馬上訓練、始動
今回の虫のテーマは定まっていますが、話の関係上まだまだ出てきそうにないです。
ただ一言テーマについて言うのであれば、彼らは皆星でありまする。
終業の時間だ、残業なんてないさいるわけないさ。なんてったってしわ寄せが来ないように昼休み返上でずっと作業していたからな。でも勘違いするなよ沼河童、労働精神に目覚めたわけでも社畜になったわけでもなく、ただ娘に会うための代替措置なんだからな。
半端に着ていたスーツを投げ出してまずは簡単に取れるレトルト飯をかっ喰らう。腹が減っては戦はできぬし、何より長時間耐久なんてもってのほかだからだ。ただ腹いっぱいには食べない。眠気が来てしまうからな。
いつの間にか慣れた浮遊感、今の俺には娘に会うお父さんの心の高揚感に似たもののように感じられる。ああ今日もお父さんを実行するぞ。いや待て、いつから俺はゲームでお父さんをするようになったんだ、まあいいか。
前回あの後町まで戻らずに詰所前の宿場町に宿泊することにしていたため、安宿で目を覚ます。我が家の子たちはいつもの定位置にいる、カグヤは俺の横でダンゾーは天井だ。あれ今日は天井じゃなくて壁なんだな、足かける場所でも見つからなかったのだろうか。
俺が起きたことに気が付いたのか、カグヤも目を覚ましてにっこりとしている。ああ、幻聴だけど頭の中にお父さんおはようと語りかけてくる声が聞こえるよ。
「さて、皆おはおう。」
ベッドから降りる。とてっと音を立ててカグヤもそれに倣って降りる。ああ、何でこうも父性って簡単に心揺さぶれるのだろうか、そうなるよう太古から遺伝子にそう刻まれているのだろうか。ああそれなら今の俺は正常だ、何故ならその血の運命に従っているのだから。
さてさて、集合まであと三日となったが、馬は手に入れた。それ以外にしておくことってあるだろうか。そこでふと思い出す、団長からの文言だ。確か今回のミッションでは、他のクランは皆敵と思えだったか。
そうだ、馬上戦闘の練習をしておこう。馬使わせるのだから絶対起こりえることだろうし。
「コナラさんがいたら頼んでみようか。」
馬から振り下ろして攻撃するのは敵MOBでも構わないが、同馬上という場合だとここらではそういったライダー系の敵は出てこない。摸擬戦以外で身に付けられる場が無いのが現状だからな。
馬房に回って受け取りに行く。これこれ、そう暴れるでない、他の馬が怯えてしまうだろうが。
フレンド欄を開くがコナラさんはオフライン表示だ。まあ仕方がない、振り下ろしの練習でもしに行くとするか。それに今気づいたがもしかしたら戦闘になった時にセレストが怯えてしまうかもしれない、そういった面でも先に戦いに慣れておかないといけなかったな。
「こう、馬に乗って薙刀担いでいると中国の武将か荒武者にでもなった気分だな。」
気分は関羽もしくは許褚だ、まあ俺三国志で好きな武将は趙子龍だし、関羽が掲げていた武器は青龍偃月刀で別に薙刀でもないんだけどもね。
さて、馬上からの攻撃はうまくいくだろうか。いかないと次の遠征でどうなるかマジで分からないからな。
さてやってまいりました街道付近です。ここはあまりデコボコとしていないため馬が足を痛める心配もないし戦いやすいはずだ。このゲームのことだから粉砕骨折からの予後不良とかの鬱コンボは無さそうだけど、まあ念のためと練習のためにね。
さて今から取り掛かろうとするのだが、まず一番の問題が出てくる。この子の気性難を抑えながら槍振って戦えるだろうかといった、普通出てくる前に考え付く内容だった。いまだにクイーンセレストはいう事を聞かない。時間が懐き度を上げるのか、それとも愛情を与えて接するのが重要か。答えはそんなもの恨みの前には無いに等しいだ。人間への恨みが激しいこの子がどれだけ時間を与えられても、ただその念が強まるだけだろう。
ほら、今にも走り出そうとして全然落ち着いていない。ログイン前の僅かな時間で見た乗馬の基本に乗っていた方法で窘めてみる。あ、不満げだけど落ち着いてきたな。これ組み込まれている行動AIと感情AI別物だな。だってめっちゃ睨んでくるのに動きが落ち着いてるんだもん。
「はいよ、馬なりで走ってくれ。」
ポンとお腹を押す。おい、馬なりだって言っただろう。いきなりトップギアを掛けようとしてきたので手綱を引いて抑制する。おい、さすがに最低限のことは聞いてくれよマジで。
カグヤは前に座らせているが、さっきからキャッキャとしている。楽しいか、でも流石にこればっかりは止めさせてもらうからな。ほらもう一回、馬なりだよ。
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