表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/186

初歩的なことだよ

予約投稿を使いこなしたので、これからはもしかしたら0時12時の更新になるかもです。


 タネが割れたマジックはお遊戯に過ぎないって誰が言っていたのか忘れたが、昔何処かで聞いたことがある。実際仕掛けさえわかれば基本どんなことも攻略はできるようにゲームは作られている。ただし負けイベは除く。

 今回の肝は、蜘蛛だけが認知可能だという所だ。ダンゾーがいなかったら分からなかったよ。

 蜘蛛が巣に引っ掛かった虫をどうやって認識しているか知っているだろうか。簡単な話だ、巣にくっ付いて暴れた振動で認識する。試したければ巣にバッタを投げてみると分かる。昔若気の至りと子供の残虐性で投げ込んだときは蜘蛛の素早さと認識能力に度肝を抜かれたものだ。

 あいつもそういったパターンなのだろう。地面に糸を張り巡らせ踏んだ位置を確認して攻撃してくる。俺が奴の巣に踏み込んだ虫だったんだ。

 アイテム欄からキャタピラーを取り出す。こいつは村の外で取った体液を抜いていない個体だ。

 その腹を勢いよく裂いて放り投げる。体液を周りにまき散らして宙を舞う。

 「ようやく見つけたぜ。お前トリノフンダマシだな。」

 キャタピラーの体液によって姿が浮き彫りになる。ついでにその臭いから場所を探れるようになったぜ、待ちに待ったお礼参りの時間さ。

 トリノフンダマシ、その名の通り鳥の糞に擬態して隠れ、天敵と獲物から姿を隠す奇術師だ。こいつは恐らく鳥糞ではなく回りの風景に同化する性質を持って生まれたのだろう。

 俺が見ていたのは幻覚じゃなかったし、本体でもなかった。奴はそもそもあの場にいなかったのだ。

 あれは奴が糸で作り出した偽物、この薄暗さのせいで認識しづらかったのだ。

 「もう隠れられないぜカメレオンモドキ、蜘蛛だがな。」

 今度こそ捉えたその姿に槍を突き付ける。蜘蛛糸の位置も何となくだが割り出している。ダンゾーが避けて通っている位置が安全地帯だ。

 実際そこを通っても奴は俺を追えていない。近づかれていることに気づけてないのだ。

 「いい加減通らせてもらうぜ。」

 お前とのダンスは退屈だ、本命とのダンスが迫ってるんだどいてくれ。

 トリノフンダマシが崩れ落ちる。どうせ撃退しかできないだろうがそれでいい。

 ドアに手を掛ける。さっきとは違ってもう妨害されずに入れる。

 「今行くぞ」

 カグヤにも、もちろんこのふざけた遊びを仕掛けてきた夫人にも。


 「ってまだ部屋あるんかい。」

 答え合わせのつもりで入ったその小屋にはまだ部屋があるようだ。まあ外観からして数部屋分あるよね。

 「だがもう王手一歩手前、麻雀ならイーシャンテンだ。」

 自摸待ちじゃないのかって、部屋見つけてようやく聴牌取り返して自摸だ。相手から取ってるからロンか。

 「行くか、ってどうしたダンゾー。」

 震えている、今までこんな反応したことがあっただろうか。強敵がいるのか、それとも。

 生き物は一部を除いて死に敏感だ。それは自分に降りかかる可能性を排除するための防衛本能なのかもしれない、もしかして今それが刺激されたのか。

 蜘蛛の天敵はまた別の蜘蛛といったことはあり得ない事ではない。別の生物でも同じ分類同士で捕食被捕食が成り立つことなんて普通にあるし共食いだってある。

 ……いや、この感じそういった感情じゃないな。最近ダンゾーについてよくわかるようになったからこそ気が付いた。

 確かに死への忌避感からくる恐怖なのだろうけども違うのだ、何かとは言えないけども。

 意を決して部屋に入る。蜘蛛は襲ってこなかった。

 「当たりを踏んだか」

 そういったわけではなさそうだな、だって蜘蛛糸などどこにも無いからな。

 人が住んでいた痕跡はある、しかし随分と前のことのようだ。何処もカビに侵されている。

 「本館とはえらい違いだな。」

 置いてあった本なんてもう文字なんて読めない程腐食している。手掛かりになんてなりそうにない。

 だが何とか読める程度に残った部分がある。内容的にこれは蜘蛛に関する図鑑のようなものらしい。

 「これ以外何も無いか。」

 どれも腐っていたりで読めたものじゃない、しかもこの館に住んでいた人間が蜘蛛に関して興味を持っていたことは現状知っていることだ。

 だってわざわざ私の子と呼んでいるのだからな、好きじゃなきゃ我が子と言わんでしょ。

 


 それからというもの、その部屋に入っても蜘蛛は襲ってこなかった。ここじゃないのかとも思ったが、だったらあの蜘蛛は何故ここを守るように立ちふさがっていたのかが説明付かない。

 それにさっきから夫人の声がしない。あのお喋りさんが黙るということはそれほど近づいたということじゃないだろうか。

 確実にこの小屋の何処かにいる。しかしもうすべての部屋は回った、手がかりなんてない。

 そういえばこの前コナラさんとの会話を思い出す、チャットだけども。

 確かあの後関係ない話としておかしな部屋についてのことについて出してくれたんだっけ。

 曰くなんでもどの種族を連れていっても誘拐されない部屋が存在する。それは別館の地下室、その先の隠し部屋だという。

 今の所何らかのイベントがボツになって部屋だけ実装されていると言われいる部屋。

 もしその部屋がヒトガタ種の隠し部屋であったら、その可能性は高い。

 「だとしてもまず地下室への入り口見つけないと。」

 多分どこかに隠されている、地下室なんて何か事情が無い限り普通作らないからな。


毎度のことですがブックマーク、評価、感想よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ