馬
すいません、投稿話間違えていました……。
「そういえばコナラさんは何でメディウスに、集合まで時間ありますよね。」
店から離れてまた案内してもらっている最中に、ふと気になって聞いてみる。この前聞いた話だが、フィールドワークの本拠地はメディウスより南の国家群に近い、ここに来るのはそこまで楽ではないはず。まあ馬車代ぐらい簡単に払えるんだろうけど。
「他のメンバーが来てないか確認する為、北に行った人たちが帰って来るのがいつになるか分からないから。」
それにあの人たち連絡見ないからね、そう付け足して前を進む。あ、成程そういう感じなのね。自由なメンバーの管理も大変そうだな、管理できてるか怪しいけども。
「あの、因みに今何処に向かっているんですか。」
そう、さっきから何処かに寄るとかそういった感じじゃない。真っ直ぐ何処かに向かって行っている、そこが何処か分からないというのは昨日の路地裏の経験から警戒心を増幅させる。主に背後にね。
「クヌギさん用の馬を見つけに行く。」
「馬ですか。」
馬とな、いや待て俺馬買えるほどお金ないぞ。どうする気なのだろうか、もしかして買ってくれるとかそういった奴なのか。借金かぁ、いやでも多分次の集合で馬使わざるを得ないんだろうからそうなったら仕方がないか。
「あそこ」
コナラさんが指さした先にあるのは大きな建物で、中から熱狂した怒号が飛び交っている様子が離れたここからでも感じ取ることができる。まさかここって
「あの~、ここってまさか。」
「そう、競馬場。」
『一番クラッシク凄まじい末脚で追いかける、二番リョウクシン苦しいか、ゴールまであと200メートル堪えられるか。』
ああ、中かから第四コーナー曲がって最終直線の競り合いの様子が聞こえる。マジで競馬場だこれ、運営どこまで入れ込んでるんだ全く。
しかしここと馬の購入に何の関係があるのだろうか、普通馬の購入は競売か牧場での直談判といったものではないのか。
「こっちついてきて。」
そういって場内に入るのではなく横の関係者以外立ち入り禁止の張り紙でも貼ってありそうな場所に入り込んでいく。ちょっと待ってくださいって、どう考えてもそこ裏方の場所でしょ、俺らが入っていい場所じゃ
「ここって何なんですか。」
いやまあ入るんですけどね、何があるかなんてまあ後でいいでしょ。
「ここはね」
そういって何か言おうとしたときに向こう側から馬がこっちに牽引されてくる、番号が振られている感じからして競走馬だろう。
「はいはい、今から競売するよ~。この子は重賞未勝利馬だから安めから行くよ。」
疲れた馬の目がこっちを見てはあっちを見る。おいそういうことかよ、ここは勝てなかった駄馬の最終処理場前ってことか。
「はいイクラこの子に出すよ、さあさあ出した出した。」
だが回りの人たちは興味が無いようで誰か買うかみたいな感じの空気感を出している。
「そんな駄馬に金だせねえよ。」
こうやって言語化する奴だっているんだ、ここに来る馬に投げかけてやれる温かい言葉など一切ないのだろう。
現実の競走馬の最後は基本殺処分だ、牧場で余生を過ごせるのは資金力もあって結構な賞を勝ち抜き、種牡馬から引退したものだけだ。それ以外は基本誰も知らぬうちに処理されている。この子もそうなるのだろう。年は4歳で未勝利、賞金獲得量も多くないはずだ。
「いくらで買える。」
「おや…まいったな。こんな馬買う奴がいるなんて。」
ただのエゴだ、偽善でしかない。馬が欲しいということとこれから起きるであろうことを加味して決めた打算ありきの考えだ。
「そうだな、誰も買わないようだし4000ゲルでどうだ。」
「はいよ。」
高い、所持金の半分が消える額だ。でも競走馬を一頭買う金額からしたら破格の値段なのだろう。命の重さを感じる値段だ、もちろん軽いという意味でな。
「まいどあり。あんたが新しい馬主だ、好きに名前つけな。」
『馬を入手しました、名前を付けますか。』
「ああ、あとで考えることにするよ。」
とにかく今は一刻でも早くここを離れたい、次の一頭が運び込まれたらもう耐えられないだろうから。
「手綱と鞍はおまけしてくれるとよ。」
こっちにやって来る新しい仲間の轡を引く。のしっという擬音が当てはまる力強い足だというのに、どうしてだろうかその体にはもう覇気など無かった。




