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無限組手の結果

祝!7万PV突破!

いつもご愛読いただきありがとうございます!

 「円弧っ」

 足払いに徹底してゾンビに切りかかる。数が一向に減らない。

 リスポーンすればよいのだろうけど、後味の良さのために経験値の為にと考えてしまうと、もったいないお化けが出てきて戦わずにはいられないのだ。

 ゾンビがゾンビを踏み殺したとしても経験値は俺に流れるようであり、強化ゾンビが発生するといったことはないようだ。

 「しっかし流石に疲れてきたな。」

 肉体の疲労を脳が誤認している。手に痺れを感じ始め、槍を振るう気力も段々失せていく。

 「円弧ばっか使ってるのもなんだか飽きてきたな。」

 何か、何か新しいスキルは無いか、いや無いだろうな。まだ熟練値が足りてなさそうだし。

 重い腕を動かして槍を振るい続ける。腐肉はまだまだ湧いてくる。

 「お前らどんだけ湧いてくるんだよ、無限湧きか?」

 だってさっき倒した数と今いる数足したらどう考えても最初より多いしな。これもしかして頑張り損かもな、そういうイベントなら諦めるのもまあ有りだしな。

 「いや、止めないでおこう。」

 さっきの襲撃、カグヤがいなければ確実に俺は成すすべなく一方的に弄ばれて死んでいた。カグヤがいたことが勝因の九割だと言われても否定しない。

 あいつの言い方的に俺を襲う依頼が何処からか出ているらしい、あれと同等かそれ以上の奴が襲撃に来るのだって時間の問題だろう。

 もしその中にカグヤの祝福を受け付けない者がいたら、俺らは全滅する。

 「レベルを早く上げないと、俺が守らないと。」

 プレイヤーから守れるのは同じプレイヤーだけだ。実際カグヤの毒はコナラさんを倒すにはいたらなかった。カンスト付近の相手には通用しないのが現実だ。

 槍を振るう、たださっきよりキレが無い。腐肉に埋まった槍を引き抜くのに時間が掛かる。

 一撃が重い、たったの一発で一割持っていかれるあたり俺の弱さが際立っていく。

 後ろにバックステップを踏んで距離を取る。やっぱり数増えてるな、湧き数決まって無いなこれ。

 「無限組手とかもうやれる年じゃないんだよねぇおじさんってさ。」

 心はまだおじさんと思っていなくとも、もう体や脳はおじさんなのさ、もう疲れた。

 「あと何体倒せるかな、俺の腕が動かなくなるまで遊ぼうぜ。」

 でもまだまだ戦おうっか、経験値はいくつあっても足りないんでね。



 「はっはっはははは」

 人って本当に疲れて脳が動かなくなると笑いが込み上げてくるんだな。辺り一面腐肉塗れ、そしてまだまだやって来る死体の集団。マジで無限湧きじゃないかクソが。

 「あーあ、もう槍も持ちあげる気力湧いてこないや。」

 ステータスの持久力値が影響しているのか、それとも単純にリアルの体力を参照されているのか。まあ今そういったことはどうでもいいか。

 「腐肉共に殺されるの、なんかやだなー。」

 だって結構な数倒しているのに全く同じような奴にぶっ倒されるのってなんかムカつかないか。FPSでずっと倒し続けてた相手にキルされて屈伸された時ぐらいに。

 嫌の意地で何とか力を振り絞って切り倒す。それでもまだまだ湧いては襲ってくる。

 「今何体目だこれ、どれだけレベル上がったかな。」

 十ぐらい上がっていると嬉しいんだが、これだけの数出てくると考えると経験値あまり美味しくはなさそうだな。

 ああ、疲れた。緩慢に槍を横薙ぎに、まさしく投げ槍に振るう。一体ぐらいなら倒せるかぐらいの一撃、さっきまでなら切れただろう足すら断ち切れない威力に落ちている。

 「ハハっここまでか。」

 何人抜きしたのだろうか、もう数なんて途中から数えてなかったから憶えてないけども。

 腐肉が新鮮な肉に殺到する、ああ臭い。こんな臭いに包まれて死ぬのは本当に勘弁だが、まあもうどうにもできない。

 「おいおいお前ら、肉の旨い喰い方知らないのかよ。」

 みるみるうちに体力が削られていく。何秒後かな、リスポーン待機画面に行くの。

 これで俺のゾンビが出来たら、その時は俺が切り殺してやろう。



 「おはよう」

 村の宿屋でリスポーンする。部屋には誰もいないことを見るに、俺を待っているのはここじゃないんだろう。でもここにいないとなると、周囲三十メートル以内にはいるのだろう。

 出て探そうか、そう思ってドアを開けると目の前にカグヤがいた。泣いてる。

 「どうした、カグヤ」

 そう声を掛けると俺に飛びついてくる。服の隙間から六本目の腕も出してしっかりと確かめるように、そしてもう離さないようにぎゅっと抱きしめてくる。

 「ごめん」

 俺はゲームのアバターで残機無限なことは知っている、けどカグヤからしたらこの世界の理屈がすべてなのだ。彼女らは死ねばそのまま消える。従魔になった子だけはその理論を逃れることが出来るたった一つの例外なのだ。

 抱きしめてあげよう、今はただそれをしてあげよう。

 

 ただもう疲れた、今日はログアウトしよう。


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