィールドワークの連中見なかったか?」

 「いや、見てないけどなぁ。」

 最近フィールドワークの連中が極秘裏に動こうとしている。何人もの所属員がこの町メディウスに集合していってるのを見たと情報が入りこうして町まで来てみたけども

 「誰もいないじゃねえか。」

 聞いた話と違うな、メディウスのこの宿屋の前で大勢見かけたって話だったのに。あいつらが何か隠していたら、その源はまさしく金になるものだろう。

 「兄貴、さっきあっちで見かけたって奴が。」

 「おう、今行くからそいつ押さえておけ。」

 何を隠しているのか知らねえが、俺らの金のためにちょっくら持ってる情報出してくれねえかねぇ。


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