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ようやく虫を追う

18万感謝!

 あれから3日が経ちました。その間コナラさんはログインせず、ずっと一人で馬上練習する悲しい姿が各地で見られたことでしょう。よかったら俺の相手してくれないかな。

 まあ何とかその期間でセレストから一定の信頼を得ることはできたようで、ある程度の命令はちゃんと聞いてくれるようになった。いやそれが普通なのかもしれないけどさ。

 さて皆さん、今日は何の日か憶えていますかね。そう極秘任務の日だ、ようやく生き物の尻を追っかけることができるのだ。恋焦がれたこの日、ああようやくやってきたのか。

仕事頑張ってまだ残ってた有給使わせてもらったよ、なんか沼河童変わったな。是正勧告でも来たのかな。

 「あ、クヌギさん。ちっす。」

 「よっフソウ、今日はよろしくな。」

 フソウ君のノリは今日も軽い、どんぐらい軽いかと言えばヘリウムぐらいは軽い。

 「あれ、コナラさんはまだ来ていないのか。」

 「コナラさんならもうちょっとしたら来るそうですよ。」

 あれ、新顔だ。まああっちからしたら俺の方が新顔か、だってどう考えても向こうの方が歴長いもん。

 「ヤナギさんお久~。」

 「貴方本当に軽いわね。」

 あ、皆そういう感じに思ってたのね。みんなが言っているのに変えないということはあれが彼のアイデンティティーなのかもしれない。

 「貴方が新人のクヌギさんね。」

 フソウくんに向いていた視線を外してこっちを見てくる。ほう眼鏡っこですか、大したものですね。リアルで眼鏡が似合う人って極少数だったりするよね、ソースは俺。

 「ええ、ヤナギさん、でしたっけ。よろしくお願いいたします。」

 「あらちゃんとした人、珍しい。」

 つまり奇人変人の巣窟だと彼女らも理解しているのかもしれない、まあ俺も同じ穴の狢なんだけども。

 「お待たせ、遅れてしまった。」

 コナラさんも後ろからやってくる。これで虫班の全員が集まったことになるらしい、虫班少なくね?

 「出発する、話は馬に乗りながらで。」

 そういって馬に全員乗り込む、ほらセレスト屈んでくれ乗れないだろ。そうそういい子だ、だからいきなり立ち上がったりロデオしないでくれよあと変な対抗意識持つなよ。


 

 城門を潜り抜けて隊列を組んだ馬群が動く。装備はバラバラで性別もバラバラ、一目で冒険者であることが分かる出で立ちであった。はいこれ俺らのことね。

 向かっているのは北側、一度も行こうと思わなかった方角だ。カグヤとダンゾーは大丈夫なのだろうかすこし心配だ、貝はまあどうでもいいでしょ。

 『良くないですよ!というより何でまだ名前つけてくれないんですか~!』

 「いやだって全然教えられてなかったじゃん。」

 そう、あれほど頼んだと言ったのにカグヤの言語能力及び使用語彙は前と変わらずじまいだった。まあそれでも可愛いしなんか一気に成長してほしくないからそれはそれとしてほっとした部分はあるんだけどさ。

 『名前つけてくれたらもっと頑張りますからー!』

 「はいはい、後でなー。」

 後っていつですかー!と叫ぶ瓢箪を腰に下げる。なんでもこれ装飾品扱いらしくてわざわざ課金して枠増やしたんだよ。もっと感謝してほしいものだね。

 「クヌギさん、それなに。」

 コナラさんが興味を示したようで、じっと瓢箪を見つめる。おいフソウいま何考えた、お前が考え付いた下ネタなんて速攻理解できるんだよ。

 「ええとこれは」

 『はいはーい、大蛤界のアイドルをお呼びしましたかー!』

 「うるさいバカガイです。」

 バカガイとは、ミナトガイやウバガイなどとも言う二枚貝の一種で所説が有り余っているがその中に、オレンジの足がまるで馬鹿が舌だしているみたいに見えるからバカガイと名付けられたというものがある。

 『はぁ?あんなのと一緒にしないで貰えますぅ?私は由緒正しき蛤なんですけども!』

 どうやら貝の中でも身分があるようで、この感じバカガイは相当下なんだろう。美味しいんだけどな青柳。蛤の代わりに昔よく焼いて食べてたよ。

 「てかお前が喋ってると今回の目標聞けないだろうが。」

 『はーいそれまで黙ってまーす。』

 何かすいませんね皆さん。いいかカグヤ、こんな奴になっちゃだめだぞ。


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