閑話、AIの改訂
「部長、流石にこのまま強行しますと設定が崩壊しますって。」
ナチュプレ運営企画開発課ではいつものようにいきなり改良といって改造を施そうとする身勝手な部長がまたもや根幹をなすところにまで改造を行おうとしている。
「いやぁだってねぇ、年相応の精神年齢にしないとコンプラに引っ掛かりかねないって言うじゃん。」
そう、今までAIは積み重ねられればどういったものでも学習しそれを確実に習得するよう設計されていた。つまりどういうことかと言えば、まだ年端もいかない村娘Aに徹底的に帝王学を教え込んだり、マネーロンダリング術を教えれば確実にものにするという化け物仕様、確かにおかしくはあるがそういったものと今まで割り切ってきたじゃないですか。
「それにさぁ、なんか最近子供たちに色恋すっ飛ばしてアッチ方面の知識付けて回ってる奴いるって話上がってるじゃん。」
プレイヤーの中にはそういった性質を悪用して淫語を教え込んだり房中術を覚えさせたりとゲスも真っ青になるレベルで変態な奴らがいる。だけどもそれは規約違反でもない為に取り締まることはできない。そういった問題が意外と起きていたりする。
「ですが流石にいきなりのアップデートは不審がられますって。」
「いやいや、年や種族相応の精神を持たせなきゃ。」
そういってどんどんコードを書き換えていく、ああ胃が痛くなる。なんて上に説明すればいいのか分からない。実は役員にこのAIの構造を利用して娼館を立ててる奴がいる。しかも小児性愛者専用にいわゆる法律に触れる系のやつで、ゲーム内だから許されているだけのことだ。
確かに悪ではあるけども、今何の説明もなく書き換えたら大顰蹙を買うに違いない。ああ、待ってくれ部長俺やっと出世街道に足踏み入れたところなんですよ。このまえ新築でマイホーム買ったばっかなんですよ。
「それに多分今のまま放置しているとバグ起きかねないんだよね。」
「……それはどういったことで。」
何故先に予見できるのだろうか、バグなんて必ず起きるものだがリリースした段階ではまず何が起きるかなんてエンジニアには分からない。起動されて初めて気づくようなものなのだ。
「ほれ、この子見てみ。」
そこに映し出されていたのはこの前プレイヤーが初めて誕生させたヒトガタ、部長がボツになりそうなのに無理矢理通してなんとか実装させた虫の姫である。
「……これがどうしたというんですか。」
私にはなにも分からない。別に数値は異常ラインまで上がっているわけでもないし、そもそもその設定作ったの部長だけだし。
「精神構造がこの時点でもう大人と子供、さらに虫の三種類混ざりこんでいる。」
「どういうことですか。」
「簡単な話さ、虫だった頃と今のカラダ、両方の精神がゴッチャになってパンクしかけてるのさ。それに自分の主に執着してるときた、これじゃあいつぶっ壊れるか分からんな。」
ゲーム自体がな、そう部長は続けながらコード進行を続ける。さっぱり分からないがどうやらこの新人が生み出した部長の秘蔵っ子のせいで大幅に改訂しないといけなくなったらしい。
「因みに放置したらどうなるんですか。」
好奇心から聞いてみる。もしこれでくだらなかったら上に報告今の段階で通しますからね。
「全ての生命が息絶えてゲームが終わる、そんな代物。」
だから今すぐ変えるのさ。そういってどんどんいじっていく。あんた、なんてものを実装してくれたんだ。
「いや~まさかちゃんと愛情注いで育てるプレイヤーが出るとは思わなくてねぇ。」
とある日秘密裏に行われたアップデート、カグヤが子供らしくなったのは果たしていつからだったのだろうか。




