奇奇怪怪と人は言う。
リアルがごたつき始めたのでもしかしたら更新頻度が下がるかもしれません。
正解の道を探す。一昔のゲームには正しい道を行かねば前に進めず最初の場所に戻されるステージがあるのは珍しくなかった。もしかしたらこの異常もその例外に含まれず王道を取っている可能性がある。とにかくがむしゃらにだがその道を探すより無し。
アイテム欄から無銘槍を取り出して前に投げる。槍はそのまま前に飛んで地面に突き刺さる。それを取りに前に進むが普通にそこに行き着く。風景は一切変わらない。
「物体は前に進んでいるが周りも同時に動いているのか。」
連動しない場所を探さないといけないのか、一旦前にじゃなくて横に動いてみるか。セレスト、もう本能のままに走ってもいいぞ。
ああ嬉しそう、そして俺は吐き出しそう。全身全霊の動きが尻を通して伝わってくる。これ腰上げるジョッキーみたいな乗り方しないと死ぬな。
林はいっこうに近づかないがそれでも街道には差し掛かることができた。これはもしかして
「蜃気楼のようなものか。」
距離感がバグっているのでもなく周りが動いていないのでもなく、辺り一帯に陽炎のようなものができて屈折し、全く近づくことも遠ざかることも出来ないのだろう。つまりそこにあるけどそこに無いという感覚を植え付けられている状態なのだ。
だが疑問が生まれる。もしただの蜃気楼がこういった姿を見せているだけなら周りに生命を感じてもおかしくはないはずなのだ。なのにカグヤもダンゾーも一切感じとることが無い。異変はこの現象だけではないのだろう。
やはりここは専用ステージなのだろう。特定のイベントを踏むと半強制的に飛ばされる場所。ある意味蜘蛛夫人の屋敷と似た場所だ、出るには特定の条件を満たす必要があるといった点なのだが。
「つまり俺はこの蜃気楼から抜け出す必要があるのね。」
目を頼ってはいけないし、うちの子達も頼れない。まさしく勘のみで行動する必要がある。方位磁石でも持っておくべきだったな、それなら最低限まだ目が役立つというのに。
そうやって歩いているとまたプンと鼻を突く臭いが漂ってくる。またあの臭いだ、鉄錆のようなあの本能が忌避する血の臭いだ。
「もはやホラゲーで何回も出てくるグールみたいな役割になってるなお前ら。」
三匹仲良く死体の脳を啜っている。確か脳みそって御馳走なんだったか、一匹から一つしか取れないってことから。
だが三体か、あの速さで上手く連携でも取られたら堪ったものじゃないな。組みつきからの噛みつきなんて即死コンボが簡単に思いつく。ここは毒で押さえて貰おうか。
「カグヤ、頼む。」
その声だけで分かるのか、辺り一帯に鱗粉が立ち込める。フガフガと奴らは気にせずに吸い込んでいく。もう勝負は決したな、こんな勝ち方続けたら多分格上に勝てなくなるだろうけども別にまあ構わんか。
コロリと一人また一人と倒れていく、最終的に勝てばよかろうなのだ。首を一体毎に切り落とす。流石に首を分かたれたらどんな生き物だって死んでいく。
「しっかし妖怪だらけ、この蜃気楼も妖怪の仕業なのかね。」
出てきている妖怪は野狗子だけでしかもメジャーな奴じゃなけども。もしかしてあの草原って昔は戦場だったのだろうか。いや例えそうであったとしても、西欧風のこの場所に全くあってないでしょうに。
「さて、蜃気楼を出して人を欺くような妖怪の伝承なんてあったっけ。」
どうにも思い出せない、確かにあったはずなのだがこういう時に限って度忘れする。何で野狗子の怪を知っておいて逆にメジャーっぽいこっちを忘れるのだろうか。もしかしてわざと思い出せないように細工でもされているんじゃないか。
まあこんなこと人に言ったらワ〇ップ扱いされるか暑さに頭がやられた狂人の妄言だと勝手に片づけられるだろう。
「まさしく奇々怪々、俺からすれば未知の体験で、他人から見たらただの妄言。そこの違いは恐怖の方向性ってね。」
こう言っても帰ってこない言葉にいささか寂しさを覚えるよまったくね。とにかく足を進めないと、宿にさっさと戻りたいな。
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