オンステージ
祝!10万PV突破!
この作品を書き始めた当初は千回も見られないんじゃないかと思っておりましたが、ええ、違ったようです。
ここまでこれたのも皆さまのおかげです。どうかこれからも本作をよろしくお願いいたします。
前言撤回、サクッと仕留められませんでした。夫人の攻撃パターンが変わったんだ。
今までの戦い方は人体部分のみを使ったもののみであった。蜘蛛糸も手で操り飛ばしてくるといった蜘蛛の要素が薄いものとなっていた。
だが今の戦闘スタイルは全く違う。足を器用に扱って先端を俺の体に突き刺そうとする、まさしくダンスのような戦闘スタイルなのだ。
「ねえねえ、さっきの威勢何処に行ったのかしらっ」
糸が飛んでくる、搦め手ばっかしてくるなんてボスの風上にも置けないな。横に跳んで回避しようとする、が肩の裂傷が動きを阻害する。
まさか麻痺系の毒だったのか、動かずもつれた足で転がって無理矢理回避する。
「踊り過ぎて足がもつれちまったぜ。あんたは大丈夫かい、そんだけ足あったら絡まってよろめくんじゃないかい。」
小言を言う元気くらい出さないとな、小言も言えなくなるレベルになったらもう負けを認めたようなものだ。
「じゃあちょっくら本気いきますか。」
今まで本気じゃなかったみたいな言い方してるけど、ある意味で本気では無かった。
「あら、まだ何か手品でも見せてくれるのかしら。」
彼女の瞳にはもう見下した色は無い、本当に奥の手があると信じて警戒しているのだ。
「お前さん方から見れば手品と言えばまあ手品、だが人間からしたらこれが本気なのさ、演舞ッツ。」
大声で発動を宣言する、瞬間力が腹の底から湧き出してくる。
「へえ、面白いわね。」
夫人は興味深そうにじっと見つめながら、いつ動くかと警戒している。
いつ行くかいや今か、いつ行くかいやまだか。互いに睨み合いが続く。達人の戦いというのはこうも息苦しいのか、俺達人じゃないけど。
「ここっ」
耐えづらきを耐えというのが出来ない性分でな、先手を取らせてもらうぜ。因みに一対一において先手を取るとまず負けるぞ。
「あら、あらあら」
目をパチクリしている、腕からは血が滴り落ちている。クソ、ギリギリで避けられた。俺の槍は切断するまでに至ることは無かった。
「さっきまでとは別人になったみたいに速くなったのね、何したの。」
声が一切笑っていない、こんな声を聴いたのは沼河童のセクハラにキレた転職済みの元同期以来だろう。
「お前も言ってただろ、手の内を明かす馬鹿がいるか。」
演舞、槍術の心得と鋼の意志を習得した状態で回転系攻撃を繰り返して使うことで入手可能なスキル。効果は一時的にステータスを底上げするといったものだ。
だがもちろんデメリットも存在する。その弱点は
「ふふ、顔色が悪くなっているわね。」
使用時間中は常にダメージを負うといったもので、回復スキルを受け付けないといったものだ。回復薬は例外らしく飲んでも効果が出る。だがこの戦闘中にどうやって飲めというのだろうか、飲む瞬間は絶好の隙にしかならない。
「ちょっとばかし肩の傷誤魔化せなくなったかもな。」
そう、このランダムで発生する麻痺である。いくら底上げしたとしても足を止められたら格好の的。あの足で胴体を貫かれるのみだ。
お祈りゲーミングの始まりだ。確率は何パーセントだろうか、俺はあまり運が絡む抽選は得意じゃないんだ。
「もう後退できないな、偃月ッ」
持てる限りの力を込めて放つ。どうやら馬鹿正直に戦ってくれるわけでは無いようで、しっかり回避される。
「おい、一緒に踊ってくれるんじゃないのか。」
床を深く叩き割って抜けなくなりそうな槍を無理矢理引き抜く。すごいな、刃が欠けてない、どんだけ硬いんだこの武器。
「そんな荒々しいダンスいやだもの。」
どの口がほざくか、さっきまで足のラッシュ仕掛けてきたのはお前だろうが。っておい待て、その距離一気に詰めてからのオラオラは頭おかしいだろ。
不味いな、こっちは力と引き換えにじわじわと減る体力に、いつの間に追加されたのか毒のスリップダメージ、ガードの削りもそこに加わって重い一撃をあと一発でも受ければ即終了。だというのに打って出なければ死は確定。
対して向こうはまだぴんぴんしている。何なら今からもっとボルテージが上がりそうな気配すら感じさせている。
「だ・か・ら、もう少しこの楽しいダンスを続けましょ。」
上げ切らない、わざと延長の姿勢を見せていく。デメリットに勘づいたか、それとも時間耐久系の戦闘だったのか、とにかく言えることは一つ。
まだこの円舞曲は終わらないという事だけだ。
最近体調があまり良くないので、もしかしたら一日一話投稿するのがやっとになるかもしれません。




