舞台裏
はい、前回から予約投稿失敗してました。
すみませんでした。
ああ、なんて楽しいのかしら。こんなに楽しいと感じたのはいつ振りかしら、もう思い出せなくなるぐらい昔のことだと言えるのは確かだ。
それにその真っ直ぐな目、私だけを見ている眼、ああなんて心地がいいのだろうか。その眼をくりぬいて指輪にしましょうか、それともイヤリングにでもしましょうか。ここまで興味を持つのはあの人以来だ。
攫ったあの子が気に入るのも頷ける、この人の目は真っ直ぐと私たちを捉えて逸らさない。あの頃私がもっとも欲しかった目をしているのだ。
私たち不十分なヒトガタは、最初に出会った存在に過度な愛情を求める。私たちの精神構造がそうさせているのか、それとも刷り込みのようにその存在に従おうとする本能なのか、私には分からない。
彼の槍が私に迫る、真剣な瞳がどれ程彼女を取り返したいのかといった激情を物語っている。ただ一心に注がれた目線、だけどそれは私に与えられるものでは無い。
ああ、あの子に嫉妬した理由がわかったわ。私と同じ存在、生まれた境遇も同じだろう。だというのに私とは真逆の暮らしをして生きている。好きな人からの愛情を際限なく受け入れられる、その人の横にいても疎まれない怖がられない、そして何よりもあの目を向けられないということだ。
目ん玉をくりぬくなんて言わずに存在自体を奪ってしまおうか、そうすれば私も。
いや、駄目だ。いくらその愛を欲しがったとしても私に注がれることは無い。もしかしたら分け与えられることはあるだろう、だけどもそれは分配ではない。彼女の二の次ということだ。
私、一番じゃないと嫌なのよ。あの日あの人の一番になろうと思ってヒトガタになったくらいにはね。だからあなたを愛するのは止めようかしら。
ふふふ、私惚れやすいけどそう簡単に尻を振る尻軽ではないのよ。でも、だけど、もう少しこの時間を楽しんでいたいわね。
まったくあいつは無理難題をオレに吹っ掛けてくる。回りには子分の蜘蛛共、体格差を鑑みて余裕だとでも思っているのだろう。やれやれ困ったものだ。
最速で行くのならその妨害はありだろう、その通せんぼを通るのは俺にだって難しい。
だが、道が塞がれてるのならまた別の道を作るだけだろう。横に、縦に、斜めに、
部屋中を縦横無尽に駆け巡る。あいつらは図体だけだな、オレの俊敏さについてこれていない。
お姫様奪還作戦はオレの勝ちだな、ただアイツが猛攻を耐えられるかが重要になってくるが。
夫人の攻撃は激しさを増しているように見える。だがその顔にはまだ余裕がある、いまだに力をセーブしているのだ。
それに対してアイツの表情は一転して蒼白、苦しいなんてもんじゃないんだろう。顔を見てると早くしろという念が飛んでくるようだ。まったく、怒ったカグヤでさえそんな顔しないだろうよ。
ただ本当に急がないとマズイな、あれは多分数分も持ちそうにない。みるみると生気が失われていってる、初対面の奴が見てもすぐに分かるくらいには酷い状態だ。
どうやら追ってきていた蜘蛛共は俺を追い切れないと判断したようで、捕まえるより先回りすることを決めたようだ。
ありがとよ、そう短絡的に考えてくれて。おかげで道が完全に開けたぜ。
おいおい、道開けたのお前らだぜ、なに驚いてるんだよ。人数差があるんだから最初に押し切っていれば勝ってたのにな。
そうそう、オレはアイツみたく詰めが甘くは無いぞ。失敗したくないんでね。
さーて、辿り着いたぜお姫様、騎士様が首を長くしてお待ちだぜ。
明日からはちゃんと時間通りに投稿しますので、どうか見捨てないでぇ…。




