表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/186

一時間目

祝!8万PV突破!

ありがとうございます!

 すぐに広間を飛び出す、さっき通った長い廊下を走る。とりあえず屋根裏部屋だ、カグヤが昆虫族だと仮定して最速で動かねば。

 階段、階段はどこだ、何処にあるんだ。こういう館には基本玄関ホールに二階への階段があることが多い。しかしさっき来た時にあったように思えない。

 焦る、まだ数分も経っていないはずだというのに呼吸が浅くなる。落ち着け落ち着け落ち着けぇッ。

 「落ち着いていられるかよぉおッ。」

 大事な娘取られて落ち着いてられる父親が何処にいるというんだよ。

 全速力で走り回る、クソッ敏捷に振っておけばこんなもどかしく感じなかったんだろう。

 「ダンゾー、お前は屋根を伝ってカグヤを探せ。ただ襲われたらすぐに逃げろいいな。」

 ダンゾーにそういって手分けして探索に入る。ダンゾーの足ならいろんな場所に行けるだろう。それこそ中庭にあるかもしれない小屋だったり隠し部屋だったり。

 玄関ホールに出る。さっきまで無かったはずの階段が確かにそこにあった。この位置にあったら絶対見ているはずだというのに、見た記憶が無いのだ。

 「今はそんなことどうでもいいっ」

 駆け足で階段を登っていく。洋館の外観的に二階建て、何処かに屋根裏に通じる梯子か階段があるはずだ。ここにないのだから上に行くためだけの部屋が何処かにある。

 片っ端から行くしかない。部屋の地図なんて知りはしないんだし。

 「クソッ、コナラさんに聞いておけばよかった。」

 部屋名だけ聞いて行く方法を聞いていないという失態。今はそれを嘆いても仕方が無いと知っていても頭にこびりついて離れない。

 振り払うように目に入った部屋を開ける。使用人の部屋のようで、簡素なベッドとドレッサー、タンスだけがこの部屋にある。

 「ハズレか…」

 踵を返す、がドアが開かない。どうなっているんだこれはっ。

 『あら、言ってなかったかしら。違う部屋に入る度に私の子達が襲ってくるって。』

 「んなこと聞いてねえよ。」

 あらそう、そう言って声が消える。そして天井からぬるりと蜘蛛が一匹現れる。

 でかい、お前ら横の長さ確実にメートルあるだろ。

 そして糸を吐かないタイプっぽいから徘徊性だ。このサイズの徘徊型と戦うのって人間に勝ち目あるのだろうか。

 「偃月っ」

 上段から強烈な振り下ろし、蜘蛛は回避する気が無いのか動かない。

 頭胸部にクリーンヒットする。手ごたえ有りの一撃、相手は予想できていなかったようで一目散に逃走する。

 『あら、お強いのね。』

 「いちいちうるせえぞ。」

 ふと蜘蛛がいた場所に目が行く、あれはドロップ品があるアイコンだ。

 『斑大蜘蛛の籠手:耐久+25 技量+20 敏捷+10』

 これか、コナラさんが行くべきって言ってた理由が。

 「確かに良い装備だけど、今そんなこと別にいい。」

 装備が手に入るより自分の子を取り返すことの方が優先だ、当たり前だ。

 

 「くそっここでもない。」

 あれから何部屋開けたのか、どれもハズレでその度に蜘蛛と戦うこととなった。

 装備品が落ちるのは確定では無いようで、クリア時に一斉に渡されるかここで回収するかの二択なのだろう。じゃなかったらコナラさんが勧めるはずない。

 「どこだ、どこだ屋根裏部屋。」

 もう少しで一時間が経つ、猶予はあと23時間しかない。多いように思えるが俺からしたら足らなそうで焦りを呼ぶ原因になっている。

 「……あった。」

 洋館二階の隅っこの部屋、ジメジメと湿ったその部屋に屋根裏部屋への梯子が確かにあった。

 「頼むっ、そこにいてくれカグヤっ。」

 急いで梯子を上る、湿気で腐っているのかミシミシと嫌な音を立てるが今はかまっていられない。折れたらその時考えろ。

 

 屋根裏部屋は薄暗く、多量の蜘蛛糸で覆われていた。

 「絶対ここだ、間違いない。」

 映像と瓜二つの光景に自ずと足の進みが早くなる。奥に進むにつれて蜘蛛糸が濃くなっている。ああ、カグヤ今行くからな。

 でかい蜘蛛の巣の前に立つ。真ん中にはグルグル巻きにされた何かがある。

 「カグヤっ」

 急いで蜘蛛の巣から引きはがす。手にべたべたと張り付くがお構いなしに巣を壊していく。大丈夫だろうか、窒息していないだろうか。

 糸を引きはがしていく。どれだけ巻かれたのか一向に姿が見えてこない。

 「……は?」

 引きはがし切ったその中にいたのは、顔も名も知らないNPCだった。

 『あら、あの子のおやつ食べたかったのかしら。言えば上げたのに。』

 ここじゃない、振出しに戻された。ただそれだけのことだというのに頭が真っ白になっていく。

 後ろから鬼蜘蛛をモチーフにしたであろう敵が襲い掛かってくる。ここで死ねないといった考えが浮かんでこなかったら対処できていなかっただろう。

 『キヒヒヒ、あと23時間よー。頑張ってねぇ。』

 手がかりが潰えて、ただ時間だけが過ぎていった。


感想、評価、ブックマークいつもありがとうございます。

まだの方は是非していってくださいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ