宿場町
総PV数が12万を超えていました。一か月前の自分に、お前の作品は12万回もみられるようになったんだぞと言っても信じないでしょうね。
ありがとうございます。
「でっけぇ……。」
どうも、どうもどうも、クヌギでございます。私は今首都メディウスに来ております。さて今私はどこにいるでしょうか。正解はここです、ここここ。いや分からんよ。
今俺らはメディウスに入る為の検問所にいる。検問所というより宿場町みたいになってるがな。
しっかし城門も城壁も、馬鹿みたいに高いな。何メートルあるんだろうか、目測で30メートル程度だろうか。見上げていると首が痛くなってくる気がするぜ。
「おや、お兄さん。メディウスは初めてかい。」
行商人だろうか、驢馬に荷物を背負わせた男がおのぼりさんを見る目をしながらにこやかに話しかけてきた。ああ、これは初めて東京に来た子をほほえましく見る目だな。
しっかしそんなにきょろきょろとしていたのか俺、ちょっと恥ずかしいな。
「ええそうです。貴方は」
「ああ私かい、私はボウブ、しがない商人さ。」
ボウブさんというらしい、やっぱり商人だったようだ。てことはいろんな情報を持ってるかもしれない。ここのことにオススメの場所、クエストについて聞いてみようかな。
「すいません、無知なためよく分からないのですが、検問所は普通こんな感じなんですか。」
俺のイメージしていた検問所は門前にあって、そこで証明書だったりを見せて入れてもらうといった、時代劇の関所のような感じだった。でもここはさっきも言ったように町のようになっているのだ。宿に飯屋に、カグヤには見せられないような場所だったり。
「ああ、首都ともなると人が多くて一日じゃ中に入れない事の方が多くてね。こうやって検問所の前に町を作って休憩所を設けてるのさ。」
成るほど、野宿させるのではなくここに泊まらせることで資金も回収できるのか。
「因みに宿代ってどれくらいに…」
「そうだなぁ、妹さんと一緒に個室となると安くて350ゲルかな。」
まあ払える範囲内だ。今の手持ちはおよそ1500ゲルだ、二割失うことになるがカグヤの為を考えるなら妥当な値段だ。
「なあ、メディウスに入ったらここに行っとけみたいな場所ってあるか。」
宿の心配はなんとかなったので次に観光について聞く。最近戦ってばっかだったからこの子たちも休ませてあげたいからね。
「うーん、何処も行って欲しいぐらい魅力的だからなぁ。国営競馬場に大図書館、賢者の塔に西市場、まあ色々あるから時間があったら全部行ってみるといい。」
すっげ、流石都と言ったところか、観光できる場所多いな。いや待て、競馬場あるのかよ、運営の趣味だろ絶対。
「あ、そういえば。ボウブさんって買取ってしていたりしますか。」
「ああ、何かいいもの持ってるのかい。」
アイテム欄を開く、一番奥にずっと眠ったまま腐らせそうになっていた綺麗な生糸を取り出す。
「これ、買ってくれませんか。」
ボウブさんはと言うと、目を点にしている。まあ貴重品だって知ってるからな、一個分しか持ってないけど。
「ほぉぉぉお、これはこれは。」
じっと品定めしている。生糸にもしかしてランクとかあったらどうしようか。よく言うじゃないか、江戸時代の絹織物だと日本産より中国産の方が高いって。人件費とか輸送費じゃなくて、日本の生糸は若干黄色っぽいとかそういった理由でさ。
素人の俺からしたら真っ白な糸だ、でもよく見たら駄目な糸なのかもしれない。
「なかなかに素晴らしい糸だ、純白できめ細かい。加工したら素晴らしい絹になるでしょう。これ以外にお持ちでは無いのですか。」
ちらっとカグヤを見ながら聞いてくる。カグヤの服はあの時の糸を使って作られている。ようはすべて絹織物というこの時代では考えられない贅沢な服装なのだ。
だが生憎俺は持っていない、さらに言えばあの時の糸ももうないはずだ。
「いや、これしか持っていないんだ。」
「……そうですか。ではこれ一つで8000ゲルでどうでしょうか。」
少し残念そうにしながらも、普段より3000ゲル高い値段で交渉してくる。まあそれでいいでしょう。適正価格5000ゲルってことしか知らないし。
「ええ、その値段で売りましょう。」
やった、財布がほっくほくだ。あと500ゲルで1万貯まるぞ。
「いい取引でした、では私はこれで。」
そういってほくほく顔で会釈してボウブさんは宿街へと消えていった。優しい人だったな。
「カグヤ、俺たちも今日は泊まって明日入ろうか。」
観光はまた明日だ、今日の疲れを癒すためにも少しいい宿を取ろうか。
そうやってまた二人と一匹も、喧噪の鳴りやまない町に吸い込まれていったのだった。
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