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誘蛾灯

祝:累計PV500突破! 嬉しさとほんの少しの誇らしさと恥ずかしさがありますね。

これからもご愛読の程よろしくお願いします!

「あ、驚いた?そうだよね、今まで周りに誰もいなかったのにいきなり現れたらさ。」

 ニコニコといい笑顔をした女性がこっちに話しかけてくる。いつのまにいたんだ、確かにさっきまでこの小屋には俺とおばさん、酔っ払いの三人だけだったのに。

「一体いつの間にって思ってるでしょ。」

 しかも考えてることも見透かされている。もしかしてエスパーって奴だろうか。まさかサイキックで透明化して見ていたんだろうか。

「ええ、いつからそこにいたんですか。」

「ざっと30分前かな。」

 さっきまで辺りは静寂が支配していたというのに、気づけば大学の休憩時間ぐらいの騒がしさが独壇場とはこのことだと言わんばかりに占めている。

 しかし30分前、そんなに前からいたのなら見えた時点で声をかけてくれてもいいというのに。

「見えなかったでしょ。大丈夫、私たちもあなたの事見えてなかったから。」

 どういうことだってばよ。もしかして俺って幽霊みたいな感じなのか。

「このゲームね、初回ログインの時に世界観を味わってほしいってことから他のプレイヤーはこの集会所に来るまで見えない仕様になってるの。そのせいで過疎を疑う人も沢山いて困ってるんだけどね。」

「そういうことでしたか。辺りを見ても誰もいなかったので少し不安になっていたんですよ。」

 なるほど、だったら先にアナウンスしてくれても良かったんじゃないか。不器用にも程度があるぞ運営。

「そういえば何故30分もここに。誰か待っているんですか。」

 疑問に思っていた。装備を見る感じ周りの人とも、もちろん俺のものとも違う見るからに強い武器防具を携えている、いわゆる古参と言われるような人が何故最初の村の本当のスタート地点にいるのだろうかと。

「突然だけどこのゲームのチュートリアルでクエストの受け方とか説明してもらった?」

「いえ、操作とスキルの説明しか。」

 そういえばこういったゲームで重要なこと説明されてなかったな。だがそれがどうかしたんだろうか。

「やっぱりね。このゲームそういうとこ優しくないんだ。」

 曰く、初期チュートリアルが大味すぎる。それがこのゲームの配信開始から言われている問題点だったらしい。初動組が手探りで情報を体当たりで集め、改善点を運営に要求し続けた。その結果多少マシになったらしい。

「それでもまだ足りなくてね。初心者さんが辞めてかないようにここでいろんなアドバイスをしてるんだ。ここに30分座ってた理由だよ。」

「そういう事だったんですね。誰か初心者さんのお友達がいるのだと思ってましたよ。」

「ある意味今後お友達になるかもね。初心者くん。」

 君呼びされたのは久しぶり…でもなかったな。沼河童がいたはちくしょう。

「じゃあまずクエストの受け方と種類について教えるね。」

 クエストには三種類ある。1つは組合に依頼されたものだ。これは出張所などの組合関連の施設から受けられるものだ。仲介料として規定額分持ってかれるが怪しい仕事は来ないとされている。

 2つ目は個人依頼。これは好感度が一定以上になると貰えるクエストらしい。確定できない背景に、NPCごとに条件があるとされているからだという。そしてこの条件はあまり明かされていない。理由として個人依頼は基本おいしいらしい。情報の公開はメリットが薄く、身内だけで共有していることが多く出回らないんだそうだ。

 そして最後に、プレイヤー依頼。これはプレイヤーが出す依頼で、例えば薬草が10個欲しいと言った旨をゲーム内掲示板に書き込み報酬をつける。そうすると誰かが受けて報酬を受けとるといった内容のクエストだ。ただ結構ケチな依頼が多く、あまり受けている人はいないらしい。

「だから最初は組合依頼をこなすといいよ。受けるにはあそこの依頼紹介のところにクエストが貼ってあるからそれを取って受付に行く、それだけだよ。」

「色々ありがとうございました。では、初めてのクエスト受けてみたいと思います。」

 一礼して席を立ち、依頼板の前に向かう。どうやら直接クエスト用紙を引っぺがすみたいだ。無くならないのだろうか。

 どんどん紙が毟られていく。だが無くなる様子はない。どうやら依頼制限はないようだ。

 まだスタート地点だからかもしれないが。

 畑にくる害獣の討伐に薬草採り、木の伐採の護衛、内容が様々だ。だがそんな多様性あふれるクエストに誰も手を伸ばさないものがあった。

 『薬草保護の依頼─キャタピラーの駆除─』

 芋虫討伐の依頼だった。虫殺すのかぁ、観察対象であって殺すものでは無いのだけども、

 依頼出すほどなのだから狂暴なのだろうか、それともでかいのか、わからないから正直見てみたい。ふらふらといったりきたりと手を彷徨わせていたが、ついに好奇心に負けたのだった。

 俺の初依頼は超不人気依頼のこれに決まった。


皆さん芋虫と呼ばれるとどんな幼虫を想像しますか?

私は蛾の幼虫ですね、はい(どうでもいい情報)。

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