四時間目
お昼です。
予約投稿にも慣れてきました。
「クソっ一階でも無い。」
苛立ち焦燥、無音にて。一切の手がかりが手に入らないまま四時間も経過している。
腹が減り始めるが、今ログアウトして飯を食べようだなんて思えない。あと20時間しかタイムリミットが無いんだ。一分一秒も無駄にできない。
「でも、一階ですらないってどういうことだ。」
地下室への入り口が何処かにあるのか、それとももしかして別館とかあるのか。
「この難易度で24時間以内だとか、頭おかしいんじゃないか。」
今になってこのクソさに腹が立つ。カルシウム足りてないとかそういう話じゃないからな俺。
一瞬持っていた槍に八つ当たりしそうになるが、寸での戸ことで思いとどまる。今このストレスをぶつける暇すら惜しいのに何してるんだか。
『ねえねえ、本当に探す気あるの。』
「うるせえ黙ってろ、面合わせたときタダじゃ置かないからな。」
小物臭のする発言だが、真面目に会ったときにタダじゃ済ませないだろうからな。
『クスクス、あら怖い。』
余裕を見せた声音を残してどこかに消える。マジでどこから見てるんだか。
「ダンゾー、地下室への入り口とか見なかったか。」
フルフルと首を振る。どうやらこの屋敷には地下室は無いようだ。俺なんかの勘よりダンゾーの眼の方が信用できる。
「するとこの屋敷内じゃないという事か。」
大きめの硝子窓から外を見る。中庭に立っている大きめの小屋。もう残っているのはあそこしかない。
「急ぐぞ、カグヤが待ってる。」
中庭に行くための出口など探す必要などない、窓を槍でぶち破る。こうするのが手っ取り早いでしょ。
残った硝子片を蹴り飛ばして辺りに散らす、これで刺さらずに通れるな。
なんだダンゾー、野蛮だって言いたいのか。誘拐なんかしているほうが野蛮じゃないか。
ダンゾーの眼を振りほどくように窓から身を乗り出す。いつの間に雨が降り始めたのか、中庭の木々や草花はしとしとと濡れている。
屋敷を庭はあんなに整備されていたのに酷い荒れようだ。木は手入れをされていないのか伸びっぱなしだ。
足元に石畳が敷かれていたようだが、それも草や苔に覆われて見えなくなっている。
「さっきまでとは毛色が違うな。」
今までは部屋の中に表れた蜘蛛、今回は小屋の前に鎮座している。まるでこの先に入れたくないように。
「ダンゾー、行くぞ。」
槍を構えて吶喊、蜘蛛はまだ動かない。違和感を感じる、何故動かない。
槍を振り下ろす。手ごたえが無い、穂先が体にそのまま沈んでいく。
「ぐえっ」
後ろから強力な何かに引っ張られ一瞬首が閉まった。どうやらダンゾーが背中に付けてた蜘蛛糸を勢いよく引いたみたいだ。
つまりさっきの俺に何か危機が迫っていたんだろう。
その認識は合っていたようだ、さっきいた場所が何か鋭いもので差し込まれたかのように抉られている。
いつの間に、いやそもそもあそこにいた蜘蛛はどうやって移動したんだ。驚きながらもとにかく正眼に構え直す。
今度は見えない、どうなっているんだ。いやまさか
「幻覚か、何処かで毒でも貰ったかっ。」
今までの戦闘の何処かで毒を貰っていた可能性がある、もしそうだったらあそこにいた蜘蛛が幻影で、一切手ごたえが無かったことも納得できる。
「でも一々ステータス画面見てられるかよ。」
やることが意地悪い、運営の悪意全振りだなこのクエストはよぉ。
「ダンゾー、悪い。俺の眼は役に立たない、どうにかいる場所を教えてくれないか。」
ダンゾーが攻撃した場所の音から探り当てないといけない、難易度達人かな。
でもそうでもしないと前に進めない。やるしかないんだ、頼んだぞダンゾー。
「そこだな、速突」
ばしゅっと音がした辺りに槍を打ち込む。槍に手ごたえが無い、外したのかすらわからないの結構不味いな。
「何処だ、何処にいるんだ。」
相手している暇が無い、そう思ってドアに近づけば目の前の地面が強烈に抉られる。倒さないと通れないのだろうし、見逃してもくれないだろう。聞き耳振ったら位置特定できたりしないかね。え、お前はもうファンブル出してるって。ごもっとも。
ダンゾーが引っかけては引っ張ってくれるから今の所無傷だが、もしダンゾーがやられたら俺も後追いする結果になるだろう。
標的がダンゾーに移る前に決着をつけないといけないが、どうやって突破すればいいんだ。
「ダンゾー、俺に糸掛けられるか。」
だがまず戦うにはおおよその方角の認識と今の俺のズレをまず認識しないと無理だ、先にそれをしろって話だ。
背中に蜘蛛糸が当たる。触った感触及び背中にある存在感的に正しい情報なはずだ。
後ろを振り向けばそこに糸がある。おかしい、もしかして幻覚症状は出ていないのか。じゃあさっき何で当たらなかった、何故俺はあの攻撃を認識できなかったんだ。そして何故今あの蜘蛛の位置を割り出せないんだ。
また糸が引っ張られる。ダンゾーだけが認識できている、何故だ。何故俺だけ認識できなくてダンゾーは感知できる。いや待てよ、ダンゾーはそもそも目視できているのか。
「いや、そうか分かったぞ。」
タネにようやく気が付く。それは無いぜまったくよ。
この前自分が好きだったアニメが十数年前が放送時期という残酷な真実に気づきました。
精神的にクルものがありますね。




