続・ゾンビパニック
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ノロノロと、だが確実にこちらへと足を進めてくる腐肉集団。数はどれ程か、重なっていてちゃんと数えられないが多いということだけは言える。
「なあ、こんなのどうしろっていうんだよ。」
一匹一匹の総合戦力は高くない。しかし数の暴力はその質の差を簡単に覆してくる。
一騎当千と言うが、逆に言えば千の雑兵で一の勇将を屠れるのだ。
ヒットアンドアウェイ戦法を取ろうとしても、いつ後ろを取られるか分からない量相手に仕掛けられない。
でも数減らさない事には始まらない。そう意気込んで先頭を行く一体に狙いをつける。
「円弧っ」
足を切りにかかる、無理でも転ばせれば時間稼ぎになると思い勢いよく踏み込む。
ゾンビ一体の片足を切断することに成功、よろめいて倒れるも健在。
後ろの奴らはというと、そんなこと意に介さないで進んでいく。地を這いながら進むあいつは、どんどん前に進む奴らに踏み殺されていった。どうやら仲間意識などないらしい。
「これ円弧で前を崩して踏み殺させるのが効率的か。」
もう一度円弧を放つ、さっきと同じように倒れ踏み殺される。確かに効率的だ、数を考えなければな。
間に合わない、一匹落としても横に広がって歩いてこられれば、処理させてる時間でここまで到達されてしまう。
ダンゾーも糸を足に吹きかけて移動を阻害しているが数が多すぎて間に合っていない。
カグヤはもう下がらせるしかない、ヘイトが分散してしまい狙いが崩れる可能性がある。もし追われても逃げ切れるだろう、俺より足速いし。
「円弧、円弧、クソッ」
薙ぎ払い続けるが槍が止まる。ゾンビの肉体にまだあまり腐っていない部位があったようで、穂先が埋まってしまった。
無理矢理引き抜くがその時間分後ろが前に殺到している。
火力が足りていない、何か打開策を思いつかないと普通に負ける。
「あいつに勝ってお前らに負けるのは癪だっ。」
どうする、カグヤの毒は効かない、恐らく祝福も効かないだろう。ダンゾーも有効打を持っていない。俺は火力が足りず、最終的に詰められて終わる。
詰みだ。時間をかけて磨り潰されるだけの消耗戦、明らかに向こうが有利だ。
「逃げるか……でも何処に。」
村に逃げればこいつらを連れていくだけ、ここらの地理も良く知らないから何処に人がいないのかもわからない。
結局俺に出来るのはここで死ぬかすべて万々歳に上手くいく策を思いつくだけだ。
「カグヤ、ダンゾー、撤退だ。先に村まで離れておいてくれ。」
別にペットは死なない。体力がゼロになった場合、復活期間を設けられそれが過ぎるまで呼び戻せない、デメリットはただそれだけだ。
だが誰が我が子の死ぬ瞬間などみたいだろうか、誰が自分に死にざまを見せたいと思うだろうか。
俺のリスポーンに掛かる時間などたかが知れてる。可能な限り一緒に道連れにしてやるさ。
「やぁぁあ」
カグヤが初めて意味のある言葉を言ったような気がする。ああ、こんなタイミングじゃなくてもっと朗らかしたときに聞きたかったものだ。
「ダンゾー、カグヤのことしっかり見といてくれ。」
ダンゾーはこういう時しっかり話を聞いて逃げてくれるタイプだ。ほら、カグヤに糸を掛けて引っ張っていこうとしている。
「行け、カグヤ。絶対に戻る。」
カグヤに死に行く所を想起させるのは二回目か、もしかしたらトラウマを刺激してしまったかもしれない。でもな
「俺はお前が死ぬところなんて見たくないんだよ。」
俺のわがままさ。いつだって親は自分より先に子供に死んでほしくないのさ。
俺、親じゃないけどな。
「さあ腐乱死体共、素敵なパーティーにしようじゃないか。」
気分は無双系ゲーム、ただし俺も相手も雑兵だ。勝利条件は死ぬまでにできるだけ敵を削り倒すこと、ただそれだけだ。
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