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試乗

諸事情により0時投稿ができませんでした、申し訳ございません。

 「コナラ様、給餌が終わりました。」

 どうやら餌を食べきったようだ。相変わらず死んだ目をしているが、さっきよりかは生気に満ちている。

 さっさと名前を付けよう、さっきから心の中であの子あの子と面倒くさくなっていたからな。それに良好な関係はまず名前からとも言うし。まあ今俺が初めて言ったんだけども。

 『名前:クイーンセレストで決定しますか。』

 ネーミングセンスを問われそうだがまず初めに弁明させて欲しい。まずこの子は競走馬で、レース登録名は基本九文字以内と決まっているしカタカナで付けられる。

 次に名前の元となったセレスト号だが、率直に言えば幽霊船だ。幽霊と死んだ目に共通点を見出した俺が、フライングダッチマンかクイーンセレストで悩むのは理解してもらえるはずだ。

 それを踏まえたうえで問おう、この名前は本当に駄目なのかと。え、ゴーストシップでいいじゃんかって。それはちょっと不味い、なんていうか近い名前があり過ぎて怒られるのがね。

 それにこの子は女の子、クイーンとかついている時点でもう相応しい名前だろう。以上釈明終了。

 「よろしくな、クイーンセレスト。」

 首をぽんぽんと撫でる。無反応なあたり、やっぱ人に懐いていないな。まああんな仕打ちじゃあ懐けというのが難しいか。

 しかし走らないから捨てられるという話だが、果たして遅いのか。ちょっと乗って確かめたくなってきたな。

 「すいません、私はこれで。」

 そう言って手綱を引く。ここらでは乗ることはできても思いっきり走らせることはできない。一旦外に出て走らせてみよう。

 「ええ、じゃあ4日後にまた。」

 そういって久しぶりの再会に別れを告げたのだった。まあ後で会うんですけども。

 


 さっき振りに町外に出る。まあさっきとは違う門から出たから一切知らない場所なんだけども。

 「じゃあ、ちょっくらよろしくな。」

 そう言って鐙に足を掛ける。馬の乗り方なんて生まれてこの方習ってこなかったけども、まあ何とかなるんだな流石ゲーム。

 カグヤもよじ登ろうとしてくるので、自分の前に乗っける。大丈夫かな、痛かったりしないかな。馬も重かったりしないだろうか。

 「確か腹を両足で軽く押すと前進の合図だったよな。」

 頭の中にある馬の知識をフル動員して何とか思い出す。そうそうこうやって、そう頭の中の情報と照合しながら進めようとする。ただ一つ、データと違うものがあった。それは乗馬クラブの映像に出てくるのはポニーで、クイーンセレストは競走馬、サラブレッドだということだ。

 「はっや、ちょちょ待って。」

 体が投げ出されそうになる。足をしっかり固定しないと確実に振り落とされる、それぐらいの速さと衝撃だった。おいおい、この速さ出せる馬が勝てないって競馬どんだけ魔境なんだよ。

 街道を走っているわけだが、他に人も通っている。ぶつからないように精一杯避けることに注意するだけでもう頭がいっぱいだ。

 「おい、危ないだろうがっつ。」

 近くを通っていたプレイヤーを轢きそうになる。悪いな、今すぐ謝りたいが多分そっちに意識持っていと落馬する。

 「すまーーーん。」 

 この一言発するのが精いっぱいだ。後で謝るから、名前覚えたからさ。

 掛かり気味かもしれませんね、それ以上に騎手が制御できていないですね。この前の桜花賞ですらここまでじゃないぞ。

 いやでもここまで爆走もとい暴走なんてするものなのか、もしかしてこの子気性難なんじゃないだろうか。

 これログアウトしたら馬の乗り方とかそういったの見ないと制御できる気がしないや。

もしかして運営は新たな騎手を育てたいのかな、あの入れ込み具合的に相当好きなのだろうから。

 そういえば馬に止まるように指示するにはどうすればいいんだっけ。一番重要なことを忘れていた、アクセル踏んでブレーキが分からない、無いというのはもはや事故を起こしてくれと言っているようなものだ。

 「セレスト、頼むから止まってくれっつ。」

 減速しない、むしろどんどんスピード速くなっていないか。待って本当に待って。

 あ、思い出した。確か手綱を引くことがブレーキの合図だったはずだ。きゅっと手綱を引く、ここでようやく伝わったのかスピードが段々と緩やかになっていく。

 「……はぁー。」

 なんか、体力持っていかれたな。これあと四日以内に慣れておかないと、隊列乱すことになってしまうな。

 「ちょっと勉強しよ。」

 ゆっくりと走らせる方法とかそういったのもね。


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